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卒業式とは?なんとも面倒なことに…
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森の奥の小さな湖のほとりで
「君は誰?」
「私は…」
今日は義弟たちの卒業式である。家族は仕事で忙しいため、私が代表で来たのだが…これはいったいどう言う事で?
「アデリア・ファンタージ!貴様をコゼットを虐めた罪で断罪する!」
いや、誰ですかその令嬢?というか、あなたに私を断罪する権限なんて無いですよね?
「心優しいコゼット嬢を虐めるなんて、あなたの心は腐り切っていますね」
私がどうやって虐めると?あなたの頭が腐り切っているのでは?
「そうだそうだ!暴力に訴えるなんてサイテーな野郎だ!」
あなた剣の帯刀を禁止されているはずでは?確か暴力沙汰を起こして…
「みんな!私のために…!」
すっごい瞳うるうるさせようとしているけど、全く出来てないよ?というか、この女子生徒どこかで…
私が思考の海に潜っていると
「はっ!図星で何も言えないようだな!よかろう、貴様の罪状をここで述べてやる!貴様は彼女の教科書を目の前で破り捨てたり、教室で水をかけたり、東棟の階段から突き落とし…」
「あっ!思い出しました!昔、街で頭のおかしい女の子として話題になっていた方ですね!」
「は?」
「両親がいくら諭しても頭のおかしい言動が無くならないと言うことで、更生施設に入れられたと聞きましたが…まさかこの学園だったとは…ずいぶん思い切ったことをしましたね。通りでみんな私をこの学園に入れたがらないわけです。」
長年の疑問が解消してスッキリした。別に学園通いたいと思ったことは1度もなかったけれど、周りの説得が必死過ぎて違和感を覚えていたのだ。
「何を意味のわからないことを…」
「結構有名な話だと思いますが?」
「そんなことはどうでもいい!それよりもお前!コゼットに謝れ!」
いや、どうでも良くは無いと思うが?
暴力沙汰で謹慎中なはずの男…もう暴力男でいいか(一応子爵令息で現騎士団長の息子)…が馬鹿丸出しで吠えてくる。
私の話ちゃんと聞いていなかったな?
「そうです。まず謝るのが先でしょう。」
…まじか、頭脳担当系の奴も馬鹿だったのか…もう馬鹿眼鏡(一応伯爵令息で現宰相の息子)でいいかな。
「誠心誠意謝れよな?」
すっごいゲス顔をしている…これはゲス男一択だね!(一応侯爵令息で現財務大臣の息子)
「私、謝ってくれたら今までのこと水に流すので…!」
お花畑自称ヒロイン…電波ちゃんでいいかな?(ちなみに、今も昔もただの平民である)
めんどいなー。何で私がこんな奴らの相手をしないといけないんだ?というか、義弟たちどこ行った?義姉を助けておくれー。
「身に覚えがありませんね。」
「白々しい!貴様がやっていないという証拠はあるのか!?」
「逆に、私がやったという証拠はあるのですか?」
「コゼットの証言が証拠に決まっているだろう!」
「…それだけですか?」
「十分だ!コゼットが嘘をつくわけないからな!」
後ろの馬鹿2人も頷いている。
こいつらもう一度始めから学園通い直すべきでは?
というか、ここまで騒いでも大人が全く介入してこないということは…はめられましたね。はあ、美味しい料理を食べてさっさと帰ろうと思っていたのに…後で怒られても知りませんよー。
「まあ、いいです。あなた達と話し合う時間の方が無駄ですから。」
「何だと貴様!俺たち…」
聞くだけ無駄なので思いっきり遮って
「大きな間違いを2点。訂正したら私、帰りますね。」
「はっ?いや、ちょっと待…」
なんか焦っているがガン無視して
「まず一つ目、私はこの学園の生徒じゃありません。よって虐めるのは不可能です。この学園は関係者以外立ち入り禁止ですから。」
これさっきちらっと言ったんだけどなー。
「そんなわけ…」
反応を見る限り、やっぱりちゃんと聞いていなかったらしい。
「二つ目、私はアデリア・ファンタージではありません。責めるのはお門違いですよ。」
「…はっ?いや、貴様は本人で間違いな…」
もう少し貴族社会の情勢に耳を傾けましょうねー。
言いたいことは言ったのでさっさと帰ろうとしたのだが…
「何訳わかんないことを言ってるんだ!お前がコゼットを!」
剣を抜いた暴力男が私の方に駆け寄って来る。
馬鹿だなー。自分から今後の未来を手放すなんて…。そんなことを思いながら、剣を止めようと…
「え?」
振り返って思わず二度見する。暴力男が吹き飛んだ…私何もしてないよ?いや、原因はわかっている…最悪な状況だということも…ちょっと!足止めできるから今回の件実行したんじゃないの!?何で来ちゃってるの!?しかもタイミング悪!どうにかこの場を切り抜けようと頭をフル回転させるが…
「あれ殺っていいよね?」
ふわりと石鹸のようなぬるま湯に浸かっているような、気怠げな香りに包まれる。結構好きな香りで、いつもなら心安らぐのだが…今は恐怖しかない。私を抱きしめている背後の人物を見る。そこには…
「きゃー!!隠しキャラのノエル様来たー!絹ような銀髪に、まるで月のような輝きを持つ妖しげな瞳!顔立ちは少し甘めで、気だるげな雰囲気が壮絶な色気を醸し出しているー!生やばい!目潰れる!しかも!普段は何事にも無関心だけど、ある事件をきっかけに天真爛漫なヒロインに興味を持って仲を深めていくというストーリーもめっちゃ良くて…というか、両思いになってからのノエル様がやばい!あんなに素っ気なかったのにヒロインのことだけ、めちゃくちゃ甘やかしてくれるし、その甘々スチル…きゃー!作画もシュチュエーションも神がかっていて何度周回したことか!これぞ制作会社が総力を上げて創り出したと言われる最高傑作の理想の彼氏!というか待って!ノエル様が今登場するってことはもしかして…!」
電波ちゃんがすっごいはしゃぎながら叫んでいる。まだなんか言っているけど…エルは隠しキャラだったのかー。通りで…って!
「エル、ストップ!」
急いでエルの手を握る。やばいこの人、しれっと暴力男をこの世から消そうとしていた…怖!
