世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

文字の大きさ
1 / 85
世界終わろう委員会

世界終わろう委員会 

しおりを挟む

「ねえ、知ってる? 世界はもうすぐ終わるのよ?」

 少女はどこか儚げな顔でそう告げる。

「まだそんなこといってるんですか? 尾張さん」

 ニヤニヤと茶化したように言う少年。
 それに、少しムッとしたように眉を寄せて返す少女。

「世界が終わるから終わると言って何がいけないのかしら?」

「じゃあいったい、いつ世界が終わるっていうんですか?」

 やれやれといったようすで肩を竦めつつ質問する。

「そうね、少なくとも明日以降。正確にいうのなら、あと数億年以内には確実に世界は終わるわね」

 薄い胸を張りながら答える少女。

「そんな、水を飲んだ人間は100年以内に確実に死ぬ。みたいな事言われても」

「不服かしら? 紀美丹キミニ君。なら、貴方は世界が終わらないという確信でもあるのかしら?」

 少女は値踏みするように少年を見つめる。

「いや、確信とか言われるとないですけど」

「なら、世界は終わる。それでいいじゃない」

 結論はでたとばかりに笑顔を向ける。

「いや、良くはないでしょ。世界が終わったら、僕たち結婚できないじゃないですか」

「世界が終わらなくても、私達は結婚しないのだけれど。まるで、私達が結婚間近のカップルであるみたいな発言はやめてもらえるかしら」

 一瞬で真顔をつくると、虫を払うような仕草で手をひらひらふる少女。

「そこを何とか」

 僕の気持ちのこもっていないお願いに、

「いやよ。だって、考えても見なさいよ。私の名前は?」

尾張恋オワリコイさん」

 何を当然のことをといった顔で返す。

「じゃあ、貴方の名前は?」

紀美丹恋キミニコイです」

「そうね。じゃあわかるでしょう?」

 少女はこれで理解したでしょう? といった顔をする。

「何がですか?」

 とぼけた顔をする少年。
 それに、興奮したように早口でまくし立てる少女。

「何がじゃないわよ! 私達が結婚したら、二人とも紀美丹恋、若しくは尾張恋になっちゃうじゃない! なんか、同一人物で結婚したみたいになるじゃないの‼︎」

「そんなのささいな問題じゃないですか。夫婦別姓とかにすれば問題なくないですか?」

 少年は肩を怒らせる少女を手で制しながらそうのたまう。

「問題大ありよ! 夫婦別姓ってそもそも法律上認められてないじゃない! 結婚認められてないじゃない! 貴方それでいいの?」

 少年は顎に手を当て思案するような顔をする。

「それは、困りましたね。・・・・・・じゃあ、改名しましょう! 尾張さん名前をクルナとかどうですか? かわいくないですか?」

「かわいくないですか? じゃないわよ! なんで私が名前変えなきゃいけないのよ! 親にもらった大事なもの何だけど? 貴方が変えなさいよ! フォーリンラブとかにしなさいよ!」

 フーフーと荒い息を吐き出す少女。
 それに対してしれっと返す少年。

「えー嫌ですよ。僕、結構自分の名前気に入ってるんですよね。ていうか、尾張さん、ネーミングセンス壊滅的ですね」

「じゃあ、無理ね。あと、本気でその名前が良いと思ったわけじゃないから。壊滅的とかいうな。ていうか、なんで私達が結婚する前提で話が進んでいるのかしら。結婚しないと言ってるでしょうに」

 一瞬頬を赤く染めたかと思えば、すぐに真顔に戻る。

「またまた~。法律の事調べたり、割とまんざらでもないんじゃないですか?」

「違うわよ! あれはたまたまニュースでやってたのを覚えていただけなんだから! 別に、貴方と結婚しようと調べてたわけじゃないんだから!」

 かと思えばすぐさま山の天気のようにコロコロと表情を変える。

「はいはい。ツンデレ乙」

「違うっていってるでしょうが!」

 肩を怒らせる少女。

「からの~?」

「その絡みかた、次したら貴方の世界を終わらせるわ」

 最期の表情は、エベレストの山頂で吹雪にあったような恐怖を少年にもたらした。

「何それ怖い」

 ここは、とある学校の空き教室。
 不法に占拠されたこの場所で、今日もまた、会議が熱く繰り広げられている。
 その会議の名は、

『世界終わろう委員会』

 後に、世界を終焉に導く。かもしれない集団の始まりの軌跡である。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました【完結】

日下奈緒
恋愛
10年付き合った恋人と別れ、恋に臆病になっていた30歳の千尋。そんな彼女に、取引先で出会った御曹司・神楽木律が突然のプロポーズ。「交際0日で結婚しよう」なんて冗談でしょ?──戸惑いながら始まった新婚生活。冷めた仮面夫婦のはずが、律の一途な想いに千尋の心は少しずつほどけていく。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

処理中です...