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第8話
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名立たるアガサ商事と聞いて皆がざわめく中、霧島が低い声を響かせた。
「西原さん、ここは大人の職場だ。そして鳴海にはまだ仕事が残っている」
「あら、お話したいのは鳴海さんの方かと思っていたんですけど、違ったかしら?」
霧島にまで挑戦的な科白を朗らかに吐いた沙織を灰色の目は不快の色を浮かべて見つめる。そんな霧島を視線で牽制しつつ京哉は立ち直ってまともな答えを返した。
「沙織さん。すぐそこのファミレスくらいなら僕が奢りますから、いかがですか?」
「奢られるのは不本意ですけど、ご一緒させて頂くわ」
「ってことで、すみませんが少し出てきます」
鳴海が女を誘ったぞ、それもダンナの隊長を目の前にして、などと騒ぎ立てる皆を尻目にデスクを簡単に片づけた京哉は席を立って沙織と機捜の詰め所を出た。視線がなくなってややホッとする。
そのまま片腕を吊った沙織に合わせてゆっくり階段を下り、エントランスからも出て本部庁舎前庭の広大な駐車場を縦断した。
歩道に出て二分も歩くとファミリーレストランのチェーン店だ。
足を踏み入れると夕食時で混んでいたが客は殆どが県警関係者なので回転も早く、すぐに喫煙可のボックス席が空いて案内された。
席に着くと京哉は煙草を出して沙織に許可を求める。頷くのを待って一本咥えるとオイルライターで火を点け、沙織を避けて紫煙を吐いた。
空腹を感じた自分も割と図太いなあ、などとと思いつつ京哉はボリュームのあるセットメニューを頼む。片手が利かないからか沙織はスプーンのみで食せるピラフとスープのセットだ。
「それで沙織さん」
「沙織でいいわ」
「じゃあ沙織。僕に何を訊きたいんですか?」
「訊きたいことがあるのはそちらじゃないのかしら?」
「なら全て話して貰えますか?」
「簡単に話すとでも思っているの?」
「うーん、矛盾してるなあ……」
二本目の煙草を点けながら暫し考え、外堀から埋めるべく予想をぶつける。
「たぶん栗田巡査部長を捕まえたのは偶然。じつは貴女は最初から僕の居場所を知っていた。コンビニで被害に遭ったのもマンションに僕を訪ねてきていたから……違いますかね?」
つんと顔を背けた沙織だったが僅かな目の動きで当たりだと京哉は確信した。すると瓦解した暗殺肯定派にスナイパーとして飼われていた頃だけでなく、暗殺を辞めてからの京哉の動向まで知る人間が沙織に事情を洩らしたことになる。
考えを巡らせている間も情報収集を続けるつもりで訊いた。
「ところで貴女のお祖父さんは、あのあとどうなったんでしょうか?」
本当に疑問だった訳だが、これに沙織は息を呑んだ。
「……貴方、あんな酷い殺し方をしておいて、よくもそんなことを言えるわね!」
「大抵殺すという行為は酷いですよ。あ、そうじゃなかった、すみません。防弾車両のガラスをぶち破るのに対物ライフルを使ったんで、特に酷かったですよね」
何処までも淡々とした口調の京哉に対し、沙織はお絞りを握った右手を震わせる。
「わたし見たの。あの日はわたしの誕生日だった。お祖父さまが帰ったら祝ってくれると言って……不仲でわたしの誕生日どころじゃなかった両親の代わりに――」
だがリムジンに乗って帰ってきたのは死体だったという訳だ。
血塗れの車内に首から上が吹き飛んでなくなった会長たる祖父。誰より可愛がってくれた祖父の帰りを待ちわびていた沙織は同乗していた秘書たちが悲惨な遺体を隠す間もなく、その有様を目の当たりにしてしまったのだという。
「貴方のお蔭で一生忘れられない誕生日になったわ。結局お祖父さまは両親が懇意にしていた医師に不慮の事故って検案書を書かれて、火葬も納骨も終わってから亡くなった事実が公表されたの。その二週間後には両親も本当に事故死したわ」
「ご両親まで……それはご愁傷さまです」
「口先だけの弔意は要らないわ。貴方ってロボットみたいね、壊れた」
「自分が壊れてるのはとっくに承知してます。何処で僕のことを聞いたんですか?」
「すぐに教えてしまっては面白くないもの。貴方にはもっと困って貰わなくちゃ」
「面白くなくても教えて貰わないと、貴女にも危険が降りかかるかも知れません」
束の間、沙織は押し黙った。表情も口調も変えず脅されたら怖い筈である。
