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第1話
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県警本部庁舎で二階への階段を駆け上りながら京哉が喚いた。
「遅刻ですよ、遅刻! ったく、忍さんが悪いんですからね!」
「私に何度謝らせれば気が済むんだ、すまんすまんすまん!」
「そんな心のこもっていない『すまん』なんか要りませんっ!」
朝っぱらからずっと喚かれて霧島も眉間に不機嫌を溜めつつ、ようやく辿り着いた機動捜査隊・通称機捜のドアの前で小柄な京哉が追い付いてくるのを待った。
息を切らしている京哉と向かい合うと霧島は京哉の髪を指で梳く。既に服務規程に引っかかるくらい伸びてしまっているので目立たないよう撫でつけてやった。
長身故に少々屈むと京哉は背伸びして霧島のタイの歪みを直してくれる。
そうして京哉がメタルフレームの伊達眼鏡をかけ直すと霧島は頷いた。
「気にするな、タイムカードなんぞないのだからな」
「気にするしないの問題じゃありません。平日の朝っぱらから誰かさんが寝ている僕にちょっかい出すから。準強制性交罪で懲役五年以上執行猶予ナシですよっ!」
「分かった、分かったから出勤だ。鳴海巡査部長、行くぞ」
「はい、霧島警視」
詰め所のドアを開けると霧島隊長の姿を認めて隊員たちが身を折る敬礼をした。彼らにラフな挙手敬礼で応えながら遅刻したことなどおくびにも出さず、霧島は涼しい顔で手にしていたコートをコートハンガーに掛けると自分のデスクに就く。
隣から副隊長の小田切警部がもの言いたげな視線を寄越したが何処吹く風だ。
一方で京哉は自分のデスクにコートを放り出して給湯室に駆け込む。お茶汲みも秘書たる京哉の大事な仕事だ。幸い沸かし直さなくても電気ポットは満タンで、トレイに湯呑みを並べて茶を淹れると在庁者に配り歩く。
この時間帯は昨日上番して今朝下番する班と、本日上番する班の隊員らが集まっているので人数も多い。三往復して茶を配り終え、自分の席に就いてノートパソコンを起動しながら煙草を咥えた。
オイルライターで火を点けて至福の一服にありつきながら眺め渡すと、小田切が隊員たちの交代に立ち会っている。大概ふざけた言動をする男で異動してきた当初は悩まされたものだが、最近は副隊長としての仕事も板についてきたようだ。
しかし未だに隊長も副隊長も秘書たる京哉が見張っていないと通常業務をすぐサボる。そもそも隊長である霧島の口癖が『書類は腐らん』なのだ。
妙に静かだと思えばこっそり二人でゲーム麻雀対戦していたり、空戦ゲームに嵌っていたり、隊長はメニューレシピを検索していたり、副隊長は居眠りしていたりで京哉は気が抜けない。
小田切が戻ってくるなり京哉は本日の書類仕事を督促メールが来た順に隊長と副隊長に振り分け、それぞれのノートパソコンに容赦なく送り付けた。煙草を消して景気のいい声を張り上げ二人の上司に活を入れる。
「さあて、本日は週末ですからね。今週の仕事は今週中に終わらせましょう!」
機捜隊員は普通の刑事と違い二十四時間交代という過酷な勤務体制で、私服に覆面パトカーで密行警邏し、殺しや強盗に放火その他の凶悪犯罪が起きた際に、いち早く駆けつけて初動捜査に当たるのが職務だ。
けれど隊長に副隊長とその秘書は通常は内勤であり定時出勤・定時退庁する毎日で大事件でも起こらない限りは土日祝日も休みである。
明日からの連休を糧に、京哉は上司に任せていては到底間に合わない書類の代書に取り掛かった。異動してきた当初は警視である隊長の書類の代書など拙いのではないかと非常な抵抗があったが、すぐに遠慮している場合ではないと思い知らされた。
