この夏の終わりに君を彩る

37se

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 鳥のさえずりで目が覚めた。どうやら僕は昨日の朝見かけた大学生のカップルのように、浜辺で眠ってしまったらしい。

 明け方のオレンジ色の光が、海に反射して光り輝いている。

 家に帰ろう。

 もうすぐ姉さんも起きるだろうし、あの女の子が起きていたとしても二人きりで気まずい雰囲気にはならなくて済む。

 家に帰ってからすぐにシャワーを浴びた。汗だくの身体を洗い流したかった。

 戸越しから見た感じでは、居間に誰かいる気配はなく、姉さんもあの女の子もまだ眠っているらしい。

 熱いシャワーを浴びてさっぱりしたところで、身体を拭き、私服に着替える。

 首にタオルを巻いて風呂場のドアを開けたところで、階段から降りてくる姉さんと目があった。

「おお、起きてたのか。相変わらず朝早いねえ。もう葉月ちゃんのとこに行ったのか?」

「おはよう姉さん。行ってきたよ。今から丁度朝ごはん作ろうと思ってたところだよ。あの子、体調どう? ご飯は消化のいい物の方がいいかな?」

 僕が彼女を助けるにしろ助けないにしろ、作るからには体調に合わせた物を作りたい。

「ああ、そうそう。彼女のことで少し話があるんだ。食事は……まあ消化のいいものを作っておけば間違いないだろう」

「話? 話ってどんな話なの?」

「詳しいことはあの子が来たらにしようか。もうすぐ降りて来ると思うから、とりあえず、飯頼んだぞ」

 まあ大方彼女の病気についての話だろう。僕がいない間に姉さんが色々聞いてくれたんだろうな。

「あとこれは別の話なんだが、あの子は我が家で預かろうと思う。お前なら予想くらいできてただろう?」

 僕はその言葉を黙って聞き、そして頷いた。

 姉さんの言う通り、なんとなく予想はできていた。だからこそ助けるかどうかであんなに悩んだんだ。

 彼女がわざわざ病院に連れて行くなと言うのだ。それなりの事情があるのだろう。しかもそれを姉さんが見過ごすとは思えない。

 姉さんは話し終えると、テーブルへ向かった。僕は姉さんに言われた通りに台所へと向かい朝食の準備をする。消化のいいものだから、うどんを作っておけば問題ないだろう。お粥は味が余りにも薄いので個人的に嫌いだ。

 手早くうどんを三人分作ってからテーブルに置く、その後コップにミネラルウォーター注いでどんぶりの横に置いた。あの女の子の座る席には、ポカリスウェットのペットボトルを置いておく。

 椅子に座ってうどんから立ち昇る湯気を見ていたら、タイミングを計ったかのように居間の扉が開いた。女の子が恐る恐るといった様子で入ってきた。

「ちょうどよかった。今できたところだよ。伸びる前に食べちゃおう」

 僕は部屋に入ってきた女の子に向かってそう声をかけた。そうは言ったものの、視線は下を向いたままで彼女の方を向くことは出来なかった。

 女の子は僕の向かい側の空いていた椅子に座り、まずは姉さんが口を開いた。

「今から色々話してくれるらしいが、まあ色々と深い、海よりも谷よりもとても深い事情があるっぽいのよ。私は今朝少しだけ聞いた。自己紹介も兼ねてこの子の口から直接聞きな」

「ほんじゃよろしく」と姉さんは隣に座る女の子の背中を叩いた。

 文字通り背中を押された少女は一瞬ビクッとしていたが、気を取り直して話し始める。

「はい。えーっと。なんて言ったら良いんですかね。信じてくれるかどうかは分からないんですけど、私は青井花火と言います。いわゆるところ、平行世界。パラレルワールドから来ました」

 とんでもない自己紹介を聞いて、僕は唖然としてしまった。とても間抜けな顔をしていたことだろう。

 そんな僕の様子を見た姉さんがうんうんと頷いていた。

 チラッと斜め前を見てみると青井花火と名乗った少女が後頭部に手を当てて苦笑いしている。

 とてもじゃないが、信じられない。もしもそれを大真面目に言っているのだとしたら、これはまた、とてつもなく電波な子が来たのかもしれない。
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