【完結】リライト成功!〜クズ王子と悪役令嬢は、偽聖女と底辺兵士と共に、最低最悪のシナリオを書き換える〜

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第一章 異世界転移と悲惨な結末

10.突然出てくる幼馴染

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10.突然出てくる幼馴染

 エリザベートたちは礼拝堂を出て、
 ふたたび王子の宮殿へと戻った。

 レオナルドが緑板を見ながら、眉をしかめて言う。
「……何回見ても変わってねえな。
 むしろ壮絶さが増してないか? エリザベート」
 呼び掛けられ、私はうなずいた。

 ”公爵令嬢は世界征服を企み、
 その魔力を使って王族と大司教の殺害を目論んだとされ、
 激しい拷問とはりつけの刑を受けた後、
 火あぶりに処されて死す”

 ジェラルドが私を安心させるように言う。
「世界征服など荒唐無稽です。大丈夫ですよ」
 私は曖昧に笑い返すことしか出来なかった。

 私は”エリザベート”に転移して、
 二つの秘密を抱えていた。

 ひとつは、彼女の力についてだ。
 その魔力は公表されているより、はるかに大きい。
 それこそ世界征服が荒唐無稽な望みではないくらいに。

 転移前、エリザベートはずっと
 常に実力を押さえて生きてきたようだった。
 王家に問題視されないように、必死に。

 私が転生を抜け、オリジナルに戻った時のことを考えたら、
 引き続きレオナルドたちにも秘密にしておくべきだろう。


 そしてもう一つの秘密は。

「あ、聖女の次の婚約者として、俺が上がってるぞ」
 緑板スマホを見ながら、のんきな声でレオナルドが言う。
「聖女は王族か、シュバイツ公爵家に嫁ぐことになってますからねえ。
 ……偽の聖女で申し訳ないですが」
 フィオナが彼に劣らず、のんびりとした口調で言う。

「そうなったら、当面は安心ですね。
 殿下が聖女の任務を制限すれば、力が無くとも問題ないですし
 ”聖女の夫”には、王族にも手が出しにくいですから
 殿下の立場も守られますね」
 ジェラルドがニコニコしながら言う。

 そうなのだ、どちらにとっても良い事なのだ。
 二人にとっては……だけど。

 私は、緑板スマホを熱心に見ているフリをして落ち込みを誤魔化す。
 ……可哀そうなエリザベートさん。

 彼女は、レオナルドを愛していた。
 幼い頃から、彼が大好きだったのだ。

 まったく態度には出てないが
 彼との結婚を心から願っていた。

 だから、彼が聖女と親しくなり、
 自分に冷たくなったことにショックを受けていた。
 そしてあの日、婚約破棄されると思い、
 今までで一番の絶望を感じていたみたいだ。

 転移者の私としては、彼女のその記憶を知っても、
 フィオナの婚約を無くす計画に協力せざるを得なかった。

 おそらくオリジナルもそうしたろう。
 冷酷非情といわれる彼女だけど、過去を見る限り
 客観的には真面目で、優しいだと感じたのだ。

「おい、見て見ろ! イザベルたち離婚しないみたいだぞ!」
 そう言って検索結果を見せるため、
 レオナルドが緑板スマホを差し出すのと、
 私が上半身を起こすのが同時だった。

 その瞬間、私と彼の緑板がゴン、とぶつかった。
「悪りい!」
「……大丈夫、これ、固そうだし」
 私がそう言うと、レオナルドは緑板をさすった。そして。

「あれ? なんか検索マークの横にハートが出て来たぞ?」
 レオナルドは躊躇することなく、そのマークに触れる。
 すると、私の緑板が震え始め、
 検索マークの横に現れたスペードのマークが点滅した。
「これって、もしかすると!」

 私がそのスペードマークに触れると、
 画面の中央に”レオナルドと通話中”と出た。
「「もしもし」」
 隣でレオナルドが緑板に向かって言い、
 同時に私の緑板から声が出る。

「……通話機能、あったんだ」

 ************

「もしもしー、これすげえ便利だな」
「そうですね、現代人としては今さらですが」
 レオナルドとジェラルドが会話をしている。

 緑板同士を接触させることで、
 通話先として登録されるのだ。
 ますますこの緑の石版は、現実世界のスマホに近づいていく。

「もふもふー」
「?! どうしてモシモシじゃないの?」
「異世界なのでアレンジしてみました」
 フィオナが電話の向こうで楽しそうに言うので
 私はつい、笑ってしまった。

 昨日、彼女は公爵家に泊まってもらった。
 そして二人でたくさん話したのだが、
 転生した子はとても素直な良い子だった。

 彼女をこの世界で、危険な立場にさせるわけにはいかない。
 あんな最後はもってのほかだ。

 私はあらためて画面を見る。
 レオナルドはスペード、ジェラルドはクローバー。
 私がハートで、フィオナがダイヤ。

 それを押せば通話できるが、通話中に他のマークを押せば
 その人も会話に加わることが出来る。
 つまり全員でグループ通話することもできるのだ。

 私たちはこの、離れていても繋がっていられる状況に安心した。
「やっぱり電話は文明の利器だな!
 これで離れていても”情報”を共用できる」

 嬉しそうに緑板を眺めるレオナルドを見ながら、私は考えた。
 エリザベートも幸せになる道を探さないとな、と。

 ************

 私が複雑な心中のまま公爵家に戻ると、
 夕刻だと言うのに客が来ていると言われた。

「カイン侯爵子息がお待ちです」

 急いで客間に向かうと、そこには久しぶりの幼馴染が立っていた。
「突然お邪魔してすまない、エリザベート。
 どうしても君に会いたかったんだ」
 安心したように彼は笑った。
 艶やかな栗毛に薄い茶色の瞳の、優し気なハンサムだ。