そんな真面目で律儀な性格の鳴海京哉は二十四歳の巡査部長二年生である。
機捜隊員でありながらスペシャル・アサルト・チーム、いわゆるSATの非常勤狙撃班員でもあった。県警本部長から直々に指名を受けて狙撃班員になったのは、京哉が元々スナイパーだったからだ。
警察官とはいえ無論合法ではない。陥れられていたのである。
女手ひとつで育ててくれた母を高二の冬に犯罪被害者として亡くし、天涯孤独の身になり大学進学を諦めて警察学校を受験した。だがその入校中に抜きんでた射撃の腕に目を付けられた。警察学校を卒業し配属寸前に呼び出されて囁かれたのである。
ずっと以前に亡くなったお前の父は生前に強盗殺人を犯していたと。
勿論、それは顔も見たことのない父に掛けられた冤罪、いや、罪の捏造だった。しかしそれを証明するすべはなく京哉は嵌った。
挙げ句、与党重鎮と警察庁上層部の一部に巨大総合商社の霧島カンパニーが組織した暗殺肯定派の実行役として、本業の警察官をする傍ら五年間も産業スパイや政敵の暗殺に従事させられていたのである。
結局は霧島と出会って心を決め『知り過ぎた男』として消されるのを覚悟でスナイパー引退宣言をした。案の定殺されそうになったが間一髪で霧島が機捜の部下を率いて飛び込んできてくれて命を存えたのだ。
そのあと京哉が暗殺スナイパーだった事実は警察の総力を以て隠蔽されたために今はこうしていられる。だが京哉は自分が撃ち砕いてきた人々を決して忘れない。忘れられなかった。
心に多数の墓標を立ててしまった京哉はお蔭で心の一部が壊れ気味でもある。でも相棒で一生涯のパートナーを誓い合った霧島も共に背負うと言い、決して言葉を違わず実践してくれているうちに徐々に癒されてきた気がしていた。
それに最近は自分なんかより霧島の方が心配な京哉である。京哉を助けた件で霧島は独断で機捜を動かしたことを咎められ、当時の県警本部長が暗殺肯定派だったため異例なまでに厳しい減給と停職のダブル懲戒処分を食らってしまったのだ。
普通は懲戒を食らうと以降の昇任が不可能になるので皆が依願退職する。
しかし霧島は辞めなかった。
何故なら京哉と出会って暗殺スナイパーなる事実を知ってから、暗殺肯定派の一斉検挙を目論み成功させ、更に県警本部長を実質的に辞任に追い込み、新本部長に暗殺反対派の急先鋒だった人物を迎えるまでの全てが、霧島独りで画策し描いたシナリオ通りだったからである。
恐るべき計算能力だった。
だが霧島自身が懲戒を食らって犠牲になったのも事実で京哉は凹んだが、あれ以来サッチョウ上層部とある意味パイプのできた京哉と霧島は特別任務と称し、たびたび命令を下されてはロクでもない仕事に就かされるようになった。
それは却って上層部の秘密をより多く握ることにもなり、霧島の昇任不可能はチャラになったも同然である。
けれど問題は特別任務が通常の捜査とはかけ離れた案件ばかりだということだ。その中で殺さなければ殺されるというシチュエーションに何度も遭遇し、仕方なく人を殺めてきていた。
京哉としては自分はともかく正義感の塊である霧島にそんなことはさせたくなかったが、霧島自身も納得した以上、全てを二人で背負ってゆくしかない。
とにかく特別任務は常に出たとこ勝負のイレギュラー満載で、霧島でさえ先が全く読めず毎回難儀なのだ。
前回も殆ど戦争だったよなあ、喩えじゃなく……と思い返す京哉はスナイパー時代に自分を目立たなくするためのアイテムだった伊達眼鏡を押し上げつつ、チラリと隊長席に目をやる。
霧島は片手で書類を捲りながら片手でペンを弄んでいた。その左薬指に京哉とお揃いのプラチナのリングが嵌っている。
あの長い指が今朝、自分の体内で蠢いた感触を甦らせて京哉は頬に血を上らせた。
「鳴海、どうした、顔が赤いぞ。風邪でも引いたのか?」