「わたしもお祖父さまと同じように殺すの? 周りを血塗れにして? 今度こそ貴方は捕まって死刑になるわ。過去の殺人も全て暴かれてね!」
沙織が自分自身を奮い立たせるようにまくし立てるのを京哉は煙草を揉み消しながら眺めていた。今のは脅しという訳でもなかったので心外に思いながら。
そこで注文した料理が運ばれてきた。シルバーを手にしながら京哉は説明する。
「僕は手足に過ぎず、裏にはもっと大きな存在が隠れていました。警察の幹部や国会議員らが大勢が検挙される騒ぎになったからご存じでしょうけど、大きな存在だっただけに生き残りがいる可能性も捨てきれない。そういう意味で言ったんです」
「そのくらい想像ついてるわ。だって貴方はお金を貰って人殺しをしていたんじゃないもの。そうでしょう?」
「知っているなら余計に危険ですよ。密かに僕を強請るならともかく、そうやって知っているという事実を振り撒いて歩くのは本当に危険なんです」
「だって密かに貴方を脅迫したら、それこそ密かにお祖父さまの二の舞ですもの」
「じゃあ誰とも知れない相手が雇ったヒットマンに消されたいんですか?」
今になって御前が暗殺命令を出すとは思いたくないが、サッチョウ上層部の一部や政府与党重鎮だった者、その派閥議員たちに至っては分からない。県警本部に直接乗り込み顔を売った沙織が元・暗殺肯定派にとって目障りな存在なのは確かだ。
何を何処まで知っているのか分からない小娘一人、いっそ消してしまえと誰かが言い出さないとも限らない。
「鳴海さん、貴方がそう言うのはわたしのため? それとも貴方自身のため?」
「勿論、僕のためです。可能なら僕が貴女を消したいくらいですよ」
本当に何の感慨もなくサラリと言って京哉はじっと沙織を見つめる。沙織は僅かにセーラー服の肩を震わせたが意志の強そうな目だけは京哉から逸らさなかった。
見上げた根性である。
「貴方の脅しには屈さないわ。『手足』は本体から離れたんでしょう、本体が分解して。だから貴方はわたしに何もできない。違うかしら?」
小賢しい女子高生に図星を突かれ、京哉は天井を仰いだ。
「とにかくわたしは貴方を傷つけたいの。お祖父さまの仇であり、わたしが知らされただけでも八人もの命を奪って平然と夕食を味わっている貴方をね」
僅かな情報を開陳して逆に脅しに掛かった沙織は自分の成果に満足したのか、機捜でも見せたコケティッシュな笑顔を京哉に向けた。
「西原さん、ここは大人の職場だ。そして鳴海にはまだ仕事が残っている」
「あら、お話したいのは鳴海さんの方かと思っていたんですけど、違ったかしら?」
霧島にまで挑戦的な科白を朗らかに吐いた沙織を灰色の目は不快の色を浮かべて見つめる。そんな霧島を視線で牽制しつつ京哉は立ち直ってまともな答えを返した。
「沙織さん。すぐそこのファミレスくらいなら僕が奢りますから、いかがですか?」
「奢られるのは不本意ですけど、ご一緒させて頂くわ」
「ってことで、すみませんが少し出てきます」
鳴海が女を誘ったぞ、それもダンナの隊長を目の前にして、などと騒ぎ立てる皆を尻目にデスクを簡単に片づけた京哉は席を立って沙織と機捜の詰め所を出た。視線がなくなってややホッとする。
そのまま片腕を吊った沙織に合わせてゆっくり階段を下り、エントランスからも出て本部庁舎前庭の広大な駐車場を縦断した。
歩道に出て二分も歩くとファミリーレストランのチェーン店だ。
足を踏み入れると夕食時で混んでいたが客は殆どが県警関係者なので回転も早く、すぐに喫煙可のボックス席が空いて案内された。
席に着くと京哉は煙草を出して沙織に許可を求める。頷くのを待って一本咥えるとオイルライターで火を点け、沙織を避けて紫煙を吐いた。
空腹を感じた自分も割と図太いなあ、などとと思いつつ京哉はボリュームのあるセットメニューを頼む。片手が利かないからか沙織はスプーンのみで食せるピラフとスープのセットだ。
「それで沙織さん」
「沙織でいいわ」
「じゃあ沙織。僕に何を訊きたいんですか?」
「訊きたいことがあるのはそちらじゃないのかしら?」
「なら全て話して貰えますか?」
「簡単に話すとでも思っているの?」
「うーん、矛盾してるなあ……」
二本目の煙草を点けながら暫し考え、外堀から埋めるべく予想をぶつける。
「たぶん栗田巡査部長を捕まえたのは偶然。じつは貴女は最初から僕の居場所を知っていた。コンビニで被害に遭ったのもマンションに僕を訪ねてきていたから……違いますかね?」
