世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

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世界終わろう委員会

話がある 

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 翌日の始業前。少し早めに学校に着いた僕は、隣のクラスの椎堂シドウさんを訪ねた。

 その辺を歩いていた、話しかけやすそうな男子に、椎堂さんを呼んでもらう。

 机に座り、教科書を読んでいた彼女は、僕を一瞥する。

「なにかよう?」

 腕を組んでそう質問する明るい髪色の少女は、迷惑そうな表情をしてはいたものの、とりあえず話を聞いてはくれた。

「ちょっと、話したいことがあるので、放課後に旧文芸部の教室に来てくれませんか?」

「話したいことって? ・・・・・・ここじゃダメなの?」

 渋る椎堂さんに、告げる。

「尾張さんの事なんです」

 それを聞いた椎堂さんは、一瞬動揺を見せたものの、それを抑えるように唇を噛むと、

「わかったわ」

 とだけ言って、自らの席に戻っていった。

 いつもより長く感じた授業が、ようやく終わり、荷物をひったくるように持つと、早足で旧文芸部室へ向かう。

 既に部室で待っていた尾張さんは、緊張しているのか、いつもより落ち着きがない。

「ねぇ」

「はい?」

 そんな緊張を解そうとしてか、どうでもいい質問を僕に振ってくる。

「理想の告白台詞ってどんなの?」

「なんですかいきなり」

 質問の内容に困惑しながら聞き返す。

「あなたも将来するでしょう。告白」

「しないかもしれませんよ」

 なにやら、恥ずかしい台詞を言わされる流れになりそうなので、どうにか軌道修正を図ろうとする。

「一生童貞なのね」

 僕のガラスのハートにナイフを突き立ててくる尾張さん。

「僕が童貞かどうかはともかく、理想の告白台詞なんて、考えたこともないですよ」

 精神的ダメージをくらった僕のテンションが急降下する。

「つまらない男ね」

「今の発言は傷つきましたよ」

 突き立てられた言葉のナイフが捻られ、僕の心が砕け散った。

 やれやれといったポーズで見下ろす尾張さん。

「わかりました。じゃあ今から考えるのでさっきの発言訂正してください」

「面白かったならいいわよ」

 少し考えて、尾張さんの瞳を見つめる。

「僕は、生まれた時からキミニコイをしていました」

「それは嘘ね」

 否定が早い。

「嘘じゃないです」

 嘘ではなく脚色である。

「告白台詞が駄洒落ってどうなのかしら」

「駄洒落とか言わないでください。ウィットに富んだジョークじゃないですか」

 カッコよくない日本語でも、英語で言い直すとなんかカッコよく聞こえるから不思議だ。

「まあ、ちょっとだけ面白かったから、さっきの台詞は訂正するわ」

 尾張さんは肩にかかった髪を払い、

「あなた、ちょっとだけつまらない男ね」

 とのたまう。

「なんで、ちょっとしかランクが上がらないんですか」

「ちょっとだったからよ」

 全く納得がいかない。

「じゃあ、尾張さんの告白台詞はどんなのなんですか?」

「いい女は告白しないのよ」

 フフンっと鼻を鳴らす尾張さん。

「尾張さんはいい女ではないと思います」

「傷付いたわ」

 一瞬で悲しげな表情になる。

「ごめんなさい。嘘です。とても魅力的だと思います」

 意趣返しのつもりで言ったが、そんな表情をされてはすぐに引かざるを得ない。

「あら、そう。照れるわね」

 尾張さんは、すぐにしらっとしたいつもの表情で、

「褒めてくれたお礼に、特別に私の告白台詞教えてあげるわ」

 と言った。

「マジですか? 尾張さんのことだから、終わりと絡めたりしそうですよね。
今日で世界は終わり。恋に落ちた貴方と迎えるならそれでも構わない。みたいな、どこぞの映画のキャッチコピーみたいなのだったりして」

 ワクワクしながら待っていると、尾張さんはニッコリと笑い、僕の耳元に口を近づけて、

「好きです」

 と言った。

 全身が一瞬で赤くなるのを感じた。何も言えないでいる僕に、

「シンプルイズベストよ」

 と、勝ち誇ったように言うのだった。

「ほっぺゆでダコみたいね」

 そう言い、ほっぺを突いてくる尾張さん。

「やめてください。僕のライフはもうゼロです」

 ニヤニヤしながら手を引っ込める。

「なにしてるの?」

 ノックの音はきこえなかった。

 いつのまにか、ドアの前に立っていた椎堂さんは、顔を真っ赤にしている僕を若干引きながら見ていた。




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