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第6話 お化け大化け
あんまり長時間、マイ風呂場を離れることは出来ないらしく
吸引力との戦いに精神的に疲れた私は
部屋に戻ることにした。
「じゃあね~ ばいばいきーん」
私がそういうと、参謀くん(霊感青年をそう呼ぶことにした)は
露骨に嫌な顔をして言った。
「なんかもう慣れて来たので、怖くないです。
無理におどけなくて良いですよ、疲れるから」
え? 私としては、怖がられてたことすら忘れてたわ。
もちろんおどけているつもりもない。
……生前からこんな感じだったんだけどな。
「そ、そうなの? じゃ、お休みなさい」
「お休みなさい……って眠いんですか?」
彼に驚いたように言われ、私はあらためて考える。
「いや、全然。眠くないし疲れてないよ。
なんか夜の習慣で言ってたわ。
……とりあえず独りで試せそうなことは、
夜のうちにいろいろ試してみるね」
「習慣、ですか。ほんとマイペースだな」
そういって苦笑いする参謀くんに
じゃあね、と言って、私は天井にしゅっと飛び込んだ。
***********
参謀くんの仮説はこうだ。
地縛霊から浮遊霊、もとい移動霊に昇進?するためのヒントは
「より強力に固執できる何かを見つける」ことかもしれない、と。
固執かあ。執着って、意識してするのは難しいかも。
もともとあっさりした性格の私には、特にハードルが高かった。
”誰にでも出来るヘアアレンジ”すら、挑戦の前に諦めたくらいだ。
元・婚約者の破談の件だって、婚約してなかったり、
会社を辞める話が進んでいなかったら、
せめてこちらのせいにしないで、誠実に対応してくれたら。
2、3発殴って、後ろ回し蹴りを食らわせ、
逃げようとするのを背後からホールドし
ジャーマンスープレックスで仕留めて、
さっぱり別れてあげたのに。
……下手すると、加害者は私の方だったか。それだと。
なんにせよまあ、今一番固執できそうなのは
もちろん私の憎き仇である元・婚約者だ。
恨み晴らさでおくべきか。
なんつうか、こう、後ろからべったり張り付いてやりたい。
「……なんか最近、肩がこるんですよねえ」
とか言われるくらい、全霊かけてぶらさがってやる!
しかし元・婚約者がここにまた来るかなあ。
*********
そんな風に思っていたら、本当に、来たのだ。
しかも翌日の朝、警察官に連れられて。
さすがは日本の警察。お見事です。
すぐに交際相手を特定し、任意同行を求めたのか。
開かれた玄関で会話しているのを聞くと、
昨夜のことをいろいろ聞いているらしい。
しかし容疑者を相手にしている感じは見えないのだ。
尋問もかなりあっさり終わってしまいそうだった。
私は怒鳴った。怒りや恨みを増長させながら。
「よくも殺してくれたわね! この人でなし!」
でも霊感ゼロらしい元・婚約者には見向きもされない。
「の、呪ってやる!」
私は彼に組みつこうとするがまったく手が届かない。
お風呂場の吸引力は全然弱まる気配を見せないのだ。
かの有名な掃除機のごとく。
ホラー漫画にありそうな、両肩にからみついた形で
がっつり憑りついてやろうと思ったのに。
私は一生懸命、彼に近づこうと頑張った。
あれ? もしかして。
私、彼にはそんなに執着できないというのか。
婚約していたのに? 私をこんな目に合わせたのに?
愛情も、恨みの念も、それほどでもないってことなの?
*************
残念ながら警察と元・婚約者は帰っていった。
私はポツンと玄関に残されてしまう。
呆然とするヒマもなく、
大家さんが誰かを連れて来るのが聞こえる。
おお、またアイツが戻って来たのか?!
今度こそ…と思いきや。
「すみません。姉が本当にご迷惑を……」
弟だ! 弟が来たんだ。あれ? お父さんたちは?
