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蝦夷の英雄 アテルイ編
蝦夷の英雄 アテルイ編 第一話
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794年。
日本の最果ての地といわれた陸奥の地では、そこに住む「蝦夷」と呼ばれる民と朝廷軍との激しい戦いの渦中にあった。
当時、日本の中央を支配していた朝廷は、仏教を利用してその権力を磐石にしようと画策し、各地に寺を建立した。その寺で奉る大仏を作るには黄金、つまりは砂金が必要不可欠なものだった。
しかし、日本で砂金が取れるところはなく、大陸からの輸入に頼るしかなかった。
これに朝廷の権力者たちは長い間頭を悩ませていたが、749年に状況が一変する。
それまで辺境として最低限の監視だけで半ば放置していた陸奥の地から砂金が産出されたのだ。
これに朝廷の権力者たちは狂喜し、砂金を得るために陸奥に住む蝦夷たちを力ずくの支配し始めた。
古来より朝廷の者たちは蝦夷を人として扱わず、北の果てに住む異形の者として蔑んできた。その為、蝦夷の民は虐げられ、畜生同然の扱いを受けた。
最初のうちは耐え忍んでいた蝦夷の民だったが、780年、朝廷に恭順していた蝦夷の豪族、伊治呰麻呂が自分の居城である陸奥の伊治城で監視役である陸奥按察使、紀広純を暗殺したことにより、蝦夷の民達による本格的な反乱が始まった。
これに対し、朝廷は5万からなる軍を派遣し、蝦夷の討伐をしようとしたが蝦夷の英雄アテルイを中心とした兵団の巧みな戦略によって敗北を繰り返し、蝦夷の反乱を鎮圧できずにいた。
業を煮やした朝廷は791年、征討将軍を大伴弟麻呂、副将軍を坂上田村麻呂に任命し、3年後の現在、10万の大軍を持って今度こそ蝦夷を討伐するべく陸奥の地へ攻め込んでいた。
対する蝦夷の兵数は1万5千。朝廷軍は今度こそ勝利を確信した。
そして衣川に陣を敷き、アテルイの本拠地である胆沢に兵を進めることを決めた。
胆沢に迫るには広大な日高見川を渡る必要がある。そのため、朝廷軍は丸太で橋を作り、その上から先発の兵を進めることにした。
橋はあっという間に完成し、兵達が渡河を始める。
その様子を少し離れた本陣から見た弟麻呂が満足げに言う。
「今回こそは勝ちを得られそうじゃの。アテルイといえどもあの数ではどうにもできまい」
その言葉に、隣に立っていた田村麻呂が険しい表情で答える。
「油断はなりませぬ。蝦夷のいくさは奇襲が常套手段。巣伏のいくさをお忘れか」
今より6年前、朝廷は5万の軍で陸奥に攻め上り、蝦夷を追撃して巣伏まで追い詰めるが、蝦夷軍の奇襲攻撃によって返り討ちに合い、壊滅している。
しかし、その事実を踏まえても弟麻呂の余裕は崩れない。
「あの時はろくに物見も出さず、数に任せて攻めたから無様な結果になった。しかし、今回はどうじゃ?一年をかけて地形を調べ、攻める前にも物見を放って伏兵がないか確かめた。兵の数も2倍じゃ。何も案ずることはない。何より、お主が立てた策ではないか。もっと堂々としておれ」
そう言った弟麻呂に肩を叩かれ、田村麻呂は不安を隠しつつ視線を渡河している先発隊のほうへ向けた。
既に半数以上が河を渡り終えて対岸に着陣している。
最後の兵が橋をわたり始めた、その時だった。
上流からドドドドドドという音と共に巨大な丸太が勢いよく流れてきた。
それを見た田村麻呂が、
「いかん!」
と叫ぶが遠く離れた先発隊にその声は届かない。
丸太は橋を無慈悲に破壊し、渡っていた兵もろとも下流に押し流す。
雪解けによって河の水量は増しており、流れも速いため落ちた兵たちの姿はあっという間に見えなくなった。
