13 / 53
第13話
しおりを挟む
「ううう、暑さばっかり考えてて、砂漠の夜を忘れてましたよ」
「氷点近い気がするな。零時十四分、この分ではまだ下がるかも知れん」
霧島と京哉は凹凸のある地面を歩きながら寒さに肩を震わせた。
「そうね。今の時期は日の出の五時頃まで、もっと下がるわよ」
寒さにも慣れているらしいユーリンは、着古したワークシャツに作業服の上下、肩から袈裟懸けにした布だけでも平気そうである。
日本も同じく冬だというのに忙しさでコートすら忘れていた二人は非常な後悔をしつつ、前回来た時と同じくプレハブのような二階建て空港施設に向かって身を縮めながら歩いた。辿り着くと砂の浮いた外階段を上がる。
階段の途中で足を止め、前回はなかった明かりを眺めた。そちらも負けないくらいカネの掛かっていない簡易建築は紛れもなく軍のものである。
「まだ国連平和維持軍・PKFは駐留してるんですね」
「ええ、撤退はしていないわ。街なかの第一を中心に第二、第三、第四駐屯地に分かれて目を光らせてる。でもあの頃に比べれば三分の一に減ったって話よ」
残りの階段を上がって到着した空港施設で入国審査をクリアし三人は空港を出た。
「うーっ、やっぱり寒い! コートを忘れたのは不覚でしたよ」
「早く街に行かんと薄っぺらなお前が凍ってしまうぞ」
そこで思い出して京哉がショルダーバッグから布を出す。細かい模様をろうけつ染めにした青系のものを霧島に渡した。自分は緑系の布を肩に巻きつける。だが布一枚で寒さまでは防げず、ボーッとしていると本当に凍ってしまうので行動開始した。
歩いてもたった四十分という情報を鵜呑みにし、前回はここでエラい目に遭ったので、今回は迷わずタクシーを使う。
何台か停められたタクシーはどれも相当な年代物でボディがボコボコに凹み、シートは海草のように裂けて緩衝材を飛び出させていたが背に腹は代えられない。なるべくマシな一台を選んで三人は乗り込んだ。
しかしタクシーにドライバーは乗っていない。客自身がドライバーを務めるというユニークなシステムなのだ。機器に十ドル札を一枚入れて五キロ走るらしい。
早速札を入れて霧島がステアリングを握った。街までは日干しレンガで出来た一本道なので迷う心配はない。走り出すと遠くにちらほらと灯りも見える。
外灯はごくたまにしか立っていなかったが、星明かりでレンガの道の左右にうねる砂のシルエットが浮かび、タクシー内の砂埃の匂いと共に霧島は懐かしい思いに駆られた。
道路を形作る日干しレンガの凹凸をタイヤが拾い、低速で走らせるタクシーはガタガタ揺れる。窓外には時折レンガで出来た小屋があった。前回は突然砂嵐に遭遇し、この待避小屋に命からがら飛び込んで事なきを得たのだ。そんなことでさえ二人には懐かしい。
「ところでユーリンは何処に住んでるんですか?」
「わたしはバルトさんって家にお世話になってるの」
「バルトって、もしかしてクリフ、クリフォードがいる家ではないのか?」
「クリフを知ってるの?」
「クリフは処刑場で刑吏に石を投げた蛮勇、いえ、勇者だったんです。僕らがつれて逃げて刑吏を撒いたのはいいけれど、逆に『あんたら、どうするんだ』って怒って。そのあと食事のお世話にもなった上に、反政府武装勢力に協力的な村に案内して貰ったんですよ。その村でユーリンたちのグループに紹介して貰ったんです」
「ふうん、そうだったの」
運転する霧島はルームミラーで、京哉は振り向いてユーリンの浮かない顔を見る。
「せっかく帰ってきたのに元気がないが、どうかしたのか?」
「だって……黙って何日も留守にしちゃったから」
「黙って出てきちゃったんですか?」
おまけに若い娘が夜中の帰還である。それは気の重いことだろう。
「『内緒にしてね』って、クリフだけには言ったんだけど」
「うーん、それは素直に謝るしかないでしょうね」
「他のメンバーは何処に住んでいるんだ?」