つんと顔を背けた沙織だったが僅かな目の動きで当たりだと京哉は確信した。すると瓦解した暗殺肯定派にスナイパーとして飼われていた頃だけでなく、暗殺を辞めてからの京哉の動向まで知る人間が沙織に事情を洩らしたことになる。
考えを巡らせている間も情報収集を続けるつもりで訊いた。
「ところで貴女のお祖父さんは、あのあとどうなったんでしょうか?」
本当に疑問だった訳だが、これに沙織は息を呑んだ。
「……貴方、あんな酷い殺し方をしておいて、よくもそんなことを言えるわね!」
「大抵殺すという行為は酷いですよ。あ、そうじゃなかった、すみません。防弾車両のガラスをぶち破るのに対物ライフルを使ったんで、特に酷かったですよね」
何処までも淡々とした口調の京哉に対し、沙織はお絞りを握った右手を震わせる。
「わたし見たの。あの日はわたしの誕生日だった。お祖父さまが帰ったら祝ってくれると言って……不仲でわたしの誕生日どころじゃなかった両親の代わりに――」
だがリムジンに乗って帰ってきたのは死体だったという訳だ。
血塗れの車内に首から上が吹き飛んでなくなった会長たる祖父。誰より可愛がってくれた祖父の帰りを待ちわびていた沙織は同乗していた秘書たちが悲惨な遺体を隠す間もなく、その有様を目の当たりにしてしまったのだという。
「貴方のお蔭で一生忘れられない誕生日になったわ。結局お祖父さまは両親が懇意にしていた医師に不慮の事故って検案書を書かれて、火葬も納骨も終わってから亡くなった事実が公表されたの。その二週間後には両親も本当に事故死したわ」
「ご両親まで……それはご愁傷さまです」
「口先だけの弔意は要らないわ。貴方ってロボットみたいね、壊れた」
「自分が壊れてるのはとっくに承知してます。何処で僕のことを聞いたんですか?」
「すぐに教えてしまっては面白くないもの。貴方にはもっと困って貰わなくちゃ」
「面白くなくても教えて貰わないと、貴女にも危険が降りかかるかも知れません」
束の間、沙織は押し黙った。表情も口調も変えず脅されたら怖い筈である。
「わたしもお祖父さまと同じように殺すの? 周りを血塗れにして? 今度こそ貴方は捕まって死刑になるわ。過去の殺人も全て暴かれてね!」
沙織が自分自身を奮い立たせるようにまくし立てるのを京哉は煙草を揉み消しながら眺めていた。今のは脅しという訳でもなかったので心外に思いながら。
そこで注文した料理が運ばれてきた。シルバーを手にしながら京哉は説明する。
「僕は手足に過ぎず、裏にはもっと大きな存在が隠れていました。警察の幹部や国会議員らが大勢が検挙される騒ぎになったからご存じでしょうけど、大きな存在だっただけに生き残りがいる可能性も捨てきれない。そういう意味で言ったんです」
「そのくらい想像ついてるわ。だって貴方はお金を貰って人殺しをしていたんじゃないもの。そうでしょう?」
「知っているなら余計に危険ですよ。密かに僕を強請るならともかく、そうやって知っているという事実を振り撒いて歩くのは本当に危険なんです」
「だって密かに貴方を脅迫したら、それこそ密かにお祖父さまの二の舞ですもの」
「じゃあ誰とも知れない相手が雇ったヒットマンに消されたいんですか?」
今になって御前が暗殺命令を出すとは思いたくないが、サッチョウ上層部の一部や政府与党重鎮だった者、その派閥議員たちに至っては分からない。県警本部に直接乗り込み顔を売った沙織が元・暗殺肯定派にとって目障りな存在なのは確かだ。
何を何処まで知っているのか分からない小娘一人、いっそ消してしまえと誰かが言い出さないとも限らない。
「鳴海さん、貴方がそう言うのはわたしのため? それとも貴方自身のため?」
「勿論、僕のためです。可能なら僕が貴女を消したいくらいですよ」
本当に何の感慨もなくサラリと言って京哉はじっと沙織を見つめる。沙織は僅かにセーラー服の肩を震わせたが意志の強そうな目だけは京哉から逸らさなかった。
見上げた根性である。
「貴方の脅しには屈さないわ。『手足』は本体から離れたんでしょう、本体が分解して。だから貴方はわたしに何もできない。違うかしら?」
小賢しい女子高生に図星を突かれ、京哉は天井を仰いだ。
「とにかくわたしは貴方を傷つけたいの。お祖父さまの仇であり、わたしが知らされただけでも八人もの命を奪って平然と夕食を味わっている貴方をね」
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