「あっ、えっ、何でもありません」
否定したが霧島はハーフの生みの母譲りの灰色の目を心配げに向けてくる。
何より誰より京哉が愛しく大切で堪らない霧島忍は二十八歳だ。この若さで警視という階級にあり機動捜査隊長を拝命しているのは、最難関の国家公務員総合職試験を突破したキャリアだからである。更には霧島カンパニー会長の御曹司でもあった。
京哉が暗殺されそうになった件で霧島カンパニーはメディアに叩かれ、株価が暴落して窮地に陥ったが、数ヶ月間を耐え抜いて持ち直し今は上昇傾向にある。
故に警察を辞めたら霧島カンパニー本社社長の椅子が待っているのだが、本人は現場のノンキャリア組を背負ってゆくことを何よりも望み、辞める気は欠片もない。
それどころか実父の霧島会長を毛嫌いし、滅多に他人を悪罵しないのに父親だけはクソ親父呼ばわりである。おまけに裏での悪事の証拠さえ掴めたら逮捕も辞さないと明言していた。京哉の方が霧島会長を御前と呼んで親しんでいるくらいだ。
そんな霧島は意思に反してクソ親父と取引するハメに陥り、会長や本社社長の名代として時折パーティー等に急遽強制参加させられるため、対応可能な衣装という意味で普段からオーダーメイドスーツを着用している。
高級スーツに長身を包み颯爽とした姿は一見スリムで、顔立ちは切れ長の目が涼しく怜悧さを感じさせるほど端正だった。
更にはあらゆる武道の全国大会で優勝を飾っているという、眉目秀麗・文武両道を地でゆく、他人から見たら非常に恵まれた男である。
お蔭で『県警本部版・抱かれたい男ランキング』ではここ数期連続してトップを独走していた。
だが元から霧島は同性愛者でその事実を隠してもいない。お蔭で京哉としては安堵していられる結果となっている。
それどころか最近は『抱かれたい男ランキング』で京哉が票を伸ばしてしまい、警務部や総務部の婦警たちが『鳴海京哉巡査部長を護る会』までこさえては会員数を増やしたりで、霧島に勘繰られては機嫌を取るのが大変になってきたのだ。
「遅刻ですよ、遅刻! ったく、忍さんが悪いんですからね!」
「私に何度謝らせれば気が済むんだ、すまんすまんすまん!」
「そんな心のこもっていない『すまん』なんか要りませんっ!」
朝っぱらからずっと喚かれて霧島も眉間に不機嫌を溜めつつ、ようやく辿り着いた機動捜査隊・通称機捜のドアの前で小柄な京哉が追い付いてくるのを待った。
息を切らしている京哉と向かい合うと霧島は京哉の髪を指で梳く。既に服務規程に引っかかるくらい伸びてしまっているので目立たないよう撫でつけてやった。
長身故に少々屈むと京哉は背伸びして霧島のタイの歪みを直してくれる。
そうして京哉がメタルフレームの伊達眼鏡をかけ直すと霧島は頷いた。
「気にするな、タイムカードなんぞないのだからな」
「気にするしないの問題じゃありません。平日の朝っぱらから誰かさんが寝ている僕にちょっかい出すから。準強制性交罪で懲役五年以上執行猶予ナシですよっ!」
「分かった、分かったから出勤だ。鳴海巡査部長、行くぞ」
「はい、霧島警視」
詰め所のドアを開けると霧島隊長の姿を認めて隊員たちが身を折る敬礼をした。彼らにラフな挙手敬礼で応えながら遅刻したことなどおくびにも出さず、霧島は涼しい顔で手にしていたコートをコートハンガーに掛けると自分のデスクに就く。
隣から副隊長の小田切警部がもの言いたげな視線を寄越したが何処吹く風だ。
一方で京哉は自分のデスクにコートを放り出して給湯室に駆け込む。お茶汲みも秘書たる京哉の大事な仕事だ。幸い沸かし直さなくても電気ポットは満タンで、トレイに湯呑みを並べて茶を淹れると在庁者に配り歩く。
この時間帯は昨日上番して今朝下番する班と、本日上番する班の隊員らが集まっているので人数も多い。三往復して茶を配り終え、自分の席に就いてノートパソコンを起動しながら煙草を咥えた。