「旧政権が崩壊して新大統領選の結果が出てから、随分と沢山の役人が国外に逃げ出したの。民衆が恐怖政治への報復をするんじゃないかって思い込んでね。だから街には空いた部屋も結構あって、周りの勧めでそこに分散して住んでるわ」
「新大統領、ハミッシュたちもか?」
「ええ。前大統領の親衛隊だった第一駐屯地と大統領官邸は敷地が一緒で、今は国連平和維持軍に封鎖されてて使えないから。議会は学校を間借りしてるわ」
そんな話をしているうちに外の風が強まってきた。歪んだドアから砂粒が吹き込んでくる。パラパラと痛いような音がしてボディに砂が当たり、風がごうごうと唸りだした。タクシーのヘッドライトも利かなくなり、あっという間に街の灯りも見えなくなる。
「砂嵐だわ、タクシーで良かった」
「止めた方が良くないでしょうか?」
もう路肩も何も分からなくなった日干しレンガの道に霧島はタクシーを停めた。
「ちょっとこれ、ドアの隙間の風が痛いんですけど!」
「布で押さえておけ、一時間もすれば収まる!」
「それまでに擦り切れちゃいますよ!」
風の唸りはすさまじく、タクシー内でさえ大声でなければ会話が成立しないくらいだ。三人の重みがなければタクシーも転がってゆくのではないかと思われる。
「こんな派手な歓迎をされるほど、日頃の行いの悪い人は誰ですか!」
「京哉、お前が女性の胸ばかり見ているからだ!」
「いつの話をしてるんですか! ユーリン、誤解です、そんな目で見ないで!」
そんな激しい砂嵐も今回は小規模だったらしく、三十分ほどで唐突に止んだ。道は砂に浸食されていたが街の灯りも復活し、再び霧島はタクシーを走らせ始める。
「何だかもう身体中、砂っぽい気がしますよ」
顔をしかめた京哉はスーツを手で払った。
ユーリン曰く、街の中まで車を乗り入れたりしないということで、街の入り口近くまでくるとタクシーを降りた。乗り捨てたタクシーはどうなるのだろうと心配しつつ、京哉はユーリンに続いて霧島と並び歩き始める。
左側には長く続くレンガの塀があり、内部には大小幾つものプレハブのような簡易建築が建ち並んで灯りに照らされている。プラーグ第二駐屯地だ。
街の中心に第一、入り口に第二、南の側面に第三、出口に第四駐屯地が配置されていて、兵士は街の護りだけでなく警察の職務も兼ねていた。故にこのプラーグに警察官という職業は存在しない。
数十メートルも行かないうちに塀は一旦途切れ、小屋と二人の兵士が立っていた。
元は現地採用者ばかりだったが、今は国連平和維持軍の精鋭がまとめているという駐屯地の立哨は、前回訪れた時のように二人を眺めるだけで通過させず、ヘッケラー&コッホ社製サブマシンガンのMP5を威嚇的に向けて三人に誰何した。
「止まれ! よその人間も混ざってるな。何者だ?」
サブマシンガンを構えた兵士二名に逆らっても、それほどいいことはなさそうである。霧島と京哉は各国政府が発行した武器所持許可証を一枚一枚見せて読み上げさせただけでなく、以前来た際に当時の政府の協力を得るため渡されていた、国連査察団先遣隊員の身分証までショルダーバッグの底から掘り起こして兵士に翳した。
この身分証は他の特別任務でも何度か使用していて、当然ながらパチもんである。
「日本国の霧島二尉と鳴海二尉でありますか。失礼致しました、お通り下さい!」
嘘こいて気分良く通らせて貰う。
夜中で砂嵐の直後ということもあり街は人の気配が殆どなかった。布を被った人影に二度行き会っただけ、あとは兵士が二人組でサブマシンガンを提げて巡回している程度だ。彼らにも国連云々の身分証を見せながら霧島と京哉は歩く。
五年もの暗殺スナイパー生活で周囲の目を眩ませてきた京哉はともかく最近は霧島までもがこの手の嘘に耐性がついてしまっていた。
尤も霧島は嘘を吐くことには慣れていないがホラを吹くのは得意なのだ。経営者として上に立つ者の血かも知れない。
