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大学生の悲劇
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大学に入ったらいろんな事がしたい、そう夢見ていた。
高校は男子校で全く出会いがなかったから、まず彼女がほしかった。
彼女いない歴=年齢の俺にはなかなかハードルが高そうだとは思ったがやっぱりほしいものは欲しい。
可愛い彼女とどこどこに出かけただとか、初体験とか聞いてもいないのにベラベラ話す友人が腹立たしかった。
分かってる、これはただの醜い嫉妬だ…友人は当然悪くない。
大学に入ったら、女っ気がない高校生活が嘘のように合コンのお誘いが沢山やってきた。
出会いとは、何処に転がっているか分からない…だから片っ端から参加した。
結構可愛い子を誘ってくれたらしく、気分が上がって合コンを盛り上げた。
…その結果、合コンの盛り上げ役で終わってしまった。
友人はちゃっかりお持ち帰りをしているのに、俺は一人でとぼとぼと暗い夜道を歩いていた。
一人でやけ酒をする元気もなく、まっすぐ帰ろうと思った。
そんな時、男に絡まれている女性が目の前にいた。
周りの人は、関わりたくないから見て見ぬふりをして素通りしていた。
でも、俺は本当に困っているような人を放っておく事が出来なかった。
正義感というより、合コンで失敗してヤケになっていたのかもしれない。
「無理矢理はだめですよ」
「あ?なんだテメェ」
酔っ払いのようで、酒のにおいがツーンと鼻に入る。
俺も酒に酔っているから、あまり人の事は言えない。
女性の肩を掴む腕を掴むと、男に腕を振り払われて一発殴られた。
衝撃でよろけて、尻餅をついた。
ジンジンと痛みを感じて、頬に触れて男を見る。
普段使わない正義感なんて使うもんじゃないなと、この時ヒシヒシと感じていた。
俺の胸ぐらを掴んでもう一発くらわそうと腕を振り上げると、誰かの通報でやってきた警察官の怒鳴り声が聞こえた。
そして、男は警察官に取り押さえられて俺は二発目はくらわずに済んだ。
何も考え無しで行った俺より、警察官を呼んだ人の方が利口だと苦笑いした。
さっき殴られて、すっかり酔いが醒めてしまった。
彼女も出来ず、殴られて…なんか自分に自信がなくなった。
「あの、大丈夫ですか?」
女性の声がして、見上げると男に絡まれていた女性が手を差し伸ばしていた。
とても可愛らしい子で、同じ歳のように感じた。
まるでフィクションのような運命的な出会い、俺の心は再び火を付いた。
そして、結果的に彼女とはすぐに別れてしまった。
俺にとって初めての彼女は、浮気をして浮気相手の男のところに行った。
初体験もするまでもなく、俺と彼女はいったいなんだったのかと疑問に思うほどの呆気ない終わりだった。
友人達は失恋した俺を慰めるために合コンをセッティングしてくれたが、行く気が起きなかった。
しばらく新しい恋という気分ではないのに、恋がしたいと思っている自分もいる。
傷付いても、人並みに性欲もあるもので…頭がそれでいっぱいになれば少しの間でも忘れる事が出来る。
大人のDVDでも見ようかな、とふと本屋の前で止まった。
昼間だと、ちょっと恥ずかしいが今は夜だしいいかなと思った。
本屋にはレンタルショップやゲームなんかもある大きい場所だ。
夜でもそれなりに客がいて、ゆっくりと大人のコーナーに移動する。
高校生じゃないんだから、堂々としていれば良いんだが…恥ずかしいのは変わりない。
何を見ようかなと見ていたら、大人の本とゲームも分かれてはいたが同じ列にあった。
大人向けの本は分かるが、大人のゲームってなんだ?
ゲームの18禁って、確か暴力表現とかちょっとしたエロとかではないのか?
