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第三章 武器は"情報"と"連携"
89.滅亡か破壊か
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89.滅亡か破壊か
「……ああ、じゃあ後でな。お疲れさん」
俺はそう言って緑板の通話を切った。
そして隣の部屋にいる第二王妃の様子をのぞく。
彼女はまだ興奮冷めやらぬ顔で外を見ていた。
広場には映写幕が大きく掲げられており、
大勢の人々がその前で大騒ぎしていた。
俺たちは先ほどまで、この高級ホテルの窓から見下ろすように
”第二王子フィリップ暗殺未遂事件”を見ていたのだ。
俺が部屋に入ると、彼女は勢いよく振り返った。
「あの子は?!」
20を過ぎた男を”あの子”というのはどうかと思うが、
まあ親だからな。俺は第二王妃に笑顔で言った。
「もちろんご無事ですよ。
ショックは受けている様子ですが食欲もあり、
エリザベートたちと昼食を取ったようです」
第二王妃はふーっと息を吐き、ソファに座り込む。
俺は彼女の前に立って告げた。
「これから合流することになります。
ただ、残念ながら……」
「わかっておりますわ。
”王宮には戻れない”、そうおっしゃりたいんでしょ」
第二王妃は引きつった笑いを浮かべて、俺の言葉を遮った。
俺はうなずいた。第二王妃と次兄は、
このままロンダルシアへ行ってもらうことになる。
彼女は忌々し気に扇を握りしめながらつぶやく。
「私としてもその方が良いですわ。
国王様にも王妃様にもお会いしたくありませんもの。
……もしお顔を見たら私、何を言ってしまうかわかりませんから」
たった一人の愛する息子を、捨て駒にされかけたのだ。
怒るとか責めるとか、そういうレベルでは済まないだろう。
「ロンダルシアへの押送……いや護送の名目は
あくまでも”彼の希望”ということになります。
王命でしか動かない”第9団”に命を狙われた以上、
本国にいられないと考えるのは普通の感覚でしょう」
「で、私がそれに付いていく、ということね」
俺はうなずいて言う。
「もちろん貴女は、”これは何かの間違いだから”と、
国に戻るよう説得している、というスタンスでかまいません」
しかし彼女は首を横に振って、それを拒否した。
「……さすがにもう、無理ですわ。
どんなに”国のためだった”と言われても、
私はあの方たちを許すことなどできません。
だって、レオナルド……」
彼女は俺を見て、もう一度涙をあふれさせて言う。
「王太子妃から側妃に落とされ、空気のように扱われて20年以上。
それでも私は国王様にずっとお願いしてきましたのよ?
”もはや愛情も権力もお金も望みません。
私とフィリップが平穏に暮らせれば、何もいらない”って!
それすら叶えてもらえないなら、
あの方のお側にいる意味などありませんわ!」
今まで第二王妃は俺を蔑み、
フィリップも俺からいろんなものを取り上げるなど
数々の嫌がらせをしてきた。
それが自分たちの立場の弱さや惨めさを隠すためであり、
ただのうっぷん晴らしだとしても許せるものではないが
彼らもまた国王や王妃の被害者である……
という印象は、ぬぐえそうになかった。
************
エリザベートたちと合流し、フィリップの無事な姿を見て
第二王妃は彼にすがりついて泣き出した。
今日はもう、一生分泣いたんじゃないか?
捕らえられた”第9団”は自死を選ぶことすら出来ず、
魔道具とエリザベートの魔力で拘束され、
人形のように転がっている。
実名も顔も、その能力までもが全世界にさらされたのだ。
暗殺集団”第9団”は実質的に壊滅したと言える。
「いろいろ聞かせてもらわないと」
「”王命により、そのお命いただきます”、
そうハッキリ言いましたね。
その他の有益な証言も得られるでしょう」
エリザベートととジェラルドは、暗殺団を見下ろしながら会話する。
俺はフィリップと第二王妃に向かって言う。
「問題はこれからだ。国王と王妃がどう出るか」
フィリップは悲し気な顔をし、第二王妃は怒り顔になる。
「……兄上はまだ、国王を信じることが出来ますか?」
フィリップはフン、と鼻で笑い、答えた。
「馬鹿にすんな。さすがにわかってるよ。
書簡に”早く帰りたい”って書いたら、
ロンダルシアを探るよう言われてさ。
一生懸命、知ったことや調べたことを書簡で送ったが」
そう言って、いいづらそうにロンダルシアの軍隊長を見る。
彼は豪快に笑い、フィリップの肩をたたいた。
「そんなことはとっくにお見通しだったぞ。
だからフィリップ殿下に直接、忠告したのだ。
”シュニエンダールの手引きで内密に出国するのは危険です”、とな」
そもそもロンダルシアは別に、
兄上を罪人として拘束しているわけではなく、
あくまでもレティシア嬢の婚約者として”育てて”いるただけだ。
それなのに密かに脱出の手引きをしようとするのは
何か後ろ暗い計画があるのではないか、と説得したのだ。
始めは半信半疑だった兄上は、迷った末、
ロンダルシア兵が隠れてついてくることを許したのだ。
もし何事もなければ、そのまま帰してくれることを約束して。
だからエリザベートたちがフィリップのところに到着した際、
すでにフィリップはロンダルシアの兵に守られていたのだ。
それだけではない。ロンダルシアは近隣諸国に早馬を出し
この場に多くの兵や魔導士を集めたのだ。
シュニエンダールの陰謀を、世に知らしめるために。
俺はそれをエリザベートから緑板で聞いた時、
興奮と感動で胸が震えた。
”最終決戦”が始まったことを知り、戦う決意を固めたのは、
俺たちだけではなかったのだ。
************
「……じゃあな」
フィリップはそっぽを向きながら俺に言う。
エリザベートやジェラルドには半泣きで礼を言ったらしいが
俺に対してはいつもの、高慢でずうずうしい兄上のままだった。
しかし、次兄は俺の足元でキリッと見守るファルを見たとたん。
「そいつ! まさか!」
「そうです、あのファルです。
脱走してから野生で生きていたんですよ」
兄上はしゃがみこみ、ファルの顔を覗き込んで言う。
「デカくなったなあ! レオナルドのこと覚えてたのか!」
ファルは”何なんだお前、やる気か”というように眉をあげる。
そしてωの口を動かし、精一杯吠えた。
「ぱうっ!」
兄上は一瞬驚いたが、苦笑いで立ち上がる。
「また両手両足で噛まれそうだな」
その時、フィオナが三匹の子ファルを連れてやって来た。
「なんだ、あれ!」
「ああ、ファルの子どもだよ」
「え! メスだったのか!」
そう言いながら、子ファルを眺めて小さい声でつぶやいた。
「やっぱり可愛いなあ……俺も飼いたかったよ……」
俺はその時、唐突に幼い記憶を思い出す。
母上と一緒に宮殿の庭でファルと遊ぶのを、
兄上は柵の隙間から眺めていたのだ。
俺は気が付いていても、声をかけたりしなかった。
次兄が大嫌いだったし、ファルを自慢したかったから。
もし、俺たちが普通の兄弟だったなら、
一緒にファルと遊び、育てる可能性もあったのだろうか。
意味のない感傷に浸る俺に、フィリップは言う。
「良かったな、レオナルド」
俺はうなずき、次兄に告げる。
「いつかまた、国に戻って来られるようお祈りしています」
フィリップは困った顔で、独り言のようにつぶやく。
「どのみち、あの国に俺の居場所などなかった。
……ロンダルシアにもあるかはわからんがな」
そう言って苦笑いするが、ロンダルシアの軍隊長がすかさず言う。
「何を言いますか。居場所かどうかなど、
考える必要すらありませんぞ。
殿下はただ、居れば良いのです」
そう言ってふたたび豪快に笑う。
以前俺が、”もし使い物にならない奴がいたらどうする?”と
ロンダルシアの重鎮に尋ねた時。
その答えは、”使い物にならない人間なぞいない。
いるとすれば、指示を与える人間が未熟なだけ”、だった。
ロンデルシアとは、そういう国だ。
