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失恋した先は、地獄かラブコメか(社会人、幼馴染)
しおりを挟む冬の夜、居酒屋のざわめきの中、和臣はグラスを片手に、眠たげな表情で座っていた。
今日の酔いの原因は明白だった。
恋人に振られたからだ。
「エッチが下手」と告げられたその瞬間、胸に穴が開いたような気持ちになった。
「和臣、大丈夫?」
控えめな声で桃子が差し出したおしぼりに手を伸ばす。
桃子とは家が隣同士の幼馴染だ。
やんちゃだった和臣を、昔からよく世話していた。
成人を迎えた今も、その関係は変わらずのまま。
「大丈夫、じゃないかも。今日、最悪だ」
言葉がもたつく。
酔いも手伝ってか、いつもよりも素直に、感情が表に出てしまう。
気づけば二人、家までの道すがら、ふわふわと手を繋いで歩いていた。
手を繋いだのなんて、幼稚園の時以来だろうか。
桃子にきっと他意はない。
酔っぱらいの介助と言った所か。
部屋の前で立ち止まった和臣は、ふと桃子を見た。
二人の間にある静寂が、やたら心地良く感じる。
心地良いままに、和臣はそっと唇を重ねてしまう。
桃子も、小さく唇を押し返す。
*****
陽の光がカーテンの隙間から差し込むと、和臣は頭を抱えてベッドの中で目を覚ました。
「あれ、ここは?」
隣を見ると、桃子がうつ伏せで眠っている。
布団の端に小さく丸まって、まるでぬいぐるみのようだ。
和臣は心臓が跳ね上がる。
昨夜の記憶がじわじわと蘇る。
居酒屋、酔い、そして、桃子と唇を重ねた事。
姉弟みたいに過ごしてきた関係。
それがもう、元には戻れない気がした。
「最悪だ」
小声で呟き、そっと布団から出ようとした。
しかし、桃子がもぞもぞと動き、和臣の指をギュっと摘む。
「え、えっと、桃子、さん?」
困惑していると、桃子の目がゆったりと開き、和臣を見る。
「・・・おはよう、和臣」
か細い声と赤い頬に、和臣は胸が締め付けられる。
純粋な幼馴染になんて事を。
酔っていたなど、何の免罪符にもならない。
「おはよ。あのさ、俺達、昨日」
「和臣、全然、下手じゃなかったよ?セフレ君達より、うんと上手だった」
「っ」
いつも謙虚で大人しい幼馴染からの報告に、和臣は色んな意味で固まる。
その瞬間、和臣の中から失恋の痛手は消え、別の苦悩が始まってしまうのだった。
《了》
桃子さんはずっと、和臣に一途片想い。
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