【完結】吉祥天姫~地味な無能と馬鹿にしてますが実は完全無敵のラッキーガールです。悪意は全部跳ね返し最強のイケメンに溺愛されてます~

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第三章

81 開運招福による大団円

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 長い歴史の中、何度となく繰り返し出現し、
 人々を苦しめてきた餓者髑髏がしゃどくろ

 それが今、その存在自体を受け入れ慈しまれたことにより
 完全にこの世から消滅していったのだ。

 真っ白な灰の塊となった餓者髑髏がしゃどくろ
 風が吹くたびにどんどん崩壊していき、
 その粒はキラキラと輝きながら天へと昇って行く。

「……これでもう二度と、
 この世界に餓者髑髏がしゃどくろが復活することはない」
 レイオウがつぶやくが、沈痛な面持ちのままだ。
 他の皆も沈痛な面持ちで沈み込んでいる。

 今は喜びよりも、天帝と天帝妃を思い胸を痛めていた。
「何か四天王家にご相談くだされば……」
 クーカイが言いかけて、首を横に振る。
 この策を持ちかけたとて、反対されるのが間違いないだろう。

「天帝はお一人で……いいえ、天帝妃様と二人で
 今日のために大変な思いをされていたのですね」
 セーランは涙をこぼしながらつぶやく。

 超人的な力を持つ者のみが出来得ることだが
 それ以上に必要なのは強い”意志”だ。
 二人の覚悟を思い、レイオウは天帝の責務というものを思い知る。

 皆がうつむく中、アイレンだけは
 餓者髑髏がしゃどくろだった灰の塊を見つめている。
 祈るように両手を合わせ、ずっと瞬きもせずに見つめ続けた後。

 急に塊へと駆け出したのだ。
「アイレン! どうした?」
 レイオウは後を追いながら気が付く。
 塊の中に、何かあることを。

 レイオウは破邪顕正の剣を振るい、大風を巻き起こす。
 餓者髑髏がしゃどくろの欠片は一斉に
 きらめきながら上空へと舞い上がっていく。

 そこに、二人の姿はあった。
 獅子の姿から人間へと戻り、
 天帝は天帝妃をかばうように抱きしめ倒れている。

「……天帝様?!」
 皆が駆け寄り、二人を取り囲む。

 飛びぬけた回復力を持つ”琵琶”が、すばやく二人を調べながら言う。
「ひどく衰弱されていますが、お二人とも息がございます!」
 そして持てる力の全てを注ぎ、二人を回復していく。

 皆が不安げに見守る中、まずは天帝妃が目を開いた。
 そしてすぐに目の前の夫の顔に手を添えつぶやく。
「……ライ……目を開けて、ライ……」

 天帝妃は泣きそうな顔で天帝の顔を見上げていたが、
 やがて、目を閉じたまま天帝が答えた。
「……リューラ、なぜ来た。
 君は残るという約束だったろう……」

 それを聞き天帝妃は涙をこぼしながら笑った。
「貴方だって約束を破ったのよ。
 結婚する時、”独りにはしない”と言ってくれたのに」

 そして天帝はゆっくり目を開き
 自分たちを見守る多くの人々に気が付いた。

 何事かわからぬままこちらを見ている天帝に、
 レイオウは泣きそうになりながらも笑顔で言った。
「俺はまだ、天帝になることはできません。
 もう数年、頑張っていただけませんか?」

 ーーーーーーーーーーーー

 天帝と四天王による、餓者髑髏がしゃどくろの討伐。
 しかもそれは完全なる消滅だった。

 またたく間に広がったその大吉報を受け、
 世界はあっという間に歓喜と安堵が広がっていく。

 同時に悪鬼や妖魔の力は急速に衰え、
 その出現数も激減していった。

 天帝と天帝妃を救護兵に預けた後、
 小島に残ったレイオウ達は顔を見合わせた。

「ああ……終わったのね」
 アヤハが大岩に寄り掛かってつぶやく。
「私たち……みな無事で良かったですわ」
 セーランがまたもや涙ぐみながら言うが、
 今回はうれし泣きだった。

 前回、この世に餓者髑髏がしゃどくろが出現した時、
 天帝を始め多くの四天王家が亡くなったのだ。
 世界的な被害も甚大であり、
 死者の数も不毛の地となり果てた地の広さも
 その傷跡は相当のものだったのだ。

 しかし今回は。
 それらを全て、未然に防ぐことが出来たのだ。
 その上、人類の敵である餓者髑髏がしゃどくろを完全消滅させた。
 歴史に語り継がれるのは間違いない戦いだろう。

「まあ、人がこの世にいる限り、
 悪鬼も妖魔の無くなりはしないだろうが」
 クーカイが苦笑いしながら言うが、ケイシュンが首を振る。
「無くせはしないが、減らすことは出来よう。
 人々は己の憎しみや嫉妬などの悪意を、
 さまざまな方法で解消するすべ
 じょじょに身に着けていくだろうよ」

「ええ、それに。そういった思いを抱える人々に対し
 その存在をただ打ち消そうとするだけでなく、
 情けをかけ、辛さを慮る必要があることを
 天帝は教えてくださいましたわ」
 アイレンが言うと、みんなはうなずくが。

 視線がアイレンに集中し、全員が黙り込んだ。
 事態が収束し、アイレンが吉祥天であることを思い出したのだ。

 思えば、全てが上手く行き過ぎではないか。

「……開運招福」
 誰かがつぶやいた。
 吉祥天の持つ力の一つだ。

 彼女はレイオウ達の成功や無事を祈り、
 世界が安全であることや人々が恐怖に負けない事を望み、
 さらには天帝の生還を願い……
 そしてそれは全て叶ったのだ。

 レイオウは彼女に向き、静かに告げる。
「君は間違いなく、吉祥天だ。
 妖魔に襲われることがなく、特定の”能力”も持たない」

 困惑するアイレンに、さらに言葉を続ける。
「以前より”意図反射”には気づいていた。
 君に害意を持った者……
 まあそのほとんどはカアラだが、
 それはそのまま彼女自身へと返されていたからな」

 家を奪おうとすれば棲み家を無くし、
 立場を奪おうとすれば自分が惨めな思いをした。

 そして絶対にアイレンを裏切らず
 彼女を助け守ろうとしたジュアンは
 多大な幸運に恵まれたのだ。

 しかしセーランは自分の価値観として
 無能力のアイレンを”北王妃にふさわしくない”と非難し、
 アイレン自身を陥れようとはしなかったため
 手ひどい反射は受けずに済んだ。

 それでも公衆の面前で恥ずかしい思いをすることになったのだ。
 セーランはあの時を思い出し、後悔に身をすくめる。
 その頭をケイシュンがぽんぽんと叩いて笑った。
 ”なんてことねえよ、心配すんな”、とでもいうように。

 自分自身にまったく覚えがないため、
 首をかしげるアイレンに苦笑いしながら
 レイオウはさらに言った。

「そして”開運招福”。
 今回の餓者髑髏がしゃどくろ戦は完璧すぎだ。
 カアラ生贄の娘が偶然にも、愛情の念がこもった石を持っていたのか。
 世界規模であるというのに、情報の伝達も滞りなく進み、
 デマが横行することも無く、
 人々は素直にそれを受け入れてくれたのか」
 情報の伝達と大衆の心理操作は、
 簡単そうでいて、思うようにはいかないものだ。

 クーカイもうなずきながら言う。
「我らの計画も万事計画通りだったし、
 ……天帝様の無謀とも思える策もそうだな」

 ”琵琶”も同意し、不思議そうに語る。
「お二人が生き残った理由として考えられますのは
 皆さまが外側から多大な浄化の力を注いでお助けしたことや
 天帝様たちが互いに相手を守ろうと力を使ったため……
 だとは思うのですが、それだけではちょっと……」

「そうだな。あり得ぬほどのこの大団円は
 吉祥天がもたらしたものではないだろうか」
 レイオウに言われ、アイレンはキョトンとした顔をしていたが。

 やがて、とんでもないことを言ったのだ。

「でも、その”開運招福”と”意図反射”って
 平民の皆さん全員が持っている能力ですよね?」

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