愛言葉を贈らせて〜謎めいてる彼女の甘い罠〜

愛宮

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第一章『告白ゲーム(藤堂朔視点)』

*3*聖夜のお誘い②*

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クリスマスイブ。夜6時30分。
俺は鈴野家を訪れていた。

「こんばんわ朔君、メリークリスマス」
「こんばんわ。すいません結空さん、もう暗いんでどうしようか俺も悩んだんですが、これを結羽に渡したくて。結羽の体調が良い時に構わないので渡して貰えませんか?」

何軒か花屋を回り、四角い小さな箱に可愛く詰められたカーネーションのフラワーボックスを見つけた。

「・・・結羽に会ってく?今ちょうど、結羽の調子も良いから話せると思う。このフラワーボックス、直接渡してあげて。結羽、喜ぶわ」
「是非」

思い掛け無い最高のクリスマスプレゼントだ。
結空さんに先導されながら、何度かお邪魔させて貰った結羽の部屋の前まで来る。
こんこん。

「結羽、今大丈夫?」
「結空ちゃん?」
「朔君がね、結羽にプレゼント持って来てくれたの、入っても大丈夫?」
「うん、どーぞ」

結羽の声。
たった数週間なのに、随分久方ぶりに感じる。

「いらっしゃい、朔。メリークリスマス」

変わらない結羽の姿。
笑顔もそのままだ。

「メリークリスマス結羽。これ、プレゼント」

フラワーボックスを渡す。
結羽は受け取ったフラワーボックスを見て、華に負けないくらい素敵な笑顔を浮かべてくれた。
俺はきっとこの先、結羽のその笑顔を忘れる事はないだろうと思う。

「可愛い、感謝の花だね。有難う朔、私ね、お花の中で、カーネーションが一番好きなの。朔に教えた事あったけ?」
「あ、いや、俺の知り合いからの助言かな」
「そうなんだ。その人にも最高のクリスマスを有難うって伝えといて。でも私、朔に何も用意してなくて」
「結羽の笑顔が見れた。それだけで充分だよ。俺も最高のクリスマスになった」
「いつからそんなキザな台詞を簡単に言える様になったんだが。出会った当時は、拒絶の言葉しか吠えなかった生意気なワンコだったのに」
「あの当時の俺は忘れてくれ」
「ふふ、忘れてあげない」

結羽の笑顔は不思議な魅力がある。
人の心を掴んで離さない。
出会う人皆が、結羽の魅力に夢中になっていく。
その証拠に、結羽の部屋には贈り物が沢山置かれてる。


「朔、もう外真っ暗だから帰った方が良いよ」
「・・・あぁ、そうだな」
「学校、サボっちゃ駄目からね」
「分かってる。真面目に授業受けてるよ」
「気を付けて帰ってね」
「あぁ」

言いかけた「またな」の言葉を飲み込む。
曖昧な約束言葉を、俺は紡ぐ事が出来なかった。

結羽の笑顔に見送られながら部屋を後にする。

「朔君、今日は本当に有難うね」
「いえ、俺も結羽に会えて嬉しかったです」
「良い子ね、朔君は。結羽ったらこんな素敵な男の子を振っちゃうんだから、勿体無い事をしちゃって」
「全くですよ、俺みたいに端正な顔立ちの男子そうは居ないんですからね」
「あらそれ、自分で言っちゃうのね」

結空さんと言葉遊びをしながら、俺は鈴野家をお暇させて貰った。
時刻はもうすぐ7時になろうとしていた。
さて、どうするかな。
急いで駅に向かったとしても、7時は越える。
彼女が勝手に誘って来ただけで、約束なんてしていない。
俺が気にかける必要なんてない相手だ、彼女は。

「あぁ、もう、しゃーないな」

結羽が喜んでくれた。
それは少なからず彼女のおかげでもある。
人として、そのお礼はするべきだろう。


.
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