オイルライターで火を点けて至福の一服にありつきながら眺め渡すと、小田切が隊員たちの交代に立ち会っている。大概ふざけた言動をする男で異動してきた当初は悩まされたものだが、最近は副隊長としての仕事も板についてきたようだ。
しかし未だに隊長も副隊長も秘書たる京哉が見張っていないと通常業務をすぐサボる。そもそも隊長である霧島の口癖が『書類は腐らん』なのだ。
妙に静かだと思えばこっそり二人でゲーム麻雀対戦していたり、空戦ゲームに嵌っていたり、隊長はメニューレシピを検索していたり、副隊長は居眠りしていたりで京哉は気が抜けない。
小田切が戻ってくるなり京哉は本日の書類仕事を督促メールが来た順に隊長と副隊長に振り分け、それぞれのノートパソコンに容赦なく送り付けた。煙草を消して景気のいい声を張り上げ二人の上司に活を入れる。
「さあて、本日は週末ですからね。今週の仕事は今週中に終わらせましょう!」
機捜隊員は普通の刑事と違い二十四時間交代という過酷な勤務体制で、私服に覆面パトカーで密行警邏し、殺しや強盗に放火その他の凶悪犯罪が起きた際に、いち早く駆けつけて初動捜査に当たるのが職務だ。
けれど隊長に副隊長とその秘書は通常は内勤であり定時出勤・定時退庁する毎日で大事件でも起こらない限りは土日祝日も休みである。
明日からの連休を糧に、京哉は上司に任せていては到底間に合わない書類の代書に取り掛かった。異動してきた当初は警視である隊長の書類の代書など拙いのではないかと非常な抵抗があったが、すぐに遠慮している場合ではないと思い知らされた。
そんな真面目で律儀な性格の鳴海京哉は二十四歳の巡査部長二年生である。
機捜隊員でありながらスペシャル・アサルト・チーム、いわゆるSATの非常勤狙撃班員でもあった。県警本部長から直々に指名を受けて狙撃班員になったのは、京哉が元々スナイパーだったからだ。
警察官とはいえ無論合法ではない。陥れられていたのである。
女手ひとつで育ててくれた母を高二の冬に犯罪被害者として亡くし、天涯孤独の身になり大学進学を諦めて警察学校を受験した。だがその入校中に抜きんでた射撃の腕に目を付けられた。警察学校を卒業し配属寸前に呼び出されて囁かれたのである。
ずっと以前に亡くなったお前の父は生前に強盗殺人を犯していたと。
勿論、それは顔も見たことのない父に掛けられた冤罪、いや、罪の捏造だった。しかしそれを証明するすべはなく京哉は嵌った。
挙げ句、与党重鎮と警察庁上層部の一部に巨大総合商社の霧島カンパニーが組織した暗殺肯定派の実行役として、本業の警察官をする傍ら五年間も産業スパイや政敵の暗殺に従事させられていたのである。
結局は霧島と出会って心を決め『知り過ぎた男』として消されるのを覚悟でスナイパー引退宣言をした。案の定殺されそうになったが間一髪で霧島が機捜の部下を率いて飛び込んできてくれて命を存えたのだ。
そのあと京哉が暗殺スナイパーだった事実は警察の総力を以て隠蔽されたために今はこうしていられる。だが京哉は自分が撃ち砕いてきた人々を決して忘れない。忘れられなかった。
心に多数の墓標を立ててしまった京哉はお蔭で心の一部が壊れ気味でもある。でも相棒で一生涯のパートナーを誓い合った霧島も共に背負うと言い、決して言葉を違わず実践してくれているうちに徐々に癒されてきた気がしていた。
それに最近は自分なんかより霧島の方が心配な京哉である。京哉を助けた件で霧島は独断で機捜を動かしたことを咎められ、当時の県警本部長が暗殺肯定派だったため異例なまでに厳しい減給と停職のダブル懲戒処分を食らってしまったのだ。
普通は懲戒を食らうと以降の昇任が不可能になるので皆が依願退職する。
しかし霧島は辞めなかった。
