親切だから好き

なっぱ

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颯太side

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俺は、湊斗に惚れさせるために、わざと親切とはどういうことか、深く考えながら行動している。
 それは、今から五年前のことだ。まだ、中学生だった俺たちは、校庭の隅にあるベンチで、他愛もない話をしていた。
「なあ、湊斗ってどんな人がタイプ?」
 俺がそう尋ねると、湊斗は少し考えた後、照れたように笑って言った。
「うーん……誰にでも親切にしている人、かな」
 その言葉を聞いた瞬間、俺の心臓は、ドクンと大きな音を立てた。その時の俺は、ただ単に優しかった。それは、誰にでも、だ。湊斗だけじゃなく、他のやつにも。でも、湊斗が言った「親切」というのは、そういう漠然としたものではないように感じた。
 それから、俺は「親切」という概念について、深く考えるようになった。辞書で調べ、本を読み、そして実際に、親切な行動を観察した。
 「親切」とは、相手の状況を理解し、その人が本当に必要としていることを察して、行動すること。
 それが、俺がたどり着いた結論だった。単に道端に落ちているゴミを拾うだけでは、親切ではない。そのゴミが、誰かの怪我の原因になるかもしれないと予測し、それを未然に防ぐために拾う。それこそが、本当の親切なのだ。
 俺は、湊斗に惚れてほしかった。そして、湊斗のタイプの人間になりたかった。だから、俺は「親切」を、意識的に、そして徹底的に、実行することにした。
 駅のチャージの機械で、お札が通らない年配の男性。もし、そのままにしておいたら、その男性は後ろの人に急かされ、焦り、ますますうまくいかなくなるだろう。そして、周りの人は、ただ苛立ちを募らせるだけ。だから、俺は自分の新しいお札を差し出し、男性の焦りを解き、周りの苛立ちも収めた。この行動は、ただの「親切」ではなく、その場の空気全体を読み、最善の策を講じた結果なのだ。
 雨上がりの通学路で、泥水が溜まっている側溝。湊斗は、いつも少しぼんやりしているところがある。だから、そのままにしておいたら、きっと気づかずに踏み込んで、靴もズボンも汚していただろう。だから、俺は立ち止まらせ、そして、安全な道を教えた。これは、あいつの性格を理解し、その上で、適切な行動を選んだ結果だった。
 俺の行動は、単なる善意ではない。すべては、湊斗が、俺のことを「親切な人だ」と認識し、そして、俺に惚れてくれるように、計算して行われたものなのだ。
 でも、もし、この行動が湊斗を不快にさせてしまったらどうしよう、という不安も、常にあった。俺はただ、湊斗に好かれたいだけだった。それだけだったのに、俺のやっていることは、なんだかとても、狡猾で、嘘くさいことのように思えてくる。
 だから、俺は、誰にもこのことを話せなかった。特に、湊斗には。
 湊斗は、俺が「親切」だから、俺を好きになってくれたのだろうか。俺の「親切」は、果たして、あいつの心を動かすことができたのだろうか。
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