照れ臭いのか兄上は、俺に向かって軽い調子で言う。
「とりあえずはあの国で、お前の無実を証明してやるよ」
感謝しろよ、と付け加えるところは相変わらずだ。
第二王妃も俺に頭をさげて言う。
「ありがとう、レオナルド。
今までの非礼を詫びますわ。
……私もこの子も、容易に許されるものではありませんが」
俺は首を横に振る。この人のしたことなど、
国王や王妃に比べれば”嫌がらせ”程度だと言えるだろう。
第二王妃は眉をひそめ、さらに言う。
「そしてあなたのお母様の悲しみや怒り、無念を思うと
やはり王妃様のなさったことは許されることではありません」
俺はそこで、何と言って良いか分からず言葉に詰まる。
生きてますから、母上。しかも父上と一緒に。
さらに彼女は、重大な秘密を俺にうちあけたのだ。
「そしてもう一つ。貴方にお伝えしておきたいことがございます。
貴方が生まれた時……聖女の力を持って、
王妃様が”天啓”を得たのです」
聖女が神に祈る時、
ごくまれに何らかの啓示が下されることがある。
第二王妃は目をそらし、悲し気に言う。
「しかしそれは、公表されること無く、もみ消されました。
知っているのはもちろん王妃様と国王様。
そしてあなたの母君である第三王妃と、隠れて聞いていた私」
「どんな天啓だったのです?」
俺が尋ねると。彼女は真っ直ぐに俺を見て言った。
「……”もしこの者が国を去れば、シュニエンダールは滅び、
この者が国に留まれば、シュニエンダールは破壊される”」
どっちにしろ大迷惑な自分の存在に驚きつつ、
俺は納得していた。
母が俺をこの国に残していった理由、
そしてキースが俺に”国を出るな”、と言った理由を。
振り返ると、エリザベートが不安そうに俺を見ていた。
俺は彼女が見つけた検索結果を思い出す。
それは、俺の最後は”シュニエンダールにて死す”、というものだ。
これがリライトできるかどうかわからないが、
始まってしまった戦いを避けることは、もうできないのだ。
破滅か、破壊か。
その二択なら、迷うことはないだろう。
俺は彼女に笑いかける。
「……ぶっ壊すぞ。あの国を」
scrap and build。ぶっ壊して、立て直すのだ。
「……ああ、じゃあ後でな。お疲れさん」
俺はそう言って緑板の通話を切った。
そして隣の部屋にいる第二王妃の様子をのぞく。
彼女はまだ興奮冷めやらぬ顔で外を見ていた。
広場には映写幕が大きく掲げられており、
大勢の人々がその前で大騒ぎしていた。
俺たちは先ほどまで、この高級ホテルの窓から見下ろすように
”第二王子フィリップ暗殺未遂事件”を見ていたのだ。
俺が部屋に入ると、彼女は勢いよく振り返った。
「あの子は?!」
20を過ぎた男を”あの子”というのはどうかと思うが、
まあ親だからな。俺は第二王妃に笑顔で言った。
「もちろんご無事ですよ。
ショックは受けている様子ですが食欲もあり、
エリザベートたちと昼食を取ったようです」
第二王妃はふーっと息を吐き、ソファに座り込む。
俺は彼女の前に立って告げた。
「これから合流することになります。
ただ、残念ながら……」
「わかっておりますわ。
”王宮には戻れない”、そうおっしゃりたいんでしょ」
第二王妃は引きつった笑いを浮かべて、俺の言葉を遮った。
俺はうなずいた。第二王妃と次兄は、
このままロンダルシアへ行ってもらうことになる。
彼女は忌々し気に扇を握りしめながらつぶやく。
「私としてもその方が良いですわ。
国王様にも王妃様にもお会いしたくありませんもの。
……もしお顔を見たら私、何を言ってしまうかわかりませんから」
たった一人の愛する息子を、捨て駒にされかけたのだ。
怒るとか責めるとか、そういうレベルでは済まないだろう。
「ロンダルシアへの押送……いや護送の名目は
あくまでも”彼の希望”ということになります。
王命でしか動かない”第9団”に命を狙われた以上、
本国にいられないと考えるのは普通の感覚でしょう」
「で、私がそれに付いていく、ということね」
俺はうなずいて言う。
「もちろん貴女は、”これは何かの間違いだから”と、
国に戻るよう説得している、というスタンスでかまいません」
しかし彼女は首を横に振って、それを拒否した。
「……さすがにもう、無理ですわ。
どんなに”国のためだった”と言われても、
私はあの方たちを許すことなどできません。
だって、レオナルド……」
彼女は俺を見て、もう一度涙をあふれさせて言う。
「王太子妃から側妃に落とされ、空気のように扱われて20年以上。
それでも私は国王様にずっとお願いしてきましたのよ?
