出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁

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だとしたら、あの王子が、やけに私を好きになることはないとか言ってくるのは、そういうことだったのか。
私は、あの人を好きだと思われていたってこと…。

「知らなかった…」
「お前は、本当に変なところで抜けているな」
「だって、そんなこと誰も教えてくれませんでしたから」

前任の聖女だって、王子のことを思うなら、あげたほうがいいみたいな軽いノリだったから、別に特別なことではなくて、普通のことなのだと。
聖女にとって、婚約者に何かを贈るのは、特別なことでもなんでもないと思っていたのに。

「そもそも人に何かを贈ること自体、特別なことだろう。それが、聖女の代名詞と言われている祈りが込められているものであれば、なおさらな」
「…それもそうですね」

そうだった。
世間一般的に贈り物は、そういうものだった。
しかも、指輪なんて、そういうものとして見られたっておかしくはないのに…。
普通に考えれば、わかることだった。どうして私、指輪なんて贈ってしまったんだろう。身に着けるのが、一番楽で、ずぼらな王子が、めったに外さないからという理由で、指輪にしてしまったけど…。
殿下がつけているような腕輪とかでもよかったはず。
いや。でも、普通に高いんだよなぁ。やっぱり指輪くらいが、一番値段も手ごろでよかったし。しかたない。
贈ってしまったのは、しかたない。

「それで、何を渡したんだ?」
「指輪です」
「ゆ…指輪…???」
「別におかしいことではないですよね?婚約者でしたし」
「……」

殿下は、完全に固まってしまった。
大臣が、ぼそっと「聖女が指輪を贈るということは、プロポーズという意味しかありません。生涯、あなただけと添い遂げます。という意味があるのです」と教えてもらった。

「いや。知りませんでしたし」
「知りませんでしたでは、済まされない問題だ…」
「でも、もう婚約破棄しましたし、過去の話ですし、別にいいじゃありませんか」
「俺がよくない」
「なんでそんなに指輪一つにこだわるんですか。殿下だって、いっぱい身に着けているじゃありませんか。もう、祈りとか加護とか通り越して、呪いレベルですよ」

殿下に込められた下心が具現化したようなものだ。
すさまじい熱気というか気概というか、「殿下。めっちゃ愛してます!」みたいなのが、ゴリゴリに伝わってくるのだ。
もう神様に祈るより、殿下に祈っている気持ちのほうが大きいです!って主張しているみたいだ。
そんなのを、手首、足首、首に指にとはめていたら、まぁ、私が渡す気も起きないよねってわかってほしいのだが。
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