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第48話
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ふと目覚めた京哉はいつもの腕枕がないのに気付いた。
天井の蛍光灯は常夜灯モード、薄暗がりでベッドサイドのライティングチェストに目をやると置いてあるデジタル時計の表示は午前二時過ぎである。身動きしてみると結構ガタがきているのが分かった。
肝心の霧島はトイレにでも行ったのかと思い、毛布を被って横になったまま暫く待ったが霧島が戻ってくる様子はない。自分を置いて出掛けることはないので何処かにいる筈だったが、室内はしんと静まりかえってTVの音も聞こえてはこなかった。
幾ら何でも霧島が起きだしたのに気付かなかったのは、やはり自分は相当酔っていたのか、それとも例の如く失神させられてしまったのかと考えながら毛布の下の自身を見下ろすと下着とパジャマの上衣を身に着けていた。
霧島が着せてくれたらしい。またも躰まで綺麗に拭かれているようだ。
ゆっくりとベッドから起き出してみる。足腰がふわふわしたが歩けなくもない。それに今日明日は休日で少々無理しても構わない。そっと歩いて寝室のドアを開けた。
短い廊下を挟んだ向こうを透かし見ると、リビングの明かりが点いている。
カタツムリが這うように本当にゆっくり廊下を辿ると、やはり霧島はリビングにいた。わざと気配を際立たせて立ち尽くした年上の愛し人の後ろ姿に歩み寄る。
「すまん、京哉。もういいのか?」
振り返らずに訊かれ、京哉も霧島の顔を見ずに答えた。
「はい、大丈夫です。でも謝られるようなことは何もされていませんから」
黙って頷いた霧島はTVボード上のA4版の写真を眺めていた。一緒に置かれた砂の花がとろりと蛍光灯の明かりを含んで煌めいている。今はどちらを見つめているのか分からない長身の肩が僅かに震えていた。
「仲間なんだ」
「そう、ですね」
「こいつらに会えるのなら、私はまた砂まみれになってもいい。アメディオのギターで、ジョセやユーリンの踊りを見て……ハミッシュの超低空飛行のヘリでキャラハンと馬鹿話をして、レズリーやクーンツと焚火を囲んで豆のシチューを食って」
「みんなでなら、いつも豆でも美味しかったですよね」
「私たちの素姓を知っても仲間だと言い切ったんだ、こいつらは」
「バレてたのに一度も疑われなかったですもんね」
「こいつらは、砂に削られない固い信念と誇りを持ったが為に――」
「少なくとも、もう街の広場に十字架が立つことはないですよ」
「そうだな。けれど、どうしてだろうな。私は……」
京哉はまたカタツムリの速度でキッチンに行くと、ふたつの果実を持って戻る。小刻みに揺れるバディでパートナーの逞しい背に触れ、やはり顔は見上げないまま、その手に黄色い果実をひとつ握らせた。
「砂漠で助けられましたね、これに。食べませんか?」
「本気で死ぬほど旨かったな」
「ところでこの実、何て名前なんですか?」
「見てくるの、忘れた」
「何ですか、それは?」
写真を眺めながら二人は果実にかぶりついた。砂漠流に皮も剥かずに、である。
「やっぱりあのときの方が美味しかったですね。少し酸っぱいかも」
「だがこれを食うと、あいつらがヘリで笑って待っている気がするな」
天井の蛍光灯は常夜灯モード、薄暗がりでベッドサイドのライティングチェストに目をやると置いてあるデジタル時計の表示は午前二時過ぎである。身動きしてみると結構ガタがきているのが分かった。
肝心の霧島はトイレにでも行ったのかと思い、毛布を被って横になったまま暫く待ったが霧島が戻ってくる様子はない。自分を置いて出掛けることはないので何処かにいる筈だったが、室内はしんと静まりかえってTVの音も聞こえてはこなかった。
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霧島が着せてくれたらしい。またも躰まで綺麗に拭かれているようだ。
ゆっくりとベッドから起き出してみる。足腰がふわふわしたが歩けなくもない。それに今日明日は休日で少々無理しても構わない。そっと歩いて寝室のドアを開けた。
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カタツムリが這うように本当にゆっくり廊下を辿ると、やはり霧島はリビングにいた。わざと気配を際立たせて立ち尽くした年上の愛し人の後ろ姿に歩み寄る。
「すまん、京哉。もういいのか?」
振り返らずに訊かれ、京哉も霧島の顔を見ずに答えた。
「はい、大丈夫です。でも謝られるようなことは何もされていませんから」
黙って頷いた霧島はTVボード上のA4版の写真を眺めていた。一緒に置かれた砂の花がとろりと蛍光灯の明かりを含んで煌めいている。今はどちらを見つめているのか分からない長身の肩が僅かに震えていた。
「仲間なんだ」
「そう、ですね」
「こいつらに会えるのなら、私はまた砂まみれになってもいい。アメディオのギターで、ジョセやユーリンの踊りを見て……ハミッシュの超低空飛行のヘリでキャラハンと馬鹿話をして、レズリーやクーンツと焚火を囲んで豆のシチューを食って」
「みんなでなら、いつも豆でも美味しかったですよね」
「私たちの素姓を知っても仲間だと言い切ったんだ、こいつらは」
「バレてたのに一度も疑われなかったですもんね」
「こいつらは、砂に削られない固い信念と誇りを持ったが為に――」
「少なくとも、もう街の広場に十字架が立つことはないですよ」
「そうだな。けれど、どうしてだろうな。私は……」
京哉はまたカタツムリの速度でキッチンに行くと、ふたつの果実を持って戻る。小刻みに揺れるバディでパートナーの逞しい背に触れ、やはり顔は見上げないまま、その手に黄色い果実をひとつ握らせた。
「砂漠で助けられましたね、これに。食べませんか?」
「本気で死ぬほど旨かったな」
「ところでこの実、何て名前なんですか?」
「見てくるの、忘れた」
「何ですか、それは?」
写真を眺めながら二人は果実にかぶりついた。砂漠流に皮も剥かずに、である。
「やっぱりあのときの方が美味しかったですね。少し酸っぱいかも」
「だがこれを食うと、あいつらがヘリで笑って待っている気がするな」
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