この悪縁に祝杯を

初瀬四季[ハツセシキ]

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当たるも八卦当たらぬも八卦 「改」

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「ん? 君だれ?」

「えっ、いや誰ってこっちが聞きたいんですけど。というかここなんなんですか?」

 呆気にとられながら、なんとか質問を返す。

「冗談だよ。あれあれ? 涙目になってない? 大丈夫~?」

「はっ? なってねーし。なんなんだあんた!」

 ちょっと涙目になりながら叫ぶアスハ。

「だから、神だってさっきから言ってるじゃん。理解力が足りてないのかニャーン?」

 なにこの自称神腹立つ。

「ここが何処かってのもさっき言ったよねぇ。神前の間。そのまんま、神様に謁見するための部屋だよ」

「はぁ、そんな所になんで俺がいるんですかね?」

「迷子?」

 絶対違う。

「なんか、いきなり『把握』とかいう声が聞こえたと思ったら、ここにいたんですけど」

「あぁ、それ僕!」

 悪びれもせずに言う。

「なんとなくわかってたよ!」

「なんだぁ。じゃあ、聞かないでよ! めんどくさい奴だなぁ」

 クソっなんなんだこいつ。

「で、俺は一体なんでここに連れ去られたんですかね?」

「決まってるじゃん」

 そういうと、神は、どこから現れたのかくす玉のようなものの紐を引っ張る。

「おめでとうございまーす! 貴方は十万人目の転移者に選ばれました!」

 くす玉が割れて、紙吹雪が舞う。

「転移者?」

 というか、十万人目って。

「そう。君にはこれから異世界に転移してもらいまーす」

「何故⁉︎」

 神は慈愛に満ちた表情で告げる。

「さっき言ってたでしょ? 死にたいって。だから、叶えてあげようと思って」

「いや、あれは本気で言ってたわけじゃあ」

 困惑するアスハ。

「まあまあ、過ぎたことは置いといて、未来に目を向けなよ」

「いや、元の世界に返せよ」

 アスハの当然の要求に対して、

「うん、それ無理」

 白髪を揺らしながら神が応える。

「はぁ? なんでだよ!」

「もう、君の代わりに一人あっちに送っちゃったんだよね」

 やれやれと肩をすくめる。

「はぁ? 送ったってなんで」

「あっちの世界とそっちの世界で、質量の均整は取らないといけないからね」

 うんうん。と一人納得したように首を振る神。

「いや、そんな勝手な」

「まあまあいいじゃない。どうせあっちに帰っても、無駄な就職活動して、ニートになるだけでしょ?」

 ニヤニヤ笑いながらアスハの未来を予言する。

「まだ、失敗すると決まったわけじゃないだろうが!」

「その点、あっちの世界はいいよ? 力さえあれば、他人の機嫌を取る必要もないし、モテモテだよ?」

 モテモテだと?

「・・・・・・だけど、ただの一般人が行ったところで、すぐ死ぬだろうし」

 神様はその台詞を待っていたとばかりにニヤリと笑うと、

「だからこその転移ボーナスじゃないか!」

 と言うと手をパンと鳴らした。

「それじゃあ、転移ボーナスなにがいい? 無能な君のために、特別に何個でも聞いてあげるよ?」

 誰が無能だ。だが、何個でも聞いてくれると言うなら、その好意に甘えておこう。

「じゃあ、まずストレージボックスが欲しい」



「うんうん荷物嵩張るのやだもんねー」

 神はどこから取り出したのか羽ペンでストレージボックスと何やら紙に記入していく。

「それと、一生遊んで暮らせる金」



「基本だよねー。お金」

 頷きながら別の紙に記入する。

「不老不死」

「フーっ! 来たー! 人類の夢ー‼︎」

 茶化したような声を出しながら、アスハを指さす。

「莫大な魔力と魔法の才能」



「やっと来たね! 異世界ファンタジー‼︎」

 どこから取り出したのか、クラッカーをパンッと鳴らす。

「最高の身体能力」



「やっぱり体が資本ってねー」

 紙がその細腕に力こぶを作る。

「あー、えーと、その」

 口ごもるアスハに神が先を促す。


「あともういいのかい?」


「あと、まあ、どうでもいいんだけど。顔をもう少しイケメンにしてほしいかなーなんて。いや、ほんとどうでもいいんだけど?」

 目を逸らしながらボソリと呟くアスハに対して、

「何か割と実感こもってて茶化しづらい・・・・・・」



「急に真面目になるのやめろよ!」

 
 なに、この気持ち! これが羞恥心‼︎



「これで全部かなー?」



「まあ、取り合えずこんなもんかな?」


 それを聞き届けた神は書き終わった紙を持ち立ち上がる。

「オッケー。じゃあ、ルーレットはっじめーるよー!」



「いや、全部くれるんじゃないのかよ!」

 神は何言ってんだこいつ。といった顔でアスハを見る。


「ノンノンそんなのナンセンスだよ? それじゃあ、つまらないじゃないか? 主に僕が」



「そんな理由⁉︎」

 愕然とするアスハ。


「ルーレットスタート!」 



「ちょっ!」



 どこかできいたようなテーマソングを自称神が口ずさむ。



「なにが出るかな。なにが出るかな」

 クルクルと回るルーレットをジーっと真剣に眺める。



「じゃーんでました!」



「あなたの転移ボーナスは」

 一度間をとると、その言葉を告げる。



「『悪縁』です‼︎」

 悪縁?



「はっ? おれ、そんな不吉そうなの言ってないけど・・・・・・」


「あっ私が入れたやつです!」

 サシェルが意気揚々と手を挙げる。



「なにやってんの⁉︎」



「テヘペロ?」

 悪びれた様子が全くない。


「てめぇら、さては最初から選ばせる気なかったな!」

 アスハがニヤニヤ笑う神を睨みつける。



「僕は約束は守る神だよ? 言葉通りちゃんと聞いてあげたじゃないか?」


「ほんとに聞いただけだったな‼︎」

 アスハの怒気を含んだ声も意に介さない。


「ふふっ‼︎ しかし、傑作だったなぁ、君もう少しイケメンになりたいんだねぇ(笑)」



「やめろ! 言うな! いっそ殺せ!」

 羞恥に悶えるアスハを煽るように神が言葉を重ねる。



「まぁまぁそんなに怒らないで! 地球的にはもう死んでるんだから!」



「うるさい!」


 ひとしきり笑うと自称神は、左手をアスハにかざす。


「はい、これで君には『悪縁』のスキルが付与されたよ。じゃあ、これでお別れだね? また、死んだら会おう!」

 肩を回してみるが、特に身体に変化はない。



「ではでは異世界にー! いってらっしゃーい!」



「てめぇら、おぼえてろよ!」

 アスハの恨み節に、



「イケメンになりたかったことを?」

 軽口で返す。



「それは、わすれろーー‼︎‼︎」



 光があふれる扉を渡り、そして俺は新しい世界の第一歩を踏み出したーーーーーー肥だめだった。



「ブフゥっ‼︎ ゴメン! 出口まちがっちった(笑)」



 うんまあ、こういうのは、運がつくっていうし。前向きにいこう。
 せっかくの異世界だしね。



「ママーあのお兄ちゃん臭ーい」



「こらっいけません!」



 あの神、ーーーーーーいつかおろす。絶対だ。
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