内政、外交、ときどき戦のアシュティア王国建国記 ―家臣もねぇ、爵位もねぇ、お金もそれほど所持してねぇ―

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鰥寡孤独の始まり

23. 再会

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セイファー歴 756年 3月20日

セルジュがアルマナに到着したのはあれから三日後のことであった。アルマナは物理的にも賑やかな街で、衣服を織る音や鍛冶場から金属の甲高い音が響いてきた。

アルマナの住民に農業従事者はほとんどおらず、商人や職人が大半を占めていた。まずはビビダデが使い慣れている宿を一部屋押さえる。ここからが勝負だとセルジュは考えていた。

セルジュの目的はリベルトに会うことであった。しかし、アルマナに到着したは良いものの会う方法が思いつかない。アルマナの人口は一〇〇〇人を越えており偶然を狙うには確率があまりにも低い。

ビビダデは色々と人に会うらしく、その伝手を頼りにしつつ、セルジュ自身も街をぶらぶらすることにした。このアルマナの街にはアシュティア領には無いものが沢山売られていた。それは衣服であったり武器や防具の装備であったりである。

また、アルマナにはセイファー教の教会もあり敬虔な信者たちが教会の前を掃除していた。そして、その中にお目当ての人物がいたのをバルタザークは見逃さなかった。

「おいセルジュ。あそこに居るぞ」

セルジュは自領に居ない鍛冶師との話が弾んでおりリベルトを全く探していなかったのだが、お目当ての人物が見つかったとなると話は別である。

「リベルト!」
「え?……セルジュ!? なんでここに!?」

セルジュはリベルトを呼ぶと驚いた表情のままリベルトがこちらへと駆け寄ってきた。日も暮れてきたので何処か適当な酒場へと入ることにする。

「こんなところまで来るとは思いもしなかったよ。腸詰めと果実酒を」

リベルトが驚くのも無理はないだろう。このセルジュの行動はあまりにも軽率過ぎた。しかし、それと同時にセルジュの切迫さも同時に表していた。アシュティア領には人材が足りていないのである。

「ちょっと色々とあってね。こっちにも同じのを。リベルトはセイファー教信者なの?」
「別に。ただ掃除を手伝っていただけだ。ボクたちの街だからね」

まずは再会を祝って果実酒で乾杯する。リベルトもセルジュも未成年であり、セルジュに至ってはまだ一桁の年齢であるがだれも止める者はいなかった。

バルタザークは既に一人で始めており、何故か近くに居た街人と盛り上がっていた。セルジュはリベルトと他愛もない話をしていたが、それも一通り終わるとリベルトが切り出した。

「それで、今日わざわざここまできたのは?」
「んー、簡単に言うと取引しない? って感じかな」

セルジュの回答を聞いてリベルトは右手を顎の下に持って行ってその真意を考え始めた。真意と言ってもなんと言うことは無い。ただの販路の拡大である。考え込んだリベルトを見て、セルジュは全容を話そうとした。

「実はリス領の通行税が銀貨一枚から金貨一枚に大幅値上がりしてね……」
「ちょっと待って」

セルジュの説明を遮って再びリベルトは考え込む。セルジュが腸詰めを食べていると合点がいったようにリベルトがしゃべり始めた。

「なるほど。西へと交通が制限されたから南に居るオレたちと商いをしようって腹だね」
「うん。しかもリベルトのお父さんから貰ったお金を使って」
「お金が返ってくるなら悪い話ではないな」

この会話をしてセルジュは安堵した。というのもリベルトが自分が負けたことを笑い話にできるほど自身の中で消化できていたのがセルジュを安心させたのだ。

「折角だから具体的に行こうか。セルジュは何が欲しいんだ?」
「そうだね。今は釘とか建築資材と布かな。建築資材は五十軒分を用意して欲しい。あと、これは値段次第だけど家畜も」
「わかった。ちょっと値段を調べて連絡しよう。明日には報告に行けるだろう。どこに泊まってるの?」
「んーと、銀毛亭だったかな」
「ああ、あそこか。わかった。じゃあ明日に」

セルジュは未だ飲み比べをしているバルタザークを置いて先に宿屋へと戻ることにした。宿屋には既にビビダデが到着していた。

「遅かったですね。今までどちらに?」
「ああ、お目当ての人物が見つかったので」

その報告を聞いてビビダデはがっくりと肩を落とした。どうやらビビダデは使える伝手を駆使してリベルトに会う手筈を整えてくれていたのであった。
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