婚約七年目、愛する人と親友に裏切られました。

テンテン

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「レイブン様……? 冗談ですよね?」

「冗談ではない。お前とは婚約破棄だ」

一体何が起こっているのだろうか。
周囲の貴族たちは私を指差して、口々に罵りの言葉を紡いでいる。
豪華絢爛なパーティー会場が、薄汚れた森のように様変わりしていた。

「婚約破棄……どうして……どうしてなのですか!?」

レイブンとの婚約関係は、私が十二歳の時から始まった。
今年で七年目となり、結婚式も控えていた。
ずっと彼と一緒にいられると思っていた。
隣で笑っていられると思っていた。

「本当に分からないのか?」

レイブンは苛立ったように言った。

「私が何かしたのですか……?」

ざわっ。
不安が胸をよぎった。

昔から私は要領が悪い人間だった。
友人や家族を何度もイラつかせたことがあるし、楽しいパーティーの場を台無しにしたこともある。

今までの七年間を走馬灯のように振り返る。
しかし思い当たる節はなく、しんと黙ることしかできなかった。
はぁ……レイブンが大きなため息をつく。

「エミリア。君の愚鈍さは婚約以前から知っていたつもりだ。だけれど、ここまでくると本当に呆れ果てるよ。婚約なんてしなければよかった。俺の大事な七年間を返してくれ」

じわっと目頭が熱くなる。
その直後、視界が涙でぼやけた。

「おいおい泣くのかい? やめてくれよ、それじゃあ俺が悪者みたいじゃないか」

「どうせ嘘泣きじゃないの?」
「そうよそうよ、レイブン様の気を引こうとしているのだわ!」

どこからか心無い野次が飛んできた。
必死に涙を拭くが、涙は止まる気配はない。

心がズキズキと痛んでいた。
ボロボロの家に嵐がぶつかるように、私の心は今にも壊れてしまいそうだ。
やっとのことで涙をとめると、助けを求めるように振り返る。
そこには親友のアリアはいなかった。

「え……アリア」

さっきまでここにいたはずなのに、消えていた。
辺りをきょろきょろと見回すが、近くにはいないみたい。

「君を助けてくれる人なんていないよ」

レイブンが私に冷たい言葉を放つ。

「……レイブン様。わ、私が何をしたというのですか? 私たちは順風満帆な日々を送っていたはずです。婚約破棄されるような……お、行いはしたつもりはありません」

毅然とした態度でそう言うと、彼はチッと舌打ちをする。
いつもの優しいレイブンはもういないみたいだ。

「白々しい態度をとるな。ミラ……おい、ミラ!」

「はい、お兄様」

群衆の中から、すっと背の低い女性が出てきた。
レイブンの屋敷で何度も見た事のある女性。
レイブンの妹であるミラだった。

まだ十七歳ということもあり幼い顔つきだが、魔法は大人顔負けの実力。
レイブンと同じ銀色の髪を肩のところで切りそろえて、しかし眼光はレイブンよりも数段鋭い。
まるで蛇を思わせるような女性だ。

「ミラ、証拠を見せてやれ。あの悪女に」

「かしこまりましたお兄様」

ミラは微かに微笑むと、腕を覆っていたドレスを捲った。
「うわっ」「酷い!」間髪入れずに群衆から声が上がる。

ミラの腕には酷い火傷の跡があった。
燃え盛る丸太を押し付けられたように、楕円形の跡がついている。

「エミリアさん。あなたにつけられた傷よ」

ミラはその鋭い眼光と共に、淡々と口を開く。

「な、何を言っているの!? 私はそんなことしていないわ! どういうことよミラさん!」

ミラとはそれなりに仲良くやれていたと思う。
間違っても、裏切られるような因縁などありはしない。
けれどミラの腕には火傷の跡があり、私がつけたと主張している。

「いい加減にしろよエミリア」

レイブンは怒りで燃え盛っていた。
大事な妹を傷つけられた怒りが、全身から伝わってくる。

「お前は俺の大事な妹に傷をつけた! これは死罪にも値する卑劣な行為だ! よってお前とは婚約破棄だ! そして……婚約破棄の後、国外追放に処す!」

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