【グラニクルオンライン】〜女神に召喚されたプレイヤーがガチクズばかりなので高レベの私が無双します〜

１章 異世界に召喚されました

３１話 優先順位

『にしても、現在この世界ってどれくらい異界の女神に召喚されたプレイヤーがいるんだ？』

『私が現在把握しているのは国々を乗っ取っている10人と、旅をしている３人。
　国に従属しているプレイヤーが６人。
　あとは猫様も知っている３人のプレイヤーですね。
　ただ、ラファのように影で動いている人物もいるかもしれませんから正確な人数はわかりません』

『結構な数がいるんだな』

『はい。それぞれ人間領の国々を占拠してはその支配地域を広げています。
　各々行動は別ですが、彼らプレイヤー間での約束事はあるらしく、女神に召喚されたプレイヤー同士が争うということはありません』

　と、コロネがすっかり冷めてしまったコーヒーをすする。

『ってか、国乗っ取りなんてやってるのか……。
　そりゃ嫌われるわけだよなプレイヤー』

　と、私はため息をついた。
　今ではわりと友好的だが最初の頃のクランベールとか毛嫌いしている感じだったし。

『それもありますが……根本的に考え方の違いもあるかと思われます』

『考え方の違い？』

『猫様からは感じませんが、異界の女神に召喚されたプレイヤーは、考え方が残忍といいましょうか……。
　この世界では戦争を始める前は必ず宣戦布告し、その地域の国民には被害がでないように場所を取り決めて戦をはじめます』

『へー。随分平和的戦い方なんだな』

『そうですね。この世界においては、人の数をあまり減らさないというのが最も重要視されていますから』

　と、語るコロネの話をまとめると

　そもそもこの世界では人間やエルフなどのいない地域はすぐに『魔素溜』なるものができてしまうとのこと。
　これが一度できてしまうと、そこには魔物が沸くようになってしまう。
　例えそこに建物を強引に建てたとしても、建物の中にまで魔物が沸いてきてしまうらしい。
　そうなってしまうと、もうそこは人間やエルフなどが二度と住める場所ではなくなってしまい、人間の住める領土が減ってしまうのだ。

　戦争によって国民や騎士などを虐殺などすれば、結局その土地が魔素溜になってしまい、領土を手にいれても魔物の巣窟化して住めませんでした！となってしまう。

　その為、この世界の戦争は、ルールに乗っ取って行われ、おたがいの国の騎士同士が名乗りをあげて戦うのが主流だった。
　国民は、戦争がおきても国王が変わるだけで、そのまま税金を払えば平和に暮らしていけたらしい。

　騎士達も戦争中はつかまれば捕虜扱いになるが、戦争が終われば、新たな国に仕える事ができるとか。

　だが、プレイヤーが来てからというもの、あまりなかった戦争が増え、魔素溜にならないように何百年にかけ作られてきたルールが全て破られるようになってしまった。
　奇襲・補給路をたつために住人の虐殺・国民を人質にとるなどの非人道的な事を平気でやっているらしい。
　自白なども、本来なら魔道具で自供させればすむものをわざわざ拷問などの酷いことなどをしているらしいのだ。
　そして無闇やたらに人を殺しているせいでプレイヤーが来てからというもの魔素溜になってしまった地域が増えたとか。

　うん。そりゃ嫌われる。
　悪魔扱いわれても文句言えない。

『にしても、そんなことをプレイヤーにさせてして何を狙っているんだろう？異界の女神は』

『自分たちを迎え入れなかった世界への復讐か……
　世界を混乱に陥れ、神々に成り代わる事を狙っているのか。
　もしくは神々が世に降臨されなくなったことと何か関係があるのかもしれませんが……。
　現在の情報だけでは推測の域をでません』

　コロネがため息まじりに頭をふる。

『確かに』

　ここであれこれ結論をだしたところで正解かどうかなんてわからないだろう。

『にしてもなぁ。
　このまま放っておくこともできないよな』

　と、私がポリポリ頭をかきながら言えば、

『猫様、前からお聞きしたかったのですが』

『うん？』

『猫様にとっての優先順位とはなんでしょうか？』

　と、真剣に聞いてくる。

『優先順位？』

『はい。
　猫様はこちらが想像していた以上に人が良すぎて、行動に予測がつかないといいますか。
　私の予想と猫様のやりたい事に差がある気がします。
　私としては猫様はすぐにでも元の世界に帰りたいのかと思っておりましたが、こちらの世界の事もきちんと考えて行動してくださっていますし。
　
　それに……まさか命懸けで私を精神世界まで追ってきてくださるとは思いませんでした。

　助けていただき、ありがとうございました』

『そこは、前にも言ったけど仲間なんだから当然だろ？
　リリとコロネに何かあったら全力で助けるさ。
　それにコロネが連れ込まれたのだって自分のせいだし』

　私の言葉にリリは「ありがとう！リリも!」と私に抱きつくがコロネは何故か顔を背ける。
　
　えーと、私もしかして何かまずいことを言ったのだろうか？

　気になってよく見れば、肩を震わせうつむいているが耳が赤い。
　どうやら照れているらしい。
　
　うん。普段あれだけ感情露にこっちに感動したなどと言ってるくせに、何故こういう時は隠そうとするのか。
　誰かこの子の取り扱い説明書をつくってくれないだろうか。意味わからん。
　あれか、これがデレツンというやつなのだろうか。
　うん？違うか？
　とにかくこれが可愛い女の子なら萌となるかもしれないけどなぁ。相手残念イケメンだからなぁ。


『コロネ？』

　心配そうに尋ねるリリに

『……あ、いや、あのすみません。
　その、とても嬉しいです、本当に……ありがとうございます。

　ですが、同時にとても危ういとも思っています』

『危うい？』

『私もリリ様も猫様とお会いしてまだそれほどたっておりません。
　それなのに仲間として認めてしまっています。
　悪い言い方になってしまうかもしれませんが、たった一、二週間で命をかけていい対象として見てしまっているのです。
　猫様は情にお厚い。好意を寄せる者を仲間認定してしまわれているなら、これからも猫様にとっての仲間は増えていくでしょう。
　その者達が危機に陥るたびに命を投げ出してしまうような行為をしてしまうのではないかと。
　猫様の命を狙ってくる輩も、猫様のその部分を利用してくるでしょう』

『うーん』

　私は考え込む。や、言われてみれば確かにリリとコロネに会ってから眠りこけてた期間を除けば一週間くらいしかたってない。
　コロネから見れば、『人類みな兄弟！』みたいな考えをしてるノー天気女に見えてしまってるかもしれない。

『そう言われても、リリは念話でリリの感情も送ってもらったりしたから、他人の気はしないし
　コロネだって、NPC時代からの知り合いだし。
　コロネのレイド戦って一番やった回数多いし、初めてのレイド戦だったから思い入れもあるし。
　だから親しみがあるわけで。

　私だってそんな誰彼構わず仲間認定はしないぞ？』

　私の言葉にリリとコロネがジト目になる。
　え！？なんで！？

『ネコ　自覚ない』
『無自覚の天然というやつですね』
『リリ、わかる　一年後　仲間　１００人になってる』
『流石にそこまでは……いえ、あるかもしれませんね』

　と、リリとコロネ。

　ちょ！？待って！？何その友達１００人できるかなみたいなノリ！？
　流石に私も１００人も命かける対象とか無理だわ！！

『二人ともどういう目で人のこと見てるんだ？』

　なぜか二人揃ってジト目で無言で見つめてくる。
　くっそーこういう時だけ息ぴったりだなこの二人。

『わかった。なるべく親しくなりすぎないように気をつける。
　……これでいいか？』

　自分でもぶすーっとした顔になる自覚はあったが、しぶしぶ答えると

『無理にとはいいませんが、意識していただけるとありがたいですね。
　それと、命が狙われているとわかった以上、これからは常に人や物には【鑑定】のスキルを使ってください。
　もちろん、私にもリリ様にもです。
　鑑定は誘惑状態や呪い状態も判別できると聞きましたので』

　言ってコロネは微笑む。

 ……にしても、優先順位かぁ。
　私は考え込む。
　そりゃもちろん元の世界には戻りたいけど、でもやっぱりなぁ。

『まぁ、優先順位っていうならとりあえず、この世界を平和状態にすることかな？
　こんな危険な状態の世界にリリとコロネを置いていけない。
　私の世界にリリとコロネを連れていければ一番だけど、それはそれで戸籍がないとか寿命が違うとか問題山積みだし。
　まずは、この世界をある程度安全な状態にするのを目標にしようと思う。
　とりあえず、人間の領土で暴れまわってるプレイヤー連中をなんとかしないと』

「「………」」

　私の言葉にまた無言になる二人。

『えー。またこれお人好しって怒られるパターン……？』

 　私の言葉にリリはぶんぶん頭を横にふり

『そういう所ふくめて　ネコだーいすきっ』

　と、満面の笑顔で抱きつかれるのだった。