8 / 40
7
しおりを挟む
鳥のさえずりで目が覚めた。どうやら僕は昨日の朝見かけた大学生のカップルのように、浜辺で眠ってしまったらしい。
明け方のオレンジ色の光が、海に反射して光り輝いている。
家に帰ろう。
もうすぐ姉さんも起きるだろうし、あの女の子が起きていたとしても二人きりで気まずい雰囲気にはならなくて済む。
家に帰ってからすぐにシャワーを浴びた。汗だくの身体を洗い流したかった。
戸越しから見た感じでは、居間に誰かいる気配はなく、姉さんもあの女の子もまだ眠っているらしい。
熱いシャワーを浴びてさっぱりしたところで、身体を拭き、私服に着替える。
首にタオルを巻いて風呂場のドアを開けたところで、階段から降りてくる姉さんと目があった。
「おお、起きてたのか。相変わらず朝早いねえ。もう葉月ちゃんのとこに行ったのか?」
「おはよう姉さん。行ってきたよ。今から丁度朝ごはん作ろうと思ってたところだよ。あの子、体調どう? ご飯は消化のいい物の方がいいかな?」
僕が彼女を助けるにしろ助けないにしろ、作るからには体調に合わせた物を作りたい。
「ああ、そうそう。彼女のことで少し話があるんだ。食事は……まあ消化のいいものを作っておけば間違いないだろう」
「話? 話ってどんな話なの?」
「詳しいことはあの子が来たらにしようか。もうすぐ降りて来ると思うから、とりあえず、飯頼んだぞ」
まあ大方彼女の病気についての話だろう。僕がいない間に姉さんが色々聞いてくれたんだろうな。
「あとこれは別の話なんだが、あの子は我が家で預かろうと思う。お前なら予想くらいできてただろう?」
僕はその言葉を黙って聞き、そして頷いた。
姉さんの言う通り、なんとなく予想はできていた。だからこそ助けるかどうかであんなに悩んだんだ。
彼女がわざわざ病院に連れて行くなと言うのだ。それなりの事情があるのだろう。しかもそれを姉さんが見過ごすとは思えない。
姉さんは話し終えると、テーブルへ向かった。僕は姉さんに言われた通りに台所へと向かい朝食の準備をする。消化のいいものだから、うどんを作っておけば問題ないだろう。お粥は味が余りにも薄いので個人的に嫌いだ。
手早くうどんを三人分作ってからテーブルに置く、その後コップにミネラルウォーター注いでどんぶりの横に置いた。あの女の子の座る席には、ポカリスウェットのペットボトルを置いておく。
椅子に座ってうどんから立ち昇る湯気を見ていたら、タイミングを計ったかのように居間の扉が開いた。女の子が恐る恐るといった様子で入ってきた。
「ちょうどよかった。今できたところだよ。伸びる前に食べちゃおう」
僕は部屋に入ってきた女の子に向かってそう声をかけた。そうは言ったものの、視線は下を向いたままで彼女の方を向くことは出来なかった。
女の子は僕の向かい側の空いていた椅子に座り、まずは姉さんが口を開いた。
「今から色々話してくれるらしいが、まあ色々と深い、海よりも谷よりもとても深い事情があるっぽいのよ。私は今朝少しだけ聞いた。自己紹介も兼ねてこの子の口から直接聞きな」
「ほんじゃよろしく」と姉さんは隣に座る女の子の背中を叩いた。
文字通り背中を押された少女は一瞬ビクッとしていたが、気を取り直して話し始める。
「はい。えーっと。なんて言ったら良いんですかね。信じてくれるかどうかは分からないんですけど、私は青井花火と言います。いわゆるところ、平行世界。パラレルワールドから来ました」
とんでもない自己紹介を聞いて、僕は唖然としてしまった。とても間抜けな顔をしていたことだろう。
そんな僕の様子を見た姉さんがうんうんと頷いていた。
チラッと斜め前を見てみると青井花火と名乗った少女が後頭部に手を当てて苦笑いしている。
とてもじゃないが、信じられない。もしもそれを大真面目に言っているのだとしたら、これはまた、とてつもなく電波な子が来たのかもしれない。
明け方のオレンジ色の光が、海に反射して光り輝いている。
家に帰ろう。
もうすぐ姉さんも起きるだろうし、あの女の子が起きていたとしても二人きりで気まずい雰囲気にはならなくて済む。
家に帰ってからすぐにシャワーを浴びた。汗だくの身体を洗い流したかった。
戸越しから見た感じでは、居間に誰かいる気配はなく、姉さんもあの女の子もまだ眠っているらしい。
熱いシャワーを浴びてさっぱりしたところで、身体を拭き、私服に着替える。
首にタオルを巻いて風呂場のドアを開けたところで、階段から降りてくる姉さんと目があった。
「おお、起きてたのか。相変わらず朝早いねえ。もう葉月ちゃんのとこに行ったのか?」
「おはよう姉さん。行ってきたよ。今から丁度朝ごはん作ろうと思ってたところだよ。あの子、体調どう? ご飯は消化のいい物の方がいいかな?」
僕が彼女を助けるにしろ助けないにしろ、作るからには体調に合わせた物を作りたい。
「ああ、そうそう。彼女のことで少し話があるんだ。食事は……まあ消化のいいものを作っておけば間違いないだろう」
「話? 話ってどんな話なの?」
「詳しいことはあの子が来たらにしようか。もうすぐ降りて来ると思うから、とりあえず、飯頼んだぞ」
まあ大方彼女の病気についての話だろう。僕がいない間に姉さんが色々聞いてくれたんだろうな。
「あとこれは別の話なんだが、あの子は我が家で預かろうと思う。お前なら予想くらいできてただろう?」
僕はその言葉を黙って聞き、そして頷いた。
姉さんの言う通り、なんとなく予想はできていた。だからこそ助けるかどうかであんなに悩んだんだ。
彼女がわざわざ病院に連れて行くなと言うのだ。それなりの事情があるのだろう。しかもそれを姉さんが見過ごすとは思えない。
姉さんは話し終えると、テーブルへ向かった。僕は姉さんに言われた通りに台所へと向かい朝食の準備をする。消化のいいものだから、うどんを作っておけば問題ないだろう。お粥は味が余りにも薄いので個人的に嫌いだ。
手早くうどんを三人分作ってからテーブルに置く、その後コップにミネラルウォーター注いでどんぶりの横に置いた。あの女の子の座る席には、ポカリスウェットのペットボトルを置いておく。
椅子に座ってうどんから立ち昇る湯気を見ていたら、タイミングを計ったかのように居間の扉が開いた。女の子が恐る恐るといった様子で入ってきた。
「ちょうどよかった。今できたところだよ。伸びる前に食べちゃおう」
僕は部屋に入ってきた女の子に向かってそう声をかけた。そうは言ったものの、視線は下を向いたままで彼女の方を向くことは出来なかった。
女の子は僕の向かい側の空いていた椅子に座り、まずは姉さんが口を開いた。
「今から色々話してくれるらしいが、まあ色々と深い、海よりも谷よりもとても深い事情があるっぽいのよ。私は今朝少しだけ聞いた。自己紹介も兼ねてこの子の口から直接聞きな」
「ほんじゃよろしく」と姉さんは隣に座る女の子の背中を叩いた。
文字通り背中を押された少女は一瞬ビクッとしていたが、気を取り直して話し始める。
「はい。えーっと。なんて言ったら良いんですかね。信じてくれるかどうかは分からないんですけど、私は青井花火と言います。いわゆるところ、平行世界。パラレルワールドから来ました」
とんでもない自己紹介を聞いて、僕は唖然としてしまった。とても間抜けな顔をしていたことだろう。
そんな僕の様子を見た姉さんがうんうんと頷いていた。
チラッと斜め前を見てみると青井花火と名乗った少女が後頭部に手を当てて苦笑いしている。
とてもじゃないが、信じられない。もしもそれを大真面目に言っているのだとしたら、これはまた、とてつもなく電波な子が来たのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】『80年を超越した恋~令和の世で再会した元特攻隊員の自衛官と元女子挺身隊の祖母を持つ女の子のシンクロニシティラブストーリー』
M‐赤井翼
現代文学
赤井です。今回は「恋愛小説」です(笑)。
舞台は令和7年と昭和20年の陸軍航空隊の特攻部隊の宿舎「赤糸旅館」です。
80年の時を経て2つの恋愛を描いていきます。
「特攻隊」という「難しい題材」を扱いますので、かなり真面目に資料集めをして制作しました。
「第20振武隊」という実在する部隊が出てきますが、基本的に事実に基づいた背景を活かした「フィクション」作品と思ってお読みください。
日本を護ってくれた「先人」に尊敬の念をもって書きましたので、ほとんどおふざけは有りません。
過去、一番真面目に書いた作品となりました。
ラストは結構ややこしいので前半からの「フラグ」を拾いながら読んでいただくと楽しんでもらえると思います。
全39チャプターですので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
それでは「よろひこー」!
(⋈◍>◡<◍)。✧💖
追伸
まあ、堅苦しく読んで下さいとは言いませんがいつもと違って、ちょっと気持ちを引き締めて読んでもらいたいです。合掌。
(。-人-。)
居酒屋で記憶をなくしてから、大学の美少女からやたらと飲みに誘われるようになった件について
古野ジョン
青春
記憶をなくすほど飲み過ぎた翌日、俺は二日酔いで慌てて駅を駆けていた。
すると、たまたまコンコースでぶつかった相手が――大学でも有名な美少女!?
「また飲みに誘ってくれれば」って……何の話だ?
俺、君と話したことも無いんだけど……?
カクヨム・小説家になろう・ハーメルンにも投稿しています。
ループ25 ~ 何度も繰り返す25歳、その理由を知る時、主人公は…… ~
藤堂慎人
ライト文芸
主人公新藤肇は何度目かの25歳の誕生日を迎えた。毎回少しだけ違う世界で目覚めるが、今回は前の世界で意中の人だった美由紀と新婚1年目の朝に目覚めた。
戸惑う肇だったが、この世界での情報を集め、徐々に慣れていく。
お互いの両親の問題は前の世界でもあったが、今回は良い方向で解決した。
仕事も順調で、苦労は感じつつも充実した日々を送っている。
しかし、これまでの流れではその暮らしも1年で終わってしまう。今までで最も良い世界だからこそ、次の世界にループすることを恐れている。
そんな時、肇は重大な出来事に遭遇する。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】結婚式の隣の席
山田森湖
恋愛
親友の結婚式、隣の席に座ったのは——かつて同じ人を想っていた男性だった。
ふとした共感から始まった、ふたりの一夜とその先の関係。
「幸せになってやろう」
過去の想いを超えて、新たな恋に踏み出すラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる