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第45話
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裏に回れば何処かに開いているドアの一枚くらいありそうだったが、何せ建物は馬鹿デカい。時間も惜しくここを侵入口に決める。決めれば行動は早かった。
架空世界ということで霧島と京哉は二人揃って扉の上下の蝶番に遠慮なく銃をぶちかました。九ミリパラ二射ずつを叩き込んでおいて扉を蹴り飛ばし躍り込む。
霧島と京哉は背中合わせで構えた銃を四方へと向けた。そこは意外にしっかりと明るさで満ちていた。広い廊下の高い天井には蛍光灯が一定間隔で灯り、並んでいるのもセンサ付きの自動ドアである。外見と中身がそぐわなかったが、今はどうでもいいことだ。
「どっちに行くんですか?」
「そうだな、単純だが少なくともコンピュータのある部屋に行くことだ」
造りからいって、すぐ右のドアは正面ホールに出るためのものらしい。自動ドアだがロックされているようで霧島がセンサ感知しても開かなかった。無理にはこじ開けず廊下を振り返る。するとまるで誘いをかけているような部屋があった。京哉が薄く笑う。
「じゃあまずはそこからですね」
左側に数メートルのドアを京哉は指した。ドア上に『Computer room』とある。今度も霧島はぶち壊そうとしたが京哉に目顔で留められ、自動ドアの左右に二人して張り付いた。
二人はシグ・ザウエルのマガジンチェンジをして頷き合う。声を出さずに霧島がスリーカウントし、手を伸ばしてセンサ感知すると、すんなり自動ドアが開いた。
飛び込んで銃を構えたものの、そこにいたのがあまりに意外な人物だったため、二人の反応が遅れる。その人物、機捜の竹内一班長は愉しげに笑いながら霧島の左脚にシグ・ザウエルP230JPを向け、装填されていた三十二ACP弾五発を速射で全弾発射した。
「う……ぐっ!」
「そんな、忍さんっ!」
竹内警部補の頭を九ミリパラで砕いた京哉が霧島に縋り付く。
弱装の中口径弾五発とはいえ、まともに食らった霧島の左脚は大腿部からちぎれかけていた。勢いよく迸る血を止めようと京哉は自分が貧血を起こしながら両手で押さえたが、そんなことで止まる訳もなく……と、温かな血が見る間に止まる。
目を瞠った京哉の前で霧島の左脚は、映像を逆回ししたように元通りになっていた。
「何、どういうこと、これ?」
思わず京哉は自身の両手を見た。片手に銃を持ったままの手は霧島の血でべったりと濡れている。なのに霧島の脚には何処にも傷は残っていない。ゾンビに斬り付けられた傷さえも消えていた。スラックスの血痕や破れ目すら跡形もない。
「忍さん、どうやったんですか?」
「いい加減に遊ばれるのは飽きた。この世界のコツが掴めたのと、ウィザードもお疲れらしい。強く願えば変えられる世界というのも手軽すぎてつまらんものだな」
そう言いながら敵の仕掛けた電脳催眠術をぶち破った精神力を以てしても霧島の顔色は蒼白、被弾のショックがどれほどのものだったのかが伺える。
辺りは霧島の血で染まっている上に長身は小刻みに震えていて、京哉は霧島に肩を貸した。すると重みだけでなく高熱も感じられ、現実世界の霧島の躰を思って京哉は顔を曇らせた。
二人はコンピュータルーム内を見回す。
室内は明らかに普通ではなかった。何処まで続いているのか分からない白一色で塗り潰されている。影が一切なく、床と壁の境目もよく分からない。
そこについさっきまで二人が認識し得なかった椅子が一脚あり、髪の長い小さな人物が背を向け足をぶらぶらさせて座っていた。後ろ姿は青いワンピースを着た少女だ。
歩み寄った霧島と京哉は回り込んで少女に銃を向けた。ふと少女が顔を上げる。少女は瑞樹の顔をしてニヤリと嗤った。その顔がぐしゃぐしゃに歪み、一瞬後には老婆の顔で二人を見上げていた。霧島と京哉は同時にトリガを引いた。
今回こそ霧島も容赦はしない。
二人して腹にダブルタップを叩き込み、ヘッドショットを食らわせる。
椅子ごと小さな躰は吹っ飛んで斃れた。直後に白い部屋が崩壊し始める。まるで部屋の中心にブラックホールでも現れたかのように、壁が、世界が、音も風圧もなく内側に折れ込んでくる。どんどん折れ込んで、このままでは自分たちまで閉じ込められてしまう。
「逃げるぞ、京哉!」
「逃げるって、何処に!?」
何処にも逃げ場はなかった。霧島は京哉を手繰り寄せるときつく抱き締めた――。
ガクリと躰が前のめりになり、霧島は目を開いた。そこは紛れもなくノートルダムホテルの一〇二五号室だった。京哉と二人でソファに腰掛けている。
