最強転生悪役令嬢は人生を謳歌したい!~今更SSクラスに戻れと言われても『もう遅い!』Cクラスで最強を目指します!~【改稿版】

てんてんどんどん

文字の大きさ
59 / 70

59話 俺たち\(^o^)/オワタ

しおりを挟む
「はぁはぁはぁ」

 シャティルは敵を前にしながら構えつつ乱れる呼吸をなんとか整えた。
 襲撃した魔族を何匹かは倒したが、それでも相手の数が多すぎる。
 まだシャティルを取り囲むように魔族が大量にいる。
 
 最初の奇襲でかなりのスペシャルナイトがやられてしまったらしく、各国の王族を守る護衛も残り少ない。

 セディス達から、魔族の動きが活発だと報告は受けていた。
 それが故、警備をいつも以上にして、かなりの戦力を警備にあてていたはずなのに、その警備がやすやすと突破された。
 セレスが所持していた光の武器などを装備していたはずのスペシャルナイトの死体が無残にも転がっているところをみると、もう人類の手に負えるレベルではない。


 四天王が動き出した。


 魔王復活が近くなると人類の前に現れるという四天王。
 彼らが動きだしたなら人類の対抗する術は勇者を見つけるか魔王復活時に現れるというエルフの大賢者を探す以外に方法はない。
 四天王では堕天使を倒したというセレスでも敵うかはわからない。

 なんとか時間を稼がないと。
 四天王が活動を開始したことを世界に知らせる必要がある。

 リュートとスペシャルナイト達に各国の要人を任せ安全な場所に避難させるように命令し、自分一人が敵を引き付けるために残ったが……どうやら魔族の狙いは自分だったらしい。

 逃げた各国の王族とリュートに追手を差し向ける事もなく、全戦力をシャティルに向けてきている。

 流石にシャティルもこの数を相手にするのは無理があった。
 すでにMPはつき、HPをMPに変換して無理に魔法を放っているがそのせいで立っているのもやっとだ。

 何度かやられたと覚悟を決めたが、自分が張った覚えのない結界に身を守られた。
 この結界が絶対防御の結界なら、援軍が来るまで時間を稼ぐ手もあるが、不確定なものを考慮に入れるわけにはいかない。必ず防いでくれる保証もないし、いつまでこの効果が続くのかも未知数で、頼り切るわけにもいかなかった。

 自分が生きているうち、一匹でも多くの魔族を減らさないと……。

 少しでもレベルの高い自分がここの魔族の数を減らしておかねば、聖王国のスペシャルナイト達も各国の要人を守れない。自分がやられれば、次に狙われるのは逃げた彼らだ。
 彼らには外に的確に情報を伝えてもらわねば、人類の存亡にかかわる。
 それに--リュートにこの魔族を相手にさせるわけには絶対いかない。

 ……せめて、あの子……リュートだけでも守らないと。
 あの子の逃げる時間を少しでも稼ぐ。

 シャティルが呼吸を整えていれば

「そろそろ無駄な抵抗は辞めて、死んだらどうかしら?聖王」

 妖艶なサキュバスのような恰好をした筋肉ムキムキのひげ面の魔族がだみ声で微笑みかけた。

「すみません、僕、他人のために死んであげるほど出来た人間ではなくて。
 絶対に生き残るつもりなので、出来ればあなた方が倒されてくれるとありがたいのですが」

 にっこり笑って返す。

「結界が張られてるからって、強気なわけ?
 確かにその結界を破る事はできないけれど、貴方を殺すだけなら結界を破る必要なんてないのよぉん?」

 と、髭面魔族がウィンクをして投げキッスをした。

 とたん。

 ガシャン!!!!!!

 シャティルの周りが黒い巨大な闇の牢屋となる。

 牢屋の中には燃え盛る松明がおかれていた。

「なっ!???」

「結界は破れないけど結界の周りに攻撃はできるわぁ♪ 
 四天王の一人妖艶のアフロリィーデ様にかかればこれくらい簡単な事なの。
 その中は何も通さない。そう、人間には必要な空気さえも。
 そして大量に燃えている松明♪これだけ条件がそろえばわかるでしょ?
 あと1時間もすればその中の空気がなくなって、貴方は窒息死♪
 そこで待ってなさい、窒息する前に可愛い息子の首を目の前に飾ってあげる」

「…っ!!やめろっ!!!!!!!」

 シャティルが慌てて、闇を振り払おうとするが、MPの代わりにHPを犠牲にしたせいか足がもつれて倒れ込む。
 予想以上にHPも減っていたらしい。
 各国との会議で、敵意を見せぬよう、装備のランクを下げてしまったせいで本来の力がでない。

 立てっ!!動けっ!!と、身体に念じるが身体が動かない。
 じゃりっと瓦礫をつかむが、身体が立ち上がってくれないのだ。

 このままではリュートがっ。

 絶望に顔をあげればそこにあるのは、興奮したように顔を醜く赤らめた魔族の姿で――

「あ~ら♪ゾクゾクするわぁ♪やっといい顔になったじゃない?
 そうよその顔よ。絶望に満ちた顔。
 貴方みたいなすました美形が絶望する顔はとっても美味しいわ。
 本当はぐちゃぐちゃになるまで痛ぶってあげたけれど結界のせいで出来ないのが残念ねぇ。
 息子の首を飾ったらさぞかし素敵な顔をしてくれるのでしょうね?
 安心してね、息子と貴方が死んだら、聖王国も滅ぼしてあげるから。
 魔王様復活のために」

 と、おかま魔族が舌なめずりした瞬間。


 ゾクリっ!!


 圧倒的な何かを感じて、身を固まらせた。
 その場にいた魔族全員がそうだったようで、動けないまま、かろうじて視線だけ圧倒的な何かににむければ……。

 空中に物凄い怒りオーラを漂わせながら、人間の男を背負った10歳くらいの少女が立っていた。

 くおおおぉぉぉと少女の背後には聖なる者も魔の者も等しく滅びるを与える混沌と闇の女神が死神の鎌をもった状態で浮かんでいる。容赦のない無慈悲な瞳で見下ろしながら。


 そしてその場にいた魔族達は理解した。

 俺たち\(^o^)/オワタと。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...