41 / 85
世界終わろう委員会
残された人々
しおりを挟む
尾張さんの家は、タワーマンションの一室だった。
尾張さんがセキュリティコードを入力する。
自動ドアが開いて、尾張さんと僕はビルの中へ入っていく。
「そういえば、鍵はあるんですか?」
「・・・・・・紀美丹君が、どうにかするしかないわね。母は、専業主婦だからこの時間は家にいるはずだし。癪だけど、御参りにきたって言えば大丈夫でしょう」
えぇ。まぁ、そうなるとは思ってました。
インターホンを押すと、尾張さんの言う通り、尾張さんの母親らしき人が出る。
「はい。どちら様でしょう?」
用件を伝えると、少々お待ちください。と告げられ、通話は切られた。
玄関のチェーンが外され、現れたのは、尾張さんと同じ色の髪を肩口で切り揃えた。エプロン姿の歳若く見える女性だった。
「えと、尾張さんのお姉さんですか?」
「私に姉は居ないわ。母よ」
その女性は、あらぁ。お世辞なんて最近の子はませてるのねぇ。と言いながら、僕を家の中に招き入れる。
「お世辞じゃないんですが! どう見ても二十代前半の見た目なんですが! どうなってんですか?」
小声で尾張さんに質問する。
「あの人の見た目は永遠の謎よ。父が言うには、そういうものだ。理解しようとしても時間の無駄だ。だそうよ」
「えぇ・・・・・・」
仏間に通された僕は、お礼を言い、尾張さんの隣で尾張さんの遺影に手を合わせる。
なんだこれ。
「じゃあ、私は少し自分の部屋に行ってくるから」
尾張さんは、自分の遺影をチラッと見ると、なんでこの写真なのよ。と言いながら、自分の部屋に歩いていった。
さて、どうしようか。尾張さんが戻ってくるまで、ずっと手を合わせておくわけにもいかない。
薄く目を開けて、尾張さんの母親の様子を伺う。
どうやら、あちらも僕の事を観察しているらしい。まぁ、当然か。娘の御参りに一人でくる男子に興味を持たない方がどうかしている。
不自然にならないうちに、切り上げる。
とりあえず、僕の役割は果たしたので、早々に退散してもいいかもしれない。
もう一度、お礼を言って立ち上がろうとすると、尾張さんの母親は、
「貴方、ウチの娘の彼氏さんだったりしたのかしら?」
と、聞いてきた。
言葉に詰まった僕は、曖昧な返事しかできなかった。
「いえ、ごめんなさいね。あの子あんまり友達も居ないみたいだったけど、好きな人の一人でも居たならそう悪い人生じゃなかったんじゃないかって」
そう思いたいのよ。親としては。と、尾張さんの母親は独り言のように呟いた。
その顔は、諦観が入り混じり、遅まきにこの人が娘を亡くした人の親なんだという事を僕に実感させた。
「あの、尾張さんが・・・・・・恋さんが僕をどう思っていたかは、本当のところはわかりません。でも、僕は恋さんの事が」
好きでした。その言葉を言うのは、やめた。それがなにかの区切りになってしまいそうで、口に出すのが怖かった。
途中で言葉を止めた僕を見ながら、微笑むと、
「ごめんなさいね。変なこと聞いて。それと、ありがとうね」
そう言った。
僕は、いたたまれなくなり、
「あの、僕そろそろお暇しますね。ありがとうございました」
と矢継ぎ早に言うと、鞄を掴んで逃げるようにその場を後にした。
尾張さんがセキュリティコードを入力する。
自動ドアが開いて、尾張さんと僕はビルの中へ入っていく。
「そういえば、鍵はあるんですか?」
「・・・・・・紀美丹君が、どうにかするしかないわね。母は、専業主婦だからこの時間は家にいるはずだし。癪だけど、御参りにきたって言えば大丈夫でしょう」
えぇ。まぁ、そうなるとは思ってました。
インターホンを押すと、尾張さんの言う通り、尾張さんの母親らしき人が出る。
「はい。どちら様でしょう?」
用件を伝えると、少々お待ちください。と告げられ、通話は切られた。
玄関のチェーンが外され、現れたのは、尾張さんと同じ色の髪を肩口で切り揃えた。エプロン姿の歳若く見える女性だった。
「えと、尾張さんのお姉さんですか?」
「私に姉は居ないわ。母よ」
その女性は、あらぁ。お世辞なんて最近の子はませてるのねぇ。と言いながら、僕を家の中に招き入れる。
「お世辞じゃないんですが! どう見ても二十代前半の見た目なんですが! どうなってんですか?」
小声で尾張さんに質問する。
「あの人の見た目は永遠の謎よ。父が言うには、そういうものだ。理解しようとしても時間の無駄だ。だそうよ」
「えぇ・・・・・・」
仏間に通された僕は、お礼を言い、尾張さんの隣で尾張さんの遺影に手を合わせる。
なんだこれ。
「じゃあ、私は少し自分の部屋に行ってくるから」
尾張さんは、自分の遺影をチラッと見ると、なんでこの写真なのよ。と言いながら、自分の部屋に歩いていった。
さて、どうしようか。尾張さんが戻ってくるまで、ずっと手を合わせておくわけにもいかない。
薄く目を開けて、尾張さんの母親の様子を伺う。
どうやら、あちらも僕の事を観察しているらしい。まぁ、当然か。娘の御参りに一人でくる男子に興味を持たない方がどうかしている。
不自然にならないうちに、切り上げる。
とりあえず、僕の役割は果たしたので、早々に退散してもいいかもしれない。
もう一度、お礼を言って立ち上がろうとすると、尾張さんの母親は、
「貴方、ウチの娘の彼氏さんだったりしたのかしら?」
と、聞いてきた。
言葉に詰まった僕は、曖昧な返事しかできなかった。
「いえ、ごめんなさいね。あの子あんまり友達も居ないみたいだったけど、好きな人の一人でも居たならそう悪い人生じゃなかったんじゃないかって」
そう思いたいのよ。親としては。と、尾張さんの母親は独り言のように呟いた。
その顔は、諦観が入り混じり、遅まきにこの人が娘を亡くした人の親なんだという事を僕に実感させた。
「あの、尾張さんが・・・・・・恋さんが僕をどう思っていたかは、本当のところはわかりません。でも、僕は恋さんの事が」
好きでした。その言葉を言うのは、やめた。それがなにかの区切りになってしまいそうで、口に出すのが怖かった。
途中で言葉を止めた僕を見ながら、微笑むと、
「ごめんなさいね。変なこと聞いて。それと、ありがとうね」
そう言った。
僕は、いたたまれなくなり、
「あの、僕そろそろお暇しますね。ありがとうございました」
と矢継ぎ早に言うと、鞄を掴んで逃げるようにその場を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる