神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空

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アンデッド侵攻(1)

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 十日ほどは平穏な日々が続いたが、グラッドシュタットの東の森グリムヴァルドが、にわかに騒がしくなった。
 不穏な魔力が終結しているとの情報を得た魔法省地方支局が周辺に住む魔法師に対し調査を命じた。
 魔法省に所属するゾフィーも招集され、それらに同行することとなった。
 四日を要する行程で、その途中、使者と合流し情報を得た。
 それによると、二日前にグリムヴァルド周辺の村々がアンデッド、オークに襲撃され大きな被害があったとのこと。
 食料や金品が略奪され、傍若無人の振る舞いで女子供を恐怖に陥れた。
 ここで調査団一行は首をひねった。
「アンデッドが食料、金品を強奪だと? それに混じってオークも」
 アンデッドには食欲もなければ物欲もない。
 それから推測するに何に者かに操られていると想像することは容易い。
 大半の村民は逃げたことにより無事だったが、果敢に立ち向かった者の中に死者、ケガ人も数名いたとのこと。
 しかもそこで死んだ者がさらにアンデッドと化したことに恐怖はさらに増長されることになった。

 既にグリムヴァルド周辺の六つの村はアンデッドとオークに占拠されたことから本格的な侵略行動が始まったことがはっきりした。
 それを確認したゾフィーを含む調査団はすぐさまグラッドシュタットへと戻り、王都へ使者を派遣することにした。
 出発して九日目、ようやくゾフィーが帰宅した。


 翌朝、朝食の前、ゾフィーは机に向かい、疲れた様子で一人考え事をしていた。
 エルンはそんな様子のゾフィーに声を掛けた。
「東の森で何かあったんですか? ゾフィー先生がそれほど困った顔を見るのは初めてです」
「お前は、黙って修行していればいい」
「僕もお手伝いがしたいです。ちゃんと話してください」
 ゾフィーはエルンの顔をしばし眺めた。
「……そうか。そうだな。もう話してもいいころかもしれん」
 ゾフィーはエルンに向き直ると重い口を開いた。
「グリムヴァルド周辺の村々がアンデッド、オークに占拠された」
「アンデッドやオークが村を占拠? そんな話は今までに聞いたことはありません」
「そうだな。物欲が乏しい魔物であるからそのようなことはしないはずなんだが、実際に見てきた」
「誰かが魔物を操っているということですか?」
「そうだな。ベスティエン・ベフェール(操獣魔法)」
「ベスティエン・ベフェール……とても高度な魔法です。しかも多少の感情があり、多少の知能のある死者に操獣魔法を掛けるのは非常に難しいはず。なかなか言うことを聞いてくれないそうです」
「そうだ。しかも、あれだけの数の魔物を操るのは相当な魔力量の魔法使いのみが成しえる技だ。ハッソという修復師だけでこのようなことができるとは思えん……もちろんその後ろには隣国が関わっていることは承知だが……、魔女グロス・フェルディナが蘇ったと考えるのが無難だ。しかもまだ増えるだろう。……しかし」
「ですが、村を占拠するほどのアンデッドをどうやって集めたんでしょうか。魔法を掛けられるような死者というのは簡単に集められないのでは……」
「それだ。数が多すぎる……」
「どうしたんですか?」
 エルンはゾフィーの納得のいかない表情を読み取った。
「なぜ、グリムヴァルドなんだろう。ヴァルハルディアは海峡を挟んだ西の国。グリムヴァルドとはかなりの距離がある。我が国だけでをあれだけのアンデッドを集めるには無理がある。隣国から潜入したアンデッドが多いように思う。わからないことばかりだ。さてさて、どうしたものか……」
「魔法省はこれからどのような対策を取るんでしょうか? 村の奪還ですか」
 エルンがゾフィーに聞いた。
 いつの間にかガルディが戸口に立って話を聞いていたらしく口を挟んだ。
「今それをやっても、ただ犠牲者を増やすだけだ。それは無駄だ。以前、ペペ族のアジトに踏み込んだとき、自爆しやがった。同じことが起こる。連中にとってアンデッドやオークなんて使い捨てだからな。今は相手の出方を見るに限る」
「その通りだ。いずれアンデッドどもはその村を拠点にしてグラッドシュタットを襲うだろう。そのための準備をしている最中だ。元凶を叩かなきゃだめだ」
 ゾフィーが結論のように言う。
「さっき、ゾフィーが言ったこと……なぜ、グリムヴァルドなのかをちょっと考えたい。ひょっとすると……」
「何か心当たりでもあるのか?」
 ガルディはちょっと考え込んだ。
「俺は魔法には詳しくないが、ある地点からある地点に移動する魔法があると聞いたがそれは本当か?」
「移動魔法か……聞いたことはある。しかし、それは伝説の魔法で実際に使われたという話を聞いたことはない」
「ブリッツヴェーグ(瞬間移動魔法)ですね。古い魔導書にはありますが、どうも現実的ではないようです。今でも研究をしている魔法使いがいるそうですが」とエルン。
「もし、それができたとしたら……どうだ」
「もちろん、隣の国からアンデッドを移動させることも可能だろう。しかし……」
 ゾフィーが考え込んだ。
「でも、それとグリムヴァルドがどのような関係があるのですか?」とエルン。
「あの辺りには、大きな洞窟がたくさんある」
 エルンとゾフィーはそれを聞いてガルディの言わんとすることがわかった。
「その洞窟内部に移動させて、もしくはそこに集結させて。一斉に村々を攻撃させたということか。隠れ家としては最適だ」
「そう考えると、魔物どもがグリムヴァルドに結集したことの合点がいく」
 ガルディが納得気に頷いた。
「発生源を叩かなければ、いくら魔物を退治したところで、いくらでも潜入してくるに違いない」
 ゾフィーは考え込んだ。
「ブリッツヴェーグというのはどのように発動するんですか?」
 エルンが聞いた。
「私が知る限りでは数か所に特殊な魔法陣を描き、魔法の力で魔法陣から魔法陣へと移動させる。二つの空間を結ぶ魔法だ。瞬間的に移動するらしいが……莫大な魔力を消費する。大量の魔物を移動させることが果たして可能なのか?」
「それが事実かどうかわからんことには魔法省に属しているゾフィーは動きにくいだろ。俺とエルンで確かめてもいいが」
「やってくれるのなら、頼みたい」
「あのー」
 エルンが困ったような顔を作って言ってみた。
「何だ?」
 ゾフィーがエルンの顔に視線を移す。
「僕もそこに入ってるんですか?」
「「当たり前だ」」と同時にぶつけられた。
 まずは三人で簡単に計画を立てるが、少々心許ない気がしてきた。
「もう二、三人サポートが欲しい。手配できるか?」
 ガルディが言った。
「それなら役所の保安局へ行って、討伐隊の志願者を紹介してもらうといい。登録してある者ならすぐに見つかる」とゾフィー。
「それなら話は早い。早速行ってみるか。エルンも一緒だ。お前の方が人を見る目がありそうだ」
「……わかりました。じゃあ、すぐに行きましょう」
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