「リア何で止めるの?ゴミが存在する価値なんてないよ?」
笑顔でさらっとゴミ扱いしてる…まあ、わからなくは無いけど…。私個人の意見としても生かしておく価値がないことには同意、でも今ここで殺してしまうのはまずい。上には上の考えがあるようだし…面倒ごとには関わらないのが1番。とりあえずこれ以上ややこしい事が起こる前にここから退散…
「ちょっとあんた!ノエル様から離れなさい!ノエル様は私を迎えに来たんだから!大体婚約者がいるのに他の男性と親しくするなんてふしだらよ!ほら!さっさとレオ様と仲直りして!あなた達の婚約が上手くいけば私は晴れてノエル様の妻になれるんだから!」
「「「「「…」」」」」
…終わったー。会場が凍え切っている。いや、今までもかなり寒かったが今度は物理的に凍り始めている。後ろの発生源を見る。待って、ここまで怒っているの初めて見るんだけど…どうしよ…私もう止められる気がしない…。エルが絶対零度の眼差しで
「俺の妻はリアだけだし、リアの夫も俺だけだけど」
あっ、1番に訂正するのはそこなんだ。色々突っ込みどころあったと思うけど。ほら、ノエル様から離れてって私がくっついているわけじゃなくってエルがガッチリ掴んで離さないだけだとか。エルとあなたは知り合いなのかとか。婚約者がいる複数人の男性と仲良くしているあなたはふしだらでは無いのかとか。あと、何で私の婚約者がレオナルドになっているのかとか。今本人居ないけど、居たら絶対真っ青になってるよ。あと、愛称呼びしているけど許可もらったのかな?もらってないよね?しかも、何で私たちの婚約(実際にはありもしないのだが)?が上手くいくことでエルと結婚できるようになるんだ?うん、本当に意味がわからん。
「ノエル様、何を言っているんですか?あっ!わかりました!そこの女に脅されているんですね!大丈夫です!私が守るので本当のことおっしゃっていいんですよ!」
猫撫で声気持ち悪!だけど、ここまでいくと最早や賞賛したくなるね。神経図太すぎ。何をどう考えたらそういう思考に陥るのか…謎だ。というか、この世界にエルを脅す事が出来る人なんて存在しないし。エルを守るっていうのも…よく言ったな。エルのことを知っている人からすると、何言ってるんだあいつとしか思えない。うん、普通に死ぬと思う。自分の身を守れず。なんて現実逃避していると…
「バチッ!」
やば…危機一髪
「リア何で止めるの?」
エルが電波ちゃん達を氷で串刺しにしようとしたのを結界を張って防いだ。
「何でって…」
殺したら面倒だから。いや、後始末はちゃんとするとか言われるよな…なんかいい文句は…
「俺よりそいつらの方がいいの?俺のこと嫌いになった?それならいっそ…」
はっ!エルの魔力濃度が高まる。ちょっ!王都いったいを吹き飛ばす気か???それはまずい!非常にまずい!え?待って、今から相殺出来る?もう、あと5秒ぐらいでドカン!なんだけど!?あれやこれやと思考を巡らすが…えーい!もう、どうにでもなれ!
私はエルの頭を掴んでそのままキスをする。
「っん!?」
エルの驚いた隙に魔法式をいじって無力化する。おう…セーフ。複雑なやつじゃなくてよかったー。普段のやつだったら絶対間に合わなかった…これもエルが頭に血が昇っていたおかげ?いや、それが原因でこんなことになったのだが…
「リア何で…」
エルが迷子の子犬みたいな顔をして私を見つめる。…ちょっと可愛い。じゃなくて!
「王都いったいを吹き飛ばしたら、あのお気に入りのパン屋もケーキ屋も無くなっちゃうでしょうが!」
「…え?」
エルがキョトンとした顔を浮かべる。
「来週新商品が出るから一緒に買いに行こーって言ってたでしょ!物理的に約束破らないでよね!」
幾分か穏やかな表情になって
「クスクス。そうだね、リアはそう言うよね。」
エルは笑ってはいるが、どこか寂しそうだ。これは伝わって無いなー…
「エル、私は面倒事が嫌い。極力のんびり暮らしたし、誰かと過ごすのも苦手、そもそも結婚する気も無かった。」
エルは悲しそうな顔で
「そうだね…俺のせいで…」
「私の性格は知っているでしょ?嫌なことははっきり嫌って言う。毎日が波乱に満ちた日常も、2人で過ごす取り留めのない時間も、エルとなら楽しかったし、もっと一緒にいたいと思った。だから結婚したの。私の家に結婚報告に来た時のみんなの驚きっぷり見たでしょ?誰も私が結婚するなんて思っていなかった。それぐらい私に結婚したいと思わせたエルはすごいんだよ?というか、今更別れてなんて言われても離れる気はないから。神々の祝福まで受けておいて…逃げられるなんて思わないでね?」
…なぜだろう。素直に好きと言えばよかっただけなのに、もっと恥ずかしいことを言った気がする。もうやだ帰りたい…
「リア!」
エルが満面の笑みで私を抱きしめてくる。待って!笑顔眩し!会場の半数以上がエルの笑顔にやられた。カオスだ。よし!機嫌も治ったようだし今度こそ退散…!
「ノエル様!そんな人放って置いて私の元に来てください!」
またお前か!さっき助けてやった恩を忘れたのか!?
「大丈夫です!その人から助けてあげます!」
助けるって…実力差も分かっていないようなひよっこがよく言うね?エルが動こうとするのを止める。ここまで馬鹿にされたら黙っていられないよねー。いい加減目障りだし。
「そうですか、では私とあなたで決闘でもしますか?ずいぶん自信をお持ちのようですしね?」
「いいわ!私が勝ったらノエル様に近づかないで!」
「分かりました。では、私が勝ったら今後の処遇を大人しく受け入れてくださいね。」
「は?あんた何言ってんの?」
「ルールは簡単、先に膝をついた方が負けです。よろしいですか?」
「いいわよ。せいぜい泣いて苦しみなさい!『炎よ 我が元に集いて…』」
まじか…啖呵切っていたから無詠唱ぐらいできるかな?って思っていたのに、短縮詠唱すら出来ないとは…。これどうしようかなー?
「いっけー!」
飛んできた炎を手で払って消す。あんな魔力濃度だったらちょっと乱しただけですぐに消える。
「はっ?なんで?」
電波ちゃんは驚いているが放置。とりあえずインパクトあった方がいいかなー。おーい!
「ピカッ!」
「眩し!なんなのよ!…え?待ってなんであんたが…!」
『久しぶりじゃの、リア』
「久しぶりー。シェン爺ー。」
天井は突き破っちゃうから予め解体しておいたよ。と言うことで、ただいま会場は漆黒の夜空に月や星々の光、そして黄金の龍の輝きで言葉に出来ないほどの幻想的な光景が広がっています。シェン爺は相変わらず綺麗だね。毛並みも艶々で…あー、触りたいなー。
「何であんたが神獣を従えているのよ!おかしいでしょ!それは私のはず…!」
あー。神獣まで知っているのか…もう何千年も確認されていないから、一般人は知らないはずなんだけど…そりゃー、国に要注意人物扱いされるよねー。これで彼女の今後の運命は決まったも同然であろう。神獣の主人であり…
突然会場の扉が開かれる。神官や聖騎士が駆け寄って来る。
「聖女様!ご無事ですか!」
「ええ、大丈夫よ」
歴代最高の聖女と呼ばれるアデリア・ファルタスを侮辱したのだから。本当は見逃してあげるつもりだったんだよ?自分の影響力の大きさは分かっていたし。でもやめた。エルに絡んで来ると言うなら、全力で潰す。これ以上面倒事な事にならないうちにね。あっ!やっと国王様達も登場だ。全くあの人たちには面倒事を押し付けられたものだよ…後でどうなっても助けてあげない!なんて思っていると…
「義姉さん!無事!?」
義弟が駆け寄って来る。なぜか全身ボロボロだ。
「ルド!どうしたの!?その傷!?」
「あー…これは…」
なんとも言えない顔をしている。大丈夫!義姉さんが倍返しにしてきてあげるから!でも、ルドがここまでやられる相手なんて…
「叔父上にやられたんだよ」
同じくボロボロな男、レオナルドがやって来る。…だよね、エルぐらいしかいないよね。ごめん倍返しは無理だわ…というか、報復すら無理。コテンパンにやられる未来しか見えない。
「義姉さん!違うよ!僕らは国王陛下にはめられて…!」
ルドが必死な顔で否定する。大丈夫だよ。義姉ちゃんは分かっているよ。
「俺たちが到着した時点で、会場内に入るのはすでに不可能だったからな。そうなると、これ以上の事態の悪化を防ぐために、叔父上を足止めするしかない。全く、父さん達には損な役回りを押し付けられたよ。大体、学園生活でも…」
レオナルドが心底嫌そうな顔で吐き捨てる。あー、お疲れのとこ悪いけど、もっと大変なことがー…
「っ!?何するんだよ!叔父上!?」
間一髪でレオナルドが避ける。
「今すぐ死ね」
「はー???意味わかんな…っ!」
さっきのことを根に持っているエルが容赦なくレオナルドを攻撃する。…一応手加減はしているみたいだし?何とか頑張ってくれ…私が口出ししたら多分余計に拗れる。とまあ、私たちがこんなことをしている間に彼女達には処分が下されたようだ。罪状とか今後の彼女達の生活とか全く興味がないけれど、1つだけ。電波ちゃんに近づく。彼女は膝をついた体勢で憎しみのこもった目で私を睨んで来る。
「あんたのせいで!」
「何を言いたいのか分かりませんが、約束は守ってもらいますね。」
「は?何言って?」
私は彼女に誓約をかける。これは私のオリジナルなので誰にも破れない。あんな性格だ。結局ここでも更生できなかったようだし…保険はかけておいて損はないだろう。これでもう2度と会うことはない。
「ちょっとあんた!何勝手に…!」
それじゃ、料理でも食べてのんびりしよー。最早私の中では彼女達の存在など消えてなくなっているのであった。
「義姉さんの好きな料理取ってきておいたよ。」
「わー!ありがとう!」
料理に舌鼓を打ち、大満足の私であった。
「私はリア!あなたのお名前は?」
「…エル」
「エル!可愛い名前!ねえねえ一緒にお話しよう!」
とっても可愛らしい女の子で、ついつい引き留めてしまった。可愛い子は名前まで可愛いのか…まつ毛長!肌白!妖精さんかな?
普段なら積極的に人と関わらない私だが、女の子の神秘的な美しさに魅了され、その後も何度も会った。そして私たちは…
頭が覚醒するとそこには…
「おはよう、リア」
朝から色気全開のエルがそこにいた。ちょっと!服ちゃんと着てよ!腹筋とか丸見えで、目に毒なんですけど!?というか、細身のくせに何気にいい身体してるよね?あー、あんなに可愛かった女の子が…
「何考えてるの?」
「可愛い可愛いエルちゃんのこと…」
「リアが勝手に勘違いしたやつね」
「だって!あんなに可愛いんだもん!女の子だと思うじゃん!あー…私の癒しのエルちゃんが…」
エルが少し考え込んで
「リアは今の僕のこと嫌い?」
上目遣いで瞳をうるうるさせながら私の目を見つめてくる。
「大好きですけど!?」
「そっかー!よかったー!」
そこからの満面の笑み。やばい…
「エルはやっぱりいつでも可愛い。撫で撫でしたい。」
思わず心の声が漏れてしまった。
「撫で撫では嬉しいけど、男としては可愛いはちょっとな…いまだに子供扱いするし。そうだね…しばらく休日もらえたし、俺が男だってこと、ちゃんとその身に分からせてあげる。」
エルが妖しげに私の腰を撫でる。
「え?ちょっ!もう朝…!」
「愛し合うのに時間は関係ないよ」
エルの顔が近づいてきて
「んっ!?」
結局、その後数日間2人は部屋に篭って出てこなかったとさ。
追記:
貴族の令息・令嬢はこの学園に通うことが義務付けられている。ただし例外もあって、すでに結婚して夫人となった者、家督を受け継いだ者、その他の事情を国に認められた者などは対象外となる。
あの人たちは例外事項を知らなかったのか、はたまた、私が結婚した事実を知らなかったのか、後者ならかなりやばいですね。私たちの結婚は他国の人たちでも知っているくらい有名なのに。先ほども述べたように、これでも一応聖女やっています。聖女とはどう言う人物を指すのかと言うと、神々から祝福を受けた女性で、体のどこかに聖痕を持って生まれてきます。まあ、あとはご想像通り、勇者(聖女の男版)や仲間達と魔王を倒す旅に出かける的なやつなんですけど…これまた典型的で、勇者と聖女は結婚する的な暗黙の了解があるんですよ。