 そして私に、真剣なまなざしを向けて彼は言った。
「少し話せるかい? 大切な話があるんだ」

 ************

 中庭にあるガゼボのイスに、私たちは座った。
 夕暮れ時、お母様が大切にしているバラ園が夕日に染まっている。
 とても綺麗で穏やかな光景だった。

「大丈夫かい? エリザベート」
「え? 何故?」
 突然心配そうに言われて、私はとまどった。

「だって君は……あの聖騎士団の結成祝いの場で……」
 ああ、彼も知っているのだ。
 私が近々、”婚約破棄されるだろう”という噂を。

「ええ、あの”聖なる盾”の研究についてね」
 私が彼に気を遣わせないように言うと、
 カインはあからさまに、残念そうな顔をしたのだ。

「ああ、そうだ。僕はてっきり、
 君が解放されるものだと思っていたのに」
 え?! なんですって? 私は驚いた。

 カインはさもガッカリしたように、肩を落として続ける。
「本当に残念だよ。間違いないってウワサだったのに。
 もし王子が婚約破棄の宣言をしていたら、
 僕はその場ですぐに、君に結婚を申し込むつもりだったんだ!
 ……それなのに」

 大仰な身振りで無念さを表すカイン。
 私は絶句してしまう。
 それって小説によくあるパターンでは?

 無情にも婚約破棄される令嬢。
 だけどその場になぜかいきなり
 長年彼女を想い続けた素敵な幼馴染が出てきて
 彼女に結婚を申し込み、婚約破棄した相手を見返す
 ……ってやつよね。

 どうしようどうしよう! 
 エリザベートはこの人のこと、どう思っていたんだろう?

 突然舞い込んだロマンスに動揺していたら、
 カインは弱々し気に微笑んだ。

「……でも、王子は君を離す気はないようだ」

 否定しようとした私を制し、彼は言った。
「もともと、くつがえすのは無理だと思ったんだ。
 公爵家の後ろ盾を王子が手放すわけ、無いもんな。
 そもそも昔は王子も乗り気だったんだろ?」

 以前の王子のことを言われ、私は胸が痛んだ。
 幼い頃からずっと、彼とは仲良しだったのに。

 彼が変わったのは、寄宿学校に入学してからだ。
 あの儚げで優しかった彼の母親が亡くなってから。

 ぼんやりと考える私に、カインは続ける。
「本当に残念だけど、君を諦めなくてはならないようだ。
 でも、これからも僕は君を想い続けるよ。
 できれば君も僕のこと、忘れないで欲しい」

 私の前で片膝をつくカインは、切ないまなざして見上げてくる。
「ちょっと待って、カイン!」

 彼は辛そうに視線をずらして言った。
「僕は先日、第一軍に配属されたんだ。
 きっと危険な任務が増えるだろう。
 でもそれは、君を守るために戦っているのだと思って欲しい」
「いや、でも」

 何も言わせまいとしているのか、畳みかけるカイン。
 ガバッと顔をあげて、私に懇願する。
「だからせめて、いつでも君を感じていられるよう
 君の魔石を僕に送ってくれないか?!」

 私はそこで”ん?” と思う。
 ……魔石、ですか?

 魔石は魔力が込められた石だ。
 それを投げて相手にぶつければ魔力が作動し、
 相手に攻撃することが出来る。
 私の魔石なら、並みの魔獣など一撃だ。

「君からの想いは、僕の心の支えになるだろう」

 いや、私の最強な魔石があれば、
 心の支えというより体の守りになるんじゃない?

 ……もしかして、君の力で僕を守ってくれ、ってこと?

 かなり雲行きが怪しいけど、
 私は彼を手で制して叫んだ。
「私とレオナルド第三王子との結婚は無くなるわ!
 彼は国益のために、聖女を妻に迎えると思う」
「ええっ!? なんだって?」
 カインは飛び上がるほど驚いた。

 私は彼に、簡単に事情を説明する。
「聖女の現・婚約者は、あまりにも不貞が過ぎると、
 教会から婚約の見直しが求められたのよ。
 今日の司祭たちの様子では、間違いなく解消されるわ」
 目を丸くするカイン。口を開けて固まっている。

「聖女は王族か、あの公爵家に嫁ぐ習わしだから、
 相手はレオナルド王子になるでしょうね。他にいないし」
 私はつとめて淡々と言う。

 カインは衝撃を受けた様子で立っていた。
 そのまま黙り込んで、焦ったように視線を私から逸らす。

 私はもう、気が付いていた。

 この人は最初から、
 エリザベートに求婚する気なんてなかったということを。

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