顔を見合わせた二人は耳に掛かったデバイスを毟り取って投げ捨てた。
架空世界ということで霧島と京哉は二人揃って扉の上下の蝶番に遠慮なく銃をぶちかました。九ミリパラ二射ずつを叩き込んでおいて扉を蹴り飛ばし躍り込む。
霧島と京哉は背中合わせで構えた銃を四方へと向けた。そこは意外にしっかりと明るさで満ちていた。広い廊下の高い天井には蛍光灯が一定間隔で灯り、並んでいるのもセンサ付きの自動ドアである。外見と中身がそぐわなかったが、今はどうでもいいことだ。
「どっちに行くんですか?」
「そうだな、単純だが少なくともコンピュータのある部屋に行くことだ」
造りからいって、すぐ右のドアは正面ホールに出るためのものらしい。自動ドアだがロックされているようで霧島がセンサ感知しても開かなかった。無理にはこじ開けず廊下を振り返る。するとまるで誘いをかけているような部屋があった。京哉が薄く笑う。
「じゃあまずはそこからですね」
左側に数メートルのドアを京哉は指した。ドア上に『Computer room』とある。今度も霧島はぶち壊そうとしたが京哉に目顔で留められ、自動ドアの左右に二人して張り付いた。
二人はシグ・ザウエルのマガジンチェンジをして頷き合う。声を出さずに霧島がスリーカウントし、手を伸ばしてセンサ感知すると、すんなり自動ドアが開いた。
飛び込んで銃を構えたものの、そこにいたのがあまりに意外な人物だったため、二人の反応が遅れる。その人物、機捜の竹内一班長は愉しげに笑いながら霧島の左脚にシグ・ザウエルP230JPを向け、装填されていた三十二ACP弾五発を速射で全弾発射した。
「う……ぐっ!」
「そんな、忍さんっ!」
竹内警部補の頭を九ミリパラで砕いた京哉が霧島に縋り付く。
弱装の中口径弾五発とはいえ、まともに食らった霧島の左脚は大腿部からちぎれかけていた。勢いよく迸る血を止めようと京哉は自分が貧血を起こしながら両手で押さえたが、そんなことで止まる訳もなく……と、温かな血が見る間に止まる。
目を瞠った京哉の前で霧島の左脚は、映像を逆回ししたように元通りになっていた。
「何、どういうこと、これ?」
思わず京哉は自身の両手を見た。片手に銃を持ったままの手は霧島の血でべったりと濡れている。なのに霧島の脚には何処にも傷は残っていない。ゾンビに斬り付けられた傷さえも消えていた。スラックスの血痕や破れ目すら跡形もない。
「忍さん、どうやったんですか?」
「いい加減に遊ばれるのは飽きた。この世界のコツが掴めたのと、ウィザードもお疲れらしい。強く願えば変えられる世界というのも手軽すぎてつまらんものだな」
そう言いながら敵の仕掛けた電脳催眠術をぶち破った精神力を以てしても霧島の顔色は蒼白、被弾のショックがどれほどのものだったのかが伺える。
辺りは霧島の血で染まっている上に長身は小刻みに震えていて、京哉は霧島に肩を貸した。すると重みだけでなく高熱も感じられ、現実世界の霧島の躰を思って京哉は顔を曇らせた。
二人はコンピュータルーム内を見回す。
室内は明らかに普通ではなかった。何処まで続いているのか分からない白一色で塗り潰されている。影が一切なく、床と壁の境目もよく分からない。
そこについさっきまで二人が認識し得なかった椅子が一脚あり、髪の長い小さな人物が背を向け足をぶらぶらさせて座っていた。後ろ姿は青いワンピースを着た少女だ。
歩み寄った霧島と京哉は回り込んで少女に銃を向けた。ふと少女が顔を上げる。少女は瑞樹の顔をしてニヤリと嗤った。その顔がぐしゃぐしゃに歪み、一瞬後には老婆の顔で二人を見上げていた。霧島と京哉は同時にトリガを引いた。
今回こそ霧島も容赦はしない。
二人して腹にダブルタップを叩き込み、ヘッドショットを食らわせる。
椅子ごと小さな躰は吹っ飛んで斃れた。直後に白い部屋が崩壊し始める。まるで部屋の中心にブラックホールでも現れたかのように、壁が、世界が、音も風圧もなく内側に折れ込んでくる。どんどん折れ込んで、このままでは自分たちまで閉じ込められてしまう。
「逃げるぞ、京哉!」
「逃げるって、何処に!?」
何処にも逃げ場はなかった。霧島は京哉を手繰り寄せるときつく抱き締めた――。
ガクリと躰が前のめりになり、霧島は目を開いた。そこは紛れもなくノートルダムホテルの一〇二五号室だった。京哉と二人でソファに腰掛けている。
顔を見合わせた二人は耳に掛かったデバイスを毟り取って投げ捨てた。
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