じゃあ、エルが勇者か!と思ったそこのあなた!それが違うんですよね。エルは勇者一行の魔法使い的な立ち位置です。まあ、オールマイティーにこなせますけど…なんなら勇者や聖女より強いですけど。それでは、勇者は誰なのか…皆さん薄々気が付きました?そう!レオナルドです!(電波ちゃんが私の婚約者をレオナルドだと思ったのはここら辺が理由かな?いや、普通は周りの話を聞いていればそう思い込むことはないのだが…)
いやー、当時は本当に荒れましたよ、主にエルが。一歩間違えていたら、旅立つ前に勇者、身内に殺されていましたからね。これはダメだと言うことで、魔王討伐の前に聖女と魔法使いは結婚しました。それも神々の誓約を使って。これは聖女の祝福の1つで、何人たりともこの結婚を覆すことはできない的なやつです。別れたら祟られます。それぐらいしないとエルが納得しなかったので。「勇者?必要ないでしょ?俺が魔王ぶっ殺すから。」ってレオナルドの首に剣を突き立てながら笑顔で言い切っていた時は、どうしようかと思いましたよ…なまじ、実行するだけの実力を持っているのだからタチが悪い。
何とか説得して無事に魔王を倒したわけですが、レオナルドは相変わらず不憫でした。本来なら魔王を倒した英雄として語り継がれるはずだったのに、魔法使い(エル)のインパクトが強すぎて、街では『魔法使いと聖女の物語』という本が出版されているほどです。(ちなみにめちゃ人気で他国でも販売されています)レオナルド…本当に不憫。
電波ちゃんの言っていた物語は知りませんけど、シェン爺を呼び出せていたと言うことは彼女はその物語の中で聖女の素質があったと言うことなのでしょうね。勇者や聖女の生態はいまだによく分かっていませんが、どの時代にも必ず1人ずつ現れると言われています。と言うことは、その物語の中で私は何らかの理由で力を失い、そして、彼女が次の聖女に選ばれた。なるほど。それなら彼女が言っていたこともあながち嘘では無いかもしれません。「私は王妃になるの!」と言うやつですね。先ほど述べた通り、勇者と聖女が結婚するのが、この世界での共通認識です。そこに身分差は関係ありません。過去にも身分違いの2人が結婚したと言う事例は多くありますから。
まあ、別に興味ないんですけどね。今を生きている私たちとその物語の私たちは全くの別物ですから。まあ、ある種の未来予知ではあると思いますし、上は利用する気満々だったみたいですけど。なぜ過去系かって?もう、利用価値がないからですよ。彼女の知る物語はおそらくあの卒業式で終わり。だから上は私をあの場に呼びました。彼女に最後のチャンスを与えるために。結果はご覧の通り、彼女は現実を生きることができなかったようですけど。学園には徹底した監視網が敷かれ、彼女の行動、発言は全て記録されています。さらには、定期検診と評して精神魔法で様々な情報を聞き出していたのでしょう。あまり気分の良い物ではないですけど、国に害をなし得る情報を持っている人物の扱いとしては妥当…むしろ優しすぎるぐらいですね。とまあ、彼女から得られるだけの情報は得ているようで、もう用済みなのでしょうね。さて、国に不利益を生むかもしれない情報を持つ彼女は、今後どのような扱いを受けるのか…あまり明るい未来でないことは確かですね。
神々視点
「いやー、今回は上手くいってよかったよー」
「全くだ。いったい何度繰り返したことか…」
「4桁を更新したところから数えるの諦めたもんねー」
「何度繰り返してもあの世界は滅びた」
「それもたった1人の力によってね」
「もはやあれは人ではないだろう…」
「世界の滅亡を阻止するために、あらかじめ事前情報を与えた女どもを何度もあの世界に送ったわけだが、」
「なぜかみんな揃って滅亡ルートを選ぶんだよねー」
「そうそう。卒業後の様子が描かれているのはレオナルドルートだけなのに何でみんな他のルートを選ぶかなー?」
「勇者に王子というハイスペックな肩書きを持っているはずなのになぜあやつはモテないのか…」
「さあ?性格じゃない?」
「ノエルの人気が高すぎるんですよー」
「たしかに、ほとんどの女はノエルルートに進んでいたな…」
「ヒロインの最後としては1番悲惨なんですけどねー」
「まあな、あいつにとってアデリア以外はどうでもいい存在だからな」
「特にあのルートでヒロインはアデリアとレオナルドの結婚を後押ししていますからね」
「思いっきりノエルの地雷を踏み抜いていたよな」
「2人の婚約をなくすためにヒロインを利用しようとしたのに、その逆をいったんですもの…」
「わざわざ俺たちの祝福をヒロインに移すなんていう離れ業までしたのにな」
「普通あり得ないよねー。いくら、僕たちの祝福が原因で婚約が結ばれていると言ってもさー。」
「もはやあれは神に近しい存在だろう」
「そうですわね。そして彼の唯一の抑止力が…」
「「「「「アデリア」」」」」
「そう!そこで僕たちは思ったのさ!アデリアを変えた方が上手くまとまるのでは?と」
「変えるといっても、魂まで入れ替えたらあいつは俺たちを殺しに来るだろうからな」
「たしかに…神殺しとか平気でしそう…」
「なので私たちはアデリアの前世の記憶を呼び覚ましました」
「あんまり期待はしていなかったんだけど、これが大当たり!」
「本編が始まる前にアデリアとノエルは結ばれ、無事世界滅亡ルートは回避され」
「今回のノエルも僕たちの祝福をヒロインに移そうとしていたみたいだけど、」
「わたくしたちが2人の結婚を祝福したことで、かろうじて見逃してもらえましたわね」
「それでも聖痕が見えないように隠蔽魔法をかけているわけだが…」
「あれのアデリアに対する執着心は異常だ。他人からの印が彼女に付いていることがよっぽど嫌なんだろうな…」
「あんな男に執着されてアデリアが可哀想」
「まあ、今んとこはアデリアも幸せそうだしいいんじゃないか?」
「でももし彼女が本気で嫌がる時が来たならば、僕たちは「「「「「この身を持って彼女を守ろう」」」」」」
「君は誰?」
「私は…」
今日は義弟たちの卒業式である。家族は仕事で忙しいため、私が代表で来たのだが…これはいったいどう言う事で?
