この悪縁に祝杯を

初瀬四季[ハツセシキ]

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取らぬ狸の皮算用

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「先ほどは失礼しました」

 通されたのは、アンティークの家具と豪奢な装飾が調和しており、家主の品格が見てとれる応接室であった。
 アリアは軽く一礼すると、ソファをすすめてくる。

「それで、今回はどのような御用で?」

 あっれー?

「おい、ミリア? 話は通しておいてくれたんだよな?」

 ミリアに小声で確認をとる。

「そんな面倒なことはしてないが?」

 アポイントメントって知ってる?

 仕方がない。こういうの苦手なんだよなぁ。面接みたいで。そう考えるとなんか、緊張してきた。
 この男、緊張の為、面接というものには一度も通ったことがない。
 
「あ、えと。・・・・・・でゅふふ」

 言葉の代わりに気持ち悪い笑いだけが出てきた。
 アスハ以外のその場の全員がちょっと引いていた。

「ーーこほん。ミリア? この方は?」

 アリアがアスハの説明をミリアに求める。

「私の下僕だが?」

「違うわ⁉︎」

 ミリアの認識を改めさせる必要があるかもしれない。
 そう心の中で考えながら、アスハはアリアに向きなおる。
 叫んだおかげか、緊張は幾分マシになっていた。

「ーー私は、冒険者をしているアスハ・スズキと申します。ミリアとは冒険者仲間で、時折一緒にクエストを受けさせて頂いております。本日は、アリアさんにひとつお願いしたいことがあり、お伺いさせていただきました」

「お前、私にはそんな丁寧な言葉遣い、使ったことないのに?」

 ミリアが愕然としている。何故かアリアも若干引いていた。

「えっと・・・・・・いつも通りの話し方で良いですよ? アスハさん。堅苦しいのは苦手なので」

「あ、そう?」

 久しぶりに敬語の出番かと思って頑張ったのに。どうやら不評のようだった。コミュニケーションは難しい。

「じゃあ、本題に入らせてもらうけど、この服どう思う?」

 アスハは、自分のスーツを指差す。アリアは、スーツをジッと見つめると、

「これは、珍しい品ですね。この国の仕立て方ではないようです。ーーもしかして」

 アリアは、アスハの顔に目線を移す。

「アスハさん。あなた、日本の方ではないですか?」

「わかります?」

 アスハはここぞとばかりにキメ顔をつくる。

 アリアはその表情の変化には触れず、両手のひらを合わせる。

「やっぱり! そうだと思ったんです! やっぱり日本の服は前衛的でいいですね!」

 スーツが前衛的ってどんな価値観?

「あっはい。ーーそれでですね、このスーツ買い取ってもらえないかと」
 
「売ってくれるんですか⁉︎ 幾らですか‼︎ 言い値ではらいます‼︎」

 アリアのテンションの上がり方が異常だ。
 こんななんの能力ももたないスーツの、何処にそこまでの価値を見出したのだろうか。
 アスハにはわからなかった。

 しかし、言い値で支払ってくれるだと? これは、百万メルクどころでは無く、一獲千金のチャンスなのでは?

 アスハの邪な考えをよそに、ミリアが口を出す。

「言い値ってどこまで出せるんだ?」

「そうですね。国家予算並の価格を提示されると少し困りますけど、なかなか希少な品ですからね。この程度までなら」

 そう言って、指を三本立てる。

「まぁ、妥当だな」

 ミリアが頷く。

「おい、あれって幾らぐらいなんだ?」

 アスハがミリアに小声で質問する。

「三百万」

「三百万⁉︎」

 三倍⁉︎ それだけあれば、生活費だけでなく、ちゃんとした装備も手に入るし、竜舎からも脱出できるのでは?
 
 アスハはワクワクしながら、お金の使い道に考えを巡らせる。

「どうしますか?ーー今なら、こちらのメイドもおまけでつきますよ?」

「それでお願いします‼︎」

 アリアがニヤリと笑う。

 ん? メイド?
 

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