マスキロフカ~楽園7~

志賀雅基

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第11話(BL特有シーン・回避可)

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 そっと舌を触れ合わせ互いの体温を確かめ合った。シドは金髪の後頭部を引き寄せる。同時に深く舌を差し入れハイファの口中を探り、舌を吸って思うさま蹂躙した。

「んんっ……う、ん……んっ」

 深く荒々しいキスに膝が砕け、ハイファは細い腰に回されたシドの腕で危うく支えられる。覗き込むと若草色の瞳はもう潤み切って切ない期待が溢れそうだった。

「リフレッシャ、一緒に、だろ?」
「……うん」

 髪を縛った紐を解くハイファの目元は上気し透明感のある肌に赤みが差していた。

 バスルームの前で二人は全てを晒す。脱いだものの殆どをダートレスに放り込んでスイッチをオンにし、リフレッシャを浴びた。

「やっぱり単身者用に二人じゃ狭いな」
「狭くてもいいよ……あっ、ふ――」

 全身を軽く叩く水滴を背だけ遮ったのはシドの躰、温かな洗浄液で素肌同士が滑らかにぬめる。そのぬめりに包まれ成長したシドの熱がハイファの後ろの敏感な処に触れた。
 向き直ったハイファとシドは抱き合って、液体で摩擦の少なくなった相手の肌を堪能する。

 洗浄液から湯に切り替わったのを見計らい、自分の下腹部に当たっていたシド自身をハイファは掴み、跪くとそっと口に含んだ。
 先端にちろりと舌を這わせると熱い湯だけでない、とろりとした液体が溢れているのが分かる。ピチャピチャと音を立てて吸い取り、舌で形をなぞった。

「うっく……んっ……ハイファ」

 唇で扱かれてシドは思わず呻く。呼吸が浅く、速くなるのを堪えきれない。

「だめだって、その舌づかいは反則だって!」

 温かい口内全体で可能な限り深く扱かれているのに、非常な努力をしなければ腰を動かし突き上げてしまいそうだった。
 白熱する思考はハイファの唇と巧みな舌づかいだけに支配され、いつしかハイファの薄い肩を押さえつけるように手をかけている。

「んんっ……ん、ぅうん」
「あっ、あ、ハイファ……っく、出ちまうから、だめだ!」

 シドは腰の疼きに堪らず呻いた。もう、限界だった。

「あっく……なあ、ハイファ、もう……あ、あうっ!」

 幾度かの痙攣と同時にハイファの口の中に放ってしまう。まるで喉にぶつけるかのような勢いで迸らせたそれをハイファは嚥下し、シドの腰に愛しげに抱きついた。

「先に……すまん」
「いいの。僕が欲しかったんだから」

 バスルーム内をドライモードにして全身を乾かす。シドは跪いたままのハイファの髪にさらさらと温風を通してやる。クセのないこの髪を指で梳くのが好きなのだ。

 二人して全身が乾くとシドはハイファを抱き上げた。ハイファにドアを開けさせ寝室にゆくとベッド上にハイファを横たえる。
 細い躰に己のそれを重ねて口づけた。唇を捻るように合わせると舌を絡ませ合い、唾液を吸い上げてから頬を移動し耳許へ。耳朶を舐め、甘噛みして囁く。

「ハイファ、お前だけだ……俺にこんな想いをさせるのは」

 重みを受け止めるハイファは自分の躰をまさぐる手と、再び勃ち上がらせているシドとを全身で貪るように感じていた。
 胸の小さな突起を弄られ、華奢な鎖骨をねぶられ歯を立てられると、甘い声が洩れ出すのを抑えきれなくなる。

「んっあ、ううんっ……はあんっ」

 上半身をくまなく愛撫する一方でシドの片手はハイファの内腿をなぞり、これもバスルームからずっと変化したままのハイファのものを、ゆるゆると扱き始めていた。

「ああっ……あんっ、ずるいよ、その手も……んっ」

 シドは存分にハイファのきめ細かな上半身を攻めてから膝を割った。
 ハイファの先端から溢れた蜜を指に絡め、淡く色づいた敏感な処に触れる。離して一舐めし高く鳴かせてから僅かに指を挿入した。片手はハイファを追い上げ続けている。

「そんなっ、だめ! おかしくなっちゃうよ、シド、ああんっ!」
「おかしくなっちまえよ。俺だけ先じゃ、不公平だからな」
「あっ、あっ……んんっ、出ちゃう、いくいく、ああっ」

 幾らもせずにシドの手の中に放ったハイファは全身を桜色に染めてぐったりしている。だが挿入されたままの指先が蠢くと、その身はビクリと反応した。
 指は徐々に深さを増してゆく。一本目の長い中指が体内を擦りつつ奥を探った。

「シド、ぅうん……んっ、ああ……やだ、欲しい――」

 達したばかりだというのに、もうシドの指先が欲しい場所に届くのを待ち望んでいる。なのにシドの指は上手く逸らしてしまう。近づけようと細い腰が浮いた。
 そうして身をうねらせて瞑目し眉根を寄せている様は、淫ら極まりなくも美しかった。指先はあっという間に滲んで濡らされ、滑りも良くなっている。

 そんな全身で感じるハイファが愛しくて堪らない。シドは深爪した指先を届く限りの深さまで咥え込ませる。揺らめく細い腰を片手で掴んで抉るように掻いた。
 濡れて傷つける心配はない。欲しがり締め付けてくる粘膜が熱さで場所を示していた。

「ほら、ここだろ。こっちもだ……擦られるだけでいいのかよ?」
「もっと、もっときつく攻めて、刻み込んで……あっ、はぅんっ!」

 焦らされていたのが、いきなり捉えられて弾かれ華奢で細い躰が跳ねる。

 そこからは容赦なく指を増やされ馴らされて、あっという間にハイファは躰の中心が再び張り詰めるのを感じた。
 後ろからも既にぬめりを溢れさせてしまっているのが分かって恥ずかしい。それでも欲しがる躰は淫らにうねり、口からは止めどなく甘い喘ぎが洩れ続ける。

「シド、そこ、いい……ああんっ、や、あん!」
「こら、あんまり動くと傷つけるぞ」
「だって、躰が勝手に……んうっ、そんな、ことまで!」

 指を、シドを欲しがり、腰が揺らめいてしまうのを止められない。シドも容赦なく指で白い躰を嬲った。早く己を埋めたいのはやまやま、だがあまりに反応の良すぎるハイファを指先だけで昂ぶらせ悦ぶ姿を見るのは男としての征服欲を掻き立て期待を煽る。
 躰を思い切り開き数指を咥え込んだ格好でハイファは目に涙を溜め乞うた。

「お願い、シド……もう、欲しい。貴方の、中に――」
「分かった。俺も欲しい」

 全ての指を抜いたシドは蜜が濡れ滴る先端をハイファに押し当てた。

「いいか、もう止められないからな」
「止めないで。お願い、頂戴……はあっ、あっ……あぅっ、太、い!」

 我慢ができなくなっていたのはシドも同じで、ハイファが僅かに息を吐くと同時に普段ならゆっくりと挿入するのに、今日は思い切り芯まで突き入れ貫いていた。

 衝撃に思わず叫んだハイファだったが、直後にこれ以上ない処にシドを感じて喘ぎも洩らせぬほどに深い悦びを得る。次に襲う快感を予感して瞑っていた目を開いた。
 すると若草色の瞳と切れ長の黒い目が合う。

 シドはいつものポーカーフェイスながらハイファにだけ分かる優しい笑みを浮かべている。目顔で問われてハイファは小さく頷いた。途端に耐え切れず涙が一筋流れ出し、頬を伝ったのを見てシドの理性が飛ぶ。

「すまん、ハイファ! 傷つけたらすまん!」
「いいから、思い切り貴方の好きに……あうっ、はうっ!」
「……くっ! まだ、きつい――」

 激しく腰をスライドさせ始めたシドはハイファの中の居心地に目が眩むような感覚を覚えてのめり込んだ。何度行為に及んでも初めてこじ開けたかのようにきつい。
 それでいて柔らかくも温かで絡み付かれ奥へ奥へと誘い込まれて思考が白く灼けた。

 ハイファも熱いシドを最後まで受け入れ、反り返った先端から根元までの全てで粘膜を擦り立てられて思考の何もかもを奪われる。

「ああん、いい、すごい、シド……はぁんっ、硬い、擦れるよ!」
「ハイファ、すっげぇ気持ちいい、ずっとここにいたいぜ――」

 離れてしまう寸前まで引き抜き、また腰をぶつけ叩き付けるようにシドは貫いた。もうハイファを隙間なく埋め尽くし、放出することしか考えられなかった。

 細い躰を遠慮なく揺らす。ハイファの喘ぎが一層トーンを高くする。

「ああ、シドっ……もう、や、んんっ、いく、あっ!」

 途端にシドに先端を掴まれてハイファは堪らず悲鳴のような喘ぎを洩らした。疼きが最高潮に高まったそれを堰き止められハイファは思わずシドを締めつける。

「うっく、一緒に、ハイファ……お前の中を、濡らすぞ!」
「いっぱい、思い切り出して! 僕を濡らして、熱くして!」

 互いに煽り昂ぶらせつつ数回スライドさせたシドは手を緩めハイファを解放した。同時に己をハイファの奥で脈打たせる。本当に暴発するかの勢いで膨れ上がったシドはその形をくっきりとハイファの体内に刻み込み鋭く熱を放出した。

 何も考えられない数瞬ののち、シドはハイファの隣に横に身を投げ出す。いつも通りに左腕で腕枕をしながらシドは長い金髪を指で梳いた。さらさら、心地良い。
 若草色の瞳から零れた雫をそっと舐め取って、おもむろに口を開いた。

「――なあ。俺たちもさ」
「ん、なあに?」
「指輪くらい作るか?」
「どうしたの、急に。未だに機捜課でも僕との仲を認めない照れ屋で意地っ張りが」
「や、お前、マックスとキャスの手ばっか見てたろ」
「うーん、バレちゃったか。最近の僕ってそんなに分かりやすいのかな。……ちょっと、ね。ちょっとだけ羨ましかったかも。でも僕は現状で満足だよ、本当に」

 毛布を引っ張り上げ、細い躰を抱き締めながらシドはそれでも言い募る。

「いいんだぞ、左の薬指なら銃、撃つのにも邪魔にならねぇしさ」
「そこまで言うとこ見ると、シドの方が羨ましかったんじゃないの?」

 自分の髪を梳き続ける愛し人を見ると既に端正な横顔は目を瞑り眠りかけていた。
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