”もはや愛情も権力もお金も望みません。
私とフィリップが平穏に暮らせれば、何もいらない”って!
それすら叶えてもらえないなら、
あの方のお側にいる意味などありませんわ!」
今まで第二王妃は俺を蔑み、
フィリップも俺からいろんなものを取り上げるなど
数々の嫌がらせをしてきた。
それが自分たちの立場の弱さや惨めさを隠すためであり、
ただのうっぷん晴らしだとしても許せるものではないが
彼らもまた国王や王妃の被害者である……
という印象は、ぬぐえそうになかった。
************
エリザベートたちと合流し、フィリップの無事な姿を見て
第二王妃は彼にすがりついて泣き出した。
今日はもう、一生分泣いたんじゃないか?
捕らえられた”第9団”は自死を選ぶことすら出来ず、
魔道具とエリザベートの魔力で拘束され、
人形のように転がっている。
実名も顔も、その能力までもが全世界にさらされたのだ。
暗殺集団”第9団”は実質的に壊滅したと言える。
「いろいろ聞かせてもらわないと」
「”王命により、そのお命いただきます”、
そうハッキリ言いましたね。
その他の有益な証言も得られるでしょう」
エリザベートととジェラルドは、暗殺団を見下ろしながら会話する。
俺はフィリップと第二王妃に向かって言う。
「問題はこれからだ。国王と王妃がどう出るか」
フィリップは悲し気な顔をし、第二王妃は怒り顔になる。
「……兄上はまだ、国王を信じることが出来ますか?」
フィリップはフン、と鼻で笑い、答えた。
「馬鹿にすんな。さすがにわかってるよ。
書簡に”早く帰りたい”って書いたら、
ロンダルシアを探るよう言われてさ。
一生懸命、知ったことや調べたことを書簡で送ったが」
そう言って、いいづらそうにロンダルシアの軍隊長を見る。
彼は豪快に笑い、フィリップの肩をたたいた。
「そんなことはとっくにお見通しだったぞ。
だからフィリップ殿下に直接、忠告したのだ。
”シュニエンダールの手引きで内密に出国するのは危険です”、とな」
そもそもロンダルシアは別に、
兄上を罪人として拘束しているわけではなく、
あくまでもレティシア嬢の婚約者として”育てて”いるただけだ。
それなのに密かに脱出の手引きをしようとするのは
何か後ろ暗い計画があるのではないか、と説得したのだ。
始めは半信半疑だった兄上は、迷った末、
ロンダルシア兵が隠れてついてくることを許したのだ。
もし何事もなければ、そのまま帰してくれることを約束して。
だからエリザベートたちがフィリップのところに到着した際、
すでにフィリップはロンダルシアの兵に守られていたのだ。
それだけではない。ロンダルシアは近隣諸国に早馬を出し
この場に多くの兵や魔導士を集めたのだ。
シュニエンダールの陰謀を、世に知らしめるために。
俺はそれをエリザベートから緑板で聞いた時、
興奮と感動で胸が震えた。
”最終決戦”が始まったことを知り、戦う決意を固めたのは、
俺たちだけではなかったのだ。
************
「……じゃあな」
フィリップはそっぽを向きながら俺に言う。
エリザベートやジェラルドには半泣きで礼を言ったらしいが
俺に対してはいつもの、高慢でずうずうしい兄上のままだった。
しかし、次兄は俺の足元でキリッと見守るファルを見たとたん。
「そいつ! まさか!」
「そうです、あのファルです。
脱走してから野生で生きていたんですよ」
兄上はしゃがみこみ、ファルの顔を覗き込んで言う。
「デカくなったなあ! レオナルドのこと覚えてたのか!」
ファルは”何なんだお前、やる気か”というように眉をあげる。
そしてωの口を動かし、精一杯吠えた。
「ぱうっ!」
兄上は一瞬驚いたが、苦笑いで立ち上がる。
「また両手両足で噛まれそうだな」