対岸に着陣していた兵達も突然の事に慌てふためき、陣形が乱れている。
「すぐに態勢を整えさせろ!」
田村麻呂が素早く指示を出すが、それと同時に対岸の兵に矢の雨が浴びせられた。
多くの兵が倒れ、陣形が更に乱れる。
その直後、大量の馬の足音と共に鬨の声が対岸に響きわたり、蝦夷の騎馬軍が来襲し、先発隊の元へ突撃した。
立て続けに起こる不測の事態に、対岸の先発隊の者達は浮き足立ち、なすすべもなく蹴散らされていく。
騎馬軍から逃れようと河に飛び込む者もいたが、先ほど丸太で流された兵達と同じようにすぐ姿が見えなくなる。
一連の騒動を見て、弟麻呂は怒りに震える。
「おのれ蝦夷めらが!小癪なまねをしおって!すぐに対岸の者らに兵を送れ!蝦夷を根絶やしにしてくれる!」
その命令に田村麻呂は真っ向から反対した。
「どうやって兵を送るつもりでございます!橋が壊されては兵も渡れませぬ!」
「ならば泳がせよ!このままでは先発隊が全滅する!」
「それこそ無謀にございます!先ほど河に落ちたものらがどうなったかご覧にならなかったか!」
田村麻呂の意見に弟麻呂は歯噛みする。
悔しいが全て田村麻呂の言うとおりだった。しかし、このまま黙っていることはできない。ここで先発隊を壊滅させては自分はもちろん、朝廷の面子が丸つぶれとなる。
そんな弟麻呂の様子を察して田村麻呂が新たな指示を出す。
「近隣から集めた小船を縄できつく縛ってつなげよ!それを並べて橋とするぞ!」
田村麻呂の指示に近くにいた兵が頷いてすぐに走りだそうしたが、その背中に矢が刺さり、その場に倒れこんだ。それを皮切りに次々と矢が降ってくる。
同時に、
「敵襲ー!敵襲だ!蝦夷の騎馬兵らが来たぞ!」
と怯えの混じった声が聞こえてきた。
弟麻呂を守りながら地に伏せた田村麻呂は、
(やられた!)
と心の中で舌打ちした。
蝦夷軍の狙いは先発隊と本隊とを分断し、各個撃破することだったのだ。
田村麻呂の下で弟麻呂が顔を真っ青にして怒鳴る。
「いったいどこから出てきたのじゃ!物見の報告では周辺に伏兵はおらぬということだったではないか!」
声には出さないが、弟麻呂のその疑問に田村麻呂は既に答えを見つけ出していた。
蝦夷軍はここから程近い束稲山に砦を築いている。おそらくはそこに兵を集めていたのだ。
そして機をみて河を迂回し、こちらの陣まで迫って来たのである。
既に砦は放棄されているという事前の情報をあてにせず、物見を束稲山まで行かせるべきだったと田村麻呂は後悔した。
そこに蝦夷の騎馬軍が次々となだれ込んできた。
兵の何人かが応戦しようと立ち向かうが、動揺が先立って力を発揮できず、次々にやられていく。
その光景を見て、他の兵達が次々と逃げ始めた。こうなればもはや踏みとどまれるものではない。既に勝敗は決していた。
田村麻呂は弟麻呂を立たせると、
「だれぞおらぬか!」
と声を張り上げた。
すぐに田村麻呂の側近達が駆け寄ってくる。
「弟麻呂様を護衛しながら全軍に撤退の指示を出せ!多賀城まで退くのだ!」
「殿はどうなされます!?」
側近の問いに、田村麻呂は真顔で答える。
「敵の大将の顔を見てくる。ここまでされて黙って帰るわけにはいかん。」
田村麻呂の言葉に弟麻呂が反対する。
「それで討ち取られたらなんとする!お主を失っては朝廷軍は終わりじゃ!」
すると田村麻呂は弟麻呂に視線を合わせ、莞爾と笑う。
「今でこそ副将と名乗っておりますが、拙者は元々武者。強きものに惹かれる性分にござる。多賀城には必ず戻るゆえ、拙者のわがままをどうかお聞き届け下され」
そう言って田村麻呂は頭を下げた。
その姿を見た弟麻呂は田村麻呂の肩を掴んで、
「死ぬなよ・・・!」
と力強く言った。
「御意!」
そう返事をしてから田村麻呂は弟麻呂たちと別れ、敵に向かって歩き始めた。
縦横無尽に駆け回る両軍の兵達をかき分けながら、必死で敵の大将の姿を探す。
しばらくして、田村麻呂の目にひときわ目立つ蝦夷兵の姿が入ってきた。
向かってくる朝廷の兵を、馬の上から圧倒的な力で蹴散らしている。しかし、逃げる兵には一切手をかけていなかった。
田村麻呂は、あの蝦夷兵こそこの騎馬軍を率いる大将だと直感した。
そして腰の太刀を抜き、蝦夷兵に向かって声を張り上げる。
「蝦夷軍の大将殿!」
その声を聞いて、蝦夷兵が田村麻呂のほうを向く。
「征討軍副将、坂上田村麻呂である!大将殿に、今この場にて尋常な一騎打ちを申し込む!」
田村麻呂が言い終わると、蝦夷兵は馬から降り、田村麻呂の方へ近づいてきた。
「朝廷軍にも勇士がいるのだな。このアテルイ、正々堂々、お相手させてもらおう」
「アテルイだと!?」
田村麻呂は驚愕する。アテルイといえば蝦夷軍の総大将である。そんな男が先陣を切って戦っていることが信じられなかった。
「何故、総大将のお主がここにいる?」
田村麻呂が思わず問うと、アテルイは太い笑みを浮かべながら答えた。
「陸奥に住むものは皆、俺の家族よ。そして総大将とは家族で言えば父、その下の兵達は息子のようなもの。その父が背中を見せんでは息子は着いて来ない。それだけの事だ」
アテルイの答えを聞き、田村麻呂は何故、朝廷軍が蝦夷軍に勝てないかを悟った。
いくさにおいて、大将が出陣するのとしないのとでは兵の士気に大きな差が出る。大将が命を張っていれば兵達も、命を張っているのは自分らだけではないと大将を信頼し、その信頼に応えるべく全力で働くのだ。
蝦夷軍はそれを自然にやっている。数で勝る朝廷軍に対し、恐れげもなく立ち向かえるのは大将への信頼と、そこから生まれる団結力によるものだった。
「なるほど、我等が勝てぬわけだな」
田村麻呂は小さくつぶやくと太刀を構える。
それに応えるように、アテルイも無言で刀を上段に構えた。
2人の間の空気が張り詰めていく。周りでは怒声や刀を打ち合わせる音が響いていたが、その音すら聞こえないほどである。
「すごい男だな、田村麻呂。まるで抜き身の刀のようだぞ」
アテルイが笑いながら声をかける。
「そういうお主はまるで巌だ、アテルイ。打ち込んだ瞬間にこちらの太刀が折られてしまいそうだ」
田村麻呂もそう言うと笑みを浮かべる。
お互い、倒すべき敵であるはずなのに憎しみや恨みなどの負の感情はなく、ただ純粋な闘争心だけがそこにあった。
やがて、アテルイが間合いを詰め始める。田村麻呂もそれに応じるかのように前に出ていった。
そして2人の間合いが交わった瞬間、アテルイは上段から刀を振り下ろし、田村麻呂は袈裟切りを放った。
ガキィィィン!という音と共に火花が散り、両者の刀が交差する。
2人はすぐに体勢を立て直すと、同時に刀を振るった。
刀は空中で止まり、鍔迫り合いの状態となる。
「ふんっ!」
アテルイが腕に力を込め、刀ごと田村麻呂を押しつぶそうとするが、田村麻呂も負けじと腕に力を込めて耐えている。
「凄まじい膂力だな、アテルイ・・・」
田村麻呂が口元に笑みを浮かべながら言うと、アテルイもニヤッと笑って、
「生来の馬鹿力よ。それに耐えるお主も大概だぞ」
と答えた。
「ふ・・・。だが、いつまでもこのままという訳には、いくまい!」
田村麻呂はそう言うと同時に、アテルイの腹に蹴りを入れる。
「ぐぅっ!!」
うめき声を上げてアテルイの体勢が崩れる。
その隙を狙って田村麻呂がすかさず斬り込むが、即座にアテルイは身を捻ってその一撃をかわした。そしてそのまま地を転がって田村麻呂との距離をとって立ち上がる。
「楽しいな・・・」
アテルイが刀を構えながら言うと、田村麻呂も太刀を構え直して答える。
「ああ。都にもお主ほどの手練れはおらん・・・。こう言ってはなんだが、陸奥に来て良かった」
2人の間の空気がまた張り詰めていく。互いに隙は一分も無い。
そこに一本の矢が突き立った瞬間、
「つぁぁぁぁぁぁっ!!」
「けぇぇぇぇぇぇっ!!」
雄叫びをあげながら、2人が同時に動いた。
アテルイも田村麻呂も、上段に刀を振りかぶり、間合いに入ったと同時に思い切り振り下ろす。
ガッキィィィィン!!と、ひときわ大きい音と共に2人の刀が弾かれ、地に突き立った。
しかし、刀の事などもはや頭の中にはない。
田村麻呂とアテルイは先ほどの勢いのまま、殴り合いを開始した。
「ぬぁっ!」
アテルイが拳を田村麻呂の顔面に叩き込む。
よろける田村麻呂だったが、すぐに体勢を立て直し、
「てぁっ!」
という声と共にアテルイの顔面を殴りつけた。そしてそのまま拳を連打し、アテルイを圧倒する。
アテルイは、
「ぐぁぁぁっ!」
と叫ぶと田村麻呂に大振りの拳を見舞った。拳は田村麻呂の頬を打ち抜き、そのまま体を吹き飛ばした。
田村麻呂は何度か地に転がってから立ち上がると、拳を構える。しかし、アテルイの一撃が効いたため、足元がふらついてる。
対するアテルイも、田村麻呂の連打によって少し体がふらついている。
「はぁ、はぁ・・・」
「ぜぇ、ぜぇ・・・」
2人とも息を整えようと、荒い呼吸を繰り返す。
ある程度息を整え、互いに次の一撃を出すべく動こうとした瞬間、
「殿!」
と、2人の横からいきなり声がかけられた。
そちらに目をやると、田村麻呂の側近の1人が馬に乗って近づいてきた。
側近は馬から降りると、
「よくぞご無事で!さ、早く撤退を!」
と言って田村麻呂を馬へと促した。
「拙者の事はいい!お主は先に退け!」
田村麻呂が側近を怒鳴る。
「しかし、それでは殿のお命が!」
側近が食い下がるが、田村麻呂は、
「一騎打ちを挑みながら退いたとあれば武士の名折れぞ!この勝負の決着がつくまで拙者はここを動かぬ!」
と側近に向かって叫んだ。
そのあまりの迫力に、側近も黙り込む。
その様子を見てから、田村麻呂はアテルイのほうに向き直り、
「すまなかった。さぁ、続きだ。」
と言って拳を構え直した。しかし、アテルイは背後を振り返ると、
「いや、済まぬがそうもいっていられなくなった」
と田村麻呂に向かって言い、地に着き刺さった刀を抜いてしまい始めた。
「逃げるのか!?」
田村麻呂が怒鳴る。するとアテルイは苦笑しながら、
「俺とて続けたいが、迎えが来た。これ以上遅くなれば、皆にいらぬ心配をかける」
と答えた。
「お主はそれでも武士か!?一度受けた真剣勝負を投げ出すとは何事ぞ!?」
なおも噛み付く田村麻呂に、アテルイは爽やかな笑みを浮かべながら言った。
「さっきも言ったように、俺は陸奥の民の父。大事な家族をほうっておくわけにはいかんのだ。だが、この決着はいずれ必ずつける。それだけは、蝦夷の勇士の誇りにかけて誓おう。」
言い終わるとアテルイは、口笛で自分が乗ってきた馬を呼び、颯爽とまたがる。
「では、またいずれ会おう、田村麻呂。そのときこそ、われらの決着のときぞ。」
アテルイのその言葉に、田村麻呂は力強く頷き、
「そのときは必ず勝つ。今より腕を磨いてな。だからおぬしも、決着をつける前に死んでくれるなよ。」
と言った。
その言葉にアテルイは笑顔で答えると、先ほど振り返った方へ向かって馬を走らせた。
田村麻呂はその背中を見ながら、
(待っているぞ、アテルイ!)
と心の中で声をかけ、側近と共に戦場を後にした。
坂上田村麻呂とアテルイ、日本一の武士と蝦夷の英雄の奇妙な友情が始まった瞬間だった。
日本の最果ての地といわれた陸奥の地では、そこに住む「蝦夷」と呼ばれる民と朝廷軍との激しい戦いの渦中にあった。
当時、日本の中央を支配していた朝廷は、仏教を利用してその権力を磐石にしようと画策し、各地に寺を建立した。その寺で奉る大仏を作るには黄金、つまりは砂金が必要不可欠なものだった。
しかし、日本で砂金が取れるところはなく、大陸からの輸入に頼るしかなかった。
これに朝廷の権力者たちは長い間頭を悩ませていたが、749年に状況が一変する。
それまで辺境として最低限の監視だけで半ば放置していた陸奥の地から砂金が産出されたのだ。
これに朝廷の権力者たちは狂喜し、砂金を得るために陸奥に住む蝦夷たちを力ずくの支配し始めた。
古来より朝廷の者たちは蝦夷を人として扱わず、北の果てに住む異形の者として蔑んできた。その為、蝦夷の民は虐げられ、畜生同然の扱いを受けた。
最初のうちは耐え忍んでいた蝦夷の民だったが、780年、朝廷に恭順していた蝦夷の豪族、伊治呰麻呂が自分の居城である陸奥の伊治城で監視役である陸奥按察使、紀広純を暗殺したことにより、蝦夷の民達による本格的な反乱が始まった。
これに対し、朝廷は5万からなる軍を派遣し、蝦夷の討伐をしようとしたが蝦夷の英雄アテルイを中心とした兵団の巧みな戦略によって敗北を繰り返し、蝦夷の反乱を鎮圧できずにいた。
業を煮やした朝廷は791年、征討将軍を大伴弟麻呂、副将軍を坂上田村麻呂に任命し、3年後の現在、10万の大軍を持って今度こそ蝦夷を討伐するべく陸奥の地へ攻め込んでいた。
対する蝦夷の兵数は1万5千。朝廷軍は今度こそ勝利を確信した。
そして衣川に陣を敷き、アテルイの本拠地である胆沢に兵を進めることを決めた。
胆沢に迫るには広大な日高見川を渡る必要がある。そのため、朝廷軍は丸太で橋を作り、その上から先発の兵を進めることにした。
橋はあっという間に完成し、兵達が渡河を始める。
その様子を少し離れた本陣から見た弟麻呂が満足げに言う。
「今回こそは勝ちを得られそうじゃの。アテルイといえどもあの数ではどうにもできまい」
その言葉に、隣に立っていた田村麻呂が険しい表情で答える。
「油断はなりませぬ。蝦夷のいくさは奇襲が常套手段。巣伏のいくさをお忘れか」
今より6年前、朝廷は5万の軍で陸奥に攻め上り、蝦夷を追撃して巣伏まで追い詰めるが、蝦夷軍の奇襲攻撃によって返り討ちに合い、壊滅している。
しかし、その事実を踏まえても弟麻呂の余裕は崩れない。
「あの時はろくに物見も出さず、数に任せて攻めたから無様な結果になった。しかし、今回はどうじゃ?一年をかけて地形を調べ、攻める前にも物見を放って伏兵がないか確かめた。兵の数も2倍じゃ。何も案ずることはない。何より、お主が立てた策ではないか。もっと堂々としておれ」
そう言った弟麻呂に肩を叩かれ、田村麻呂は不安を隠しつつ視線を渡河している先発隊のほうへ向けた。
既に半数以上が河を渡り終えて対岸に着陣している。
最後の兵が橋をわたり始めた、その時だった。
上流からドドドドドドという音と共に巨大な丸太が勢いよく流れてきた。
それを見た田村麻呂が、
「いかん!」
と叫ぶが遠く離れた先発隊にその声は届かない。
丸太は橋を無慈悲に破壊し、渡っていた兵もろとも下流に押し流す。
雪解けによって河の水量は増しており、流れも速いため落ちた兵たちの姿はあっという間に見えなくなった。
対岸に着陣していた兵達も突然の事に慌てふためき、陣形が乱れている。
「すぐに態勢を整えさせろ!」
田村麻呂が素早く指示を出すが、それと同時に対岸の兵に矢の雨が浴びせられた。
多くの兵が倒れ、陣形が更に乱れる。
その直後、大量の馬の足音と共に鬨の声が対岸に響きわたり、蝦夷の騎馬軍が来襲し、先発隊の元へ突撃した。
立て続けに起こる不測の事態に、対岸の先発隊の者達は浮き足立ち、なすすべもなく蹴散らされていく。
騎馬軍から逃れようと河に飛び込む者もいたが、先ほど丸太で流された兵達と同じようにすぐ姿が見えなくなる。
一連の騒動を見て、弟麻呂は怒りに震える。
「おのれ蝦夷めらが!小癪なまねをしおって!すぐに対岸の者らに兵を送れ!蝦夷を根絶やしにしてくれる!」
その命令に田村麻呂は真っ向から反対した。
「どうやって兵を送るつもりでございます!橋が壊されては兵も渡れませぬ!」
「ならば泳がせよ!このままでは先発隊が全滅する!」
「それこそ無謀にございます!先ほど河に落ちたものらがどうなったかご覧にならなかったか!」
田村麻呂の意見に弟麻呂は歯噛みする。
悔しいが全て田村麻呂の言うとおりだった。しかし、このまま黙っていることはできない。ここで先発隊を壊滅させては自分はもちろん、朝廷の面子が丸つぶれとなる。
そんな弟麻呂の様子を察して田村麻呂が新たな指示を出す。
「近隣から集めた小船を縄できつく縛ってつなげよ!それを並べて橋とするぞ!」
田村麻呂の指示に近くにいた兵が頷いてすぐに走りだそうしたが、その背中に矢が刺さり、その場に倒れこんだ。それを皮切りに次々と矢が降ってくる。
同時に、
「敵襲ー!敵襲だ!蝦夷の騎馬兵らが来たぞ!」
と怯えの混じった声が聞こえてきた。
弟麻呂を守りながら地に伏せた田村麻呂は、
(やられた!)
と心の中で舌打ちした。
蝦夷軍の狙いは先発隊と本隊とを分断し、各個撃破することだったのだ。
田村麻呂の下で弟麻呂が顔を真っ青にして怒鳴る。
「いったいどこから出てきたのじゃ!物見の報告では周辺に伏兵はおらぬということだったではないか!」
声には出さないが、弟麻呂のその疑問に田村麻呂は既に答えを見つけ出していた。
蝦夷軍はここから程近い束稲山に砦を築いている。おそらくはそこに兵を集めていたのだ。
そして機をみて河を迂回し、こちらの陣まで迫って来たのである。
既に砦は放棄されているという事前の情報をあてにせず、物見を束稲山まで行かせるべきだったと田村麻呂は後悔した。
そこに蝦夷の騎馬軍が次々となだれ込んできた。
兵の何人かが応戦しようと立ち向かうが、動揺が先立って力を発揮できず、次々にやられていく。
その光景を見て、他の兵達が次々と逃げ始めた。こうなればもはや踏みとどまれるものではない。既に勝敗は決していた。
田村麻呂は弟麻呂を立たせると、
「だれぞおらぬか!」
と声を張り上げた。
すぐに田村麻呂の側近達が駆け寄ってくる。
「弟麻呂様を護衛しながら全軍に撤退の指示を出せ!多賀城まで退くのだ!」
「殿はどうなされます!?」
側近の問いに、田村麻呂は真顔で答える。
「敵の大将の顔を見てくる。ここまでされて黙って帰るわけにはいかん。」
田村麻呂の言葉に弟麻呂が反対する。
「それで討ち取られたらなんとする!お主を失っては朝廷軍は終わりじゃ!」
すると田村麻呂は弟麻呂に視線を合わせ、莞爾と笑う。
「今でこそ副将と名乗っておりますが、拙者は元々武者。強きものに惹かれる性分にござる。多賀城には必ず戻るゆえ、拙者のわがままをどうかお聞き届け下され」
そう言って田村麻呂は頭を下げた。
その姿を見た弟麻呂は田村麻呂の肩を掴んで、
「死ぬなよ・・・!」
と力強く言った。
「御意!」
そう返事をしてから田村麻呂は弟麻呂たちと別れ、敵に向かって歩き始めた。
縦横無尽に駆け回る両軍の兵達をかき分けながら、必死で敵の大将の姿を探す。
しばらくして、田村麻呂の目にひときわ目立つ蝦夷兵の姿が入ってきた。
向かってくる朝廷の兵を、馬の上から圧倒的な力で蹴散らしている。しかし、逃げる兵には一切手をかけていなかった。
田村麻呂は、あの蝦夷兵こそこの騎馬軍を率いる大将だと直感した。
そして腰の太刀を抜き、蝦夷兵に向かって声を張り上げる。
「蝦夷軍の大将殿!」
その声を聞いて、蝦夷兵が田村麻呂のほうを向く。
「征討軍副将、坂上田村麻呂である!大将殿に、今この場にて尋常な一騎打ちを申し込む!」
田村麻呂が言い終わると、蝦夷兵は馬から降り、田村麻呂の方へ近づいてきた。
「朝廷軍にも勇士がいるのだな。このアテルイ、正々堂々、お相手させてもらおう」
「アテルイだと!?」
田村麻呂は驚愕する。アテルイといえば蝦夷軍の総大将である。そんな男が先陣を切って戦っていることが信じられなかった。
「何故、総大将のお主がここにいる?」
田村麻呂が思わず問うと、アテルイは太い笑みを浮かべながら答えた。
「陸奥に住むものは皆、俺の家族よ。そして総大将とは家族で言えば父、その下の兵達は息子のようなもの。その父が背中を見せんでは息子は着いて来ない。それだけの事だ」
アテルイの答えを聞き、田村麻呂は何故、朝廷軍が蝦夷軍に勝てないかを悟った。
いくさにおいて、大将が出陣するのとしないのとでは兵の士気に大きな差が出る。大将が命を張っていれば兵達も、命を張っているのは自分らだけではないと大将を信頼し、その信頼に応えるべく全力で働くのだ。
蝦夷軍はそれを自然にやっている。数で勝る朝廷軍に対し、恐れげもなく立ち向かえるのは大将への信頼と、そこから生まれる団結力によるものだった。
「なるほど、我等が勝てぬわけだな」
田村麻呂は小さくつぶやくと太刀を構える。
それに応えるように、アテルイも無言で刀を上段に構えた。
2人の間の空気が張り詰めていく。周りでは怒声や刀を打ち合わせる音が響いていたが、その音すら聞こえないほどである。
「すごい男だな、田村麻呂。まるで抜き身の刀のようだぞ」
アテルイが笑いながら声をかける。
「そういうお主はまるで巌だ、アテルイ。打ち込んだ瞬間にこちらの太刀が折られてしまいそうだ」
田村麻呂もそう言うと笑みを浮かべる。
お互い、倒すべき敵であるはずなのに憎しみや恨みなどの負の感情はなく、ただ純粋な闘争心だけがそこにあった。
やがて、アテルイが間合いを詰め始める。田村麻呂もそれに応じるかのように前に出ていった。
そして2人の間合いが交わった瞬間、アテルイは上段から刀を振り下ろし、田村麻呂は袈裟切りを放った。
ガキィィィン!という音と共に火花が散り、両者の刀が交差する。
2人はすぐに体勢を立て直すと、同時に刀を振るった。
刀は空中で止まり、鍔迫り合いの状態となる。
「ふんっ!」
アテルイが腕に力を込め、刀ごと田村麻呂を押しつぶそうとするが、田村麻呂も負けじと腕に力を込めて耐えている。
「凄まじい膂力だな、アテルイ・・・」
田村麻呂が口元に笑みを浮かべながら言うと、アテルイもニヤッと笑って、
「生来の馬鹿力よ。それに耐えるお主も大概だぞ」
と答えた。
「ふ・・・。だが、いつまでもこのままという訳には、いくまい!」
田村麻呂はそう言うと同時に、アテルイの腹に蹴りを入れる。
「ぐぅっ!!」
うめき声を上げてアテルイの体勢が崩れる。
その隙を狙って田村麻呂がすかさず斬り込むが、即座にアテルイは身を捻ってその一撃をかわした。そしてそのまま地を転がって田村麻呂との距離をとって立ち上がる。
「楽しいな・・・」
アテルイが刀を構えながら言うと、田村麻呂も太刀を構え直して答える。
「ああ。都にもお主ほどの手練れはおらん・・・。こう言ってはなんだが、陸奥に来て良かった」
2人の間の空気がまた張り詰めていく。互いに隙は一分も無い。
そこに一本の矢が突き立った瞬間、
「つぁぁぁぁぁぁっ!!」
「けぇぇぇぇぇぇっ!!」
雄叫びをあげながら、2人が同時に動いた。
アテルイも田村麻呂も、上段に刀を振りかぶり、間合いに入ったと同時に思い切り振り下ろす。
ガッキィィィィン!!と、ひときわ大きい音と共に2人の刀が弾かれ、地に突き立った。
しかし、刀の事などもはや頭の中にはない。
田村麻呂とアテルイは先ほどの勢いのまま、殴り合いを開始した。
「ぬぁっ!」
アテルイが拳を田村麻呂の顔面に叩き込む。
よろける田村麻呂だったが、すぐに体勢を立て直し、
「てぁっ!」
という声と共にアテルイの顔面を殴りつけた。そしてそのまま拳を連打し、アテルイを圧倒する。
アテルイは、
「ぐぁぁぁっ!」
と叫ぶと田村麻呂に大振りの拳を見舞った。拳は田村麻呂の頬を打ち抜き、そのまま体を吹き飛ばした。
田村麻呂は何度か地に転がってから立ち上がると、拳を構える。しかし、アテルイの一撃が効いたため、足元がふらついてる。
対するアテルイも、田村麻呂の連打によって少し体がふらついている。
「はぁ、はぁ・・・」
「ぜぇ、ぜぇ・・・」
2人とも息を整えようと、荒い呼吸を繰り返す。
ある程度息を整え、互いに次の一撃を出すべく動こうとした瞬間、
「殿!」
と、2人の横からいきなり声がかけられた。
そちらに目をやると、田村麻呂の側近の1人が馬に乗って近づいてきた。
側近は馬から降りると、
「よくぞご無事で!さ、早く撤退を!」
と言って田村麻呂を馬へと促した。
「拙者の事はいい!お主は先に退け!」
田村麻呂が側近を怒鳴る。
「しかし、それでは殿のお命が!」
側近が食い下がるが、田村麻呂は、
「一騎打ちを挑みながら退いたとあれば武士の名折れぞ!この勝負の決着がつくまで拙者はここを動かぬ!」
と側近に向かって叫んだ。
そのあまりの迫力に、側近も黙り込む。
その様子を見てから、田村麻呂はアテルイのほうに向き直り、
「すまなかった。さぁ、続きだ。」
と言って拳を構え直した。しかし、アテルイは背後を振り返ると、
「いや、済まぬがそうもいっていられなくなった」
と田村麻呂に向かって言い、地に着き刺さった刀を抜いてしまい始めた。
「逃げるのか!?」
田村麻呂が怒鳴る。するとアテルイは苦笑しながら、
「俺とて続けたいが、迎えが来た。これ以上遅くなれば、皆にいらぬ心配をかける」
と答えた。
「お主はそれでも武士か!?一度受けた真剣勝負を投げ出すとは何事ぞ!?」
なおも噛み付く田村麻呂に、アテルイは爽やかな笑みを浮かべながら言った。
「さっきも言ったように、俺は陸奥の民の父。大事な家族をほうっておくわけにはいかんのだ。だが、この決着はいずれ必ずつける。それだけは、蝦夷の勇士の誇りにかけて誓おう。」
言い終わるとアテルイは、口笛で自分が乗ってきた馬を呼び、颯爽とまたがる。
「では、またいずれ会おう、田村麻呂。そのときこそ、われらの決着のときぞ。」
アテルイのその言葉に、田村麻呂は力強く頷き、
「そのときは必ず勝つ。今より腕を磨いてな。だからおぬしも、決着をつける前に死んでくれるなよ。」
と言った。
その言葉にアテルイは笑顔で答えると、先ほど振り返った方へ向かって馬を走らせた。
田村麻呂はその背中を見ながら、
(待っているぞ、アテルイ!)
と心の中で声をかけ、側近と共に戦場を後にした。
坂上田村麻呂とアテルイ、日本一の武士と蝦夷の英雄の奇妙な友情が始まった瞬間だった。
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