【R15版】最強女騎士はお姫様体質の神官長(男)を虐めたい

てんてんどんどん

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2.出会い編(いちゃつく前のお話)

2.いらつき

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「神官長!!助けに参りました!!」

 大勢の野盗に取り囲まれる格好で、一人闘う神官長に、私はいつものセリフを声かけた。
 彼の後ろには負傷した兵士が四人倒れ込んでいる。
 恐らく神官長の護衛でしょう。
 街へと続く街道のど真ん中。普段なら野盗などでるはずもないその場所で。
 彼らは対峙していました。

「レイナッ!?何故ここに!?」

 驚きの声をあげる神官長。
 それはもちろんドラゴンを倒した力を認められ、神殿から貴方の護衛に雇われたからなのですが。
 護衛が主人を守るのは普通の事です。

「おい、女騎士一人だけで加勢にきただとよ」

「そいつもさっさと捕まえちまえよ。綺麗な顔してるしいい値で売れるぜ」

 と、勝手に私を値踏みする野盗達。
 ――ああ、なんでしょう。久しぶりにゲスに会うこの感じ。
 最近魔物としか戦っていないので忘れていました。
 ニヤニヤと私の方に視線を向けてくる。
 
「そんな事!!させませんっ!!」

 神官長が手にもった錫杖を神力で伸ばし、注意の逸れて無防備になった盗賊達を何人かなぎ倒す。
 
 正直な話、天災級の魔物ならともかく、これくらいの野盗風情が相手なら私の助けなど必要ないほど神官長はお強い。
 ただ、彼には極度のお姫様体質という、負の属性があります。油断できません。
 何が恐ろしいかというと、圧勝相手でもいつも勝利目前で人質をとられて、結局は神官長が代わりに捕まってしまうという、絵本のお姫様も真っ青になるほどのお姫様体質なのです。

「この野郎っ!!」

 野盗の一人が焦った声をあげたその時――

「そこまでだぜ神官様!!」

 少し離れた所から別の野盗達が現れる。
 そこには――通りかかった馬車であろう。数人の商人と子供が野盗達に剣を向けられていた。

 ああ、やっぱりきました。この展開。
 
「……くっ!?」
 と、声を出して慌てる神官長。

 くっ!?ではないでしょう。
 そうやって弱みを見せるからいつも捕まるんじゃないですか。

 ああ、面倒くさい。
 私はこういうやり取りは苦手なんです。面倒なんです。
 そもそも神官長以外の、エルフや人間などにはまったく興味がありません。
 このような三文芝居に付き合う気はありません。

 私はザッと、野盗達の前に陣取ると

「貴様ら五月蝿い」

 殺気を放った。
 そして――私が放った殺気だけで、その場にいた神官長以外は恐怖のあまり気を失うのだった。




「レイナっ!!助けに来てくれたのですね!ありがとうございます!」

 野盗たちを倒すとニコニコ顔で彼は駆け寄ってきた。
 もし彼に尻尾があるなら、はちきれんばかりに振れているのではないだろうか。
 隠すことなく嬉しそうな笑顔を向ける神官長に私はため息をついた。
 ――何故この人はこうも私相手にこのように笑っていられるのだろうと。
 私は白竜の血を引いているせいか、相手の思考がほんのりわかってしまうのですが……
 この人は何故か心の底から私を慕っていてくれるのです。

 実の親でさえ、口では愛してるといいながら心の中で畏怖の念をもっていた――私にです。


「はい。神官長達が向かった先に野盗の目撃情報がありまして。
 神官長は巻き込まれ体質なので、きっと巻き込まれているだろうと確信して助けに参りました」

「……ま、巻き込まれ体質ですか?」

「巻き込まれていましたよね?
 ドラゴン召喚の時もたまたま通りかかっただけなのに巻き込まれていましたよね?
 今だって野党の狙いは本当はここを通る貴族だったはずなのに、間違われて襲われていましたよね?」

 と、大破した神官長の馬車をチラリと見て言うと

「ああ、なるほど!襲われる理由が見当たらなかったので、なぜかと思いましたが!
 狙われていたのは別の方だったのですか!
 では、その人が無事だったということですから、よかったと思います!」

 と、チクリとイヤミを言ったはずなのに、嫌味に気づかず、水知らずの他人の無事を喜ぶ神官長。
 ああ、本当にこの人はわけがわかりません。
 本来なら私がもっとも苦手とするタイプのはずです。
 なのに何故こうも心を揺さぶられるのでしょう。

「よくありません。
 貴方は自分の立場をよく理解していないのでは?
 貴方が死ねば、貴方の力で今は静まっている悪霊達が再び大地に現れてしまうのですよ?
 それが何を意味するか、神官長である貴方なら知っているでしょう?
 他人より自分を優先すべきです」

 苛立ちまぎれに少し強めの口調で言うと

「……はい。そうでした。すみません」

 と、シュンとした表情になる。その姿がまるで怒られた子犬のようで。
 つい、許してしまいそうになる。

 そもそも、本来なら私が彼にこのような口をきくことすら許されないほどの身分差のはずなのだ。
 神官長は出家しているとはいえ、王族に連なる貴族の出。
 かたや辺境の田舎で育ち、ろくな教育すら受けていない小娘騎士。

 声をかけられただけで、頭を下げなければいけない間柄なのである。

 それなのに、彼は全くそういった事を気にしない。
 ほとんどの者が、まずはじめに聞くことは家柄であり、その身分である。
 だが、彼は私だけでなく、他の者にも一度も聞いたことがない。

「次からは気を付けてくださいね」

 少しトーンを落としていえば、神官長は顔をあげて嬉しそうに

「はい。なるべくレイナの負担にならないように努力します」

 微笑んだ。

 ――ああ、本当にこの人は――

 なぜ笑顔一つでこうも私の心をかき乱すのでしょうか。
 私は微笑む神官長をそのまま有無を言わず抱き上げた。

「ちょ!?レイナ!?」

 抱っこされる形になった神官長が顔を真っ赤にして抗議の声をあげるが

「盗賊や怪我人をこのまま放っておくこともできないでしょう?
 人を呼びにいきます。貴方一人残していくことなどできません。
 一緒に来ていただきます」

 私はにっこり微笑んでそれを封殺する。

「い、いえ、でもさすがにこの格好は……」

 自分の手を私の背に回すべきなのか、降りるべきなのか迷っているのか彼の手が所在なさげにわなわなしている。

「羽で空を飛びますから、ちゃんと捕まっていないと落ちますよ?
 護衛の者と商人たちには結界をはりました、野盗達には動けない魔法はかけましたので襲われる事はないとは思いますが。
 急がなければ野盗達が目を覚ましてしまいます」

 本当は今ここで野盗など全員殺してしまいたい所ですが、品行方正な神官長様は嫌がるでしょうしね。

 私の言葉に神官長は物凄く困ったような顔をしたあと――諦めたのか私の首に手を回す。
 そのぎこちない手つきと、耳たぶまで真っ赤になっているその姿に不覚にも可愛いとおもってしまうのは、私がおかしいのでしょうか?
 相手はいくら長寿のエルフとはいえ30代の男性なのですが。

 ああ、なんででしょう?
 自分でもわけのわからない感情に物凄くイライラします。

 自分が自分でなくなるようなそんな感覚。この人は本当に、何故こうも私の心をかき乱すのでしょうか?
 苛立ちながら彼を見やれば何故か笑顔で返されてしまう。

 ああ――本当に。このお方にはイライラさせられる。

 その感情が、恋というものだと私が知るのは――もう少しだけ先のことだった。
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