「アデリア・ファンタージ!貴様をコゼットを虐めた罪で断罪する!」
いや、誰ですかその令嬢?というか、あなたに私を断罪する権限なんて無いですよね?
「心優しいコゼット嬢を虐めるなんて、あなたの心は腐り切っていますね」
私がどうやって虐めると?あなたの頭が腐り切っているのでは?
「そうだそうだ!暴力に訴えるなんてサイテーな野郎だ!」
あなた剣の帯刀を禁止されているはずでは?確か暴力沙汰を起こして…
「みんな!私のために…!」
すっごい瞳うるうるさせようとしているけど、全く出来てないよ?というか、この女子生徒どこかで…
私が思考の海に潜っていると
「はっ!図星で何も言えないようだな!よかろう、貴様の罪状をここで述べてやる!貴様は彼女の教科書を目の前で破り捨てたり、教室で水をかけたり、東棟の階段から突き落とし…」
「あっ!思い出しました!昔、街で頭のおかしい女の子として話題になっていた方ですね!」
「は?」
「両親がいくら諭しても頭のおかしい言動が無くならないと言うことで、更生施設に入れられたと聞きましたが…まさかこの学園だったとは…ずいぶん思い切ったことをしましたね。通りでみんな私をこの学園に入れたがらないわけです。」
長年の疑問が解消してスッキリした。別に学園通いたいと思ったことは1度もなかったけれど、周りの説得が必死過ぎて違和感を覚えていたのだ。
「何を意味のわからないことを…」
「結構有名な話だと思いますが?」
「そんなことはどうでもいい!それよりもお前!コゼットに謝れ!」
いや、どうでも良くは無いと思うが?
暴力沙汰で謹慎中なはずの男…もう暴力男でいいか(一応子爵令息で現騎士団長の息子)…が馬鹿丸出しで吠えてくる。
私の話ちゃんと聞いていなかったな?
「そうです。まず謝るのが先でしょう。」
…まじか、頭脳担当系の奴も馬鹿だったのか…もう馬鹿眼鏡(一応伯爵令息で現宰相の息子)でいいかな。
「誠心誠意謝れよな?」
すっごいゲス顔をしている…これはゲス男一択だね!(一応侯爵令息で現財務大臣の息子)
「私、謝ってくれたら今までのこと水に流すので…!」
お花畑自称ヒロイン…電波ちゃんでいいかな?(ちなみに、今も昔もただの平民である)
めんどいなー。何で私がこんな奴らの相手をしないといけないんだ?というか、義弟たちどこ行った?義姉を助けておくれー。
「身に覚えがありませんね。」
「白々しい!貴様がやっていないという証拠はあるのか!?」
「逆に、私がやったという証拠はあるのですか?」
「コゼットの証言が証拠に決まっているだろう!」
「…それだけですか?」
「十分だ!コゼットが嘘をつくわけないからな!」
後ろの馬鹿2人も頷いている。
こいつらもう一度始めから学園通い直すべきでは?
というか、ここまで騒いでも大人が全く介入してこないということは…はめられましたね。はあ、美味しい料理を食べてさっさと帰ろうと思っていたのに…後で怒られても知りませんよー。
「まあ、いいです。あなた達と話し合う時間の方が無駄ですから。」
「何だと貴様!俺たち…」
聞くだけ無駄なので思いっきり遮って
「大きな間違いを2点。訂正したら私、帰りますね。」
「はっ?いや、ちょっと待…」
なんか焦っているがガン無視して
「まず一つ目、私はこの学園の生徒じゃありません。よって虐めるのは不可能です。この学園は関係者以外立ち入り禁止ですから。」
これさっきちらっと言ったんだけどなー。
「そんなわけ…」
反応を見る限り、やっぱりちゃんと聞いていなかったらしい。
「二つ目、私はアデリア・ファンタージではありません。責めるのはお門違いですよ。」
「…はっ?いや、貴様は本人で間違いな…」
もう少し貴族社会の情勢に耳を傾けましょうねー。
言いたいことは言ったのでさっさと帰ろうとしたのだが…
「何訳わかんないことを言ってるんだ!お前がコゼットを!」
剣を抜いた暴力男が私の方に駆け寄って来る。
馬鹿だなー。自分から今後の未来を手放すなんて…。そんなことを思いながら、剣を止めようと…
「え?」
振り返って思わず二度見する。暴力男が吹き飛んだ…私何もしてないよ?いや、原因はわかっている…最悪な状況だということも…ちょっと!足止めできるから今回の件実行したんじゃないの!?何で来ちゃってるの!?しかもタイミング悪!どうにかこの場を切り抜けようと頭をフル回転させるが…
「あれ殺っていいよね?」
ふわりと石鹸のようなぬるま湯に浸かっているような、気怠げな香りに包まれる。結構好きな香りで、いつもなら心安らぐのだが…今は恐怖しかない。私を抱きしめている背後の人物を見る。そこには…
「きゃー!!隠しキャラのノエル様来たー!絹ような銀髪に、まるで月のような輝きを持つ妖しげな瞳!顔立ちは少し甘めで、気だるげな雰囲気が壮絶な色気を醸し出しているー!生やばい!目潰れる!しかも!普段は何事にも無関心だけど、ある事件をきっかけに天真爛漫なヒロインに興味を持って仲を深めていくというストーリーもめっちゃ良くて…というか、両思いになってからのノエル様がやばい!あんなに素っ気なかったのにヒロインのことだけ、めちゃくちゃ甘やかしてくれるし、その甘々スチル…きゃー!作画もシュチュエーションも神がかっていて何度周回したことか!これぞ制作会社が総力を上げて創り出したと言われる最高傑作の理想の彼氏!というか待って!ノエル様が今登場するってことはもしかして…!」
電波ちゃんがすっごいはしゃぎながら叫んでいる。まだなんか言っているけど…エルは隠しキャラだったのかー。通りで…って!
「エル、ストップ!」
急いでエルの手を握る。やばいこの人、しれっと暴力男をこの世から消そうとしていた…怖!
「リア何で止めるの?ゴミが存在する価値なんてないよ?」
笑顔でさらっとゴミ扱いしてる…まあ、わからなくは無いけど…。私個人の意見としても生かしておく価値がないことには同意、でも今ここで殺してしまうのはまずい。上には上の考えがあるようだし…面倒ごとには関わらないのが1番。とりあえずこれ以上ややこしい事が起こる前にここから退散…
「ちょっとあんた!ノエル様から離れなさい!ノエル様は私を迎えに来たんだから!大体婚約者がいるのに他の男性と親しくするなんてふしだらよ!ほら!さっさとレオ様と仲直りして!あなた達の婚約が上手くいけば私は晴れてノエル様の妻になれるんだから!」
「「「「「…」」」」」
…終わったー。会場が凍え切っている。いや、今までもかなり寒かったが今度は物理的に凍り始めている。後ろの発生源を見る。待って、ここまで怒っているの初めて見るんだけど…どうしよ…私もう止められる気がしない…。エルが絶対零度の眼差しで
「俺の妻はリアだけだし、リアの夫も俺だけだけど」
あっ、1番に訂正するのはそこなんだ。色々突っ込みどころあったと思うけど。ほら、ノエル様から離れてって私がくっついているわけじゃなくってエルがガッチリ掴んで離さないだけだとか。エルとあなたは知り合いなのかとか。婚約者がいる複数人の男性と仲良くしているあなたはふしだらでは無いのかとか。あと、何で私の婚約者がレオナルドになっているのかとか。今本人居ないけど、居たら絶対真っ青になってるよ。あと、愛称呼びしているけど許可もらったのかな?もらってないよね?しかも、何で私たちの婚約(実際にはありもしないのだが)?が上手くいくことでエルと結婚できるようになるんだ?うん、本当に意味がわからん。
「ノエル様、何を言っているんですか?あっ!わかりました!そこの女に脅されているんですね!大丈夫です!私が守るので本当のことおっしゃっていいんですよ!」
猫撫で声気持ち悪!だけど、ここまでいくと最早や賞賛したくなるね。神経図太すぎ。何をどう考えたらそういう思考に陥るのか…謎だ。というか、この世界にエルを脅す事が出来る人なんて存在しないし。エルを守るっていうのも…よく言ったな。エルのことを知っている人からすると、何言ってるんだあいつとしか思えない。うん、普通に死ぬと思う。自分の身を守れず。なんて現実逃避していると…
「バチッ!」
やば…危機一髪
「リア何で止めるの?」
エルが電波ちゃん達を氷で串刺しにしようとしたのを結界を張って防いだ。
「何でって…」
殺したら面倒だから。いや、後始末はちゃんとするとか言われるよな…なんかいい文句は…
「俺よりそいつらの方がいいの?俺のこと嫌いになった?それならいっそ…」
はっ!エルの魔力濃度が高まる。ちょっ!王都いったいを吹き飛ばす気か???それはまずい!非常にまずい!え?待って、今から相殺出来る?もう、あと5秒ぐらいでドカン!なんだけど!?あれやこれやと思考を巡らすが…えーい!もう、どうにでもなれ!
私はエルの頭を掴んでそのままキスをする。
「っん!?」
エルの驚いた隙に魔法式をいじって無力化する。おう…セーフ。複雑なやつじゃなくてよかったー。普段のやつだったら絶対間に合わなかった…これもエルが頭に血が昇っていたおかげ?いや、それが原因でこんなことになったのだが…
「リア何で…」
エルが迷子の子犬みたいな顔をして私を見つめる。…ちょっと可愛い。じゃなくて!
「王都いったいを吹き飛ばしたら、あのお気に入りのパン屋もケーキ屋も無くなっちゃうでしょうが!」
「…え?」
エルがキョトンとした顔を浮かべる。
「来週新商品が出るから一緒に買いに行こーって言ってたでしょ!物理的に約束破らないでよね!」
幾分か穏やかな表情になって
「クスクス。そうだね、リアはそう言うよね。」
エルは笑ってはいるが、どこか寂しそうだ。これは伝わって無いなー…
「エル、私は面倒事が嫌い。極力のんびり暮らしたし、誰かと過ごすのも苦手、そもそも結婚する気も無かった。」
エルは悲しそうな顔で
「そうだね…俺のせいで…」
「私の性格は知っているでしょ?嫌なことははっきり嫌って言う。毎日が波乱に満ちた日常も、2人で過ごす取り留めのない時間も、エルとなら楽しかったし、もっと一緒にいたいと思った。だから結婚したの。私の家に結婚報告に来た時のみんなの驚きっぷり見たでしょ?誰も私が結婚するなんて思っていなかった。それぐらい私に結婚したいと思わせたエルはすごいんだよ?というか、今更別れてなんて言われても離れる気はないから。神々の祝福まで受けておいて…逃げられるなんて思わないでね?」
…なぜだろう。素直に好きと言えばよかっただけなのに、もっと恥ずかしいことを言った気がする。もうやだ帰りたい…
「リア!」
エルが満面の笑みで私を抱きしめてくる。待って!笑顔眩し!会場の半数以上がエルの笑顔にやられた。カオスだ。よし!機嫌も治ったようだし今度こそ退散…!
「ノエル様!そんな人放って置いて私の元に来てください!」
またお前か!さっき助けてやった恩を忘れたのか!?
「大丈夫です!その人から助けてあげます!」
助けるって…実力差も分かっていないようなひよっこがよく言うね?エルが動こうとするのを止める。ここまで馬鹿にされたら黙っていられないよねー。いい加減目障りだし。
「そうですか、では私とあなたで決闘でもしますか?ずいぶん自信をお持ちのようですしね?」
「いいわ!私が勝ったらノエル様に近づかないで!」
「分かりました。では、私が勝ったら今後の処遇を大人しく受け入れてくださいね。」
「は?あんた何言ってんの?」
「ルールは簡単、先に膝をついた方が負けです。よろしいですか?」
「いいわよ。せいぜい泣いて苦しみなさい!『炎よ 我が元に集いて…』」
まじか…啖呵切っていたから無詠唱ぐらいできるかな?って思っていたのに、短縮詠唱すら出来ないとは…。これどうしようかなー?
「いっけー!」
飛んできた炎を手で払って消す。あんな魔力濃度だったらちょっと乱しただけですぐに消える。
「はっ?なんで?」
電波ちゃんは驚いているが放置。とりあえずインパクトあった方がいいかなー。おーい!