少なくとも、ここに並ぶほどのエロいゲームがあるとは思えなかった。
ゲームは子供の頃にやったっきりで、その世界のゲームを知らなかった。
可愛らしい女の子の絵が描かれているゲームを手に取る。
なにかの大賞を取ったのか、大きく宣伝してあった。
後ろをみると、かなり内容が過激でビックリした。
大人のDVDとほとんど変わらないじゃないか、イラストか実写の違いだろう。
ファンタジーの世界の話なのか、登場人物普通の格好ではなかった。
俺が一番に惹かれたのは、エッチなイラストではなく「女の子と恋愛できる」という事だった。
寂しいと思われるだろうが、恋愛に飢えている俺には魅力的に見えた。
なにかの賞を取ったのなら、内容がいいのだろう。
今のゲームってこんな高いんだな、と思いながらゲームを買う事にした。
一応本来の目的である大人のDVDも一緒に借りて、一人暮らしをしているアパートに向かった。
パソコンのゲームなんて初めてだな、二次元に逃げた俺を友人はきっと笑うだろう。
それでもいいさ、俺はまだ現実の恋の傷が癒えていないから…
「ただいまー」
誰もいない、真っ暗な部屋に向かって声を掛けて電気を付ける。
レンタルしたDVDをテーブルに置いて、袋からゲームを取り出す。
机の上に置いてあるノートパソコンを起動させる。
二次元には興味はなかったが、これも経験だよな…とワクワクした気分になる。
早速入れて、インストールをしている間にカップラーメンでも食べようと台所に向かう。
そして、インストールが終わったと画面に表示されて…ラーメンを食べる箸を止めた。
カップラーメンを机に置いて、椅子に座り新しく出てきたアイコンをクリックした。
俺の初めてのエロゲーは王道のファンタジーストーリーだった。
「ローズバレット」というタイトルのゲームが今始まる。
主人公は魔物ハンターを職業にしている青年。
賞金首の魔物を倒して生活していた。
いつものように賞金首の魔物を探して、森の中を探索していた。
賞金首である、大きな魔獣に襲われそうになっている女性を助けた事で物語が始まっている。
謎の女性や幼馴染みや妹系やお姉さん系など女の子はとても豊富だった。
現実ではバイトをしながら大学に通っている苦学生だが、ゲームの中では女性に尊敬される強い俺になれる。
まるで第二の人生を味わっているかのように感じた。
しかし、恋愛経験が薄く…ゲームは何年振りかの俺にハードルが高いゲームだった。
ストーリーは普通のRPGみたいで面白いし、キャラクターはかっこかわいい。
しかし、選択肢が分からない…これかな?と直感で選ぶと何故か不機嫌になっていく。
可笑しいな…なにがいけないのかさっぱり分からない。
しかも、もっと最悪なのは中盤からの展開だ。
不機嫌にさせてばかりだからか、なんかいまいち仲良くなれないまま敵キャラクターが登場した。
魔界の王と呼ばれている男とその配下が現れた。
主人公はずっと魔物を倒して強かった筈なのに、魔王には弱かった。
すぐに殺られてしまって、呆然としながら画面を見ていた。
普通のRPGならそこでゲームオーバーだが、こういうゲームは違った。
主人公は俺なのに、仲間の女性達を奪われてとんでもない展開になった。
他の男に彼女を取られて、傷心した俺の傷口を抉っていた。
スキップの仕方が分からないから、地獄を味わった。
恋愛を求めていただけなのに、こんな仕打ち…あんまりだ。
なんで敵キャラクターがイケメンなのか、画面を睨む。
超美形の銀髪に黒い眼帯をしていて、かなり強い力を持っている魔王…俺が勝てる要素が一つもない。
やっと地獄の時間が終わり、もう一度一から始めた。
結果、何回も魔王のエロシーンを見る事になった。
どうやったら好感度が上がるんだ!?全然分からない!
