145 / 299
相容れない存在
しおりを挟む
「すまなかったな、お前の力を信じてやれなくて」
「……信じなくてい…」
ずっと俺の事なんて眼中にないままでいいと思っていた。
でも、どう言っても逃げられないなら利用しようと思った。
前に言った時は信じてくれなかった、でも今ならきっと俺の脅しが通じるかもしれない。
あの時も今もただのハッタリだけど、俺が悪魔を召喚したと思っているならと手の甲の悪魔の紋様を見せた。
ローベルト卿は俺を一瞬だけ見ていて、目を細めていた。
見られて、震えそうな手をもう片方の手を掴んで止めた。
「俺の力を分かったなら、もう貴方達に協力なんてしない……だからもう構わないでくれ」
「それは出来ない、ライム…お前の力は必要なんだ…我が息子よ」
「俺が必要じゃなくて、召喚した悪魔が必要なんでしょ」
ローベルト卿は笑っていて、耳を防ぎたくなる。
カイウスは絶対に渡さない…それにカイウスが簡単に利用されると思えない。
怪我をしていた筈だ、まさか…倒れたところを俺みたいに捕まったのかもしれない。
カイウスが悪魔だって分かってないみたいなら好都合だ。
カイウスの場所に急いで行かないと……カイウスに会いたい。
俺はなんて言われても、協力なんて絶対にしない。
普通に、ただ幸せになりたいだけなんだ…俺の幸せはここにいる事ではない。
「か、彼の場所…教えて」
「彼とは?」
「悪魔だよ、俺の大切な…」
「地下牢にいる」
地下牢ってもしかして神がいた場所じゃないよな?
カイウスは神に会いたがっていたが、今のカイウスの状態が分からないから心配だ。
地下牢の場所は覚えている、早く行こうと部屋を出ようとした。
すると「ライム」とローベルト卿が俺を呼んで足を止めた。
後ろを振り返ると、椅子から立ち上がったローベルト卿は微笑んでいた。
実の息子に向けるような優しさが込められた笑みだった。
それを見つめて、俺の心が揺らぐ事はなかった。
今まで俺にした事、精霊にした事、カイウスにしようとしている事……その全てが許せなかった。
今更息子だと思われたとしても、俺は心から父だと思う事はないだろう。
どうせ、この人も俺を息子なんて心から思ってないのだろう。
「地下牢の場所は分かるのか?」
「一階にある鉄の扉だよね」
「何故、そこが地下牢だと知っている?」
優しく微笑んでいたローベルト卿の顔がみるみる変わった。
知られたくないんだろう、あんな危険な神を閉じ込めているんだから当然か。
俺には薬を飲ませていないから、薬の事も俺は知らないと思っているんだろう。
誤魔化すように慌てて「地下牢みたいな扉だと思っただけ!」と言った。
一瞬でも疑えば何をされるか分からない、それほどまでに神の事を知られたくないんだろう。
ローベルト卿が近付いてきて、心臓が早くなる。
早くカイウスのところに行こうと扉のドアノブを握ったが部屋から出る事が出来なかった。
部屋の前にいて、入り口を防いだのはあの鎧の男だった。
扉から離れて、ローベルト卿を見るとすぐ近くにいた。
「まず先にお前の記憶をなくさないとな」
「……どういう」
「この薬があればお前の悪魔の力もより強くなってローベルト家のために役に立ってくれるだろう、あの悪魔も従順になったお前の言う事を聞くだろう」
ローベルト卿の手には注射器があり、俺の首を掴んだ。
腕を殴って離してもらおうとしたら、床に投げ飛ばされた。
俺の上に乗ったローベルト卿は再び俺の首を掴んだ。
喉が潰れそうなほど苦しくて、逃げる事を諦めずに暴れた。
ローベルト卿は動く俺に眉を寄せていて、兵士に命令して両手を掴まれた。
足元も暴れて、絶対に廃人になんかならないと抵抗した。
その時、ノックもなしに部屋の扉が開かれてローベルト卿は舌打ちをして扉の方を向いた。
「誰だ!ノックもなしに入ってくるな!!」
「も、申し訳ございません!しかし、もう堪えられそうにありません!!」
「…どういう事だ?」
「あの悪魔の事です!」
突然部屋に入ってきた人は兵士のようだけど、着ている鎧が割れていて剥き出しの肌は真っ赤に染まっていた。
なにかと戦ってきたかのように息を切らしていた。
兵士の血が部屋のじゅうたんを濡らしていて、ローベルト卿は眉を寄せていた。
そして鎧の男に顎で指示を出したら、俺から離れた。
やってきた兵士に近付きながら腰に下げている剣を引き抜いた。
そこからは何も見たくなくて顔を逸らすと、叫び声と共にドアが閉まる音がした。
なんで、あんな事を…彼はなにか仕事をしていて報告しに来たのではないのか?
