砂中で咲く石Ⅱ~Barter.13~

志賀雅基

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第41話

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 こういった時に京哉は精神的にタフで、そして警察官であっても日本人としてはやはり心が壊れ気味だと評するしかないのだろうと霧島は思わされる。
 だが元々ソシオパスでもないのは付き合いの深さで分かっていた。しかし命令で三十余名も殺して回れば壊れない方がおかしい。

 それでも霧島は口にこそ出さないが、京哉が幾ら殺人慣れしようが構わず愛し続けられると強く思ってもいた。何故なら京哉が単なるキルマシンではないのも知っているからだ。ときに誰よりも優しく人間的な面を見せるが、きっとそれが鳴海京哉の本質である。

 皆が笑っているうちにバイヨルから携帯連絡が入った。直後に物音と呻き声が聞こえだす。五人までカウントし、あとは分からなくなった。皆で頷き合い死角から空き地に飛び出す。

 いきなり目が合ったラッセルに京哉はダブルタップ、逃げようとしたか三メートルほど後退した男にヘッドショット。ためらいないモザンビークドリルでラッセルは絶命した。

 その間に辺りに立っていた敵は斃れ伏していた。

 ミサイル工場の一棟に皆で駆け出す。意外にも自動ドアは難なく開いた。ドアの両側に張り付いた霧島と京哉が銃を構えて同時に飛び込む。人影が二。撃とうとした途端に後方からシュルシュルと異音がして咄嗟に霧島は京哉を庇い胸に抱く。

 擦れるような金属音ののち、作りかけの核ミサイルの胴体中央が爆発し中にいたグレイの制服は二人とも破片に引き裂かれている。音で耳がおかしくなりかけた霧島と京哉が振り返るとRPG発射筒を投げ捨てたレズリーが笑っていた。

「笑い事じゃないだろう、発射するなら一言くらい声を掛けろ!」
「いや、こいつが役に立つと思ったら急に撃ちたくなっちまって」

 溜息をついて二棟目の工場に移る。ここから先は誰も内部を見ていなかったが、ここも自動ドアはセンサ感知で開いた。中を覗いたがここには人もいなかった。

「僻地で人員招集も間に合わなかったのか」

 中に踏み入ると霧島は出来上がりかけたミサイルの腹に向け無造作にトリガを引いた。皆も参加して曲を描く金属板に穴を開ける。都合銃弾十発ほどでそれぞれが人の頭ほどの穴を作り、ついでに蹴りまで入れた。霧島と京哉を先頭に残る三棟目に移動した。

 ここまできたら作戦自体は成功したも同然、だが敵が隠れている可能性は残っている。そう思って霧島が用心しつつセンサ感知して開いたドアの内側には、今度こそ人影が銃を構えていた。
 気配に気付いて瞬時に全員が銃口を向けたが、いち早く工場内の暗さに目の慣れた霧島が敵の正体に気付いてその銃だけを撃ち飛ばす。

 その男はどう見ても貧しい村人だったのだ。ほつれた作業着を着けた全身を恐怖に震わせていた。レズリーが頷いてやると無言で外に駆け出してゆく。カネで雇われたのだろうが人を殺す仕事だとは思っていなかったのかも知れない。

 カネと引き換えに銃まで渡されて逃れようもなかったのか。それでも殺傷兵器を手にしたまま隠れていたのだ。急進派の思想に賛同した風でもなく、かといって怯え方は本物だった。考えつつ霧島は何となくすっきりしない思いで最後のミサイルに銃を向ける。

 五発、六発とサボタージュを繰り返していたとき、聞き覚えた銃声とは違う音がして反射的に霧島は振り向いた。
 十二、三歳の痩せた女の子が両手に銃を持ったまま、ミサイルの尾翼の陰で尻餅をついている。同時に京哉が血飛沫を上げて吹っ飛ぶのが目に映った。
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