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第54話
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「ならば私が常々言うように私とお前は足して二で割れない、だから一緒にいるのだろう。何れにせよ私は殺すたびに自己正当化し己を納得させるための言い訳を考えるのを止める。だからこのことに関してお前は私のためにもう悩むな。分かったか?」
「貴方の行動原理、僕と一緒に生きて行きたいから邪魔する者は叩き折る……」
「ああ、そうだ。どうあろうと我々二人の人生は譲れんし、納得する理由としては充分だろう。納得し二人で俯かず前を向いてこの先の一生を生きて行けたらいい。寝る」
「あ、はあ。おやすみなさ……うわ、すごい、もう寝てる」
微笑みながらも京哉は澄んだ黒い瞳に涙を浮かべていた。霧島が霧島らしく喋っていたのがこんなにも嬉しい。だからといって起きている間に素直に告げてしまうと図に乗るのが目に見えていたので黙っていたのだが。
端正な寝顔を眺め、規則正しい寝息を聞いていると京哉も欠伸が出た。再びベッドに横になると毛布を引き寄せて霧島と自分に被せる。霧島の左腕をそっと抱いた。
ウトウトし始めてから服を着忘れたのに気付いたが、こんな状況でも起き上がる気力が湧いて出ない。というより『別にいいや』的なのんびりした気分だった。オプチミストが伝染したのか。ぼんやり考えているうちに柔らかな本物の眠りが訪れる。
寝返りすら打てなかった霧島がいつの間にか京哉を抱き締めて眠っていた。
◇◇◇◇
ちょっと瞬きした気分で目を開けると、窓から朝日が射し込んでいた。
愛し合った日の翌々日である。昨日は後遺症で京哉は腰が重くヨレヨレ、霧島は表情こそ涼しさを保っていたが欲望のままにアレをナニしすぎたため、やはりあちこちの怪我に障ったらしく、またも眠りっ放しだった。
あの分だと暫くはまともに起き上がれまい。
そんなことを思いながらまた寝顔を眺める一日かと考え、少し重たい気分で起きるとベッドで隣に寝ている筈の霧島はいなかった。慌てて目を上げると姿が目に映る。着替えてスーツ姿の霧島は窓際のテーブルに向かい椅子に腰掛けて紫煙を吐いていた。
「あっ、僕の煙草!」
「五月蠅いことを言ってくれるな」
「っていうより、起きてて大丈夫なんですか?」
「大丈夫なものか、腹が減って胃袋が脱走寸前だぞ。ドロドロした飯はもう沢山だ」
顔に傷は残っているが、まるでいつもの霧島に京哉は脱力してしゃがみ込む。
「何だ、やはりお前も腹が減ったんじゃないのか?」
「確かに時間的にお腹は空いてますけどね」
腕時計を見ると七時過ぎだった。携帯でマスターにメールして食事はしっかりしたものを頼み、京哉は起き出すとドレスシャツとスラックスを身に着けた。
七時半にはホットドッグとオムレツ、サラダと紅茶の朝食が届けられ、二人はテーブルで食す。本当に霧島の食欲は戻っていて京哉は呆れながらもホッとした。
食後にシャワーを浴びた霧島の全身に消炎スプレーを吹きつけると、部屋から出て行けない二人はダラダラごろごろとして過ごした。
翌日いっぱいまではその調子で、傷ついた霧島の躰を存分に甘やかした。
その次の日、部屋で昼食を摂った二人はショルダーホルスタを装着した。
「貴方の行動原理、僕と一緒に生きて行きたいから邪魔する者は叩き折る……」
「ああ、そうだ。どうあろうと我々二人の人生は譲れんし、納得する理由としては充分だろう。納得し二人で俯かず前を向いてこの先の一生を生きて行けたらいい。寝る」
「あ、はあ。おやすみなさ……うわ、すごい、もう寝てる」
微笑みながらも京哉は澄んだ黒い瞳に涙を浮かべていた。霧島が霧島らしく喋っていたのがこんなにも嬉しい。だからといって起きている間に素直に告げてしまうと図に乗るのが目に見えていたので黙っていたのだが。
端正な寝顔を眺め、規則正しい寝息を聞いていると京哉も欠伸が出た。再びベッドに横になると毛布を引き寄せて霧島と自分に被せる。霧島の左腕をそっと抱いた。
ウトウトし始めてから服を着忘れたのに気付いたが、こんな状況でも起き上がる気力が湧いて出ない。というより『別にいいや』的なのんびりした気分だった。オプチミストが伝染したのか。ぼんやり考えているうちに柔らかな本物の眠りが訪れる。
寝返りすら打てなかった霧島がいつの間にか京哉を抱き締めて眠っていた。
◇◇◇◇
ちょっと瞬きした気分で目を開けると、窓から朝日が射し込んでいた。
愛し合った日の翌々日である。昨日は後遺症で京哉は腰が重くヨレヨレ、霧島は表情こそ涼しさを保っていたが欲望のままにアレをナニしすぎたため、やはりあちこちの怪我に障ったらしく、またも眠りっ放しだった。
あの分だと暫くはまともに起き上がれまい。
そんなことを思いながらまた寝顔を眺める一日かと考え、少し重たい気分で起きるとベッドで隣に寝ている筈の霧島はいなかった。慌てて目を上げると姿が目に映る。着替えてスーツ姿の霧島は窓際のテーブルに向かい椅子に腰掛けて紫煙を吐いていた。
「あっ、僕の煙草!」
「五月蠅いことを言ってくれるな」
「っていうより、起きてて大丈夫なんですか?」
「大丈夫なものか、腹が減って胃袋が脱走寸前だぞ。ドロドロした飯はもう沢山だ」
顔に傷は残っているが、まるでいつもの霧島に京哉は脱力してしゃがみ込む。
「何だ、やはりお前も腹が減ったんじゃないのか?」
「確かに時間的にお腹は空いてますけどね」
腕時計を見ると七時過ぎだった。携帯でマスターにメールして食事はしっかりしたものを頼み、京哉は起き出すとドレスシャツとスラックスを身に着けた。
七時半にはホットドッグとオムレツ、サラダと紅茶の朝食が届けられ、二人はテーブルで食す。本当に霧島の食欲は戻っていて京哉は呆れながらもホッとした。
食後にシャワーを浴びた霧島の全身に消炎スプレーを吹きつけると、部屋から出て行けない二人はダラダラごろごろとして過ごした。
翌日いっぱいまではその調子で、傷ついた霧島の躰を存分に甘やかした。
その次の日、部屋で昼食を摂った二人はショルダーホルスタを装着した。
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