「何言ってんのよ。本当に残念だったわね。
悲しいわ、まだお若いのに」
「……まだ、なんか、ホントのことなのか実感なくて……」
そうだろうなあ。
私は近づいてくる2人の会話を聞きながら、
仲が良いわけでも悪いわけでもなかった弟との思い出を
しみじみと振り返っていた。
なんなら赤子の頃から
おしゃべりで落ち着きがなかった私と違い、
弟は話を聞いているのか反応も薄く、
いつも無口で沈着冷静な子だった。
それでも心根が優しい子だということは、
家族全員がわかっている。
私が飼い猫の額に、値札シールを貼り
「198円~」
と笑っていた時も
「……やめろよ」
と、すぐにはがしてあげていた。
私が夏休みの自由研究のために
公園でアリたちを捕まえた時、
宿題の完成後は面倒なので、
自宅前の道路に解放しようとしたら
「……やめろよ」
と奪い、わざわざ公園まで行って戻してきた奴だ。
無愛想で実直な人間。
だから損ばかりしているように見える。
この先も心配だなあ……
と、この先がなくなった私が案じていると。
大家さんが聞き捨てならないことを言い出したのだ。
「警察もね、事件性は低いって言ってるから、
仕方ないのかもしれないけど」
なんだと?! なんて言った? 今!
「はい。電話で聞きました。
昨日、警察が遺体の検視して……事件性は低いって……」
えええええ!? 事故扱いされているの?これ。
どう見ても他殺でしょ?
その辺に関しては安心してたのに。
うら若い女性が風呂場で変死だよ?
誰が湯船で溺れるんだよっ。
それに私、最後に人影だって見てるし。
なんか、頭にすごい衝撃があって、
めちゃくちゃ痛かったんだから。
よくテレビドラマで
「日本の警察をなめるなよ!」
とか言ってたのに……まあ、セリフだけどさ。
しかし信じらんない! 腹立つ。
いや、あいつが意外とうまく証拠を
隠滅できたのかもしれない。
そもそも私の頭を殴った鈍器も見つかってないようだし。
まだあきらめてはいけない。遺体は警察署だよね。
検死をしたらすぐにわかるはずだ。
「後頭部に鈍器で殴られた跡が!」
って、今ごろやってるかもしれないぞ。
ショックと悔しさでギリギリしていると、
やっとドアが開いて弟が見えた。
しかし入っては来ない。無表情でこちらを見ている。
私は必死に「私は殺されたんだよっ」と何度も叫んだ。
「犯人は、アンタの義理の兄になるはずだったやつだよ!」
私はバタバタ動きながら、
なんとか現世に干渉しようと頑張ってみた。
が、玄関にかけられたカレンダーはちらりともめくれず、
下駄箱の上に鎮座ましますピンク色のカエルくんだって
(”置くと幸せになる”ってあったから買ったのに!)
びくともしなかった。
しかし霊感のない弟には何も届かない。
まだ現場に入ることは許されていないようで
弟は立ち尽くしたままだ。じっと中を見つめている。
子どもの頃からのまんま、その表情はほとんどない。
そうだ! 電子レンジを鳴らすなら今だ!
どうやって伝える?
モールス信号、姉弟で学んでおけばよかった!
しかし次の瞬間、私の目に飛び込んできたものに気付き、
つい大声で叫んでしまう。
「いももちづきっーーーーー!」
それは弟の手荷物からはみ出す、
わが故郷の銘菓「いも望月」だった。
なに?「いも望月」を知らない? なんてことを!
薄黄色でまんまるの、モチもちとした厚めの皮。
なめらかでしっとりとしてクリーミーな芋餡。
私はこれが子どもの頃から大好きだった。
ほんっとに美味しいんだから。ひと箱、楽勝でいけます。
冬に暖かいお茶、夏はアイスコーヒーと一緒に。
あああ、何年振りだろ。
ここんとこ忙しくて帰れてなかったから。
おイモのキャラクターが描かれたパッケージを見て、
私は狂喜乱舞する。
会いたかったよ、いも望月。
私は知った。
死後の食欲は生前より増すことを。
体調は常に万全だし、
お金も体重も気にしなくていいんだもの!
食べたい。ここ数年、食べたくてたまらなかった。
このために帰省していたくらい、好きだったのに。
仕事が忙しかったり、元・婚約者に
「えええー、夏休みは俺と過ごそうよ」
と帰省を反対されて帰らなかったのだ。
ああ、食べたい。ものすごく食べたい!
そんな私に気付くこともなく、
弟はゆっくり大家さんに振り返り、
そのまま警察に向かう、と言ったのだ。
え、ちょっと待って!
私は「いも望月」を見つめたまま叫ぶ。
閉まりかけるドア、歩き出す弟たち。
するときゅーんと吸い寄せられるように、私は外に、
正確には「いも望月」の横にくっついたのだ。
そしてそのまま進んでいく。
振り返ると、大家さんがカギをかけているのが見えた。
どんどん遠ざかる私の家。
弟は階段を降りる。私も一緒に下っていく。そして。
私は外に出たのだ。つまり。
異例の速さで移動霊に昇進したのだ!
吸引力との戦いに精神的に疲れた私は
部屋に戻ることにした。
「じゃあね~ ばいばいきーん」
私がそういうと、参謀くん(霊感青年をそう呼ぶことにした)は
露骨に嫌な顔をして言った。
「なんかもう慣れて来たので、怖くないです。
無理におどけなくて良いですよ、疲れるから」
え? 私としては、怖がられてたことすら忘れてたわ。
もちろんおどけているつもりもない。
……生前からこんな感じだったんだけどな。
「そ、そうなの? じゃ、お休みなさい」
「お休みなさい……って眠いんですか?」
彼に驚いたように言われ、私はあらためて考える。
「いや、全然。眠くないし疲れてないよ。
なんか夜の習慣で言ってたわ。
……とりあえず独りで試せそうなことは、
夜のうちにいろいろ試してみるね」
「習慣、ですか。ほんとマイペースだな」
そういって苦笑いする参謀くんに
じゃあね、と言って、私は天井にしゅっと飛び込んだ。
***********
参謀くんの仮説はこうだ。
地縛霊から浮遊霊、もとい移動霊に昇進?するためのヒントは
「より強力に固執できる何かを見つける」ことかもしれない、と。
固執かあ。執着って、意識してするのは難しいかも。
もともとあっさりした性格の私には、特にハードルが高かった。
”誰にでも出来るヘアアレンジ”すら、挑戦の前に諦めたくらいだ。
元・婚約者の破談の件だって、婚約してなかったり、
会社を辞める話が進んでいなかったら、
せめてこちらのせいにしないで、誠実に対応してくれたら。
2、3発殴って、後ろ回し蹴りを食らわせ、
逃げようとするのを背後からホールドし
ジャーマンスープレックスで仕留めて、
さっぱり別れてあげたのに。
……下手すると、加害者は私の方だったか。それだと。
なんにせよまあ、今一番固執できそうなのは
もちろん私の憎き仇である元・婚約者だ。
恨み晴らさでおくべきか。
なんつうか、こう、後ろからべったり張り付いてやりたい。
「……なんか最近、肩がこるんですよねえ」
とか言われるくらい、全霊かけてぶらさがってやる!
しかし元・婚約者がここにまた来るかなあ。
*********
そんな風に思っていたら、本当に、来たのだ。
しかも翌日の朝、警察官に連れられて。
さすがは日本の警察。お見事です。
すぐに交際相手を特定し、任意同行を求めたのか。
開かれた玄関で会話しているのを聞くと、
昨夜のことをいろいろ聞いているらしい。
しかし容疑者を相手にしている感じは見えないのだ。
尋問もかなりあっさり終わってしまいそうだった。
私は怒鳴った。怒りや恨みを増長させながら。
「よくも殺してくれたわね! この人でなし!」
でも霊感ゼロらしい元・婚約者には見向きもされない。
「の、呪ってやる!」
私は彼に組みつこうとするがまったく手が届かない。
お風呂場の吸引力は全然弱まる気配を見せないのだ。
かの有名な掃除機のごとく。
ホラー漫画にありそうな、両肩にからみついた形で
がっつり憑りついてやろうと思ったのに。
私は一生懸命、彼に近づこうと頑張った。
あれ? もしかして。
私、彼にはそんなに執着できないというのか。
婚約していたのに? 私をこんな目に合わせたのに?
愛情も、恨みの念も、それほどでもないってことなの?
*************
残念ながら警察と元・婚約者は帰っていった。
私はポツンと玄関に残されてしまう。
呆然とするヒマもなく、
大家さんが誰かを連れて来るのが聞こえる。
おお、またアイツが戻って来たのか?!
今度こそ…と思いきや。
「すみません。姉が本当にご迷惑を……」
弟だ! 弟が来たんだ。あれ? お父さんたちは?
