世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

文字の大きさ
11 / 85
世界終わろう委員会

話がある 

しおりを挟む
 翌日の始業前。少し早めに学校に着いた僕は、隣のクラスの椎堂シドウさんを訪ねた。

 その辺を歩いていた、話しかけやすそうな男子に、椎堂さんを呼んでもらう。

 机に座り、教科書を読んでいた彼女は、僕を一瞥する。

「なにかよう?」

 腕を組んでそう質問する明るい髪色の少女は、迷惑そうな表情をしてはいたものの、とりあえず話を聞いてはくれた。

「ちょっと、話したいことがあるので、放課後に旧文芸部の教室に来てくれませんか?」

「話したいことって? ・・・・・・ここじゃダメなの?」

 渋る椎堂さんに、告げる。

「尾張さんの事なんです」

 それを聞いた椎堂さんは、一瞬動揺を見せたものの、それを抑えるように唇を噛むと、

「わかったわ」

 とだけ言って、自らの席に戻っていった。

 いつもより長く感じた授業が、ようやく終わり、荷物をひったくるように持つと、早足で旧文芸部室へ向かう。

 既に部室で待っていた尾張さんは、緊張しているのか、いつもより落ち着きがない。

「ねぇ」

「はい?」

 そんな緊張を解そうとしてか、どうでもいい質問を僕に振ってくる。

「理想の告白台詞ってどんなの?」

「なんですかいきなり」

 質問の内容に困惑しながら聞き返す。

「あなたも将来するでしょう。告白」

「しないかもしれませんよ」

 なにやら、恥ずかしい台詞を言わされる流れになりそうなので、どうにか軌道修正を図ろうとする。

「一生童貞なのね」

 僕のガラスのハートにナイフを突き立ててくる尾張さん。

「僕が童貞かどうかはともかく、理想の告白台詞なんて、考えたこともないですよ」

 精神的ダメージをくらった僕のテンションが急降下する。

「つまらない男ね」

「今の発言は傷つきましたよ」

 突き立てられた言葉のナイフが捻られ、僕の心が砕け散った。

 やれやれといったポーズで見下ろす尾張さん。

「わかりました。じゃあ今から考えるのでさっきの発言訂正してください」

「面白かったならいいわよ」

 少し考えて、尾張さんの瞳を見つめる。

「僕は、生まれた時からキミニコイをしていました」

「それは嘘ね」

 否定が早い。

「嘘じゃないです」

 嘘ではなく脚色である。

「告白台詞が駄洒落ってどうなのかしら」

「駄洒落とか言わないでください。ウィットに富んだジョークじゃないですか」

 カッコよくない日本語でも、英語で言い直すとなんかカッコよく聞こえるから不思議だ。

「まあ、ちょっとだけ面白かったから、さっきの台詞は訂正するわ」

 尾張さんは肩にかかった髪を払い、

「あなた、ちょっとだけつまらない男ね」

 とのたまう。

「なんで、ちょっとしかランクが上がらないんですか」

「ちょっとだったからよ」

 全く納得がいかない。

「じゃあ、尾張さんの告白台詞はどんなのなんですか?」

「いい女は告白しないのよ」

 フフンっと鼻を鳴らす尾張さん。

「尾張さんはいい女ではないと思います」

「傷付いたわ」

 一瞬で悲しげな表情になる。

「ごめんなさい。嘘です。とても魅力的だと思います」

 意趣返しのつもりで言ったが、そんな表情をされてはすぐに引かざるを得ない。

「あら、そう。照れるわね」

 尾張さんは、すぐにしらっとしたいつもの表情で、

「褒めてくれたお礼に、特別に私の告白台詞教えてあげるわ」

 と言った。

「マジですか? 尾張さんのことだから、終わりと絡めたりしそうですよね。
今日で世界は終わり。恋に落ちた貴方と迎えるならそれでも構わない。みたいな、どこぞの映画のキャッチコピーみたいなのだったりして」

 ワクワクしながら待っていると、尾張さんはニッコリと笑い、僕の耳元に口を近づけて、

「好きです」

 と言った。

 全身が一瞬で赤くなるのを感じた。何も言えないでいる僕に、

「シンプルイズベストよ」

 と、勝ち誇ったように言うのだった。

「ほっぺゆでダコみたいね」

 そう言い、ほっぺを突いてくる尾張さん。

「やめてください。僕のライフはもうゼロです」

 ニヤニヤしながら手を引っ込める。

「なにしてるの?」

 ノックの音はきこえなかった。

 いつのまにか、ドアの前に立っていた椎堂さんは、顔を真っ赤にしている僕を若干引きながら見ていた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

君が見た春をもう一度

sika
恋愛
高校時代、ひとつの誤解で離れた二人。 十年後、東京で再会した彼女は、もう誰かの「恋人」になっていた。 置き去りにした想い、やり直せない時間、そしてそれでも止まらない心。 恋と人生のすれ違いを描く、切なくも温かい再会ラブストーリー。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

処理中です...