感染

宇宙人

文字の大きさ
303 / 419

第8話

しおりを挟む
「田辺さんか。俺は岡島だ」

 浩太は、そこで音声をスピーカーに切り替え、携帯を地面に置いた。生唾を呑み込んだ真一が、浩太へ掌を揺らして先を促すと、こくり、と頷き片膝をつき、改めて口を切った。

「それで、田辺さん......アンタは、この電話番号が誰のものか分かって連絡をしたのか?」 

「はい、勿論です」

 田辺と名乗る男は、間を開けずに即答する。素早く新崎を視認するも、やはり反応は同じだった。
 判断しかねた結果、浩太は低い吐息を漏らして素直に伝える。

「田辺さん、申し訳ないが、はっきりと言わせてもらう。こちらは誰一人としてアンタを信用していない。だから、単刀直入に用件を言ってくれないか?信じるか信じないかは、それから決める」

 今回は、黙然とした時間があり、やがて、スピーカーの奥から物音が聴こえ始めた。なんの音だろうかと達也が耳を近づけていく。静謐な空間とは言いがたい沈黙を破ったのは、携帯から流れ始めた男の声だった。

「ああ、お待たせしてすみませんねぇ」

 明らかに、先程、田辺と名乗った男とは違う、間延びした独特な口調が流れだし、浩太を始めとする全員が、どうにも明朗には思えないと暗い雰囲気で小首を傾げた。それを勘良く察したのか、男は短く笑った。

「口調に関してはすみません、よく胡散臭いと言われるもので、こちらも直したいとは考えているのですが、いやはや、これがどうにも......長年の癖というものは、厄介なものです」

「......時間稼ぎのつもりか?それとも、本題に入るための前置きか?さっきの田辺とかいう奴はどこに行った?」

 浩太の冷めた言い草に、若干、居心地が悪そうな語調で男が返す。

「......時間稼ぎ、ではなく、尺稼ぎですかね。田辺君は、今、貴方達の信用を得るために、ある男性を連れてこようとしています」

「ちょっと待て、えっと......」

「ああ、田辺君の上司で浜岡と申します。電話越しになりますが、よろしくおねがいします」

「......浜岡さん、アンタ、なんで俺達が複数いると分かった?」

「岡島さん、貴方は先程、誰一人、と口にされましたよね?」

 どうやら、こちらと同様に、スピーカーを使って全員が、この会話を聴いているだろう。なんにしろ、あちらの人数がわからない内に、なんらかの情報を漏洩させるのは危険と踏んだ浩太は、最低限の返答のみで通話を続けた。

「田辺さんは、まだ戻らないのか?」

「ええ、少し時間制が掛かっているようですねぇ。ところで、今、そちらの状況はどうでしょうか?」

「......嫌味のつもりか?それに、俺達が見たこともないアンタらに命を預けるとでも?」

「いえいえ、まさか、とんでもない。ただ、こちらとしても、準備が必要でして......」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか

サクラ近衛将監
ファンタジー
 レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。  昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。  記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。  二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。  男はその未来を変えるべく立ち上がる。  この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。  この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。    投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。

処理中です...