「氷点近い気がするな。零時十四分、この分ではまだ下がるかも知れん」
霧島と京哉は凹凸のある地面を歩きながら寒さに肩を震わせた。
「そうね。今の時期は日の出の五時頃まで、もっと下がるわよ」
寒さにも慣れているらしいユーリンは、着古したワークシャツに作業服の上下、肩から袈裟懸けにした布だけでも平気そうである。
日本も同じく冬だというのに忙しさでコートすら忘れていた二人は非常な後悔をしつつ、前回来た時と同じくプレハブのような二階建て空港施設に向かって身を縮めながら歩いた。辿り着くと砂の浮いた外階段を上がる。
階段の途中で足を止め、前回はなかった明かりを眺めた。そちらも負けないくらいカネの掛かっていない簡易建築は紛れもなく軍のものである。
「まだ国連平和維持軍・PKFは駐留してるんですね」
「ええ、撤退はしていないわ。街なかの第一を中心に第二、第三、第四駐屯地に分かれて目を光らせてる。でもあの頃に比べれば三分の一に減ったって話よ」
残りの階段を上がって到着した空港施設で入国審査をクリアし三人は空港を出た。
「うーっ、やっぱり寒い! コートを忘れたのは不覚でしたよ」
「早く街に行かんと薄っぺらなお前が凍ってしまうぞ」
そこで思い出して京哉がショルダーバッグから布を出す。細かい模様をろうけつ染めにした青系のものを霧島に渡した。自分は緑系の布を肩に巻きつける。だが布一枚で寒さまでは防げず、ボーッとしていると本当に凍ってしまうので行動開始した。
歩いてもたった四十分という情報を鵜呑みにし、前回はここでエラい目に遭ったので、今回は迷わずタクシーを使う。
何台か停められたタクシーはどれも相当な年代物でボディがボコボコに凹み、シートは海草のように裂けて緩衝材を飛び出させていたが背に腹は代えられない。なるべくマシな一台を選んで三人は乗り込んだ。
しかしタクシーにドライバーは乗っていない。客自身がドライバーを務めるというユニークなシステムなのだ。機器に十ドル札を一枚入れて五キロ走るらしい。
早速札を入れて霧島がステアリングを握った。街までは日干しレンガで出来た一本道なので迷う心配はない。走り出すと遠くにちらほらと灯りも見える。
外灯はごくたまにしか立っていなかったが、星明かりでレンガの道の左右にうねる砂のシルエットが浮かび、タクシー内の砂埃の匂いと共に霧島は懐かしい思いに駆られた。
道路を形作る日干しレンガの凹凸をタイヤが拾い、低速で走らせるタクシーはガタガタ揺れる。窓外には時折レンガで出来た小屋があった。前回は突然砂嵐に遭遇し、この待避小屋に命からがら飛び込んで事なきを得たのだ。そんなことでさえ二人には懐かしい。
「ところでユーリンは何処に住んでるんですか?」
「わたしはバルトさんって家にお世話になってるの」
「バルトって、もしかしてクリフ、クリフォードがいる家ではないのか?」
「クリフを知ってるの?」
「クリフは処刑場で刑吏に石を投げた蛮勇、いえ、勇者だったんです。僕らがつれて逃げて刑吏を撒いたのはいいけれど、逆に『あんたら、どうするんだ』って怒って。そのあと食事のお世話にもなった上に、反政府武装勢力に協力的な村に案内して貰ったんですよ。その村でユーリンたちのグループに紹介して貰ったんです」
「ふうん、そうだったの」
運転する霧島はルームミラーで、京哉は振り向いてユーリンの浮かない顔を見る。
「せっかく帰ってきたのに元気がないが、どうかしたのか?」
「だって……黙って何日も留守にしちゃったから」
「黙って出てきちゃったんですか?」
おまけに若い娘が夜中の帰還である。それは気の重いことだろう。
「『内緒にしてね』って、クリフだけには言ったんだけど」
「うーん、それは素直に謝るしかないでしょうね」
「他のメンバーは何処に住んでいるんだ?」
