この夏の終わりに君を彩る

37se

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 立夏との電話が終わり、長月清涼は微かなため息をついた。

「いったい俺はいつまで頑張ればいいんだよ」

 小さく呟くとスマートフォンを持っていた手がだらんと下がる。

 立花が喜んでいたから、電話している間だけでも明るく取り繕うとした。最初はうまくいっていた自信がある。でも、話している間にどうしても苦しくなってしまった。

 脱力した清涼はそのままベッドに倒れこんだ。

 立夏が太陽のことを想っているのは、随分前から知っている。

 立夏の幸せを願っているのは当然なのだが、その願いとは裏腹に、彼の胸の奥には棘が深く深く突き刺さっていた。

 自分の中にひどい矛盾が生じているのが、痛いくらいに分かる。

「俺だって頑張ってんだよなあ。少しくらい俺の方に振り向いてくれたっていいんじゃねえのか?」

 言っていて、なんて自分勝手なことを思っているんだろうと呆れてしまった。

 馬鹿みたいだ。

 どす黒い影が自分を覆い尽くしているような気分だった。

 清涼は立夏のことが好きだった。どうしようもないくらい、彼女のことが好きで好きで仕方なかった。内気だった清涼を引っ張り出してくれたからだ。だから、少しでも振り向いてもらえるように、少しでも彼女の視界に入れるように、努力してきた。彼女に好かれようと運動も得意になって、勉強も頑張ってきた。それなのに、彼女は太陽しか見ていない。

「どうして太陽なんだろうな」

 呟いて、清涼はハッとした。そんなことを考えてはいけないと自分に言い聞かせる。

 清涼が太陽を大事に思う気持ちも、本物だからだ。

 葉月を亡くして以降、彼は全力で今ある物を、今いる人を、大切にしていこうと決心した。

 そう思っているからこそ、立夏を想う気持ちと太陽と昔のように戻りたいという気持ちの間に、清涼は挟まれて、苦しんでいる。

 握りしめていたスマートフォンをぼんやりと眺めていると、脳内に立夏の顔が浮かんでくる。

 だが、彼女を思っていると苦しくなるのも事実だ。だから、無理やり頭を振って立花を脳内から振り払った。

 そして、逃げるようにゆっくりと瞳を閉じた。瞼の裏に星空を思い浮かべる。
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