気づいたら、幼馴染が好きでした。

あさ

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気づいたら、幼馴染が好きでした。ー前編ー

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俺には同い歳の幼馴染がいる。
家が隣同士で、元々親同士(母さんたち)が友人で、小さい頃から一緒いるという典型的な幼馴染の関係だ。


俺たちは同じ高校に通っているのだが、同じように過ごしてきたはずなのに、幼馴染の佐野祐希さのゆうきは高身長で頭も良くて顔も良い、モテモテのイケメンに育ってしまった。俺たちは相変わらずいつも一緒にいるのだが、何せ祐希はモテる。平凡でつまらない俺が近くにいると女子たちが黙ってないのだ。それに最近、女子たちのなんで隣に俺がいるんだとでも言いたいような目が酷くなってきて、祐希の隣にいるのがいたたまれなくなってくる。俺だって、祐希と話したりしたいのに。


はぁ、学校行きたくねぇな。


もう外は明るく、身体を起こして準備する時間を知らせるアラームもなったというのに気が重くてベッドから出られない。学校に行きたくないとベッドの中でモゾモゾしていると、誰かが階段を上ってくる足音が聞こえた。


ガチャッ


あおいー?起きてる?」


......祐希。なんてタイムリーなやつ


「うぅん...起きてる...」


「ほら、起きてるならベッドから出て準備しなよ」


「...行きたくない...」


「そんなこと言わずにさー、はや「やだ」...」


祐希はいつも起こしに来てくれるけど今日は珍しく俺が学校行くの渋ってるからビックリしてるかな。やだ、とか小さい子どもじゃないんだしちょっと強引すぎたかな...


「ふーん。じゃあ俺も寝ちゃおっかなー」


なんて言って、祐希は俺の寝ているベットの中に入ってきた。


「え、ちょ、ちょっとまって!なんで入ってくるの!」


「え?だって蒼、学校行かないんだろ?なら俺も行かなーい」


「なっ!なんでだよ!!...学校には、祐希が来るの待ってる子、いっぱいいるだろ...」


あぁ、なんか変なこと言ってしまった。いつもはこんなこと言わないのに...いや、この状況が悪いんだ!!俺のベッドの中で祐希と2人、少しでも身体を動かしたら密着するぐらいに近くで話してる。なんだか、心の中にグルグル渦巻いている感情が簡単に出てきそう。

もんもんと考えていると、祐希がさっきから無言になっていることに気づいた。いつもなら俺の話にちゃんと答えてくれるのに。

不思議に思って祐希を見ると、祐希は目を見開き、驚いているような表情をしていた。少し頬が赤く染っているような感じがした。
まじまじと祐希を見つめると、改めてイケメンだなぁと思う。切れ長の綺麗な目に、スラッと高く筋が通っている鼻。少し開く唇は薄くて形のいいものだ。学校の女子が祐希のことをキャーキャー言う理由が分かる。でも、そのことを思うと、なんだか胸がぎゅうっとして切なくなる。...なんでだろう。


祐希の顔をじーっと見ながらそんなことを考えていると祐希がやっと口を開いた。


「......もしかして、蒼、ヤキモチ...妬いてくれた?」


......え?ヤキ...モチ...?俺、嫉妬してたのか...?女子たちに。な、なんで俺が嫉妬なんか...!
自分では嫉妬なんかしていないと思っていても、今までの心のモヤモヤとか、さっきの俺の発言とか嫉妬してたからだと納得できる自分がいる。
俺、嫉妬、してたんだ...!自覚してしまうと、一気に顔に熱が溜まってきて、恥ずかしくなった。


「ふっ、そんなに恥ずかしがらなくていいのに。俺、蒼が嫉妬してくれて、すっごい嬉しい。」


なんて、蕩けるような顔で言った祐希を見て、ギュッッッ!胸が締め付けられるように痛くなった。なんで、なんだろう、胸が、すっごい苦しい。ドキドキとうるさい胸を抑えながら、祐希に尋ねる。


「......祐希は、俺に嫉妬されたら、嬉しいの?」


「...うん。だって、蒼のこと好きだもん。...いつも言ってるじゃん」


「......」


祐希から発せられた言葉に、驚きが隠せなかった。好き。...好き。蒼のこと好き。その言葉が頭の中に埋め尽くされる。その言葉に気を取られ、後に言ったいつも言っている、という言葉は俺の耳に入ってこなかった。


「なんか、安心したら眠くなってきたな。ねぇ蒼、蒼のこと抱き締めながら寝たいな。」


と言って、祐希は俺をその胸に引き寄せた。俺より一回り大きく、決して柔らかくはないその胸に抱かれて、なんだか安心した。たくさんの情報に頭がパンクしそうだったのに、俺は気づいたら眠っていた。







「ほんと、可愛い。俺の蒼...」


祐希がそう呟いていたけど、俺の耳には届かなかった。









 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 


「ぅん......ん!!?」


目を覚ますと、目の前にスヤスヤと眠る祐希の顔があった。鼻と鼻がぶつかるぐらい近くで見ても、とても綺麗な顔だ。少し見とれてしまった。
...いや、そうじゃなくて!なんで祐希と一緒に寝てるんだ!?俺!寝ぼけている頭をフル稼働させて、寝る前のことを思い出す。すると、さっき起きたことが映像として頭の中に流れてきた。


あ...そうだ。俺が、学校の女子たちに嫉妬してたことに気づいて...そしたら祐希が嬉しいって言って......その後、す、好きって言われたんだった...


好きって言った祐希の顔を思い出して、顔が熱くなった。胸もドキドキする。俺、俺、祐希に好きって言われて、嬉しかった...。同じ男なのに、今まで普通に過ごしてきた、幼馴染なのに...

なんだか俺、よくテレビや漫画で見る恋してる女の子みたい...
恋...

...

............!!!俺、もしかして、祐希に、恋してる...!?

カアアッッッ 顔がだんだん熱くなってきたのがわかった。やばい、やばい、やばいやばい気づいちゃった。。。


俺、祐希のこと、好きだ...


たぶん、前から祐希こと好きだったんだ。気づいたら、好きになってた。一緒にいる時間が長すぎて気づかなかった。そういえば、前、クラスメイトに好きなタイプ聞かれたときも一番最初に頭に浮かんだのは、祐希の顔だった。付き合うなら、祐希みたいな子がいいなーって思ってた。学校の女子に嫉妬したのだって、祐希との大切な時間を取られたからだ。


今の今まで、好きだなんて、気づかなかった。でも、気づいた瞬間頭の中が祐希でいっぱいになる。どうしよう、俺結構祐希のこと好きだったんだ。他のこと考えられないくらい、好きで好きでたまらない。




そこでふと、気が付いた。え、今の状況やばくね??
鼻と鼻がくっつくくらいの距離に祐希の、好きな人の顔がある。スヤスヤと気持ちよさそうな顔で眠る祐希の腕は、しっかりと俺の後ろに回り、俺を離さまいとしている。今恋心に気づいた俺からしたら、近すぎる距離だった。


やばいぃいー!!めっちゃドキドキする...。今まで普通だったのに、意識してしまう...祐希は、俺の事どう思ってるのかな。さっき、好きって言ってたけど...
そう思うと、急に不安になってきた。...そういえば、昔から祐希はことある事に俺に好きって言っていた気がする...。もしかして、恋愛的な好きじゃなくて幼馴染の好き、だったのかな。俺はそれで祐希への想いに気づいたけど、祐希からしたらなんともない、いつものことだったのかな。


苦しい。好きなのに苦しい。好きだから苦しい。目の前で眠る祐希を恨めしく見つめても、起きない祐希にクスッと笑みが零れた。でも同時に、胸にツキンッとした痛みが差す。


今は、寝てるしいいよね。
祐希の胸に顔を埋めて、その体温を感じた。







鼻がツンとして目が赤くなっていたのは俺にしか分からない。




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