「旧政権が崩壊して新大統領選の結果が出てから、随分と沢山の役人が国外に逃げ出したの。民衆が恐怖政治への報復をするんじゃないかって思い込んでね。だから街には空いた部屋も結構あって、周りの勧めでそこに分散して住んでるわ」
「新大統領、ハミッシュたちもか?」
「ええ。前大統領の親衛隊だった第一駐屯地と大統領官邸は敷地が一緒で、今は国連平和維持軍に封鎖されてて使えないから。議会は学校を間借りしてるわ」
そんな話をしているうちに外の風が強まってきた。歪んだドアから砂粒が吹き込んでくる。パラパラと痛いような音がしてボディに砂が当たり、風がごうごうと唸りだした。タクシーのヘッドライトも利かなくなり、あっという間に街の灯りも見えなくなる。
「砂嵐だわ、タクシーで良かった」
「止めた方が良くないでしょうか?」
もう路肩も何も分からなくなった日干しレンガの道に霧島はタクシーを停めた。
「ちょっとこれ、ドアの隙間の風が痛いんですけど!」
「布で押さえておけ、一時間もすれば収まる!」
「それまでに擦り切れちゃいますよ!」
風の唸りはすさまじく、タクシー内でさえ大声でなければ会話が成立しないくらいだ。三人の重みがなければタクシーも転がってゆくのではないかと思われる。
「こんな派手な歓迎をされるほど、日頃の行いの悪い人は誰ですか!」
「京哉、お前が女性の胸ばかり見ているからだ!」
「いつの話をしてるんですか! ユーリン、誤解です、そんな目で見ないで!」
そんな激しい砂嵐も今回は小規模だったらしく、三十分ほどで唐突に止んだ。道は砂に浸食されていたが街の灯りも復活し、再び霧島はタクシーを走らせ始める。
「何だかもう身体中、砂っぽい気がしますよ」
顔をしかめた京哉はスーツを手で払った。
ユーリン曰く、街の中まで車を乗り入れたりしないということで、街の入り口近くまでくるとタクシーを降りた。乗り捨てたタクシーはどうなるのだろうと心配しつつ、京哉はユーリンに続いて霧島と並び歩き始める。
左側には長く続くレンガの塀があり、内部には大小幾つものプレハブのような簡易建築が建ち並んで灯りに照らされている。プラーグ第二駐屯地だ。
街の中心に第一、入り口に第二、南の側面に第三、出口に第四駐屯地が配置されていて、兵士は街の護りだけでなく警察の職務も兼ねていた。故にこのプラーグに警察官という職業は存在しない。
数十メートルも行かないうちに塀は一旦途切れ、小屋と二人の兵士が立っていた。
元は現地採用者ばかりだったが、今は国連平和維持軍の精鋭がまとめているという駐屯地の立哨は、前回訪れた時のように二人を眺めるだけで通過させず、ヘッケラー&コッホ社製サブマシンガンのMP5を威嚇的に向けて三人に誰何した。
「止まれ! よその人間も混ざってるな。何者だ?」
サブマシンガンを構えた兵士二名に逆らっても、それほどいいことはなさそうである。霧島と京哉は各国政府が発行した武器所持許可証を一枚一枚見せて読み上げさせただけでなく、以前来た際に当時の政府の協力を得るため渡されていた、国連査察団先遣隊員の身分証までショルダーバッグの底から掘り起こして兵士に翳した。
この身分証は他の特別任務でも何度か使用していて、当然ながらパチもんである。
「日本国の霧島二尉と鳴海二尉でありますか。失礼致しました、お通り下さい!」
嘘こいて気分良く通らせて貰う。
夜中で砂嵐の直後ということもあり街は人の気配が殆どなかった。布を被った人影に二度行き会っただけ、あとは兵士が二人組でサブマシンガンを提げて巡回している程度だ。彼らにも国連云々の身分証を見せながら霧島と京哉は歩く。
五年もの暗殺スナイパー生活で周囲の目を眩ませてきた京哉はともかく最近は霧島までもがこの手の嘘に耐性がついてしまっていた。
尤も霧島は嘘を吐くことには慣れていないがホラを吹くのは得意なのだ。経営者として上に立つ者の血かも知れない。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる