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19話

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引き返してきた自転車が、私の正面で停止した。

「 あの…ごめん、荷物こんなことにしちゃって…ほんとごめん! 」

自転車から降りた男子生徒は、散乱している私の教科書入りのヘビーリュックや、体操服袋を手際よく拾い上げてくれている。

「 あの…ありがとう 」

「 それより、脚大丈夫?  ケガとか無い?  」

「 あ、足なら…大丈夫です 」

疲れて休んでいただけですから…なんて言えないです。

だってこの人、とても真面目で親切そうな人だから…

何故か、急にこの人のことが気になり始めた私は、ちいさく頭を下げながら思った。

ごめんなさい…

あなたの心のドアを…

少し覗かせていただきますね

〈  僕のせいで…この子に怖い思いをさせてしまったな…ごめんね…ちょっと寝坊したせいで焦っていたから…それにしてもこのリュック重い… 〉

心の中も変らない…

「 私のリュック重たくないですか? 」

「 いや…これくらいなんてことないよ…あの、これ、嫌じゃなければ僕の自転車で学校まで運んであげるけど…  」
 
嫌だなんて…あるわけない

「 あ、ありがとう 」

なんて優しい人…

この時が初めてだったかもしれない、

意識せずに自然に笑顔がつくれたのは…

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