砂中で咲く石Ⅰ~Barter.11~

志賀雅基

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第49話(エピローグ)

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 あれから一ヶ月ほど経って、長期戦の特別任務を終えた霧島と京哉はぐったりと機捜の詰め所でデスクに突っ伏していた。
 もう霧島はオンライン麻雀で遊ぶ気力もない。辛うじて京哉は秘書の職務を忘れず、ぽちぽちと一本指でノートパソコンのキィを打っている。

 副隊長席から小田切が気の毒そうに二人を見比べていた。

 時計を見た京哉はずるずると移動し、給湯室で茶を淹れて在庁者に配給する。

 そこで点けっ放しのTVが十二分クッキングを放映し始めて、霧島と共に京哉は見入った。シュウマイの作り方をマスターしたところで霧島の腹が豪快に鳴る。毎度お馴染みの幕の内弁当を京哉は三個確保して上司たちにも配り、自分も手を合わせて食し始めた。

 それでも本日の幕の内は冬らしくアンコウの肝の煮物が入っていた。それに噛みついた京哉は何となくTVに顔を振り向け、信じがたいものを目にして思わず固まる。

 国際ニュースに映った人物に驚いたのだ。一瞬後には大声を出している。

「忍さん! じゃなくて霧島警視、あれ見て下さい!」
「ん、ああ、何だ……って、おい、嘘だろう!」 

 画面には数え切れないほどの人間が渦巻き、カメラがクローズアップした人々の中央には、見覚えのある茶色い髪の男が多数のマイクを向けられ、手を振っていたのである。

 それは紛れもなく凄腕パイロットのハミッシュだった。

 興奮した口調で金髪の男性リポーターが喋り始め、同時通訳がなされる。


《国連平和維持軍が平定したプラーグにて、全国民の署名により立ち上げられた選挙管理委員会は新大統領選の開票結果を発表、旧反政府武装勢力として収監され獄中出馬したハミッシュ=マクギャリー氏が当選という異例の事態となりました!》


「って、これ、『副大統領としてアーサー=クーンツ氏が指名され』、おいっ!」

「嘘みたい、ジョセもキャラハンもレズリーまで映ってますよ! 霧島警視って確か何か企てて、もとい『生きてこそ成せることもあるのだと告げてきた』って仰ってましたが、貴方はいったい誰に何を告げてきたんですか?」

「別れた時だ。ジョセとユーリンにキスを返した時、ユーリンには『絶対に収監されるな、そして新大統領選の選挙管理委員会を国民レヴェルで立ち上げろ』と。ジョセにはハミッシュへの伝言で『何があっても生き残って大統領選に出馬しろ』と言い残してきた。まさか生きて実行するとはな」

 本日上番の二班の隊員たちが何事かと注視する中、まだ二人は呆然と立っていた。

「僕に内緒でそんなことを……でもこんなの、国連が承認するんでしょうか?」

「それはこれからのあいつらが戦って勝ち取ることだが、村民のみならず街の人間たちも総出で拘置所をこじ開けたというしな。市民感情は暫定政権の最大の武器になるだろう。誰よりもそれを理解している奴が大統領選を勝ち抜いたのだからな」

「そうですか。本当にやったんですね、ハミッシュたちは」
「砂漠の民はしぶといな」
「事態が収まったら、また砂まみれのじゃりじゃりになりに行きますか?」
「ああ、それもいいな――」

 固さのあまり砕けるよりも、舞台を変えて信念を貫くことを選んだ彼らの戦いは、まだ終わっていない。



                            了

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