別の選択肢を選んでいる筈なんだけどな…と思いながら、どうしようか悩む。
ネットで攻略がある事を忘れている俺は、小一時間悩んだ。
そして、気分転換にレンタルした大人のDVDを見る事にした。
…魔王の顔がチラついて、全然興奮出来なかった。
テレビを付けたまま寝落ちしてしまい、DVDのメニュー画面が映し出されているテレビをボーッと眺めた。
スッキリしていないから、モヤモヤした気分の嫌な朝だ。
俺の気持ちも知らずに、チュンチュンとことりの囀りが聞こえる。
スマホのバイブ音が床を擦って響いていて、腕を伸ばしてスマホを手に取った。
『大丈夫かー?生きてるかー?合コン行くかー?』
「行く」
俺は二次元の恋を諦めて、現実の恋を目指す事にした。
今度こそ、傷を抉られない恋がしたいと切に願い。
今日も合コンで惨敗して、とぼとぼと一人で夜道を歩く。
このまま童貞として一生を過ごして死んでいく気がしてきた。
俺に可愛い幼馴染みとか同級生とかいたらなぁ…とまた虚しい妄想を脳内で繰り返す。
あ…またあの悪夢が蘇る…すっかり俺のトラウマになっていた。
頭を抱えていると、なんか気持ち悪くなってきた。
だから肩を軽く叩かれている事に気付くのも遅れてしまった。
気付いた頃には、腹部が暖かくなっていて息が止まった。
後ろを振り返ると、そこには見覚えがある男の姿があった。
この男は確か、女性に絡んでいた酔っ払いだった。
ニヤリと笑う男を最後に視界がぐにゃりと歪んでいく。
「やっと見つけた、この前の借りは返したぞ」
どんだけ俺を恨んでいたんだよ、そう言う元気も残っていなかった。
口から出るのは声にならない空気と逆流してきた血だけた。
苦しくて、何だか寒い…俺…本当に童貞のままで死ぬのか。
最後くらい、普通でいいから恋愛がしたかった。
心からお互いを愛して、幸せを感じられる…そんな恋が…
身体が崩れて、地面に力なく倒れ込み…周りの人の悲鳴が聞こえる。
俺の最後の願いは、誰にも届く事なく来世に運ばれた。
ーーー
俺は賞金首ハンターの一家で生まれた長男だった。
目指すは最高額を持つ魔王の首だと、目標を高く持っていた。
物心がつく頃から俺は両親に鍛えられて、安い賞金首の魔物と戦って小遣い稼ぎをしていた。
やはり目指すは最高額の魔王だが、誰も遭遇した事がないから情報がほとんどない。
魔王に遭遇した者は、必ず死が訪れると言われているから無理もない。
武器は父から受け継いだ「ローズバレット」という対魔物用の銃だ。
銀色の銃にバラの模様の家の家宝と呼ばれるものだ。
俺の愛用の、相棒と呼べる武器だ…他には浮気しない。
20歳になるとそれなりに名前が売れて、名のある賞金首ハンターになった。
そして、あの日…俺は女性に出会い…魔王と女性を巡る戦いに巻き込まれていく。
それがゲームの大まかなあらすじと序章ストーリーだ。
そして、生まれ変わった俺は全く同じ環境で育っていた。
19歳であるレインは、明日…誕生日を迎える事になっている。
名前も賞金首ハンターも幼馴染みの女性の名前も同じだ。
気付いた当初はパニックを起こしていて、賞金首ハンターになんてなりたくない!と駄々をこねた事もあった。
ゲームの世界が現実になるなんてありえないと自分に何度も言い聞かせた。
でも、俺は開き直る事にして賞金首ハンターもやっている。
ここが恋愛ゲームの世界なら、俺は女性と恋愛出来るのではないのか?