その時、フィオナが三匹の子ファルを連れてやって来た。
「なんだ、あれ!」
「ああ、ファルの子どもだよ」
「え! メスだったのか!」
そう言いながら、子ファルを眺めて小さい声でつぶやいた。
「やっぱり可愛いなあ……俺も飼いたかったよ……」
俺はその時、唐突に幼い記憶を思い出す。
母上と一緒に宮殿の庭でファルと遊ぶのを、
兄上は柵の隙間から眺めていたのだ。
俺は気が付いていても、声をかけたりしなかった。
次兄が大嫌いだったし、ファルを自慢したかったから。
もし、俺たちが普通の兄弟だったなら、
一緒にファルと遊び、育てる可能性もあったのだろうか。
意味のない感傷に浸る俺に、フィリップは言う。
「良かったな、レオナルド」
俺はうなずき、次兄に告げる。
「いつかまた、国に戻って来られるようお祈りしています」
フィリップは困った顔で、独り言のようにつぶやく。
「どのみち、あの国に俺の居場所などなかった。
……ロンダルシアにもあるかはわからんがな」
そう言って苦笑いするが、ロンダルシアの軍隊長がすかさず言う。
「何を言いますか。居場所かどうかなど、
考える必要すらありませんぞ。
殿下はただ、居れば良いのです」
そう言ってふたたび豪快に笑う。
以前俺が、”もし使い物にならない奴がいたらどうする?”と
ロンダルシアの重鎮に尋ねた時。
その答えは、”使い物にならない人間なぞいない。
いるとすれば、指示を与える人間が未熟なだけ”、だった。
ロンデルシアとは、そういう国だ。
照れ臭いのか兄上は、俺に向かって軽い調子で言う。
「とりあえずはあの国で、お前の無実を証明してやるよ」
感謝しろよ、と付け加えるところは相変わらずだ。
第二王妃も俺に頭をさげて言う。
「ありがとう、レオナルド。
今までの非礼を詫びますわ。
……私もこの子も、容易に許されるものではありませんが」
俺は首を横に振る。この人のしたことなど、
国王や王妃に比べれば”嫌がらせ”程度だと言えるだろう。
第二王妃は眉をひそめ、さらに言う。
「そしてあなたのお母様の悲しみや怒り、無念を思うと
やはり王妃様のなさったことは許されることではありません」
俺はそこで、何と言って良いか分からず言葉に詰まる。
生きてますから、母上。しかも父上と一緒に。
さらに彼女は、重大な秘密を俺にうちあけたのだ。
「そしてもう一つ。貴方にお伝えしておきたいことがございます。
貴方が生まれた時……聖女の力を持って、
王妃様が”天啓”を得たのです」
聖女が神に祈る時、
ごくまれに何らかの啓示が下されることがある。
第二王妃は目をそらし、悲し気に言う。
「しかしそれは、公表されること無く、もみ消されました。
知っているのはもちろん王妃様と国王様。
そしてあなたの母君である第三王妃と、隠れて聞いていた私」
「どんな天啓だったのです?」
俺が尋ねると。彼女は真っ直ぐに俺を見て言った。
「……”もしこの者が国を去れば、シュニエンダールは滅び、
この者が国に留まれば、シュニエンダールは破壊される”」
どっちにしろ大迷惑な自分の存在に驚きつつ、
俺は納得していた。
母が俺をこの国に残していった理由、
そしてキースが俺に”国を出るな”、と言った理由を。
振り返ると、エリザベートが不安そうに俺を見ていた。
俺は彼女が見つけた検索結果を思い出す。
それは、俺の最後は”シュニエンダールにて死す”、というものだ。
これがリライトできるかどうかわからないが、
始まってしまった戦いを避けることは、もうできないのだ。
破滅か、破壊か。
その二択なら、迷うことはないだろう。
俺は彼女に笑いかける。
「……ぶっ壊すぞ。あの国を」
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