神の祈りは誰が聞く～楽園26～

第5話（BL特有シーン・回避可）

　耳許で囁いた唇が返事を待たずに頬を滑り、口を塞いだ。歯列を割って入り込んできたシドに舌を絡め取られて、唾液ごと強く吸い上げられる。何度も求められるままに唾液を与えながらハイファは喉の奥を鳴らした。

「んんぅ……んっ……んんっ」

　唇を捩り合わせるようにしながらシドは片手で薄い背を抱き、片手で器用にドレスシャツのボタンを半ばまで外している。はだけた前から白く滑らかな肌を愛撫した。

「んっ……ぅうん、っん……はあっ！」

　ようやく口を解放されたハイファは肩で息をする。そうしながら手を伸ばしてシドの上衣を捲り上げると、引き締まった腹から逞しい胸に指を滑らせた。

「……うっ、あ……っく」

　なまめかしいハイファの指の動きにシドは思わず呻く。互いの肌を撫でさすりながら下半身を擦り合わせた。薄い生地を通して二人ともに成長させているのが分かる。

「シド……あっ、ふ……シド」
「何だ、どうした？」

　覗き込んでくるのはいつもと変わらぬポーカーフェイスだが、ハイファにだけ判る微笑みが切れ長の黒い目に浮かんでいた。

「貴方に、もっと……んっ……触りたい」

　ハイファの切なげな訴えだけでなく、シドも衣服越しにハイファを感じているのが焦れったくなってドレスシャツの袖を抜かせ、下着ごと下衣を取り去った。自分も潔く全てを晒すと再び躰を重ねる。

　愛し人の重みを全身で受け止めながら、ハイファはこの上ない安堵感を得て喘いだ。

「あっ……ん、気持ちいい……はぅんっ！」

　胸の小さな尖りを甘噛みされ、細い躰が跳ねる。温かな舌で数度転がすと、シドは薄い肩口に顔を埋めた。男の持ち物とは思えぬほどに華奢な鎖骨から首筋のラインを、何度も舐めねぶる。唇で挟んで吸い上げ、幾つも赤い印を穿った。

「あんっ……はぁん、あぅんっ！」

　その間も緩やかに擦り合わせた下半身には疼きが溜まり、互いの先端から滲み出した透明の液体が腹の上で濡れ混じり糸を引く。
　上半身をまさぐっていたシドの手が下降し、ハイファの熱いものを握った。ゆっくり扱くとハイファがしなやかな背を反らせる。

「……ぅうん……い、や……はぁんっ」
「ここはイヤなんて言ってねぇぞ」
「だって……あっ……もう、こんなに……恥ずかしい」

　扱かれ更に張り詰めた先端からは、とめどなく透明の蜜が溢れてシドの手を濡らしていた。それを知って羞恥に頬を染めるも、ハイファの意思を無視したかのように、細い腰はもっと強い刺激を求めて勝手に揺れ動いている。

「んっ……あっ、シド……ああんっ！」

　緩急をつけて扱かれ、昂ぶりが襲うたびに逸らされて、翻弄されたハイファは悶えた。
　シドの背に回された手が、仕返しとばかりに爪を立てる。

　浅くせわしない吐息を繰り返すハイファの上からシドが上体を起こした。ハイファの溢れさせた蜜を指に絡めると細い脚を大きく広げさせる。

　何度もいく寸前まで攻められた躰は素直に後ろの淡い色づきを晒した。羞恥と欲望とがせめぎ合い、若草色の瞳は雫が零れそうに潤んでいる。

「ああん……あっ、あ……はうっ！」
　指がそっと挿入され、内襞を擦り上げられてハイファの思考は一瞬で白熱した。これ以上無理なほどに深爪して整えられた指先が、ポイントを掻いてハイファの理性を崩壊させる。シドの指づかいだけに世界の全てを支配されていた。
「んっ……あっ、シド、シド……ああっ！」

　攻めを受け続け、ひたすら快感を貪るハイファは目を瞑ることすらできずに喘ぎを洩らす。誰よりプライドの高いハイファが、ここまで無防備に自分を晒すのはシドの前でだけだ。
　それを知っているシドは、この愛しい存在に何処までも快感を与えてやりたくて、指が攣りそうなくらいに掻き回した。

　増やした指に絡む内襞が徐々にぬるんでクチャクチャと淫らな音を立てだすと指を抜く。快感が途切れて不満げに揺れたそこにシドは己の滾らせたものを押し当てた。

「入れるぞ」

　先端のぬめりを僅かに押し広げると、ハイファが息を吐くのに合わせて挿し貫いた。見せかけほど余裕がなく、ひと息に根元までを突き入れてハイファに悲鳴を上げさせる。

「ああっ……んっ、んんっ……あうっ！」

　ほぐした筈のそこは柔らかくもきつく、居心地の良さにシドは息を詰めた。だがもう我慢も限界、更なる快感を求めて腰を力強くスライドし始める。

　途端に眩暈がするような鋭い快感が湧いた。

「うっ……くっ、痛く、ねぇか」
「ううん……シドが、熱い……はぅんっ！」

　太い茎の半ば以上をずるりと引き出しては、またハイファの芯まで突き上げる。ハイファは切れ切れに喘ぎを洩らしながら、もう上下感覚すらなくなって、ただ自分の中に抽挿入して快感をもたらしてくれるシドだけを確かなものに感じていた。

　いつのまにか脛に手をやり、自分の肩に膝がつかんばかりに脚を曲げて押し広げて、ハイファは全身でシドを受け入れている。仰け反らせた白い喉から異様な色気を放っていた。

「ああん……シド、すごい、いい……はぁんっ！」
「ハイファ……っく……ハイファ！」

　細い腰を掴み、手繰り寄せるように突き上げ、こじ開けて中をこね回すシドは何度も名を呼んだ。揺れる細い躰を壊してしまいそうなくらいに夢中で激しく引き裂き、突き立ててしまう。白い躰に溺れきっていた。

　目茶苦茶に突き立てられたハイファがうわごとのように呟く。

「あっ……はあっ、シド、もう――」
「……俺も、ハイファ……うっ」

　ハイファの熱く硬いものをシドが握り込んだ。躰同士を叩き付けるように腰をスライドさせて、握ったハイファを強く扱く。これ以上はないと思っていた快感の波が大きく膨れ上がり、二人を襲って絶頂へと押し上げる。

「んっ、ああっ……シド、はうっ！」
「――くっ……ぅうっ、あうっ！」

　シドが何度も痙攣させて自分の芯を濡らすのを感じると同時に、ハイファもシドの手に中に熱く放出していた。肩で息をしながらシドがベッドサイドのライティングチェストからティッシュを取って手を拭う。

「大丈夫か？」
「ん……動けないけど、寝るだけだから」

　掠れ声に苦笑して、シドはグラスに水を汲んできた。口移しの甘い水を三度飲ませて貰ってハイファの喉も満足する。グラスはライティングチェストに置いたまま、シドはリモータでライトパネルを常夜灯モードにすると、ハイファに左腕の腕枕を差し出した。

　細い躰を抱き、さらさらの長い金髪を指で梳いていると、すぐに寝息が聞こえだす。