【完結】リライト成功!〜クズ王子と悪役令嬢は、偽聖女と底辺兵士と共に、最低最悪のシナリオを書き換える〜

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第三章 武器は"情報"と"連携"

73.ついに宣戦布告

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 73.ついに宣戦布告

「……おい、見てみろよ、この新聞。
 ”疾風の聖戦士ジェラルド”だって。
 二つ名、これで何個目だ?」
 俺がからかうとジェラルドは
 困った顔をしつつ、やり返してくる。

「ではこちらの記事をごらんください。
 ”シュニエンダールの光星 レオナルド殿下の功績”ですよ」
「うーん、そりゃ母上の影響だな。なんだよ光星って」
 俺の母上はその光輝くような美貌のために、
 世界中から”シュニエンダールの光玉”と呼ばれていたのだ。

 俺たちは緑板スマホに表示される、
 各国の報道を読み上げながら笑い合う。

 フリュンベルグ国での魔獣大発生を、
 ジェラルドは武神のごとき活躍で、見事に封じてみせた。
 だからこれで、3つ目の”騎士の称号”が得られると思いきや。

 うちのクソ王族がフリュンベルグ国に対し
 自国の戦士を貸し出す条件として
 称号を与えることを禁じたのだ。
 しかも謝礼は王族へ支払え、という
 図々しいにもほどがある要請をしやがった。

 だから俺は、フリュンベルグ国王に頼んだ。

 金品としての報酬は、”家宝の壺”という名目で、
 そのへんのガラクタを王家に贈ってもらう。
 これで、あの強欲で陰険な奴らが手に入れるのは
 つい先日までゴミ捨てだった安価な壺だけだ。

 名誉としての恩賞は、
 ジェラルドの実質的なあるじであり、
 もちろん王族の1人である”俺”に与えてもらったのだ。
 契約には反してないし、国王あいつらの名声を上げずに済む。

 これにより、国王たちは俺がこの国に対し、
 従順ではないことを知っただろう。

 しかし、ただの宣戦布告ではダメだ。
 ”王家と対峙する”、と決めたからには、
 中途半端なスタートを切るわけにはいかない。

 エリザベートはあの日すぐ、
 公爵家の連絡用の鳥であるシギを
 さまざまな伝手つてへと送り出した。
 ……その結果。

 まず、フリュンベルグ国は翌日には、
 俺とジェラルドを激賞する報道を出した。

 ロンデルシア国も同日に、俺たちが魔獣討伐の際、
 見事に大蛇グローツラングを倒したことや、
 正体不明の魔獣に本部が襲撃された際も、
 でロンデルシア兵たちを救った、と報じたのだ。

 続くようにチュリーナ国が、ガウール周辺の魔獣を殲滅させ、
 あの辺りの治安を回復した功績を褒めたたえた。
 しかもあの国で起きた怪異を
 怪我人を出すことなく収束させたことも、国王自身がたたえたのだ。

 さらにはシャデール国までもが、
 ガウールで魔族の呪いに拘束されていた王弟を
 無事救い出したことに深く感謝している、と表明した。

 それだけじゃない。ガウールの村長や
 ガウールまでの道のりを同行したキャラバンの面々が、
 こぞって俺たちを賛美し、感謝の念を広く伝え始めたのだ。

 とどめをさすようにジェラルドが
 俺のことを各国の記者から尋ねられた際、
「殿下は素晴らしい方です。国内の評価は根も葉もないことです。
 彼に会った人々は必ず、それが間違いだと知っています」
 などと熱く語ったのだ。

 ここまで周辺諸国から高い評価を得た俺を、
 国王や大臣たちは、容易に手が出せないだろう。
 世界が誰の味方か、子どもにだって分かるからだ。

 それに全ては”シュニエンダール国のため”として働いたのだ。
 責めるどころか、褒めたたえるべき事例、
 牢に入れたり罰する口実には出来ない。

「ずっと”クズ王子”で居て欲しかっただろうが、残念だったな」
 俺は笑いながら、さらに緑板スマホで検索を続ける。
「それはもう、無理みたいね」
 エリザベートが俺に検索結果を見せて来た。

 案の定、国内でも疑問の声が多数、上がってきたらしい。
 今まで報道で数多くの悪評がふりまかれていたが、
 誰も俺が実際に何かするところを見た者はいない、と気付いたのだ。

 それどころか逆に、
 ”ずっと学校にいたのに『昨日、他国で無礼を働いた』と報道されていた”
 という学校の先生や同級生の証言によって、
 王家の情報操作がじわじわと明るみになっていったようだ。

 そしてみんなが考える。
 ”レオナルド殿下を貶め、嫌われるように
 王家が嘘の情報を報道していたのは何故か?”と。

「流れが変わったな」
 最初に緑板スマホで読んだ
 ”シュニエンダール物語”の”あらすじ”では
 民衆の溜まりに溜まった王家への不満や怒りを、
 俺が”悪者”となり、断罪されることで解消される段取りだった。

 しかし彼らの不満は今後、正しく王家に向けられるだろう。
 俺が”あらすじ”を確認しようとした、その時。

「えええっ?!」
 と大きな声がして、フィオナが口を押えていた。
「どうした? フィオナ」
 俺たちが彼女のところに行くと、
「王宮で、大変なことになっているようです」
 そう言って、自分のスマホを俺たちに見せたのだ。

 ************

 シュニエンダール国王の目の前の机に、壺が置かれた。
 うやうやしく侍従がひざまづいて述べる。
「こちらが、騎士ジェラルドの貢献に対する報酬であります。
 フリュンベルグ国の国宝……いや、家宝とのことです」

 国王は椅子に座ったまま、しばらく無言でそれを眺める。
「ずいぶん地味だな……俺はいらんぞ」
 王太子が眺めつつ、興味なさそうに言う。

「それでは宝物庫に納めさせていただきます」
「待て、その前に、どのくらい価値があるものか調べましょう」
「鑑定の結果によっては、宮殿入り口に飾るのはどうですか?」

 口々に言い合う侍従たちを、国王は片手で制する。
 そして、一言。
「その必要はない」

 国王はゆっくり立ち上がり、壺の前に行き。
 両手で壺を持ち上げ……それを高くかかげたのだ。
「お待ちくださいっ!」
 侍従が叫んだが、国王は壺を床へと叩きつけた。

 ゴン!
ってええええ!」

 粉々に割れるかと思いきや、それは硬質な音を立て
 思い切り跳ね返り、横で見守っていた王太子へと飛んでいったのだ。

「何故、割れぬっ!?」
 国王は目を見開いて叫ぶ。
 これを持ってきた侍従がハラハラしながら答えた。
「先ほどお渡しした書状に書いてあった通り、
 ”国へ運ぶ道中、この貴重な品が割れないよう、
 レオナルド殿下が補助魔法で強化しておいた”と……」

 それを聞き、国王は顔を真っ赤にして歯を食いしばった。
 自分が書状など読まないことを見透かしての
 所業だと判っているからだ。
 さらには自分がこれを床に叩きつけることまで
 レオナルドに見抜かれていたということになる。

「何が貴重な品だ! ふざけおってっ!
 こんなの一目見れば、二束三文のゴミだとわかるだろう!」
「し、しかしながら陛下! こちらの品はあの王子ではなく、
 フリュンベルグ国が用意した物で間違いございません」

 激昂した国王はノドも裂けんばかりに言い放った。
「痴れ者が! つまりあの国もあやつと一緒になって
 我をコケにしたということだ!」
 信じられない、という顔で侍従は顔を上げたが、
 同時に国王も口を開けたまま停止していた。

 自分の言葉に驚愕したのだ。
 まさかあの国が、レオナルドの味方をするというのか?

 先ほど王のせいで壺が当たった肩を抑え、
 恨みがましく父親を睨む王太子に対し、
 イライザ王妃が家臣たちと共に退出するように命じだ。

 全員がいなくなった後、イライザ王妃は淡々と夫に言う。
「……すぐに行動するのです。
 あの者をこれ以上、増長させてはなりません」

 国王はイライラと吐き捨てる。
「どうするのだ?! あの報道を見ただろう!
 フリュンベルグ国だけではないのだぞ?
 チュリーナ国も、シャデール国までも!
 ああ! あいつを国から出すのではなかった!」

 頭を抱えて悔しがる国王に、
 冷たい視線を送りながら王妃は言う。
「問題ありませんわ。簡単なことです。
 まずは彼の、動けなくするのです。
 あのような出来損ない、一人では何もできないのですから」

 国王は黙り込み、床を凝視している。
 イライザ王妃は彼に近づき、耳元でささやく。
「元・聖女はグエル大司教に引き渡しましょう。
 あの騎士は……こちらに付くと言うなら使えそうですが
 要求を飲まないようでしたら早めに消しましょう。
 そしてエリザベートについてですが……」

 国王はまだ、電池が切れた人形のように動かない。
 イライザ王妃は微笑みながら告げる。
 その目は充血しており、眼球は真っ赤だった。
「彼女については、私におまかせください」

 そう言ってイライザ王妃は、国王の背中に手を当てる。
 彼女の指は真っ白になり、一本一本は長く伸びていた。
 関節の多いその5本の指を、蜘蛛のようにうごめかし、
 王妃は国王に”清冽せいれつなる光明”を注いだ。

 国王はやがてゆっくりを顔を上げ、王妃を見てつぶやいた。
「……そうだな、そうしよう」

 ************

 俺たちの宣戦布告に対する、
 王家の反応が見れたのはいいが。

「ねえ、王妃のこの状態!
 あの時のパウル助祭と一緒だわ!」
 エリザベートの叫びに、俺もうなずく。

 あの場にいなかったジェラルドたちに、俺は説明した。
「チュリーナ国で、死者がよみがえる騒ぎがあっただろ?」

 チュリーナでは罪人の死体を埋葬する前に
 光魔法”清浄なる光明”を浴びせて浄化するのだが。
 パウル助祭がそれを行ったとたん、
 罪人の死体は異形の化け物と化し、人々を襲い始めたのだ。

 パウル助祭は自分が、膨大な”聖なる力”を手にしたと歓喜し
 さらに暴走したのだが、その時の彼と姿が似ていたのだ。

 血走った真っ赤な目、真っ白で異常に長く伸び、
 カクカクと細かな関節を持った両手の指。

「もしかすると、あいつがあの時、
 罪人の遺体に浴びせたのは”清浄なる光明”ではなくて……」

 ”清冽せいれつなる光明”、という、
 全員が初めて知ったその魔法は、
 正義や清らかさに溢れるその名に反し、
 どこか禍々しい印象を残した。

 見たことも無い姿。
 聞いたことも無い魔法。

 俺たちは宣戦布告した相手は、
 想像以上の存在なのかもしれない。
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