「ピカッ!」
「眩し!なんなのよ!…え?待ってなんであんたが…!」
『久しぶりじゃの、リア』
「久しぶりー。シェン爺ー。」
天井は突き破っちゃうから予め解体しておいたよ。と言うことで、ただいま会場は漆黒の夜空に月や星々の光、そして黄金の龍の輝きで言葉に出来ないほどの幻想的な光景が広がっています。シェン爺は相変わらず綺麗だね。毛並みも艶々で…あー、触りたいなー。
「何であんたが神獣を従えているのよ!おかしいでしょ!それは私のはず…!」
あー。神獣まで知っているのか…もう何千年も確認されていないから、一般人は知らないはずなんだけど…そりゃー、国に要注意人物扱いされるよねー。これで彼女の今後の運命は決まったも同然であろう。神獣の主人であり…
突然会場の扉が開かれる。神官や聖騎士が駆け寄って来る。
「聖女様!ご無事ですか!」
「ええ、大丈夫よ」
歴代最高の聖女と呼ばれるアデリア・ファルタスを侮辱したのだから。本当は見逃してあげるつもりだったんだよ?自分の影響力の大きさは分かっていたし。でもやめた。エルに絡んで来ると言うなら、全力で潰す。これ以上面倒事な事にならないうちにね。あっ!やっと国王様達も登場だ。全くあの人たちには面倒事を押し付けられたものだよ…後でどうなっても助けてあげない!なんて思っていると…
「義姉さん!無事!?」
義弟が駆け寄って来る。なぜか全身ボロボロだ。
「ルド!どうしたの!?その傷!?」
「あー…これは…」
なんとも言えない顔をしている。大丈夫!義姉さんが倍返しにしてきてあげるから!でも、ルドがここまでやられる相手なんて…
「叔父上にやられたんだよ」
同じくボロボロな男、レオナルドがやって来る。…だよね、エルぐらいしかいないよね。ごめん倍返しは無理だわ…というか、報復すら無理。コテンパンにやられる未来しか見えない。
「義姉さん!違うよ!僕らは国王陛下にはめられて…!」
ルドが必死な顔で否定する。大丈夫だよ。義姉ちゃんは分かっているよ。
「俺たちが到着した時点で、会場内に入るのはすでに不可能だったからな。そうなると、これ以上の事態の悪化を防ぐために、叔父上を足止めするしかない。全く、父さん達には損な役回りを押し付けられたよ。大体、学園生活でも…」
レオナルドが心底嫌そうな顔で吐き捨てる。あー、お疲れのとこ悪いけど、もっと大変なことがー…
「っ!?何するんだよ!叔父上!?」
間一髪でレオナルドが避ける。
「今すぐ死ね」
「はー???意味わかんな…っ!」
さっきのことを根に持っているエルが容赦なくレオナルドを攻撃する。…一応手加減はしているみたいだし?何とか頑張ってくれ…私が口出ししたら多分余計に拗れる。とまあ、私たちがこんなことをしている間に彼女達には処分が下されたようだ。罪状とか今後の彼女達の生活とか全く興味がないけれど、1つだけ。電波ちゃんに近づく。彼女は膝をついた体勢で憎しみのこもった目で私を睨んで来る。
「あんたのせいで!」
「何を言いたいのか分かりませんが、約束は守ってもらいますね。」
「は?何言って?」
私は彼女に誓約をかける。これは私のオリジナルなので誰にも破れない。あんな性格だ。結局ここでも更生できなかったようだし…保険はかけておいて損はないだろう。これでもう2度と会うことはない。
「ちょっとあんた!何勝手に…!」
それじゃ、料理でも食べてのんびりしよー。最早私の中では彼女達の存在など消えてなくなっているのであった。
「義姉さんの好きな料理取ってきておいたよ。」
「わー!ありがとう!」
料理に舌鼓を打ち、大満足の私であった。
「私はリア!あなたのお名前は?」
「…エル」
「エル!可愛い名前!ねえねえ一緒にお話しよう!」
とっても可愛らしい女の子で、ついつい引き留めてしまった。可愛い子は名前まで可愛いのか…まつ毛長!肌白!妖精さんかな?
普段なら積極的に人と関わらない私だが、女の子の神秘的な美しさに魅了され、その後も何度も会った。そして私たちは…
頭が覚醒するとそこには…
「おはよう、リア」
朝から色気全開のエルがそこにいた。ちょっと!服ちゃんと着てよ!腹筋とか丸見えで、目に毒なんですけど!?というか、細身のくせに何気にいい身体してるよね?あー、あんなに可愛かった女の子が…
「何考えてるの?」
「可愛い可愛いエルちゃんのこと…」
「リアが勝手に勘違いしたやつね」
「だって!あんなに可愛いんだもん!女の子だと思うじゃん!あー…私の癒しのエルちゃんが…」
エルが少し考え込んで
「リアは今の僕のこと嫌い?」
上目遣いで瞳をうるうるさせながら私の目を見つめてくる。
「大好きですけど!?」
「そっかー!よかったー!」
そこからの満面の笑み。やばい…
「エルはやっぱりいつでも可愛い。撫で撫でしたい。」
思わず心の声が漏れてしまった。
「撫で撫では嬉しいけど、男としては可愛いはちょっとな…いまだに子供扱いするし。そうだね…しばらく休日もらえたし、俺が男だってこと、ちゃんとその身に分からせてあげる。」
エルが妖しげに私の腰を撫でる。
「え?ちょっ!もう朝…!」
「愛し合うのに時間は関係ないよ」
エルの顔が近づいてきて
「んっ!?」
結局、その後数日間2人は部屋に篭って出てこなかったとさ。
追記:
貴族の令息・令嬢はこの学園に通うことが義務付けられている。ただし例外もあって、すでに結婚して夫人となった者、家督を受け継いだ者、その他の事情を国に認められた者などは対象外となる。
あの人たちは例外事項を知らなかったのか、はたまた、私が結婚した事実を知らなかったのか、後者ならかなりやばいですね。私たちの結婚は他国の人たちでも知っているくらい有名なのに。先ほども述べたように、これでも一応聖女やっています。聖女とはどう言う人物を指すのかと言うと、神々から祝福を受けた女性で、体のどこかに聖痕を持って生まれてきます。まあ、あとはご想像通り、勇者(聖女の男版)や仲間達と魔王を倒す旅に出かける的なやつなんですけど…これまた典型的で、勇者と聖女は結婚する的な暗黙の了解があるんですよ。