ゲームでは散々嫌われたが、ここは現実だから嫌われるような事は怒らないだろう。
そう都合のいい事を考えて、この世界を楽しんでいた。
生前の現実でトラウマを植え付けたあの男が現れるまでは…
高校は男子校で全く出会いがなかったから、まず彼女がほしかった。
彼女いない歴=年齢の俺にはなかなかハードルが高そうだとは思ったがやっぱりほしいものは欲しい。
可愛い彼女とどこどこに出かけただとか、初体験とか聞いてもいないのにベラベラ話す友人が腹立たしかった。
分かってる、これはただの醜い嫉妬だ…友人は当然悪くない。
大学に入ったら、女っ気がない高校生活が嘘のように合コンのお誘いが沢山やってきた。
出会いとは、何処に転がっているか分からない…だから片っ端から参加した。
結構可愛い子を誘ってくれたらしく、気分が上がって合コンを盛り上げた。
…その結果、合コンの盛り上げ役で終わってしまった。
友人はちゃっかりお持ち帰りをしているのに、俺は一人でとぼとぼと暗い夜道を歩いていた。
一人でやけ酒をする元気もなく、まっすぐ帰ろうと思った。
そんな時、男に絡まれている女性が目の前にいた。
周りの人は、関わりたくないから見て見ぬふりをして素通りしていた。
でも、俺は本当に困っているような人を放っておく事が出来なかった。
正義感というより、合コンで失敗してヤケになっていたのかもしれない。
「無理矢理はだめですよ」
「あ?なんだテメェ」
酔っ払いのようで、酒のにおいがツーンと鼻に入る。
俺も酒に酔っているから、あまり人の事は言えない。
女性の肩を掴む腕を掴むと、男に腕を振り払われて一発殴られた。
衝撃でよろけて、尻餅をついた。
ジンジンと痛みを感じて、頬に触れて男を見る。
普段使わない正義感なんて使うもんじゃないなと、この時ヒシヒシと感じていた。
俺の胸ぐらを掴んでもう一発くらわそうと腕を振り上げると、誰かの通報でやってきた警察官の怒鳴り声が聞こえた。
そして、男は警察官に取り押さえられて俺は二発目はくらわずに済んだ。
何も考え無しで行った俺より、警察官を呼んだ人の方が利口だと苦笑いした。
さっき殴られて、すっかり酔いが醒めてしまった。
彼女も出来ず、殴られて…なんか自分に自信がなくなった。
「あの、大丈夫ですか?」
女性の声がして、見上げると男に絡まれていた女性が手を差し伸ばしていた。
とても可愛らしい子で、同じ歳のように感じた。
まるでフィクションのような運命的な出会い、俺の心は再び火を付いた。
そして、結果的に彼女とはすぐに別れてしまった。
俺にとって初めての彼女は、浮気をして浮気相手の男のところに行った。
初体験もするまでもなく、俺と彼女はいったいなんだったのかと疑問に思うほどの呆気ない終わりだった。
友人達は失恋した俺を慰めるために合コンをセッティングしてくれたが、行く気が起きなかった。
しばらく新しい恋という気分ではないのに、恋がしたいと思っている自分もいる。
傷付いても、人並みに性欲もあるもので…頭がそれでいっぱいになれば少しの間でも忘れる事が出来る。
大人のDVDでも見ようかな、とふと本屋の前で止まった。
昼間だと、ちょっと恥ずかしいが今は夜だしいいかなと思った。
本屋にはレンタルショップやゲームなんかもある大きい場所だ。
夜でもそれなりに客がいて、ゆっくりと大人のコーナーに移動する。
高校生じゃないんだから、堂々としていれば良いんだが…恥ずかしいのは変わりない。
何を見ようかなと見ていたら、大人の本とゲームも分かれてはいたが同じ列にあった。
大人向けの本は分かるが、大人のゲームってなんだ?
ゲームの18禁って、確か暴力表現とかちょっとしたエロとかではないのか?
少なくとも、ここに並ぶほどのエロいゲームがあるとは思えなかった。
ゲームは子供の頃にやったっきりで、その世界のゲームを知らなかった。
可愛らしい女の子の絵が描かれているゲームを手に取る。
なにかの大賞を取ったのか、大きく宣伝してあった。
後ろをみると、かなり内容が過激でビックリした。
大人のDVDとほとんど変わらないじゃないか、イラストか実写の違いだろう。
ファンタジーの世界の話なのか、登場人物普通の格好ではなかった。
俺が一番に惹かれたのは、エッチなイラストではなく「女の子と恋愛できる」という事だった。
寂しいと思われるだろうが、恋愛に飢えている俺には魅力的に見えた。
なにかの賞を取ったのなら、内容がいいのだろう。
今のゲームってこんな高いんだな、と思いながらゲームを買う事にした。
一応本来の目的である大人のDVDも一緒に借りて、一人暮らしをしているアパートに向かった。
パソコンのゲームなんて初めてだな、二次元に逃げた俺を友人はきっと笑うだろう。
それでもいいさ、俺はまだ現実の恋の傷が癒えていないから…
「ただいまー」
誰もいない、真っ暗な部屋に向かって声を掛けて電気を付ける。
レンタルしたDVDをテーブルに置いて、袋からゲームを取り出す。
机の上に置いてあるノートパソコンを起動させる。
二次元には興味はなかったが、これも経験だよな…とワクワクした気分になる。
早速入れて、インストールをしている間にカップラーメンでも食べようと台所に向かう。
そして、インストールが終わったと画面に表示されて…ラーメンを食べる箸を止めた。
カップラーメンを机に置いて、椅子に座り新しく出てきたアイコンをクリックした。
俺の初めてのエロゲーは王道のファンタジーストーリーだった。
「ローズバレット」というタイトルのゲームが今始まる。
主人公は魔物ハンターを職業にしている青年。
賞金首の魔物を倒して生活していた。
いつものように賞金首の魔物を探して、森の中を探索していた。
賞金首である、大きな魔獣に襲われそうになっている女性を助けた事で物語が始まっている。
謎の女性や幼馴染みや妹系やお姉さん系など女の子はとても豊富だった。
現実ではバイトをしながら大学に通っている苦学生だが、ゲームの中では女性に尊敬される強い俺になれる。
まるで第二の人生を味わっているかのように感じた。
しかし、恋愛経験が薄く…ゲームは何年振りかの俺にハードルが高いゲームだった。
ストーリーは普通のRPGみたいで面白いし、キャラクターはかっこかわいい。
しかし、選択肢が分からない…これかな?と直感で選ぶと何故か不機嫌になっていく。
可笑しいな…なにがいけないのかさっぱり分からない。
しかも、もっと最悪なのは中盤からの展開だ。
不機嫌にさせてばかりだからか、なんかいまいち仲良くなれないまま敵キャラクターが登場した。
魔界の王と呼ばれている男とその配下が現れた。
主人公はずっと魔物を倒して強かった筈なのに、魔王には弱かった。
すぐに殺られてしまって、呆然としながら画面を見ていた。
普通のRPGならそこでゲームオーバーだが、こういうゲームは違った。
主人公は俺なのに、仲間の女性達を奪われてとんでもない展開になった。
他の男に彼女を取られて、傷心した俺の傷口を抉っていた。
スキップの仕方が分からないから、地獄を味わった。
恋愛を求めていただけなのに、こんな仕打ち…あんまりだ。
なんで敵キャラクターがイケメンなのか、画面を睨む。
超美形の銀髪に黒い眼帯をしていて、かなり強い力を持っている魔王…俺が勝てる要素が一つもない。
やっと地獄の時間が終わり、もう一度一から始めた。
結果、何回も魔王のエロシーンを見る事になった。
どうやったら好感度が上がるんだ!?全然分からない!
別の選択肢を選んでいる筈なんだけどな…と思いながら、どうしようか悩む。
ネットで攻略がある事を忘れている俺は、小一時間悩んだ。
そして、気分転換にレンタルした大人のDVDを見る事にした。
…魔王の顔がチラついて、全然興奮出来なかった。
テレビを付けたまま寝落ちしてしまい、DVDのメニュー画面が映し出されているテレビをボーッと眺めた。
スッキリしていないから、モヤモヤした気分の嫌な朝だ。
俺の気持ちも知らずに、チュンチュンとことりの囀りが聞こえる。
スマホのバイブ音が床を擦って響いていて、腕を伸ばしてスマホを手に取った。
『大丈夫かー?生きてるかー?合コン行くかー?』
「行く」
俺は二次元の恋を諦めて、現実の恋を目指す事にした。
今度こそ、傷を抉られない恋がしたいと切に願い。
今日も合コンで惨敗して、とぼとぼと一人で夜道を歩く。
このまま童貞として一生を過ごして死んでいく気がしてきた。
俺に可愛い幼馴染みとか同級生とかいたらなぁ…とまた虚しい妄想を脳内で繰り返す。
あ…またあの悪夢が蘇る…すっかり俺のトラウマになっていた。
頭を抱えていると、なんか気持ち悪くなってきた。
だから肩を軽く叩かれている事に気付くのも遅れてしまった。
気付いた頃には、腹部が暖かくなっていて息が止まった。
後ろを振り返ると、そこには見覚えがある男の姿があった。
この男は確か、女性に絡んでいた酔っ払いだった。
ニヤリと笑う男を最後に視界がぐにゃりと歪んでいく。
「やっと見つけた、この前の借りは返したぞ」
どんだけ俺を恨んでいたんだよ、そう言う元気も残っていなかった。
口から出るのは声にならない空気と逆流してきた血だけた。
苦しくて、何だか寒い…俺…本当に童貞のままで死ぬのか。
最後くらい、普通でいいから恋愛がしたかった。
心からお互いを愛して、幸せを感じられる…そんな恋が…
身体が崩れて、地面に力なく倒れ込み…周りの人の悲鳴が聞こえる。
俺の最後の願いは、誰にも届く事なく来世に運ばれた。
ーーー
俺は賞金首ハンターの一家で生まれた長男だった。
目指すは最高額を持つ魔王の首だと、目標を高く持っていた。
物心がつく頃から俺は両親に鍛えられて、安い賞金首の魔物と戦って小遣い稼ぎをしていた。
やはり目指すは最高額の魔王だが、誰も遭遇した事がないから情報がほとんどない。
魔王に遭遇した者は、必ず死が訪れると言われているから無理もない。
武器は父から受け継いだ「ローズバレット」という対魔物用の銃だ。
銀色の銃にバラの模様の家の家宝と呼ばれるものだ。
俺の愛用の、相棒と呼べる武器だ…他には浮気しない。
20歳になるとそれなりに名前が売れて、名のある賞金首ハンターになった。
そして、あの日…俺は女性に出会い…魔王と女性を巡る戦いに巻き込まれていく。
それがゲームの大まかなあらすじと序章ストーリーだ。
そして、生まれ変わった俺は全く同じ環境で育っていた。
19歳であるレインは、明日…誕生日を迎える事になっている。
名前も賞金首ハンターも幼馴染みの女性の名前も同じだ。
気付いた当初はパニックを起こしていて、賞金首ハンターになんてなりたくない!と駄々をこねた事もあった。
ゲームの世界が現実になるなんてありえないと自分に何度も言い聞かせた。
でも、俺は開き直る事にして賞金首ハンターもやっている。
ここが恋愛ゲームの世界なら、俺は女性と恋愛出来るのではないのか?
ゲームでは散々嫌われたが、ここは現実だから嫌われるような事は怒らないだろう。
そう都合のいい事を考えて、この世界を楽しんでいた。
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