「何言ってんのよ。本当に残念だったわね。
悲しいわ、まだお若いのに」
「……まだ、なんか、ホントのことなのか実感なくて……」
そうだろうなあ。
私は近づいてくる2人の会話を聞きながら、
仲が良いわけでも悪いわけでもなかった弟との思い出を
しみじみと振り返っていた。
なんなら赤子の頃から
おしゃべりで落ち着きがなかった私と違い、
弟は話を聞いているのか反応も薄く、
いつも無口で沈着冷静な子だった。
それでも心根が優しい子だということは、
家族全員がわかっている。
私が飼い猫の額に、値札シールを貼り
「198円~」
と笑っていた時も
「……やめろよ」
と、すぐにはがしてあげていた。
私が夏休みの自由研究のために
公園でアリたちを捕まえた時、
宿題の完成後は面倒なので、
自宅前の道路に解放しようとしたら
「……やめろよ」
と奪い、わざわざ公園まで行って戻してきた奴だ。
無愛想で実直な人間。
だから損ばかりしているように見える。
この先も心配だなあ……
と、この先がなくなった私が案じていると。
大家さんが聞き捨てならないことを言い出したのだ。
「警察もね、事件性は低いって言ってるから、
仕方ないのかもしれないけど」
なんだと?! なんて言った? 今!
「はい。電話で聞きました。
昨日、警察が遺体の検視して……事件性は低いって……」
えええええ!? 事故扱いされているの?これ。
どう見ても他殺でしょ?
その辺に関しては安心してたのに。
うら若い女性が風呂場で変死だよ?
誰が湯船で溺れるんだよっ。
それに私、最後に人影だって見てるし。
なんか、頭にすごい衝撃があって、
めちゃくちゃ痛かったんだから。
よくテレビドラマで
「日本の警察をなめるなよ!」
とか言ってたのに……まあ、セリフだけどさ。
しかし信じらんない! 腹立つ。
いや、あいつが意外とうまく証拠を
隠滅できたのかもしれない。
そもそも私の頭を殴った鈍器も見つかってないようだし。
まだあきらめてはいけない。遺体は警察署だよね。
検死をしたらすぐにわかるはずだ。
「後頭部に鈍器で殴られた跡が!」
って、今ごろやってるかもしれないぞ。
ショックと悔しさでギリギリしていると、
やっとドアが開いて弟が見えた。
しかし入っては来ない。無表情でこちらを見ている。
私は必死に「私は殺されたんだよっ」と何度も叫んだ。
「犯人は、アンタの義理の兄になるはずだったやつだよ!」
私はバタバタ動きながら、
なんとか現世に干渉しようと頑張ってみた。
が、玄関にかけられたカレンダーはちらりともめくれず、
下駄箱の上に鎮座ましますピンク色のカエルくんだって
(”置くと幸せになる”ってあったから買ったのに!)
びくともしなかった。
しかし霊感のない弟には何も届かない。
まだ現場に入ることは許されていないようで
弟は立ち尽くしたままだ。じっと中を見つめている。
子どもの頃からのまんま、その表情はほとんどない。
そうだ! 電子レンジを鳴らすなら今だ!
どうやって伝える?
モールス信号、姉弟で学んでおけばよかった!
しかし次の瞬間、私の目に飛び込んできたものに気付き、
つい大声で叫んでしまう。
「いももちづきっーーーーー!」
それは弟の手荷物からはみ出す、
わが故郷の銘菓「いも望月」だった。
なに?「いも望月」を知らない? なんてことを!
薄黄色でまんまるの、モチもちとした厚めの皮。
なめらかでしっとりとしてクリーミーな芋餡。
私はこれが子どもの頃から大好きだった。
ほんっとに美味しいんだから。ひと箱、楽勝でいけます。
冬に暖かいお茶、夏はアイスコーヒーと一緒に。
あああ、何年振りだろ。
ここんとこ忙しくて帰れてなかったから。
おイモのキャラクターが描かれたパッケージを見て、
私は狂喜乱舞する。
会いたかったよ、いも望月。
私は知った。
死後の食欲は生前より増すことを。
体調は常に万全だし、
お金も体重も気にしなくていいんだもの!
食べたい。ここ数年、食べたくてたまらなかった。
このために帰省していたくらい、好きだったのに。
仕事が忙しかったり、元・婚約者に
「えええー、夏休みは俺と過ごそうよ」
と帰省を反対されて帰らなかったのだ。
ああ、食べたい。ものすごく食べたい!
そんな私に気付くこともなく、
弟はゆっくり大家さんに振り返り、
そのまま警察に向かう、と言ったのだ。
え、ちょっと待って!
私は「いも望月」を見つめたまま叫ぶ。
閉まりかけるドア、歩き出す弟たち。
するときゅーんと吸い寄せられるように、私は外に、
正確には「いも望月」の横にくっついたのだ。
そしてそのまま進んでいく。
振り返ると、大家さんがカギをかけているのが見えた。
どんどん遠ざかる私の家。
弟は階段を降りる。私も一緒に下っていく。そして。
私は外に出たのだ。つまり。
異例の速さで移動霊に昇進したのだ!
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