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番外編『ガラスを割ったのは…?』
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「で、これはどういうこと?」
霊七が寝室で安らかな寝息を立てている時、伊織が様子を見にきた唯一に正座をさせられて、キツく問い詰められていた。
話の内容は、とても『拾都』で高級な(唯一曰く)貴重な強化ガラス(これまた唯一曰く)を誰が割り、更に床に散らばったガラスを掃除出来ない程、粉々に踏みつけたのか、ということだ。
「これは、八舞が…」
「八舞がそんな手荒いことする訳ないじゃない」
「いや、それがするんだよ」
伊織の横では同じく問い詰められている遺骸と二兎が正座していた。
二兎は、屈辱に耐えられないらしく、プルプルと震える手で『絡繰』の柄を握っていた。もし、今誰かが命じれば、伊織を責めあげる唯一を躊躇無く狩るだろう。
「俺が発作を起こして、八舞が『細菌確認』発動して中に入って来たんだ」
「その八舞は、何処?」
「『九想典』に帰ったよ」
「だったら、私と擦れ違ったはずよ?」
「君がどんなルートでここまで来るなんて判らないよ、『独り善がり』」
「その名前で呼ばないでくれる?私は全部善意で…」
「それが『独り善がり』なんだよ」
苛ついた顔で睨みつける唯一と呆れた顔で肩を竦める伊織。
「第一、君は全て自分の思い通りにならないと俺に当たるじゃないか。この間の孤児だって…」
「辞めて頂戴!」
バンっとテーブルを叩いて言葉を遮る唯一。遺骸が、ビクっと身体を震わせ、伊織にくっつく。
二兎は、変わらず死んだ目で唯一を見つめていた。
「…辞めて頂戴、伊織。『音楽再生』が発動するわ。皆、迷惑かけたくないの」
一言一言噛みしめるように言う唯一。
「…充分、今も迷惑だよ」
伊織の呟きは幸運なことに、唯一には届かなかったらしい。
「じゃあ、いっそどうだい?八舞を君の異能力で呼んでみたら。はっきりするだろう?物事を解決するには『でも』よりも『じゃあ』を使った方が良い方向に向くそうだよ?しかも、今は能力発動には充分な条件が揃ってる。それとも、なにかい?孤児を差別しないと言いながらも遺骸に異能力は見せたくないとでも?」
「…よく言った、伊織」
二兎が『絡繰』の柄を置くと、
「どうする、唯一。今、貴様は不利な状況だ。「にと」は伊織の味方。そして、当時者でもある。裁くのに証人が必要なのは「にと」でも知っている。同じ当事者の霊七は眠っている。八舞を呼ぶしか、方法はないだろう?」
「珍しく饒舌ね、二兎」
唯一が茶髪に染めたボブカットをかき上げると、ふわりと石鹸の香りが香った。
「いいわ。どちらが正しいか決めましょう」
唯一は深呼吸をすると、
「『音楽再生』」
と、呟いて舌打ちをした。
途端、今の太陽よりも明るい光が室内に点々と灯ったかと思うと、割れた窓から風がふわりと吹き、光が唯一の横に集まり、白衣を着た八舞となった。
唯一の異能力『音楽再生』は、触れたことのある特定の人物を召喚することが出来る異能力だ。
ただし、発動条件に「感情が高ぶった時の舌打ち」と決まっている。発動条件が揃った時に舌打ちをすると、否応無く、誰かしら、呼んでしまうため、なるべく異能力を発動しないようにいつも大らかにしている(唯一が「私、大らかだから」と、そう言うが、実際は違うんじゃないかな、と『九想典』の皆は心の中で思ってるのが実情)
「や、やぁ、八舞。さっきぶりだね」
伊織がぎこちなく明るく声をかけるが、急に呼び出された八舞は、ポカンとしていた。
「…伊、織…?」
「ああ、良かった、八舞ー。ちょうど、聞きたいことがあったの!」
この空気が凍り切っていることに気付いていないのは、唯一だけだった。
「あのね、このガラスのことなんだけど…」
「唯一、貴女があたしを呼んだの?」
八舞の声が震えているのは怒りの為だと気付いた遺骸は、伊織に小声で
「ねぇ、唯一ってこういう人なの?」
「そう。それだけめんどくさい人間さ。判ったかい?」
コクンと頷く遺骸の頭を伊織は撫でてやる。それを羨ましそうな顔で見る二兎。
「ねぇ、八舞、あの…ガラスは」
「唯一!!!!!!!!!!!!!!」
しつこくガラスのことを聞こうとした唯一に八舞の怒りの雷が落ちた。
「何度も言ってるけど、急に召喚するのは辞めてくれないかしら!?こっちは仕事があるのよ!手術中にも召喚して大変なことになったのを忘れたの!?自分のタイミングで呼ばないで頂戴!それにね!」
八舞は唖然とする唯一の襟を掴んで、唯一のポケットからスマホを取り出し、
「この文明の利器を私に押し付けたのは貴女よね!?今回みたいなこと、電話で済むでしょうが!!!」
と、唯一の顔にぐりぐりと当てて、部屋から出て行ってしまった。
…残された面々は、ポカンとしていたが(二兎は「よく言ってくれた」という顔をしていた)、伊織がハッと気づき、正座をしていて痺れる足でフラフラ立ち上がり、必死に後を追って、
「八舞!このガラスを割ったのは君だと証言してくれ!君の助けが必要なんだ!」
「うるさいわね!それくらい、六衣に頼めばいいじゃない!嬉々として直してくれるわよ!」
遠ざかる2人の声を聞きながら、唯一は「そうねぇ、六衣なら修理費要らないね」と呟き、六衣に電話を掛け、修理の依頼をし始めた。
「二兎、さん」
「なんだ」
「…遺骸、ここでやっていけるか不安になってきました」
遺骸が、ほぉ…と不安なため息を吐いた時、隣室で寝ていてこの騒動巻き込まれなかった幸運な霊七は雷雨に見舞われた夢を見て、
「うるさいなぁ…」
と、呟いていた。
霊七が寝室で安らかな寝息を立てている時、伊織が様子を見にきた唯一に正座をさせられて、キツく問い詰められていた。
話の内容は、とても『拾都』で高級な(唯一曰く)貴重な強化ガラス(これまた唯一曰く)を誰が割り、更に床に散らばったガラスを掃除出来ない程、粉々に踏みつけたのか、ということだ。
「これは、八舞が…」
「八舞がそんな手荒いことする訳ないじゃない」
「いや、それがするんだよ」
伊織の横では同じく問い詰められている遺骸と二兎が正座していた。
二兎は、屈辱に耐えられないらしく、プルプルと震える手で『絡繰』の柄を握っていた。もし、今誰かが命じれば、伊織を責めあげる唯一を躊躇無く狩るだろう。
「俺が発作を起こして、八舞が『細菌確認』発動して中に入って来たんだ」
「その八舞は、何処?」
「『九想典』に帰ったよ」
「だったら、私と擦れ違ったはずよ?」
「君がどんなルートでここまで来るなんて判らないよ、『独り善がり』」
「その名前で呼ばないでくれる?私は全部善意で…」
「それが『独り善がり』なんだよ」
苛ついた顔で睨みつける唯一と呆れた顔で肩を竦める伊織。
「第一、君は全て自分の思い通りにならないと俺に当たるじゃないか。この間の孤児だって…」
「辞めて頂戴!」
バンっとテーブルを叩いて言葉を遮る唯一。遺骸が、ビクっと身体を震わせ、伊織にくっつく。
二兎は、変わらず死んだ目で唯一を見つめていた。
「…辞めて頂戴、伊織。『音楽再生』が発動するわ。皆、迷惑かけたくないの」
一言一言噛みしめるように言う唯一。
「…充分、今も迷惑だよ」
伊織の呟きは幸運なことに、唯一には届かなかったらしい。
「じゃあ、いっそどうだい?八舞を君の異能力で呼んでみたら。はっきりするだろう?物事を解決するには『でも』よりも『じゃあ』を使った方が良い方向に向くそうだよ?しかも、今は能力発動には充分な条件が揃ってる。それとも、なにかい?孤児を差別しないと言いながらも遺骸に異能力は見せたくないとでも?」
「…よく言った、伊織」
二兎が『絡繰』の柄を置くと、
「どうする、唯一。今、貴様は不利な状況だ。「にと」は伊織の味方。そして、当時者でもある。裁くのに証人が必要なのは「にと」でも知っている。同じ当事者の霊七は眠っている。八舞を呼ぶしか、方法はないだろう?」
「珍しく饒舌ね、二兎」
唯一が茶髪に染めたボブカットをかき上げると、ふわりと石鹸の香りが香った。
「いいわ。どちらが正しいか決めましょう」
唯一は深呼吸をすると、
「『音楽再生』」
と、呟いて舌打ちをした。
途端、今の太陽よりも明るい光が室内に点々と灯ったかと思うと、割れた窓から風がふわりと吹き、光が唯一の横に集まり、白衣を着た八舞となった。
唯一の異能力『音楽再生』は、触れたことのある特定の人物を召喚することが出来る異能力だ。
ただし、発動条件に「感情が高ぶった時の舌打ち」と決まっている。発動条件が揃った時に舌打ちをすると、否応無く、誰かしら、呼んでしまうため、なるべく異能力を発動しないようにいつも大らかにしている(唯一が「私、大らかだから」と、そう言うが、実際は違うんじゃないかな、と『九想典』の皆は心の中で思ってるのが実情)
「や、やぁ、八舞。さっきぶりだね」
伊織がぎこちなく明るく声をかけるが、急に呼び出された八舞は、ポカンとしていた。
「…伊、織…?」
「ああ、良かった、八舞ー。ちょうど、聞きたいことがあったの!」
この空気が凍り切っていることに気付いていないのは、唯一だけだった。
「あのね、このガラスのことなんだけど…」
「唯一、貴女があたしを呼んだの?」
八舞の声が震えているのは怒りの為だと気付いた遺骸は、伊織に小声で
「ねぇ、唯一ってこういう人なの?」
「そう。それだけめんどくさい人間さ。判ったかい?」
コクンと頷く遺骸の頭を伊織は撫でてやる。それを羨ましそうな顔で見る二兎。
「ねぇ、八舞、あの…ガラスは」
「唯一!!!!!!!!!!!!!!」
しつこくガラスのことを聞こうとした唯一に八舞の怒りの雷が落ちた。
「何度も言ってるけど、急に召喚するのは辞めてくれないかしら!?こっちは仕事があるのよ!手術中にも召喚して大変なことになったのを忘れたの!?自分のタイミングで呼ばないで頂戴!それにね!」
八舞は唖然とする唯一の襟を掴んで、唯一のポケットからスマホを取り出し、
「この文明の利器を私に押し付けたのは貴女よね!?今回みたいなこと、電話で済むでしょうが!!!」
と、唯一の顔にぐりぐりと当てて、部屋から出て行ってしまった。
…残された面々は、ポカンとしていたが(二兎は「よく言ってくれた」という顔をしていた)、伊織がハッと気づき、正座をしていて痺れる足でフラフラ立ち上がり、必死に後を追って、
「八舞!このガラスを割ったのは君だと証言してくれ!君の助けが必要なんだ!」
「うるさいわね!それくらい、六衣に頼めばいいじゃない!嬉々として直してくれるわよ!」
遠ざかる2人の声を聞きながら、唯一は「そうねぇ、六衣なら修理費要らないね」と呟き、六衣に電話を掛け、修理の依頼をし始めた。
「二兎、さん」
「なんだ」
「…遺骸、ここでやっていけるか不安になってきました」
遺骸が、ほぉ…と不安なため息を吐いた時、隣室で寝ていてこの騒動巻き込まれなかった幸運な霊七は雷雨に見舞われた夢を見て、
「うるさいなぁ…」
と、呟いていた。
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