【完結】リライト成功!〜クズ王子と悪役令嬢は、偽聖女と底辺兵士と共に、最低最悪のシナリオを書き換える〜

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第三章 武器は"情報"と"連携"

87.第二王妃との対面

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87.第二王妃との対面

 以前、シュニエンダール国が密かに企てた
 ”勇者の剣 強奪計画”を阻止したのは俺たちであり、
 さらに仇敵であるダルカン大将軍と俺たちが親密であることを
 第二王子フィリップからの書簡で知った王族。

 俺たちが自分に反旗を翻しつつあることが確定し
 王妃は矢継ぎ早に、攻撃を繰り出してきたのだ。

 まずは俺が滞在中と見越して、
 以前から自分に対し気に入らない態度をとっていた町を
 自分の超・魔力を使用し、”生ける屍”だけの廃村に変えた。

 次に”諸国で魔獣討伐などの貢献をしたのは
 実は第二王子フィリップであり、
 第三王子レオナルドはその業績を盗んだだけ。
 それを隠すため、第二王子を殺害した”
 という濡れ衣をかけ、国中に広めたのだ。

 俺を完全に”この国の悪人”として仕立てるつもりらしい。
 全ての人々を廃人に変える巨大な魔力を持つことを
 俺たちに対して充分に誇示し、逆らう気を無くした後で。

 確かに、いったんはショックを受けた俺たちだったが
 そんなことくらいで引くわけにはいかない。

 俺たちは、オリジナルから体を借りているのだ。
 彼らのためにも、この戦いに負けるわけにはいかない。
 もちろん、自分たちのためにも。

 ************

 俺は次兄フィリップの居場所ではなく、別の場所へと赴いた
 それは。

「なぜ?! お前がここにいるのっ?!」
 馬車に乗り込んできた俺の顔を見て、
 第二王妃が怯えた顔で叫ぶ。

「ずっと宮中から出たことが無い貴女が、
 こんな国境近くまで来ていることの方が驚きですよ」
 俺は笑顔で答え、向かい側に座った。

 元・侯爵家の箱入り娘が、息子が殺されるらしいと知り
 居ても立っても居られず、ここまで馬車を走らせたのだ。
 誰よりも先に、彼を保護するために。

 彼女の護衛はみんな、馬車の外でスヤスヤと寝ている。
 フィオナが眠りを誘う魔法で眠らせたのだ。

 第二王妃は怒りに染まった顔で俺を睨みつける。
「想像以上にクズだったわね!
 あの子の成果を奪った挙句、殺そうとするなんて!」
 それを聞き、俺は首をかしげながら言う。
「そんな誤情報、誰に聞いたんです?」

 彼女は怒りに震える丸い顔で、俺を睨みつけて言う。
「王妃様からお聞きしたのよ! だから間違いないわ!
 お前があの子を殺そうとしている、って。
 ここに居るってことは、誰かに命令したのね!?」

 なるほど。”誰が言ったか”は確かに重要な判定要素だが、
 政治や私怨が絡む場合は別次元だ。

「おかしくないですか? その話が本当でしたら、
 ガウールで数々の魔獣を倒した男が
 金も権力も無いクズ王子の手にかかるとは思えませんが。
 それに国中に出た”お触れ”では、
 俺が”殺そうとした”ではなく、”殺した”だったんですよね?」

 それを聞き、第二王妃は泣きそうな顔になる。
 ”食うこと”でストレスを解消しているらしく
 息子である次兄同様、ぽっちゃりしてはいるが、
 若い頃はさぞかし可愛らしい人だったのだろう。

「……だって、王妃様も言っていたわ。
 あの王子は抜け目がなく、共犯者も多いって。
 だから腕の立つ誰かを頼んだに違いない、
 もう間に合わないだろう……って」
 そう言って泣き出し、座席に崩れ落ちてしまう

 参ったな、さすがに我が子を案じる母親は見ていられない。

「そうですね。王妃様の情報は、そこだけ正しいです」
 彼女は涙にぬれた目で俺を見上げる。
「俺は結構、抜け目ないんですよ。それに仲間も多い。
 すでに腕の立つ仲間を、彼の元に送ってあります」
「レオナルドっ!」

 俺は残念そうな笑顔で、彼女に首を振って言う。
「だからこれから、フィリップ王子兄上を暗殺しようとしても
 もう手遅れでしょうね、奴らの目的は果たせないでしょう。
 彼を手にかけ、その罪を俺に着せるという目的は」

 俺が何を言っているのか分からず、彼女が眉をひそめる。
「……どういうこと?」
「あなたはなんとなく、気が付いているんじゃないですか?
 王妃や国王の動きがおかしいことを
 ただ、見て見ぬふりをしてきただけだ」
 俺にそう言われ、第二王妃はぐっと詰まり、視線を落とす。
 そしてうつむいたまま、つぶやいた。

「おかしくなんか、ありませんわ……今さら。
 最初からこうでしたもの。王太子の婚約者として
 幼い頃から王太子妃教育を受け続けていたのに、
 結婚式目前となって急に”聖女を王妃とする、お前は側妃だ”
 ……ですって。私も両親も、ショックで何週間も眠れなかったわ」

