感染

宇宙人

文字の大きさ
281 / 419

第22部 悔恨

しおりを挟む
    田辺にとって、この結末は予想外のものだったのだろうか、それとも、ここまで頭を回す余裕がなかったからかもしれない。
 隊長と呼ばれている男達を含め、野田を引き連れ施設から出ると、待ち構えていたのは、青い服に身を包んだ集団と、その先頭に立つ紳士然とした男だ。とても、見覚えがある。毎日のように横目でみることができる男達だった。呆然と立ち尽くす田辺へ、紳士風の男が懐から手帳を一冊つきだした。 

「通報があって、ここに来たわけだが、どういうことか説明してもらおうか?」

  藤堂保信、そう書かれた手帳に一瞥くれると、田辺は心底、舌を打ちたい気分になった。手帳には、藤堂警視正とある。
 あれだけ派手に立ち回れば、こうなるのも当然だが、迎えた結果は、最悪なものになり果てた。
    藤堂は、ギロリ、と斎藤を睨みつけ口を開いた。 

「斎藤、お前もだ。なぜ、お前がここにいる?」

  斎藤は、答えられず、ただ喉を鳴らす。
    署長という地位にいる人物が相手ならば仕方がない。だが、この場にいることについての言及からは逃れられない。

「何も答えられないのか?なら、質問を変えようか。そこにいる政治家の野田さんが、何故、三人の男に縛られている?」 

  厳しい詰問に対して、狼狽するように目線を泳がせる。藤堂は、そういった心理状況を読み取ることに長けた人物なのだろう。ゆるりと口角をあげ、三度質問を繰り返そうとした。

「いやぁ、申し訳御座いません藤堂さん......でしたか?随分とお騒がせしているみたいで......」

  言葉を被せるように、一歩前に出たのは浜岡だった。
    途端に片眉をあげた藤堂に、浜岡が大仰な動作で詰めよっていき、田辺達が眼を見開いている中、眼前に立つと右手を差し出した。

「御会いできて光栄です。一度、挨拶でもできればと思っていたのですが、いやはや、こんなところで......」

 怪訝に双眸を細める藤堂は、右手をちらりと視線だけで見て、すぐさま浜岡の両目に戻す。どうにも、釈然としないものを抱えたまま言った。

「......貴方は誰だ?社会人として名刺を差し出す、これは常識なのではないか?」

「ああ!申し遅れました!私、こういう者です」

  すっ、と懐に左手をいれれば、藤堂の背後にいる警察官達に緊張が走った。それを右手だけで収めた藤堂に、軽く会釈をしつつ、名刺ケースを高く掲げてから、浜岡は一枚を藤堂へと渡す。
 しかし、藤堂は受け取りながらも、そのまま背後にいた壮年の警官へ後ろ手で回し、内容を耳打ちで訊いていた。
    そんな奇妙な光景に、田辺は胸中で藤堂へ同情に似た感情を抱く。浜岡と初対面、それも、このような状況であれば、浜岡は充分すぎるほどに警戒の対象となるだろう。全く、眼を逸らしていない。壮年の警官が離れると、藤堂は少しだけ考える仕草をして言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか

サクラ近衛将監
ファンタジー
 レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。  昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。  記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。  二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。  男はその未来を変えるべく立ち上がる。  この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。  この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。    投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。

処理中です...