Hip Trap Network[ヒップ トラップ ネットワーク]~楽園23~

志賀雅基

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第9話(BL特有シーン・回避可)

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「ハイファお前……」
「こういうのは嫌い?」

 細く薄い躰は何も身に着けてはいなかった。眩しいような白い裸身がシドに乗っかって巻きついている。解かれた長いさらさらの後ろ髪がシーツに零れ落ちていた。

「嫌いな訳ねぇだろ、大好きだ。つーか、目茶苦茶嬉しいかも知れん」
「そう、よかった……シド、今日は僕がしてあげる」

 珍しいハイファからの積極的なアプローチに、シドはいつものポーカーフェイスを崩して本当に嬉しそうに破顔した。ハイファもシドに微笑みを浮かべて見せる。
 そんな堕ちてきた月の女神のような微笑みのままシドにキスを仕掛けた。柔らかな唇を捩るようにして開かせ、舌先で歯列を割ってシドの口内を舐め回す。シドは赤子のように何度もハイファに唾液を要求しては飲み干した。

「んっ……んんぅ……ん、あっふ、ハイファ」
「シド、すっごく貴方、色っぽいね」
「お前こそ、そんなにしやがって」

 ハイファはもう躰の中心を熱く硬くしていて僅かに恥ずかしげに頬を染めていた。輝くような白い躰を抱き締め、組み敷いてすぐさまねじ込んでしまいたい衝動をシドは堪える。
 上体を起こしてハイファはシドのパジャマのボタンを外した。そして悲愴な声を上げる。

「何これ、酷い!」

 露わになった象牙色の肌、引き締まった腹に紫色の打撲痕があった。今日撃たれたときにできたものだ。慌ててファーストエイドキットを出そうとするのをシドが留める。

「頼む、そのまま乗っかっててくれ」
「冗談言ってる場合じゃ……せめて消炎スプレーだけでも」
「痛くも痒くもねぇし、それにお前の口に入るだろ」
「そんな……通院して被害状況報告書も出さなきゃ」
「俺は今、それどころじゃねぇんだ。分かるな?」

 切ない色を湛えて見上げる切れ長の黒い目に負け、ハイファはそっとアザを撫でた。そしてシドの下衣を下着ごと引き下ろす。シドもそこを成長させていた。ハイファを欲しがって蜜を零している。愛しくて堪らず、掴んでハイファは何度も頬ずりをした。

 蜜で自ら頬を、乱れた明るい金髪を汚すハイファは酷く妖艶で、シドは更にそこに血が流れ込むのを感じる。先端に口をつけられ、ピチャピチャと音を立て舐められた。

「うっ……ハイファ、何か、メチャメチャ感じちまう」
「動かないで、シド……ほら」

 見下ろすと太いものを無心に舐めしゃぶるハイファは、顔立ちがノーブルなだけに余計に淫らだった。先端に舌を潜り込ませて蜜を啜られ、シドは腰を浮かしてしまいそうになるのを堪えるだけで必死となる。そうして充分にシドを味わったあと、ハイファは赤い唇でそれを咥えた。
 温かな舌を茎に巻きつけられてシドの思考は真っ白にスパークする。

「ハイファ……うっく、あっ、ハイファ!」
「んんっ……ん、ぅうん……んんぅ」

 愛し人のものをしゃぶるという行為に酔い、ハイファも喉から喘ぎを洩らしていた。甘い声を耳にしてシドは追い詰められる。すぐにも暴発させてしまいそうな昂ぶりに何度も荒い息をついた。ハイファは自らの喉を突かんばかりに攻め立てている。シドは突き上げてしまいそうになるのを堪えるので精一杯だ。

「くっ、ハイファ……もう、ハイファ、だめだ!」
「んんぅ……んんっ……ん」
「ふっ、う……ハイファ、あうっ!」

 急激にこみ上げてきた快感の奔流を押し返せず、シドはハイファの口の中で達してしまう。溢れたそれをハイファは喉を鳴らして嚥下した。口を離すと扱いて滲んだものまで舐め取る。

「でもまだ貴方、こんなにしてる」
「お前の中でもいきたいからさ。させてくれるか?」

 頷いてハイファはシドの腹を跨いだ。上体を倒して濃厚なキスを仕掛け、赤い唇を下降させて喉の隆起に舌を這わせる。そこから鎖骨までを幾度も辿り、首筋から肩を何度も吸い上げては自分の証しを赤く刻み込んだ。甘い痛みにシドは呻きを洩らす。

 衣服を身に着けても見えてしまいそうな処にまで赤く穿たれシドは身を捩って抵抗した。

「んんっ……そんなに上は、見えちまうだろ」
「見えてもいいじゃない」
「そうか、そうだな――」

 応えながらシドは自分の右手指を咥えるとたっぷりの唾液で濡らす。その指でハイファの後ろを探った。硬い蕾を探り当て、指先でなぞっては突いてハイファを翻弄する。しなやかな躰がシドの上で悶えた。仕返しとばかりに胸の小さな尖りを噛まれる。

「うっく……ハイファ、分かったからさ」
「んっ、シド……あっ、ああんっ!」

 欲しがってひくつく窄まりに指先を挿入するとハイファの声がトーンを上げた。抱きついてくる細い躰をしっかりと左腕で抱き締め、シドはするすると指を奥まで進める。芯を指先で突き、ポイントを浅く掻いた。これ以上無理なくらい深爪した指先で存分に攻め立てる。
 ハイファは途切れなく甘い声を寝室に響かせた。

