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第41話
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「でも幾ら何でも我らがメイソンコミュニケーションズを疎かにはできないから、メイソンコムの僕らを通してFCとの契約を取り付けたように見せかけなくちゃね」
なるほど面倒なものだと思いながらシドはTVを視続けた。
「そうか……おっ、レナードとグレアムのボディジェム工場視察で『ハーくん』と『ユーちゃん』が映ってやがる。リポータの前で睨み合うフリしやがって」
「愉しそうで結構ですね」
「悪巧みしてるお前も愉しそうだがな。仕込みはいつできる?」
「今日中にでも」
ハイファが大仕事をやらかすのに負けてはいられないと、シドはTVとは別にホロディスプレイを立ち上げる。この第三惑星ハリダの名物が医薬品だという辺りから調べ始めた。
元が医薬品の副産物ということで、セス素子を人体に埋め込むことは割と簡単に各星系厚生局の認可が下りたらしい。詭弁臭いがセス素子も医薬品という分類で輸出されている。
ということは、同じようにダリア素子も医薬品及びその副産物として何処かに載っているかも知れなかった。そもそも極小プロキシサーバとしての役目を果たす素子は大発見だろう。名前は違っても何処かには載っている筈だと、あらゆる検索ワードを試してみる。
だが定時の十七時まで粘っても何処にもダリア素子の片鱗すら見つけることはできなかった。一人悄然としたシドは、しかし建材に紛れた音声素子から湧いた声に顔を上げる。
《ユーリー=ニコノフ君、シド=ワカミヤ君、社長のメイソンだが、入らせて貰っていいね!》
「あ、どうぞ」
応えながらハイファはシドに微笑んで見せた。
◇◇◇◇
さすがにメイソンコミュニケーションズから一足飛びにシュレーダー・ディー・バンク本社へと二人が動くのは大ごとらしく、旨い話はまだ仄めかされただけ、内示が下りるまで暫く時間が掛かりそうだった。だがメイソンコムはお祭り騒ぎ状態で殆ど仕事にならない。
仕方ないのでシドとハイファは社の小部屋へは出勤せず、明日からの週末と祝日を含めた三連休をどう過ごそうかと寮の部屋で考えていた。
「どうするの、SDBでの社内プレゼンの案でも練る?」
「『夢』を追う男は、ンなつまんねぇことで時間を潰さねぇんだよ」
「ったく、本当に本気になっちゃってるんだから。じゃあ『夢』を追って何するのサ?」
リビングで茶菓子を摘みながらコーヒーをひとくち飲んだシドは言う。
「そうだな、第四惑星レオラにでも行かねぇか? 海もあるっていうしさ」
「レオラに海って、貴方リゾートにでも行きたいの?」
「お前は行きたくねぇのか? まあ、リゾートならリーランの海でもいいんだがな」
唐突にハイファはシドに抱きつく。シドは慌てて紙コップをロウテーブルに置いた。
「おい、いきなり何なんだよ?」
「行きたい、レオラにリゾート、行こうよ!」
「分かった、分かったから剥がれろ。じゃあ準備して行こうぜ」
現在時、十一時十分。ハイファは素早くリモータ検索して第四惑星レオラ行きのシャトル便が日に四便出ていることを確かめる。ここからアリミア宙港まではモノレールと定期BELで最短四十分近く掛かる筈だった。
「ええと、十三時のシャトル便があるよ。間に合うかな?」
「間に合わせるんだ。出るぞ」
シドは既に綿のシャツにコットンパンツ、ハイファはドレスシャツにスラックスという普段の刑事ルックである。あとは執銃して対衝撃ジャケットとソフトスーツの上着を着るだけだ。
五分で準備は終わり、ハイファが着替えと予備弾に煙草の入ったショルダーバッグを担ぐ。玄関に立って靴を履くとソフトキスを交わし、エレベーターで屋上ステーションに上がった。
モノレールの車両はすぐにやってきた。乗り込むと三駅で降りたそこはメイソン第二ビルである。四十五階の小部屋には寄らず直行エレベーターで屋上へと上がった。
屋上は定期BELの停機場となっていて、風よけドームの閉まった中で客が七、八人、BELが着くのを待っていた。シドはエアカーテンで仕切られた喫煙ベンチを確保し、煙草を吸って定期BELの到着までを過ごす。
十一時五十三分、風よけドームが開いて大型BELが降下してきた。接地すると降ろされたタラップドアの前に列ができる。キャビンアテンダントの掲げたチェックパネルに料金分のクレジットを移し、シドとハイファも乗り込んだ。
十二時ジャストに定期BELは風よけドームの開いたビル屋上からテイクオフする。
「十二時三十分には宙港に着く筈。チケット取ってギリギリだね」
「星系内便は通関もねぇし、楽勝だろ」
事故も起こらずハイジャックにも遭わず、定期BELはアリミア宙港メインビル屋上にランディングした。急いで二人は降機するとエレベーターで二階ロビーフロアに降りる。
自販機でチケットを購入しシートをリザーブすると、ここでもシャトル便は二階ロビーに直接エアロックを接続するということで、シドが一服するヒマもあった。
レオラ行きのシャトル便は出航二十分前から乗り込みが開始された。だがシートもリザーブしてあるので焦る必要はない。ゆっくりと並んでチェックパネルをクリアし客室のシートに二人は収まった。配られたワープ宿酔止めの白い錠剤を飲み込む。
「レオラには十五分でショートワープ、また十五分の計三十分で着だよ」
「こっちの時間で十三時半、メシは向こうで食えばいいよな」
やがてアナウンスが入って出航した。窓外が黒くなるまでに一度、窓を雨が叩いた。
「向こうはどんな星だってか?」
「第四惑星レオラは自転周期が五十時間十二分十四秒、半分にして昼の日と夜の日の交代なんだってサ。着いたら唯一の大陸地は夜だけど、いいよね?」
「夜の海もよさそうだよな。って、寒くねぇんだろうな?」
「ええと、第三惑星ハリダと変わらないみたい。それと随一の街がケンダルだって」
「へえ。あとは着いてのお楽しみにしとこうぜ」
まもなく二人は五体が砂の如く四散してゆくような感覚を味わう。
「ふう。あと十五分だね」
艦内に流れる電波を拾い、二人はテラ標準時・第三惑星ハリダのアリミア時間と並べて第四惑星レオラのケンダル時間を表示する。
「着がケンダル時間で夜の日の二十時三十分か」
「連休だけど、ホテルが取れるといいなあ」
無事にシャトル便は航行を終え、第四惑星レオラのケンダル宙港に着陸した。
ケンダル宙港ではメインビルにエアロックを接続したりはしなかった。降艦してみて二人には理由が分かる。メインビルはたった三階建てだったのだ。だが二次元的に非常に大きい建造物である。リムジンコイルもあったが、殆どの客は自分の足でメイン施設へと歩いていた。
「僕らも歩きでいいよね」
「積極的に足を使わねぇと、なまっちまうからな」
もうここでしっとりとした風は暑く、張り切って歩くとうっすら汗をかくほどだ。殆どの客が半袖にボディジェム、それに浮き輪を担いでいたりしてリゾート気分も盛り上がる。
メイン施設に着くと、まずはインフォメーション端末でマップを落とした。今夜の宿に当たりを付けようと二人でマップを覗き込むと、ホテルには事欠かないことが判明する。リゾート地としてかなりの数のホテルが海沿いに林立していた。
「あ、ここにもミリアムホテルがあるよ」
「なら、そこに行ってみるか」
宙港メイン施設のエントランスを出ると、ロータリーには無人コイルタクシーが多数駐まっていた。乗り込んでハイファが座標指定するとタクシーは身を浮かせて軽快に走り出す。