じゃあ、エルが勇者か!と思ったそこのあなた!それが違うんですよね。エルは勇者一行の魔法使い的な立ち位置です。まあ、オールマイティーにこなせますけど…なんなら勇者や聖女より強いですけど。それでは、勇者は誰なのか…皆さん薄々気が付きました?そう!レオナルドです!(電波ちゃんが私の婚約者をレオナルドだと思ったのはここら辺が理由かな?いや、普通は周りの話を聞いていればそう思い込むことはないのだが…)
いやー、当時は本当に荒れましたよ、主にエルが。一歩間違えていたら、旅立つ前に勇者、身内に殺されていましたからね。これはダメだと言うことで、魔王討伐の前に聖女と魔法使いは結婚しました。それも神々の誓約を使って。これは聖女の祝福の1つで、何人たりともこの結婚を覆すことはできない的なやつです。別れたら祟られます。それぐらいしないとエルが納得しなかったので。「勇者?必要ないでしょ?俺が魔王ぶっ殺すから。」ってレオナルドの首に剣を突き立てながら笑顔で言い切っていた時は、どうしようかと思いましたよ…なまじ、実行するだけの実力を持っているのだからタチが悪い。
何とか説得して無事に魔王を倒したわけですが、レオナルドは相変わらず不憫でした。本来なら魔王を倒した英雄として語り継がれるはずだったのに、魔法使い(エル)のインパクトが強すぎて、街では『魔法使いと聖女の物語』という本が出版されているほどです。(ちなみにめちゃ人気で他国でも販売されています)レオナルド…本当に不憫。
電波ちゃんの言っていた物語は知りませんけど、シェン爺を呼び出せていたと言うことは彼女はその物語の中で聖女の素質があったと言うことなのでしょうね。勇者や聖女の生態はいまだによく分かっていませんが、どの時代にも必ず1人ずつ現れると言われています。と言うことは、その物語の中で私は何らかの理由で力を失い、そして、彼女が次の聖女に選ばれた。なるほど。それなら彼女が言っていたこともあながち嘘では無いかもしれません。「私は王妃になるの!」と言うやつですね。先ほど述べた通り、勇者と聖女が結婚するのが、この世界での共通認識です。そこに身分差は関係ありません。過去にも身分違いの2人が結婚したと言う事例は多くありますから。
まあ、別に興味ないんですけどね。今を生きている私たちとその物語の私たちは全くの別物ですから。まあ、ある種の未来予知ではあると思いますし、上は利用する気満々だったみたいですけど。なぜ過去系かって?もう、利用価値がないからですよ。彼女の知る物語はおそらくあの卒業式で終わり。だから上は私をあの場に呼びました。彼女に最後のチャンスを与えるために。結果はご覧の通り、彼女は現実を生きることができなかったようですけど。学園には徹底した監視網が敷かれ、彼女の行動、発言は全て記録されています。さらには、定期検診と評して精神魔法で様々な情報を聞き出していたのでしょう。あまり気分の良い物ではないですけど、国に害をなし得る情報を持っている人物の扱いとしては妥当…むしろ優しすぎるぐらいですね。とまあ、彼女から得られるだけの情報は得ているようで、もう用済みなのでしょうね。さて、国に不利益を生むかもしれない情報を持つ彼女は、今後どのような扱いを受けるのか…あまり明るい未来でないことは確かですね。
神々視点
「いやー、今回は上手くいってよかったよー」
「全くだ。いったい何度繰り返したことか…」
「4桁を更新したところから数えるの諦めたもんねー」
「何度繰り返してもあの世界は滅びた」
「それもたった1人の力によってね」
「もはやあれは人ではないだろう…」
「世界の滅亡を阻止するために、あらかじめ事前情報を与えた女どもを何度もあの世界に送ったわけだが、」
「なぜかみんな揃って滅亡ルートを選ぶんだよねー」
「そうそう。卒業後の様子が描かれているのはレオナルドルートだけなのに何でみんな他のルートを選ぶかなー?」
「勇者に王子というハイスペックな肩書きを持っているはずなのになぜあやつはモテないのか…」
「さあ?性格じゃない?」
「ノエルの人気が高すぎるんですよー」
「たしかに、ほとんどの女はノエルルートに進んでいたな…」
「ヒロインの最後としては1番悲惨なんですけどねー」
「まあな、あいつにとってアデリア以外はどうでもいい存在だからな」
「特にあのルートでヒロインはアデリアとレオナルドの結婚を後押ししていますからね」
「思いっきりノエルの地雷を踏み抜いていたよな」
「2人の婚約をなくすためにヒロインを利用しようとしたのに、その逆をいったんですもの…」
「わざわざ俺たちの祝福をヒロインに移すなんていう離れ業までしたのにな」
「普通あり得ないよねー。いくら、僕たちの祝福が原因で婚約が結ばれていると言ってもさー。」
「もはやあれは神に近しい存在だろう」
「そうですわね。そして彼の唯一の抑止力が…」
「「「「「アデリア」」」」」
「そう!そこで僕たちは思ったのさ!アデリアを変えた方が上手くまとまるのでは?と」
「変えるといっても、魂まで入れ替えたらあいつは俺たちを殺しに来るだろうからな」
「たしかに…神殺しとか平気でしそう…」
「なので私たちはアデリアの前世の記憶を呼び覚ましました」
「あんまり期待はしていなかったんだけど、これが大当たり!」
「本編が始まる前にアデリアとノエルは結ばれ、無事世界滅亡ルートは回避され」
「今回のノエルも僕たちの祝福をヒロインに移そうとしていたみたいだけど、」
「わたくしたちが2人の結婚を祝福したことで、かろうじて見逃してもらえましたわね」
「それでも聖痕が見えないように隠蔽魔法をかけているわけだが…」
「あれのアデリアに対する執着心は異常だ。他人からの印が彼女に付いていることがよっぽど嫌なんだろうな…」
「あんな男に執着されてアデリアが可哀想」
「まあ、今んとこはアデリアも幸せそうだしいいんじゃないか?」
「でももし彼女が本気で嫌がる時が来たならば、僕たちは「「「「「この身を持って彼女を守ろう」」」」」」
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