グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル

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第三章 謎と試練

62 レッツフロージア!

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 「宇宙船、久しぶりに乗るなぁー!」

 宇宙船を見て、ヘンディが開口一番大声で叫ぶ。
 今日は試合の前日、ヘンディのメンタルはあの日以降安定はしているように見えるが、こういう問題は簡単に解決するものではない。
 またメンタルが崩れる可能性は頭に入れておくべきだろう。

 そして、宇宙船。
 地球から帰ってきたとき以来だから、だいたい半月ぶりかな。
 今回は今までと比べて乗船人数が多い。それは、俺たちを護衛するための銃士隊が乗っているからだ。先に乗り込む銃士隊の面々。その中にはカグラさんの姿もあった。

 「はじめまして、挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。救護班長のヒリラと申します。
 今回は私たち救護班も同行させていただきます。どうぞお見知り置きを」

 「あ、ヒリラさん! お久しぶりですー!」

 「あら、未来様。お久しぶりです」

 「知り合いなのか? 未来」

 「うん! これでもマネージャーだからね!
 ヒリラさんは超ーしっかりしてるから健康系は全部任せて大丈夫だよ!」

 「そこまで信頼されると気合いも入るものですね。
 では皆さん、今回も私たちは控え室で待機しています。怪我した場合はすぐに申告してください。必ず力になります。
 しかし、それ以上に大切なのは怪我をしないことです。重要な試合ですが、無茶だけはしないようお願い致します。それでは」

 こうして宇宙船に乗り込む救護班の皆さん。
 ヒリラさんは未来の言う通り頼りになりそうな人だ。安心感がある。

 そして救護班に続いて乗り込む俺たち。今回乗り込むのはこれで全員だ。

 この間の試合はオグレスの王様や予言者の一族も観戦に来ていたが、流石に今回は見に来れないようだ。観客もいない、アウェイの心細さを少し実感する。

 全員乗り込んだため宇宙船が動き始める。今回もワープ機能が使われるので、実際に乗っている時間はそう長くはないだろう。

 今回の行き先は、氷の惑星"フリージア"。
 全員、専用のジャージを着たから温度的には大丈夫だとは思うが、それでも俺たちにとっては未知の惑星であり敵の惑星だ。
 オグレスは結果的には味方の惑星だったため何も無かったが、今回は別。
 星の存亡をかけた争いの敵陣に乗り込むのだ。緊張感を忘れてはいけない。

 と、俺は真剣に考えているのに……

 「前回はブラドの野郎が2点も決めやがって、俺たちは少し遅れを取っちまったが、今回はそうはいかねえ。今回こそは大量に得点して、目指せエースストライカーだ!」

 「目指すのは勝手だけど、エースストライカーになるのはボクだから。
 あ、キャプテンはそんな頑張らなくても大丈夫だから。まずは、1点! 頑張ろう!」

 「そうだな。エースストライカー対決は俺たちに任せて、キャプテンは初ゴールを狙ってけ!」

 「俺、ディフェンスだけど、前回1点は取れたし、よかったらシュートのコツ教えようかー?」

 「……ウザい!
 将人! 凛! お前ら普段キャプテンとか絶対呼ばないくせにこういうときだけ当てつけみたいに呼びやがって!
 で、ペペ! なんでお前まで一緒になって煽ってんだよ!」

 「えー、前回得点決めたからって将人くんに呼ばれました」

 「呼びました」

 「暇か!
 試合前日! 宇宙船の中! もっとやることあるだろ!」

 「龍也、緊張しすぎるのもよくないぜ?」

 「緊張しなさすぎるのもよくないって言いたいんだよアホ!
 て、前回得点決めた人が呼ばれたってことは……」

 「あ、僕もいまーす。
 キャプテン。点を決められなくたって、そこまで気にすることないと思うよ」

 「気にしてないから! まじで! これっぽっちも! 前回の得点とか忘れてたレベルだし! だから! 心配! やめて!」

 「……ごめん……龍也くん。僕、今までずっとオグレスにいたから、他の星に行くのも宇宙船に乗るのも初めてで、少し舞い上がっていたのかもしれない。
 そのせいで君への気遣いが足りてなかったみたいだ。本当に申し訳ないよ」

 ……そ、そうなのか。
 ファクタはオグレス星人。科学の発展した星に住んでいるのだから、宇宙船くらい乗ったことがあるのだと思っていた。宇宙船って意外と一般人は乗らないものなのかな。

 「いや、俺こそ……なんかごめん」

 「チョロ」
 「w」

 「そこ2人シバく!」

 ***

 「待てこらああああああああああ」

 「……試合前日だというのに、彼らは変わらず元気ですね」

 「みんな凄いな……。ぼくなんか、フロージア星に行くのが怖くて怖くてたまらないのに」

 「それは普通の感情ですよネイトくん。
 フロージア星は敵星ですから、何があるのかわかりません。
 ネイトくんのその性格は、こういう未知の星に行く場合に役に立つ大きな武器です。だから気にしないでください」

 「アランさん……!」

 「ふむ。だが、ネイトには悪いが、俺は少しだけ楽しみだな」

 「? と言いますと?」

 「俺の出身はロシアだからな。
 特に俺は寒冷地出身で、雪のふりしきる環境で暮らしてきた。
 だから、氷の惑星という響きには少し懐かしさを覚えてしまう」

 「そういえばこのチームには様々な出身地の人がいるのでしたよね。
 そうすると、熱帯地域出身のヒルくんやペペくんにとっては苦手な環境になるのでしょうか」

 「別にそうはならないんじゃないか?
 雪や氷を見慣れていないのはお前たちも同じだろ?
 気温的な問題が服でカバーできるのなら、問題は無いと思う」

 「確かにそうですね。
 そういえば、ラーラさんもクレートくんと同じロシア出身ですが、彼女も心を躍らせている可能性はあると?」

 「どうだろうな。俺はラーラとは特に話さないから確信は持てない。
 だが、雪国の人間は雪を好きになるものだ。順当にいけば少しは楽しみにしているだろうな」

 「なるほど。と、そろそろ到着のようです。時間もちょうどですね。流石です。
 ネイトくん、体調などは問題ありませんか?」

 「はい……今のところはなんとか……。
 緊張してきたぁ……」

 「では頑張りましょう。
 フロージアは目の前です」
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