「この辺りは郊外みたいだな」
「そうだね、緑がいっぱい。あそこ、椰子の木みたいなのが生えてるよ」
「建物っつー建物が見えねぇんだが、大丈夫か、これ?」
「平気だよ、ほら、あっちには明かりも見えてるし」
「そういやこっちには月があるんだな。何て言うんだ、あの月は?」
「別室資料ではカナンだってサ」
美しい銀の円盤に見守られながら走ること約十五分、いきなり視界が開けた。薄い植生の防風・防砂林を透かして目前に海が現れたのだ。
「うわあ、綺麗!」
「こいつは綺麗だな。カナンがもうひとつあるみたいだぞ」
「すっごい、作り物、影絵か何かの世界みたい」
穏やかな海に銀の円盤が映り込み、光を波頭のひとつひとつが拾って虹色に輝いている。波が白い砂浜を侵食しては退き、そこではまさに影絵のように人々が遊んでいるのだった。これだけ明るく海が穏やかなら暑い昼間よりも遊びやすいだろう。
「また二人でこういうの、見られたね」
「ああ、そうだな。これからもずっと、一生、どんなものでも一緒に見ていく、そうだろ?」
「うん」
タクシーのシートの上で二人はそっと指を繋ぐ。
海沿いの道に出るとミリアムホテルまでは五分ほどだった。車寄せに滑り込み、クレジット精算するとドアマンがドアを開けてくれて、二人きりの時間は一旦終わりを告げる。
ホテルマンの掲げたリモータチェッカをクリア、ここでもオートで回転する透明なドアをくぐってホテル内へと入った。まさにここはリーランのミリアムホテルと双子のようで左側にフロント、右側にはロビーという配置も同じだ。ソファに腰掛けた人々が談笑している。
クリーム色だった足元の天然石材は、ここでは淡いパープルだった。
半袖の制服フロントマンにハイファが声を掛ける。
「あのう、喫煙でダブル一室、空いてますか?」
「はい。十二階、一二〇七号室になりますが宜しいでしょうか」
「やった、シド、空いてたよ」
例の如く『ダブル』なる単語に照れて背を向けていたシドが僅かに振り返って目で頷いた。
なるほど面倒なものだと思いながらシドはTVを視続けた。
「そうか……おっ、レナードとグレアムのボディジェム工場視察で『ハーくん』と『ユーちゃん』が映ってやがる。リポータの前で睨み合うフリしやがって」
「愉しそうで結構ですね」
「悪巧みしてるお前も愉しそうだがな。仕込みはいつできる?」
「今日中にでも」
ハイファが大仕事をやらかすのに負けてはいられないと、シドはTVとは別にホロディスプレイを立ち上げる。この第三惑星ハリダの名物が医薬品だという辺りから調べ始めた。
元が医薬品の副産物ということで、セス素子を人体に埋め込むことは割と簡単に各星系厚生局の認可が下りたらしい。詭弁臭いがセス素子も医薬品という分類で輸出されている。
ということは、同じようにダリア素子も医薬品及びその副産物として何処かに載っているかも知れなかった。そもそも極小プロキシサーバとしての役目を果たす素子は大発見だろう。名前は違っても何処かには載っている筈だと、あらゆる検索ワードを試してみる。
だが定時の十七時まで粘っても何処にもダリア素子の片鱗すら見つけることはできなかった。一人悄然としたシドは、しかし建材に紛れた音声素子から湧いた声に顔を上げる。
《ユーリー=ニコノフ君、シド=ワカミヤ君、社長のメイソンだが、入らせて貰っていいね!》
「あ、どうぞ」
応えながらハイファはシドに微笑んで見せた。
◇◇◇◇
さすがにメイソンコミュニケーションズから一足飛びにシュレーダー・ディー・バンク本社へと二人が動くのは大ごとらしく、旨い話はまだ仄めかされただけ、内示が下りるまで暫く時間が掛かりそうだった。だがメイソンコムはお祭り騒ぎ状態で殆ど仕事にならない。