「ああっ、シド、そこ……いい、はぅんっ!」
「もっと気持ち良くしてやる、ほら――」

 二本目の指を挿入し狭い窄まりを馴らしつつ捩るように動かす。上体を仰け反らせるようにしてハイファは攻めに堪えていた。シドの指から注ぎ込まれる快感に、潤んだ若草色の瞳を瞑ることも忘れている。あまりに強い締めつけにシドは苦笑した。

「ハイファ、もう少し力、抜けよ」
「んっ、無理……いいからもう、して。入れて」
「まだだ、傷つけちまう」
「傷つけてもいいから、もう欲しいよ。我慢できない」

 切実な響きにシドはほぐしきれていないそこから全ての指を抜く。もどかしい動きでハイファはシドのものを掴んだ。自ら太いものをあてがうと蜜を塗り込むようにしてから細い腰を落とし始める。きつさにシドはハイファを案じて腰を引く。だがハイファは許さない。シドの上に座り込むようにして確実に体内に熱い楔を迎え入れてゆく。

「あっ、あっ、シド……太いよ、ああんっ!」
「ハイファ、だめだ、傷つける……くっ!」

 半ばまで入ったところで腰を落とし、ハイファは残りを一気に収めてしまっていた。だがすぐには動けず乱れた吐息を何度もつく。思わず呻いたシドも同様だ。きつすぎる粘膜の締めつけに身動きもままならなくなっていた。

「無茶しやがって……大丈夫か?」

 返事の代わりにハイファはゆっくりと腰を持ち上げては落とし始める。己の太いものが細い躰を貫く様子を目に映しているうちに、シドも堪らなくなって下から腰を突き上げ始めた。途端に鋭い快感が湧く。ハイファが悲鳴のような喘ぎを洩らした。

「はうんっ! シド、すごい、いい……あうっ!」
「お前も、ハイファ……最高に、気持ちいいぜ」

 シドを離すまいと粘膜が絡みついてくる。幾度もシドは腰を突き上げ内襞を掻き回した。上下から腰をぶつけ合う。彷徨うハイファの両手にシドは自身の指を絡ませ握った。強くハイファの爪が食い込む。二人を腰が蕩けるような快感が襲っていた。

「んんっ、シド……もっと――」
「くっ、ハイファ……無理するな、あっく!」

 もはや理性を飛ばしたハイファは目茶苦茶に腰を浮かせては落としている。あまりの激しさにシドは握った手に何度か力を込めて宥めようとするが、ハイファは自分でもコントロールできないらしく細い腰を上下させるのをやめない。

「ハイファ、だめだ……ハイファ!」
「シド、シド……ああん、はぁんっ!」

 叩きつけるような動きにシドは上体を起こして抱き締めようとしたが叶わなかった。上半身には袖を抜かない衣服が絡み、中途半端に脱がされた下衣もシドの自由を封じている。両手も押さえ付けられシーツに縫い止められていた。

 諦めてシドは力を抜く。ハイファはシドのもので自身の体内を掻き回し、こね回していた。強烈な快感がシドを押し包む。ハイファが腰を揺らめかせながら切れ切れに呟いた。

「こうしてると、僕が、シドを、犯してるみたい」
「そう、だな……でも、もう――」
「僕も、シド、もうだめ……はぁんっ!」

 激しい行為でベッドが軋む。目に見えてハイファが己を変化させた。シドもハイファの中を一層大きく押し広げる。二人の熱い吐息が室温すら上げたようだった。

「シド、もうだめ……いく、いっちゃう……はうっ!」
「ハイファ、俺も一緒に……くっ、ああ――」

 二人は同時に爆ぜさせた。シドはハイファの芯をずぶ濡れにする。ハイファはシドの引き締まった腹から逞しい胸にかけて幾度も放った。そして細い躰から全ての力が抜ける。両手は結んだまま、シドの支えが間に合わず自ら汚した象牙色の肌にふわりと倒れかかった。

「ハイファ、大丈夫か? ハイファ!」
「ん……平気だよ」
「ったく、無茶しやがって」

 結んだ手を離すとシドはハイファを隣にそっと寝かせる。ベッドサイドのライティングチェストからティッシュを取って二人分の後始末をし、ベッドから滑り降りた。
 キッチンから持ってきた水のグラスを傾けて口に含むとハイファに口移しで冷水を何度も飲ませる。グラス半分を飲み干してハイファはようやく息をついた。

「躰はその、傷ついてねぇし、もう寝るか?」
「ん……日付、変わってるね」

 頷いたハイファは既に朦朧としているらしい。パジャマを着せることは諦めてシドはハイファに毛布を被せると、自分も素肌のままで隣に潜り込んだ。いつも通りに左腕で腕枕をしてやると無意識なのか細い躰に巻きつかれる。抱き締め返しながらハイファのリモータを操作し、天井のライトパネルを常夜灯モードにした。タマが足元で丸くなる気配。

 薄暗い中、指でハイファの長い後ろ髪を梳く。さらさらとした感触が心地いい。

 目を瞑るとまたもホシを取り逃がした悔しさが湧き上がってきたが、消すに消せないそれをハイファは知っていて、躰で宥めてくれたというのにシドは気付いていた。
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