 イライザ王妃は、自分を振った勇者おやじと恋敵の弓手母上を陥れるために
 その強大な力を誇示して、”王妃にせよ”と国王に迫ったのだ。
 彼女もまた、イライザ王妃の犠牲者なのだろう。

 彼女が悔し気に言葉を続けた。
「あれからずっと、私はいないものとされてきましたわ。
 国王が私のところに来てくれたのは、王妃が身ごもっている間だけ。
 そのおかげでフィリップを授かることができたけど、
 それ以降はまったく相手にされなかった……。
 ……特に、お前の母親を召し上げてからはね」

 そう言って、恨みがましい目で俺を見上げる。
「例えば私が国王様に、何かが欲しいとお願いするじゃない?
 すると国王様に、”それは女に人気があるのか?”と尋ねられ、
 私が”これを欲しがらない者などいません”、って答えると」

 彼女は涙をこぼしながら、
 可笑しくてたまらないというように言う。
「するとね? 私が希望したが、
 あなたの母親のところに届くのよ!
 それもたくさん! いろんな種類が!
 私のところにはひとつとして届かないのにっ!」

「俺の母上は、愛する夫と引き離され、
 むりやり召し上げられたんです。
 そんなことをされてもずっと、国王を拒絶し続けていましたよ。
 ざまあみろって、思いませんか?」

 俺の言葉に、彼女は片手で口を覆い、驚いた顔になる。
「ええっ、夫?! 結婚していたの? あの方!」
「そうですよ。母が弓手だったのはご存じですよね?
 夫とは勇者のことです。イライザ王妃は勇者に振られ、
 彼らを引き裂くためだけに王妃になったのです」

 そんなの嘘よ、と言い出すかと思いきや、
 彼女はあらぬ方向を見つめ、独りうなずいている。
「……そうなのね……それで、なのね。
 王妃様は、第三夫人となった彼女を虐げていたんじゃない。
 虐げるために、第三夫人にしたんだわ」
 長年、王妃の側にいただけあって、
 その陰湿な性格をよく理解しているようだ。

「俺には分かりませんがね。
 恋敵を殺すならわかるが、好きだった男のほうを殺すなんて」
 第二王妃は目を細めて、俺を軽蔑したように見る。
「殿下はあまり、恋愛の御経験はないようですわね」
 言葉の出ない俺に、第二王妃は言ったのだ。

「たとえ恋敵がいなくなったとしても、
 彼に自分が選ばれるわけじゃない……。
 王妃様はそう、思ったんですわ。
 あの方、かなり卑屈で悲観的ですもの」
 確かにそうだな。俺はうなずく。

「それくらいなら、彼を殺して、
 恋敵に地獄を見せるほうを選んだんでしょう。
 あの方は、そういう人ですわ」
 彼女も宮中で辛酸をなめてきたのだろう。
 忌々しそうに顔を歪めながら、そうつぶやいた。

 わかったようなわからないような気持ちでいると、
 第二王妃は俺に向きなおり、厳しい口調で尋ねる。
「……で? これは王妃様が仕組んだことだっておっしゃりたいの?」
「間違いありません。
 その証拠に”第9団”が派遣されましたから」

 その名を聞き、第二王妃はヒュッと息を呑み、顔色を変えた。
 通称”第9団”は、国の暗殺部隊だ。それも超・精鋭ぞろいの。
 国王しか派遣する権利を持たないため、
 彼らが出撃したということは、王命だったということだ。

「自慢の暗殺集団”第9団”を送り込んだ奴らは
 兄上を絶対に生きては帰さない自信があったのです。
 だからお触れはすでに”俺が殺した”となっていたのです」

「嘘でしょ? 嘘よね?」
 第二王妃は薄ら笑みを浮かべ、
 額に汗をかきながら戸惑っている。
 だれかに嘘だと言って欲しいのだろう。

 夫である国王が、我が子の殺害を命じたのだ。
 それも、濡れ衣を着せるためだけの捨て駒にするために。

 俺は彼女の二の腕を掴んで正面を向かせる。
 そしてその目を見て、ハッキリと告げた。
「彼らは再び、あなたの人生を狂わせようとしています。
 あなたからまた、大事な者を奪おうとしているのですよ。
 もう目を逸らすのはやめませんか?」

 ブルブル震えていた彼女は、逆に俺にすがってきた。
 そして涙を流しながら叫ぶ。
「ああ! ”第9団”なんて、もう無理だわ!
 ねえ、あの子を助けて! お願いよ!」

 あの偽りだらけの宮中で、この人が我が子を思う気持ちは本物だ。
 次兄フィリップがダメ人間になったのも、
 この人が甘やかしすぎたからだと思うと腹が立つが、
 第二王妃にとって生きる理由は、次兄の存在だけだったのだろう。

 俺はなだめるように、彼女に言った。
「ご安心ください。さっき申し上げたでしょう?
 抜け目のない俺が、兄上を守るため、
 最強の仲間を送った、と」

 しかし彼女は首を振り、ふるえる声でつぶやく。
「だって……”第9団”なのよ? どんな手練れでもかなわないわ!
 誰を送ったと言うの? その者は……強いの?」
 俺は彼女にうなずき、笑顔で答えた。

「強いかどうかと聞かれたら、”最強”だと答えますね。
 ”ローマンエヤールの切り札”と、”騎士の称号”を持つ者ですよ」


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