何故なら京哉と出会って暗殺スナイパーなる事実を知ってから、暗殺肯定派の一斉検挙を目論み成功させ、更に県警本部長を実質的に辞任に追い込み、新本部長に暗殺反対派の急先鋒だった人物を迎えるまでの全てが、霧島独りで画策し描いたシナリオ通りだったからである。
恐るべき計算能力だった。
だが霧島自身が懲戒を食らって犠牲になったのも事実で京哉は凹んだが、あれ以来サッチョウ上層部とある意味パイプのできた京哉と霧島は特別任務と称し、たびたび命令を下されてはロクでもない仕事に就かされるようになった。
それは却って上層部の秘密をより多く握ることにもなり、霧島の昇任不可能はチャラになったも同然である。
けれど問題は特別任務が通常の捜査とはかけ離れた案件ばかりだということだ。その中で殺さなければ殺されるというシチュエーションに何度も遭遇し、仕方なく人を殺めてきていた。
京哉としては自分はともかく正義感の塊である霧島にそんなことはさせたくなかったが、霧島自身も納得した以上、全てを二人で背負ってゆくしかない。
とにかく特別任務は常に出たとこ勝負のイレギュラー満載で、霧島でさえ先が全く読めず毎回難儀なのだ。
前回も殆ど戦争だったよなあ、喩えじゃなく……と思い返す京哉はスナイパー時代に自分を目立たなくするためのアイテムだった伊達眼鏡を押し上げつつ、チラリと隊長席に目をやる。
霧島は片手で書類を捲りながら片手でペンを弄んでいた。その左薬指に京哉とお揃いのプラチナのリングが嵌っている。
あの長い指が今朝、自分の体内で蠢いた感触を甦らせて京哉は頬に血を上らせた。
「鳴海、どうした、顔が赤いぞ。風邪でも引いたのか?」
「あっ、えっ、何でもありません」
否定したが霧島はハーフの生みの母譲りの灰色の目を心配げに向けてくる。
何より誰より京哉が愛しく大切で堪らない霧島忍は二十八歳だ。この若さで警視という階級にあり機動捜査隊長を拝命しているのは、最難関の国家公務員総合職試験を突破したキャリアだからである。更には霧島カンパニー会長の御曹司でもあった。
京哉が暗殺されそうになった件で霧島カンパニーはメディアに叩かれ、株価が暴落して窮地に陥ったが、数ヶ月間を耐え抜いて持ち直し今は上昇傾向にある。
故に警察を辞めたら霧島カンパニー本社社長の椅子が待っているのだが、本人は現場のノンキャリア組を背負ってゆくことを何よりも望み、辞める気は欠片もない。
それどころか実父の霧島会長を毛嫌いし、滅多に他人を悪罵しないのに父親だけはクソ親父呼ばわりである。おまけに裏での悪事の証拠さえ掴めたら逮捕も辞さないと明言していた。京哉の方が霧島会長を御前と呼んで親しんでいるくらいだ。
そんな霧島は意思に反してクソ親父と取引するハメに陥り、会長や本社社長の名代として時折パーティー等に急遽強制参加させられるため、対応可能な衣装という意味で普段からオーダーメイドスーツを着用している。
高級スーツに長身を包み颯爽とした姿は一見スリムで、顔立ちは切れ長の目が涼しく怜悧さを感じさせるほど端正だった。
更にはあらゆる武道の全国大会で優勝を飾っているという、眉目秀麗・文武両道を地でゆく、他人から見たら非常に恵まれた男である。
お蔭で『県警本部版・抱かれたい男ランキング』ではここ数期連続してトップを独走していた。
だが元から霧島は同性愛者でその事実を隠してもいない。お蔭で京哉としては安堵していられる結果となっている。
それどころか最近は『抱かれたい男ランキング』で京哉が票を伸ばしてしまい、警務部や総務部の婦警たちが『鳴海京哉巡査部長を護る会』までこさえては会員数を増やしたりで、霧島に勘繰られては機嫌を取るのが大変になってきたのだ。
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