6 / 6
最終話【世界一手強い相手】
しおりを挟む
女僧侶ルミナスは、一人で魔王城を訪れていた。
目的は、ただ一つ。
「勇者は、貴女に恋をしているわ」
穏やかな口調で告げられたその言葉に、魔王ソフィの瞳が大きく見開かれ、頬にさっと赤みが差す。
「なっ」
言葉にならない驚きと戸惑いが、全身を襲う。
だがルミナスは、一切躊躇わず続ける。
「そして、貴女も、勇者に心を寄せている」
ソフィの金色の瞳は泳ぎ、唇はわなわなと震えている。
気づけば顔は真っ赤で、本人だけが必死に否定している状態だった。
狼狽えつつも「っな、何を、根拠に?」と何とか声を絞り出す。
ルミナスは静かに頷き、確信に満ちた調子で事実を突き付ける。
「まず一つ。勇者が他の女性と話していると、凄い剣幕で睨み付けているわ。私も含め、魔王軍の女幹部全員が被害者よ。魔王なら、もう少しご自分の持つ威嚇を意識して。睨まれる側は本当に怖いんだから」
「・・・」
「次に。勇者が城に居ない日は、侵攻計画が雑になるって、魔王軍参謀たちがボヤいていたわよ。仕事のやる気を、勇者の在・不在で左右されるの関心しないわね。侵攻計画が遅れる分には、こっちとしては有難いけど」
「・・・」
「そして最後に」
ルミナスは、楽しげに微笑んだ。
「『勇者』と呼ぶ声が、甘く蕩けてる上に、勇者の前では、笑顔も格別に可愛く咲くわ。特別感が駄々洩れよ。魔王城内では密かに、魔王様の恋を見守る『ほのぼの部隊』なんてものまで結成されてるんだから」
衝撃だった。
自分がまさか、そんな腑抜けた事態になっていようとは。
突き付けられた事実に、ソフィはその場に立ち尽くし、身動きが取れなくなる。
その時。
扉が、静かに開いた。
「ただいま~。カボチャが安く手に入ったからさ、煮物にコロッケに、今日はカボチャ祭りだよ。あ、でもソフィがカボチャ苦手なら、別のを用意するからね」
両手に荷物を抱え、少し汗ばみながらも、にこやかに現れた勇者レオン。
彼の登場とともに、張り詰めていた空気が、ふわりと和らぐ。
「・・・カボチャは、好きだ」
「そっか、良かった」
ほっとした様に笑うレオンに、ルミナスも目を向ける。
幼馴染として、改めて驚かされる。
常に勇者としての仮面を被り、望まれる笑顔しかしてこなかったレオンが、自然に嬉しそうな表情を見せているのだ。
「お、ルミナスも来てたのか。何の話してたんだ?」
「恋愛相談よ。魔王様があまりに無自覚だったから、少し助言をね」
そう言って、ルミナスはさらに笑みを深める。
「魔王様を倒すには、剣よりも愛が有効みたいね。さすが勇者レオン。幼馴染として、応援してるわ。頑張って」
レオンは苦笑混じりに、しかしどこか優しい表情で答えた。
「簡単に言うなよ。神や竜よりも・・・世界で一番手強い相手なんだぞ、魔王は」
恋する勇者のおかげで、今日も世界は、平和な一日になりそうだ。
おしまい。
「ねぇ、勇者」
「何?」
「勇者って、私の事、好きなの?ルミナスが言ってた。そうなの?」
「・・・」
「?」
「俺は、無謀な勝負には出ないよ。下手に踏み込んで大怪我は御免だからね。まずは周到に罠を張り、逃げ道を塞いで、相手が戦意喪失になるまで待つ。それに案外、待ってる時間も楽しいものだしね」
「何を言ってるかよく分からんが、楽しいのなら、良かったな」
目的は、ただ一つ。
「勇者は、貴女に恋をしているわ」
穏やかな口調で告げられたその言葉に、魔王ソフィの瞳が大きく見開かれ、頬にさっと赤みが差す。
「なっ」
言葉にならない驚きと戸惑いが、全身を襲う。
だがルミナスは、一切躊躇わず続ける。
「そして、貴女も、勇者に心を寄せている」
ソフィの金色の瞳は泳ぎ、唇はわなわなと震えている。
気づけば顔は真っ赤で、本人だけが必死に否定している状態だった。
狼狽えつつも「っな、何を、根拠に?」と何とか声を絞り出す。
ルミナスは静かに頷き、確信に満ちた調子で事実を突き付ける。
「まず一つ。勇者が他の女性と話していると、凄い剣幕で睨み付けているわ。私も含め、魔王軍の女幹部全員が被害者よ。魔王なら、もう少しご自分の持つ威嚇を意識して。睨まれる側は本当に怖いんだから」
「・・・」
「次に。勇者が城に居ない日は、侵攻計画が雑になるって、魔王軍参謀たちがボヤいていたわよ。仕事のやる気を、勇者の在・不在で左右されるの関心しないわね。侵攻計画が遅れる分には、こっちとしては有難いけど」
「・・・」
「そして最後に」
ルミナスは、楽しげに微笑んだ。
「『勇者』と呼ぶ声が、甘く蕩けてる上に、勇者の前では、笑顔も格別に可愛く咲くわ。特別感が駄々洩れよ。魔王城内では密かに、魔王様の恋を見守る『ほのぼの部隊』なんてものまで結成されてるんだから」
衝撃だった。
自分がまさか、そんな腑抜けた事態になっていようとは。
突き付けられた事実に、ソフィはその場に立ち尽くし、身動きが取れなくなる。
その時。
扉が、静かに開いた。
「ただいま~。カボチャが安く手に入ったからさ、煮物にコロッケに、今日はカボチャ祭りだよ。あ、でもソフィがカボチャ苦手なら、別のを用意するからね」
両手に荷物を抱え、少し汗ばみながらも、にこやかに現れた勇者レオン。
彼の登場とともに、張り詰めていた空気が、ふわりと和らぐ。
「・・・カボチャは、好きだ」
「そっか、良かった」
ほっとした様に笑うレオンに、ルミナスも目を向ける。
幼馴染として、改めて驚かされる。
常に勇者としての仮面を被り、望まれる笑顔しかしてこなかったレオンが、自然に嬉しそうな表情を見せているのだ。
「お、ルミナスも来てたのか。何の話してたんだ?」
「恋愛相談よ。魔王様があまりに無自覚だったから、少し助言をね」
そう言って、ルミナスはさらに笑みを深める。
「魔王様を倒すには、剣よりも愛が有効みたいね。さすが勇者レオン。幼馴染として、応援してるわ。頑張って」
レオンは苦笑混じりに、しかしどこか優しい表情で答えた。
「簡単に言うなよ。神や竜よりも・・・世界で一番手強い相手なんだぞ、魔王は」
恋する勇者のおかげで、今日も世界は、平和な一日になりそうだ。
おしまい。
「ねぇ、勇者」
「何?」
「勇者って、私の事、好きなの?ルミナスが言ってた。そうなの?」
「・・・」
「?」
「俺は、無謀な勝負には出ないよ。下手に踏み込んで大怪我は御免だからね。まずは周到に罠を張り、逃げ道を塞いで、相手が戦意喪失になるまで待つ。それに案外、待ってる時間も楽しいものだしね」
「何を言ってるかよく分からんが、楽しいのなら、良かったな」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
愛を騙るな
篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」
「………」
「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」
王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。
「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」
「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」
「い、いや、それはできぬ」
「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」
「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」
途端、王妃の嘲る笑い声が響く。
「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる