【完結】リライト成功!〜クズ王子と悪役令嬢は、偽聖女と底辺兵士と共に、最低最悪のシナリオを書き換える〜

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第三章 武器は"情報"と"連携"

62.イザベル伯爵夫人の復讐

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 62.イザベル伯爵夫人の復讐

 新しい聖女は残念ながら、
 ”明らかに自分が原因の失敗をしても絶対に謝らない”
 という種類タイプの人間だった。

 彼女は聖女として就任した直後から周囲と衝突を繰り返し、
 手に負えなくなった教会関係者は、
 元・聖女であるフィオナに彼女の世話を押し付けたのだが。

 彼女の負けず嫌いな性格を利用して
 ”あなたはもう不要です”と宣言させることで
 フィオナは”イチ抜けた~”と逃げ去ることが出来たのだ。

「うふふ。捕まらないように、
 しばらくガウールに行ってしまうのも良いかも。
 メアリーと一緒に醤油を改良したいですし」
 そんなことをニコニコ言いながら、
 俺の宮殿から帰っていったのだが。

 世の中はそう、甘くはないのだ。

 案の定、翌朝フィオナは半泣きで、俺に電話をかけてきた。
「夜が明ける前から、の襲撃を受けました~
 ”聖女が仕事に馴染むまで付き添うのが、
 前任者の責任だ”って!」
「……なんでだよ。
 ”ひとりでできるもん!”って聖女に言わせたんだろ?」

 寝起きで頭がボーっとしたままの俺に、
 フィオナはとんでもない人物の名をあげたのだ。
「これは教会関係者や、聖女からの命令ではありません。
 イザベル伯爵夫人が、使者を送って来たんです!」

 イザベル伯爵夫人。
 シュバイツ公爵家の娘で、フィオナの元婚約者であるディランの姉だ。
 かつて自分の弟の婚約者となったフィオナを、
 小姑根性丸出しで、毎日”公爵家へ嫁ぐための教育”と称し
 ネチネチとイビリ倒していた女だ。

 しかし俺たちの緑板スマホフル活用した作戦により、
 彼女を撃退し、無事に婚約破棄させることに成功したのだ。

「……アイツか。厄介だな。
 さぞかし俺たちを恨んでるだろうな」

 イザベル伯爵夫人はフィオナに対し、
 ”ディランが愛人を何人持とうと、それを容認し支えろ”などと
 卑屈な考えを強要してきたため
 彼女自身がその考えを”神に対する誓約”とするように
 俺たちは罠にかけてやったのだ。

 おかげでイザベル伯爵夫人はいま、
 自分の夫の愛人と子どもを黙認するどころが
 支えなくてはいけないのだ。
 これがあの気位の高い女にとって、どれだけ屈辱的なことか。

「絶対、復讐する気満々でしたよね。
 ”覚えてらっしゃい”、なんて言ってましたから」
「間違いないだろうなあ。
 ずっと機会をうかがっていたんだろう」

 落ち込み怯えるフィオナをなんとかなだめ、
 俺はとりあえず、指定された場所へ行くよう促した。
 ここで妙な抵抗を見せる方が、敵の思う壺だろう。

 フィオナが教会に非協力的だという印象を与えることは、
 あの恐ろしい”あらすじ”に近づくことになるから。

 ************

「だから、その手順を間違えたから、
 聖歌隊の皆さんがお困りだったんです」
 フィオナが必死に説明する。
 その後ろで聖歌隊の面々は、
 すでに”お困り”の時期を過ぎ
 ”お怒り”といった表情で立っていた。

「え? 間違えたら自分で気が付くと思いますけど。
 私の手順で正しかったはずですわ」
 すました顔で、新しい聖女べリアが言う。
 茶色の髪にヘーゼルの瞳、整った顔をしているが、
 どこか不貞腐ふてくされたような表情が嫌な印象を与える。

「それを気が付かなかったんでしょ?
 ……ったく、素直に謝ればたいしたことではないのに」
「本当ですよ。どうして”すみません”が言えないのかしら」
 聖歌隊の男が不満を口に出し、横の女も同意する。
 他の隊員もうなずきあっている。

 それを聞き、べリアは首をかしげて言い返す。
「たいしたことないのでしたら、謝罪など不要では?
 ……皆さんに欠けているのは”許す心”です。
 未熟な自分を乗り越え、”許す心”を育ててください」

 あんぐりと、開いた口がふさがらない聖歌隊の面々の前で
 フィオナが痛みに耐えるような顔で、
 額に手を当てて目を閉じている。

「そうですわ。
 聖女に謝罪を要求するなど常識ではあり得ません。
 フィオナ、あなたが代わりに謝罪すべきでしょう?」
 そこに、久しぶりに聞く尖った女の声がした。

 イザベル伯爵夫人が、手に持った扇を口に当て、
 見下すようにフィオナを見ながら言い放つ。
「前任者の説明が不十分でしたのよ。
 どうして、きちんとこなせないのかしら。
 ……聖女様、どうかお気になさらず」

 うわー、相変わらずだな。
 その物言いに腹を立てたエリザベートが
 その場に乗り込もうとするのを抑え、
 俺たちはやり取りを見守り続けた。

「いいえ、ちゃんと説明してましたよ」
「ええ、何度も、何度も!」
「僕でもわかったし、覚えたのに。
 なんで間違えちゃったんだろうね?」
 聖歌隊だけでなく、その場にいた町の人々が抗議してくれる。

 俺はわかっていた。
 フィオナは以前から、みんなに愛されていたのだ。
 聖女となっても謙虚でおごることなく、
 不器用でそそっかしいところまで、
 飾らない彼女の事を、みんな慕っていたのだ。

 思わぬ反撃に、しかも子どもにまで言われて、
 べリアは顔を赤くし、
 イザベル伯爵夫人は彼らを睨みつけていた。

「聞いた以上に”謝ったら負け”スタイルの女だな」
 俺は検索で調べた彼女の生い立ちを思い出す。

 孤児院で育ったフィオナと違い、
 聖女べリアは幼い時分にその力を認められ、
 親元を離れて聖職者の養女になっていた。

 他にも数人、”聖なる力”を持つ者が引き取られており、
 ”誰が最も優秀か”、”ダメな子は誰か”
 そういったことを競いながら育ったようだ。

「防衛本能なんでしょうね。
 彼女にとって謝ったり自分の非を認めることは、
 自分の存在意義がゆらぐことなのでしょう」
 優しいジェラルドは眉をよせてつぶやく。

「謝ったら相手より下の立場になった気がするんでしょうね。
 狭量で虚栄心の強いタイプなのかしら」
 フィオナを困らせるべリアが許せないのか、
 エリザベートは憤慨しながら言う。

 なんにせよ、べリアはほっといてもいい。
 問題はイザベル伯爵夫人だ。

 ”イザベル伯爵夫人はどうして、しゃしゃり出て来たのか”
 その検索の結果は、かなりヤバイ事態を示唆していた。

 それはグエル大司教がイザベル伯爵夫人に
 ”夫の愛人を大切にする”という”神に対する誓約”の解除をエサに
 ”フィオナを仮の聖女として復帰させる”、という取引だったのだ。

 つまり、彼らの作戦は。

 べリアが聖女になれなかった責任を全てフィオナに追わせる。
 しかし聖女がいない状態は祭祀の際に困るため、
 フィオナに”仮の聖女”の役割をさせる、というものだ。

 なんでグエル大司教は、ここまでフィオナに執着するのだ?

 みんなに反論されても、べリアは非を認めなかった。
「……間違ってないのに。私のせいではないわ」
「そうですわ! まだ聖女になって間もないべリア様が
 この役割を負担なく進められるようにするのが
 前の聖女の努めでしょう!」


 イザベル伯爵夫人は甲高い声を張り上げ、
 みんなの前でそう主張している。
 フィオナがうまくやれていないことを広めるために。

 フィオナは真面目で素直なところがあるため、
 フォローが不十分と言われたら、
 ”そうかも”、と思ってしまったのだろう。
 しょんぼりと頭を下げている。

 キイキイわめきたてるイザベルと
 フィオナが不出来な悪者であるかのような目で
 上目遣いに口を尖らせて見ているべリア。

 もう限界だな(特にエリザベートの腕を抑えるのが)と思い
 俺たちが物申すために足を踏み出した、その瞬間。

「そんなの元・聖女の役割ではないでしょう、姉上。
 フィオナにはなんの責任もありませんよ。
 たとえ新しい聖女が不適格とされ、退任したとしてもね」

 突然現れたシュバイツ公爵家のディランは
 フィオナの横まで歩みを進めつつ、
 危険なを真っ二つに叩き折ったのだ。

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