世界終わろう委員会

初瀬四季[ハツセシキ]

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世界終わろう委員会

なにができるの? 

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 翌日の放課後。
 近所のテニスコートを借りて、尾張さんとテニスをすることになった。

「よくラケットなんか持ってたわね紀美丹君」

「まぁ、一応中学でテニス部だったので」

 三年間補欠だったけど。部員が多かったからね。仕方ないね。

「紀美丹君、短パン似合わないわね」

「ほっといてください」

 そういう、尾張さんはやはり制服だった。

「尾張さんこそなんで制服なんですか?」

 せめて体操服に着替えるべきではないだろうか。

「なんででしょうね」

「いや、なんででしょうねではなく」

 なんなの? 絶対に制服を脱げない呪いにでもかかってるの?
 そんな僕の視線に、遠い目をしながら尾張さんは呟く。

「さっき初めて気づいたのだけれど、教室の私のロッカーに荷物は存在していなかったわ」

 まぁ、それはそうだろう。学校に置いてあった荷物は親御さんの元へ返還されたはずだ。

「いや、それはそうでしょうけど。尾張さん幽霊なんだから、衣装チェンジとかできないんですか?」

「その幽霊って、私はまだ認めてないし、仮に、幽霊だとしても衣装チェンジとかできるわけないでしょう」

 マンガの読みすぎよ。と尾張さんは呆れたように言う。

「その割にラケットは持てるんですね」

「それは、持てるわよ」

 ラケットくらい。と、片手でクルクルとラケットの面を確かめるように回す。
 これ、傍目にはラケットが空中に浮いてるように見えるのだろうか?

「なんか、尾張さんラケットの扱いに慣れてませんか?」

「そうかしら。あんまりやったことはないわよ?」

 ガットを指で調整し、ラケットの重さを確かめるように素振りする。

「そうなんですね。じゃあ、最初は軽くいきますね」

 そう言いつつ軽くロブを打つ。山なりに飛んでいったボールは尾張さんの少し手前に落ちるとバウンドする。

 尾張さんは、それをとても綺麗なストロークで返す。

 豪速球が僕の左頬を掠め、フェンスに突き刺さる。

「嘘つき!」

「なんの話よ?」

 ラケットを、クルクルと回すと、感触を確かめるようにガットを直す尾張さん。

「どう見ても、上級者の動きじゃないですか!」

「そうかしら。本当にあまりやったことはないのだけれど」

 そうだった。この人は、スポーツも万能だった。
 くっ、密かに尾張さんに勝てるかもと思っていたのに。
 このままでは、元テニス部としての面目が立たないので、

「ま、まぁ、目的は果たしましたし、これで終わりにしますか」

 と、道具を片付けようとする。

「あら、もう終わりなの? 今始めたばかりじゃない。ダメよ紀美丹君。少しは運動しないと、将来見るに耐えない姿になるわよ?」

「いいんですよ。目的は完遂したんですし。それと、僕の運動不足については大きなお世話です」

 それに今時のゲーマーは、実際割と運動しているのだ。
 ゲームに指示されるままに様々なスポットを回らなければいけないから。
 むしろ、ある意味ではアウトドア派よりもアウトドアしてる層もいる。
 僕はしてないけど。

「そういえば、目的ってなんだったのよ? いきなりテニスをしましょうなんて」

 そう、疑問符を浮かべる尾張さん。

「現在の尾張さんがなにができるかを調べることですよ」

「なにができるか?」
 
 フェンスに突き刺さったボールを引き抜こうと引っ張る。
 なんだこれ、フェンス若干変形してるんだけど。

「尾張さんは現在、幽霊ですよね?」

「・・・・・・まぁ、仮にそうだとしましょう」

 往生際が悪いなぁ。
 ボールがガチガチにフェンスに食い込んでいる。

「そんなゴースト尾張さんが、なにに触れるのか。どこまで移動できるのか。それと、僕以外に見える人間はいないのか」

 それを調べていたんです。そう言う僕の目線の先には、一人の子供が立っていた。

「ゴースト尾張さんってなによ。勝手に妙な名前つけないでもらえる?」

 今、良いところだから、黙ってて尾張さん。
 そして、ボール抜けない。
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