「薬を初めて使うと、しばらく使い物にならないからな……その前に一仕事してもらおうか」
「嫌だ、誰がローベルト家の仕事なんか…」
「お前の悪魔に会いたくはないのか?」
仕事なんてしないと思っていたが、それを聞いて揺らいだ。
仕事は絶対にしないけど、カイウスには会いたい。
「……信じなくてい…」
ずっと俺の事なんて眼中にないままでいいと思っていた。
でも、どう言っても逃げられないなら利用しようと思った。
前に言った時は信じてくれなかった、でも今ならきっと俺の脅しが通じるかもしれない。
あの時も今もただのハッタリだけど、俺が悪魔を召喚したと思っているならと手の甲の悪魔の紋様を見せた。
ローベルト卿は俺を一瞬だけ見ていて、目を細めていた。
見られて、震えそうな手をもう片方の手を掴んで止めた。
「俺の力を分かったなら、もう貴方達に協力なんてしない……だからもう構わないでくれ」
「それは出来ない、ライム…お前の力は必要なんだ…我が息子よ」
「俺が必要じゃなくて、召喚した悪魔が必要なんでしょ」
ローベルト卿は笑っていて、耳を防ぎたくなる。
カイウスは絶対に渡さない…それにカイウスが簡単に利用されると思えない。
怪我をしていた筈だ、まさか…倒れたところを俺みたいに捕まったのかもしれない。
カイウスが悪魔だって分かってないみたいなら好都合だ。
カイウスの場所に急いで行かないと……カイウスに会いたい。
俺はなんて言われても、協力なんて絶対にしない。
普通に、ただ幸せになりたいだけなんだ…俺の幸せはここにいる事ではない。
「か、彼の場所…教えて」
「彼とは?」
「悪魔だよ、俺の大切な…」
「地下牢にいる」
地下牢ってもしかして神がいた場所じゃないよな?
カイウスは神に会いたがっていたが、今のカイウスの状態が分からないから心配だ。
地下牢の場所は覚えている、早く行こうと部屋を出ようとした。
すると「ライム」とローベルト卿が俺を呼んで足を止めた。
後ろを振り返ると、椅子から立ち上がったローベルト卿は微笑んでいた。
実の息子に向けるような優しさが込められた笑みだった。
それを見つめて、俺の心が揺らぐ事はなかった。
今まで俺にした事、精霊にした事、カイウスにしようとしている事……その全てが許せなかった。
今更息子だと思われたとしても、俺は心から父だと思う事はないだろう。
どうせ、この人も俺を息子なんて心から思ってないのだろう。
「地下牢の場所は分かるのか?」
「一階にある鉄の扉だよね」
「何故、そこが地下牢だと知っている?」
優しく微笑んでいたローベルト卿の顔がみるみる変わった。
知られたくないんだろう、あんな危険な神を閉じ込めているんだから当然か。
俺には薬を飲ませていないから、薬の事も俺は知らないと思っているんだろう。
誤魔化すように慌てて「地下牢みたいな扉だと思っただけ!」と言った。
一瞬でも疑えば何をされるか分からない、それほどまでに神の事を知られたくないんだろう。
ローベルト卿が近付いてきて、心臓が早くなる。
早くカイウスのところに行こうと扉のドアノブを握ったが部屋から出る事が出来なかった。
部屋の前にいて、入り口を防いだのはあの鎧の男だった。
扉から離れて、ローベルト卿を見るとすぐ近くにいた。
「まず先にお前の記憶をなくさないとな」
「……どういう」
「この薬があればお前の悪魔の力もより強くなってローベルト家のために役に立ってくれるだろう、あの悪魔も従順になったお前の言う事を聞くだろう」
ローベルト卿の手には注射器があり、俺の首を掴んだ。
腕を殴って離してもらおうとしたら、床に投げ飛ばされた。
俺の上に乗ったローベルト卿は再び俺の首を掴んだ。
喉が潰れそうなほど苦しくて、逃げる事を諦めずに暴れた。
ローベルト卿は動く俺に眉を寄せていて、兵士に命令して両手を掴まれた。
足元も暴れて、絶対に廃人になんかならないと抵抗した。
その時、ノックもなしに部屋の扉が開かれてローベルト卿は舌打ちをして扉の方を向いた。
「誰だ!ノックもなしに入ってくるな!!」
「も、申し訳ございません!しかし、もう堪えられそうにありません!!」
「…どういう事だ?」
「あの悪魔の事です!」
突然部屋に入ってきた人は兵士のようだけど、着ている鎧が割れていて剥き出しの肌は真っ赤に染まっていた。
なにかと戦ってきたかのように息を切らしていた。
兵士の血が部屋のじゅうたんを濡らしていて、ローベルト卿は眉を寄せていた。
そして鎧の男に顎で指示を出したら、俺から離れた。
やってきた兵士に近付きながら腰に下げている剣を引き抜いた。
そこからは何も見たくなくて顔を逸らすと、叫び声と共にドアが閉まる音がした。
なんで、あんな事を…彼はなにか仕事をしていて報告しに来たのではないのか?
「薬を初めて使うと、しばらく使い物にならないからな……その前に一仕事してもらおうか」
「嫌だ、誰がローベルト家の仕事なんか…」
「お前の悪魔に会いたくはないのか?」
仕事なんてしないと思っていたが、それを聞いて揺らいだ。
仕事は絶対にしないけど、カイウスには会いたい。
120
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる