無限に発散するエッセイ

あq

文字の大きさ
上 下
9 / 13

2023-12-16

しおりを挟む
 独占欲が世界を覆っている。今僕が見ている世界は他の人によっても眼差されているということが惨たらしく感じられ、憎い。
 ちょうど、中学生くらいの時僕だけが知っている漫画が人気であることと誰にも知られていないことの両立することを願ったように、今僕は世界に美しい人々が満ちていて、美しい力で自ずから輝いていて、その価値は誰にも明らかである形で、僕にだけ眼差されてほしい。
 神が世界を作っているときは、さぞ楽しかっただろうと思う。美しい人を眼差しながら、他の誰もそれを眼差すことなく、自身が眼差されることもなく、ただうっとりと、微睡みのような時間の中で、幸福を享受したんだろう。何と狡いやつか。
 しかしまあ、信仰心の不足といってもいい。神ではなく、ただ唯一存在する自分を信仰する力。他の誰も、本当は存在していないとする立場。その立場によれば、僕だけの美しい人が存在するのか。
 いや、違う。それは確かに矛盾する。美しさとは、そこに在るゆえに感じられるものであって、もし彼ら彼女らが僕に眼差されねば輝かぬのであれば、それは美しい人ではない。美しい人は、僕などに関与せずとも、自ずから在るのだ。
 だから、今日も祈る。美しい人々よ、在ってくれ。誰も、それを眼差さないでくれ。
しおりを挟む

処理中です...