仕方ないのでシドとハイファは社の小部屋へは出勤せず、明日からの週末と祝日を含めた三連休をどう過ごそうかと寮の部屋で考えていた。
「どうするの、SDBでの社内プレゼンの案でも練る?」
「『夢』を追う男は、ンなつまんねぇことで時間を潰さねぇんだよ」
「ったく、本当に本気になっちゃってるんだから。じゃあ『夢』を追って何するのサ?」
リビングで茶菓子を摘みながらコーヒーをひとくち飲んだシドは言う。
「そうだな、第四惑星レオラにでも行かねぇか? 海もあるっていうしさ」
「レオラに海って、貴方リゾートにでも行きたいの?」
「お前は行きたくねぇのか? まあ、リゾートならリーランの海でもいいんだがな」
唐突にハイファはシドに抱きつく。シドは慌てて紙コップをロウテーブルに置いた。
「おい、いきなり何なんだよ?」
「行きたい、レオラにリゾート、行こうよ!」
「分かった、分かったから剥がれろ。じゃあ準備して行こうぜ」
現在時、十一時十分。ハイファは素早くリモータ検索して第四惑星レオラ行きのシャトル便が日に四便出ていることを確かめる。ここからアリミア宙港まではモノレールと定期BELで最短四十分近く掛かる筈だった。
「ええと、十三時のシャトル便があるよ。間に合うかな?」
「間に合わせるんだ。出るぞ」
シドは既に綿のシャツにコットンパンツ、ハイファはドレスシャツにスラックスという普段の刑事ルックである。あとは執銃して対衝撃ジャケットとソフトスーツの上着を着るだけだ。
五分で準備は終わり、ハイファが着替えと予備弾に煙草の入ったショルダーバッグを担ぐ。玄関に立って靴を履くとソフトキスを交わし、エレベーターで屋上ステーションに上がった。
モノレールの車両はすぐにやってきた。乗り込むと三駅で降りたそこはメイソン第二ビルである。四十五階の小部屋には寄らず直行エレベーターで屋上へと上がった。
屋上は定期BELの停機場となっていて、風よけドームの閉まった中で客が七、八人、BELが着くのを待っていた。シドはエアカーテンで仕切られた喫煙ベンチを確保し、煙草を吸って定期BELの到着までを過ごす。
十一時五十三分、風よけドームが開いて大型BELが降下してきた。接地すると降ろされたタラップドアの前に列ができる。キャビンアテンダントの掲げたチェックパネルに料金分のクレジットを移し、シドとハイファも乗り込んだ。
十二時ジャストに定期BELは風よけドームの開いたビル屋上からテイクオフする。
「十二時三十分には宙港に着く筈。チケット取ってギリギリだね」
「星系内便は通関もねぇし、楽勝だろ」
事故も起こらずハイジャックにも遭わず、定期BELはアリミア宙港メインビル屋上にランディングした。急いで二人は降機するとエレベーターで二階ロビーフロアに降りる。
自販機でチケットを購入しシートをリザーブすると、ここでもシャトル便は二階ロビーに直接エアロックを接続するということで、シドが一服するヒマもあった。
レオラ行きのシャトル便は出航二十分前から乗り込みが開始された。だがシートもリザーブしてあるので焦る必要はない。ゆっくりと並んでチェックパネルをクリアし客室のシートに二人は収まった。配られたワープ宿酔止めの白い錠剤を飲み込む。
「レオラには十五分でショートワープ、また十五分の計三十分で着だよ」
「こっちの時間で十三時半、メシは向こうで食えばいいよな」
やがてアナウンスが入って出航した。窓外が黒くなるまでに一度、窓を雨が叩いた。
「向こうはどんな星だってか?」
「第四惑星レオラは自転周期が五十時間十二分十四秒、半分にして昼の日と夜の日の交代なんだってサ。着いたら唯一の大陸地は夜だけど、いいよね?」
「夜の海もよさそうだよな。って、寒くねぇんだろうな?」
「ええと、第三惑星ハリダと変わらないみたい。それと随一の街がケンダルだって」
「へえ。あとは着いてのお楽しみにしとこうぜ」
まもなく二人は五体が砂の如く四散してゆくような感覚を味わう。
「ふう。あと十五分だね」
艦内に流れる電波を拾い、二人はテラ標準時・第三惑星ハリダのアリミア時間と並べて第四惑星レオラのケンダル時間を表示する。
「着がケンダル時間で夜の日の二十時三十分か」
「連休だけど、ホテルが取れるといいなあ」
無事にシャトル便は航行を終え、第四惑星レオラのケンダル宙港に着陸した。
ケンダル宙港ではメインビルにエアロックを接続したりはしなかった。降艦してみて二人には理由が分かる。メインビルはたった三階建てだったのだ。だが二次元的に非常に大きい建造物である。リムジンコイルもあったが、殆どの客は自分の足でメイン施設へと歩いていた。
「僕らも歩きでいいよね」
「積極的に足を使わねぇと、なまっちまうからな」
もうここでしっとりとした風は暑く、張り切って歩くとうっすら汗をかくほどだ。殆どの客が半袖にボディジェム、それに浮き輪を担いでいたりしてリゾート気分も盛り上がる。
メイン施設に着くと、まずはインフォメーション端末でマップを落とした。今夜の宿に当たりを付けようと二人でマップを覗き込むと、ホテルには事欠かないことが判明する。リゾート地としてかなりの数のホテルが海沿いに林立していた。
「あ、ここにもミリアムホテルがあるよ」
「なら、そこに行ってみるか」
宙港メイン施設のエントランスを出ると、ロータリーには無人コイルタクシーが多数駐まっていた。乗り込んでハイファが座標指定するとタクシーは身を浮かせて軽快に走り出す。
「この辺りは郊外みたいだな」
「そうだね、緑がいっぱい。あそこ、椰子の木みたいなのが生えてるよ」
「建物っつー建物が見えねぇんだが、大丈夫か、これ?」
「平気だよ、ほら、あっちには明かりも見えてるし」
「そういやこっちには月があるんだな。何て言うんだ、あの月は?」
「別室資料ではカナンだってサ」
美しい銀の円盤に見守られながら走ること約十五分、いきなり視界が開けた。薄い植生の防風・防砂林を透かして目前に海が現れたのだ。
「うわあ、綺麗!」
「こいつは綺麗だな。カナンがもうひとつあるみたいだぞ」
「すっごい、作り物、影絵か何かの世界みたい」
穏やかな海に銀の円盤が映り込み、光を波頭のひとつひとつが拾って虹色に輝いている。波が白い砂浜を侵食しては退き、そこではまさに影絵のように人々が遊んでいるのだった。これだけ明るく海が穏やかなら暑い昼間よりも遊びやすいだろう。
「また二人でこういうの、見られたね」
「ああ、そうだな。これからもずっと、一生、どんなものでも一緒に見ていく、そうだろ?」
「うん」
タクシーのシートの上で二人はそっと指を繋ぐ。
海沿いの道に出るとミリアムホテルまでは五分ほどだった。車寄せに滑り込み、クレジット精算するとドアマンがドアを開けてくれて、二人きりの時間は一旦終わりを告げる。
ホテルマンの掲げたリモータチェッカをクリア、ここでもオートで回転する透明なドアをくぐってホテル内へと入った。まさにここはリーランのミリアムホテルと双子のようで左側にフロント、右側にはロビーという配置も同じだ。ソファに腰掛けた人々が談笑している。
クリーム色だった足元の天然石材は、ここでは淡いパープルだった。
半袖の制服フロントマンにハイファが声を掛ける。
「あのう、喫煙でダブル一室、空いてますか?」
「はい。十二階、一二〇七号室になりますが宜しいでしょうか」
「やった、シド、空いてたよ」
例の如く『ダブル』なる単語に照れて背を向けていたシドが僅かに振り返って目で頷いた。
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