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第5話
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最後の踏みつけで、完全に活動を停止した。
達也がいるのは、女性に襲撃された家から、僅か三軒先の一軒屋だった。隣には、アパートが建っており、作りを考えると、暴徒に対して、扉一枚の対抗策しかないアパートよりも、一軒屋の方が籠城に適していると判断し、ここに落ち着いた。
やはり、一般家庭だったのだろう。二階の子供部屋には、物が散乱しており、まだ、年端のいかない姉妹が楽しく遊ぶ姿を想像できた。
達也が一階に降りた時、居間から聞こえたのは、骨を砕き、強引に嚥下する音だった。躊躇はあったものの、居間の扉を開いた先では、どんな惨劇が起きたのかを、達也に一目でわからせた。
壁についた夥しい量の肉片、幼い姉妹を両親であろう暴徒が貪り食っていた。
腕力のみで切り離された姉妹の首は、暴徒に転化しており、光のない瞳で達也を仰いでいる。
達也は、母親であろう暴徒が立ち上がる前に、キッチンに走り、シンクに残っていた包丁を持ち上げ、母親を蹴り倒すと、間を開けずに、包丁を眉間へと突き立てた。
その後、ひとまずは父親を放置して習性を監視していたが、娘を再び食べるような真似はせずに、達也だけを求め続けていた。親子愛なんてもの微塵もない。
玄関から、居間に向かう途中にある部屋を探ると、箪笥の中にあった真新しい工具箱を見付けた。子供が小さいから隠していたのだろうか。中身にあった新品のノコギリを取り、居間に戻ると、扉に張り付いたままの父親を、扉ごと蹴り飛ばし、まずは、左足で暴徒の身体を抑え込むと、分厚いブーツでカバーした右足で右手を固定し、ナイフで掌を貫く。両手を固定し終えた後に、両足を落とし、娘の首を、母親の死体と共に庭に放り投げ、そこから、実験の時間となった。残酷な実験だが、達也は無心になってやり遂げた。
ナイフと包丁を回収後、父親を庭に放り捨て、達也は冷蔵庫の中にあった缶詰めを数種類食べ、自分の身体にこびりついた垢を取り除くためにシャワーを浴びようとしたが止めた。
暴徒が近づくかもしれないという理由ではなく、この纏った警戒心も垢と共に落ちてしまいそうで怖かったからだ。同じ理由で、達也は、あれから一睡もしていない。恐怖心に勝る警戒心をもつことが、達也に唯一、生きていることを実感させた。
リビングのソファに座り、達也は思考を巡らせる。生き延びるには、どうすばいいだろうか。必要なのは、武器、車の調達だろう。武器は手に、車は足となる。次に必要なものは、食料だが、これはどこかの民家にある貯蓄を頂けば良い。さしあたって、重要なものは、車だと決めた達也は、まずは、この家を徹底して探し回った。
結果として、車の鍵は発見出来なかった。そう上手くいく筈もない、と肩を落とした所で、達也の耳に届いたのは、僅かな排気音だった。
すぐに、二階の子供部屋へと駆け上がり俯瞰すれば、女医が潜んでいた家の前に、真っ白な二人組と、白いプリウスが停まっていた。その奇怪ともとれる出で立ちに、一度は遣り過ごそうともしたが、二人が手にしている物を見て変わった。一石二鳥とはこのことだ。
達也は子供部屋の窓から屋根を出ると、来たときと同じ要領で、屋根を伝って、息を殺して近づいていった。
達也がいるのは、女性に襲撃された家から、僅か三軒先の一軒屋だった。隣には、アパートが建っており、作りを考えると、暴徒に対して、扉一枚の対抗策しかないアパートよりも、一軒屋の方が籠城に適していると判断し、ここに落ち着いた。
やはり、一般家庭だったのだろう。二階の子供部屋には、物が散乱しており、まだ、年端のいかない姉妹が楽しく遊ぶ姿を想像できた。
達也が一階に降りた時、居間から聞こえたのは、骨を砕き、強引に嚥下する音だった。躊躇はあったものの、居間の扉を開いた先では、どんな惨劇が起きたのかを、達也に一目でわからせた。
壁についた夥しい量の肉片、幼い姉妹を両親であろう暴徒が貪り食っていた。
腕力のみで切り離された姉妹の首は、暴徒に転化しており、光のない瞳で達也を仰いでいる。
達也は、母親であろう暴徒が立ち上がる前に、キッチンに走り、シンクに残っていた包丁を持ち上げ、母親を蹴り倒すと、間を開けずに、包丁を眉間へと突き立てた。
その後、ひとまずは父親を放置して習性を監視していたが、娘を再び食べるような真似はせずに、達也だけを求め続けていた。親子愛なんてもの微塵もない。
玄関から、居間に向かう途中にある部屋を探ると、箪笥の中にあった真新しい工具箱を見付けた。子供が小さいから隠していたのだろうか。中身にあった新品のノコギリを取り、居間に戻ると、扉に張り付いたままの父親を、扉ごと蹴り飛ばし、まずは、左足で暴徒の身体を抑え込むと、分厚いブーツでカバーした右足で右手を固定し、ナイフで掌を貫く。両手を固定し終えた後に、両足を落とし、娘の首を、母親の死体と共に庭に放り投げ、そこから、実験の時間となった。残酷な実験だが、達也は無心になってやり遂げた。
ナイフと包丁を回収後、父親を庭に放り捨て、達也は冷蔵庫の中にあった缶詰めを数種類食べ、自分の身体にこびりついた垢を取り除くためにシャワーを浴びようとしたが止めた。
暴徒が近づくかもしれないという理由ではなく、この纏った警戒心も垢と共に落ちてしまいそうで怖かったからだ。同じ理由で、達也は、あれから一睡もしていない。恐怖心に勝る警戒心をもつことが、達也に唯一、生きていることを実感させた。
リビングのソファに座り、達也は思考を巡らせる。生き延びるには、どうすばいいだろうか。必要なのは、武器、車の調達だろう。武器は手に、車は足となる。次に必要なものは、食料だが、これはどこかの民家にある貯蓄を頂けば良い。さしあたって、重要なものは、車だと決めた達也は、まずは、この家を徹底して探し回った。
結果として、車の鍵は発見出来なかった。そう上手くいく筈もない、と肩を落とした所で、達也の耳に届いたのは、僅かな排気音だった。
すぐに、二階の子供部屋へと駆け上がり俯瞰すれば、女医が潜んでいた家の前に、真っ白な二人組と、白いプリウスが停まっていた。その奇怪ともとれる出で立ちに、一度は遣り過ごそうともしたが、二人が手にしている物を見て変わった。一石二鳥とはこのことだ。
達也は子供部屋の窓から屋根を出ると、来たときと同じ要領で、屋根を伝って、息を殺して近づいていった。
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